MidnightInvincibleChildren

イングロリアス・マザーファッカー【vsバイト編】

 

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春といえばバイトの季節

 

新年度が始まり、新たな環境に身を置くこととなった人々がはじめるものといえば自殺かアルバイトと相場は決まっております。自殺した人はブログなんて読めませんので、残るはバイトの人のみ。みなさん、バイトしてますか?あるいは、バイトをしていましたか?よほど実家が太いか、私は田中慎弥だという人以外はアルバイトを経験してきたと思います。そんなみなさんに僕は言いたい。

 

カ ッ コ イ イ !

 

バイトをするのはとてもカッコイイことです。なぜならバイトは楽しくないからです。「楽しいバイト」というものはこの記事における「バイト」の概念には当たりません。そもそも、大変矛盾を孕んだ表現ですよね?

今日ここで出てくる「バイト」という言葉はすべて、ちっとも楽しくなく、失敗ばかりで、惨めで、孤独で、ずっと帰りたくて、動悸がして、頭がぼーっとしてくる、あの低賃金な行為すべてを指しています。そんなバイトを経験している人は総じてカッコイイ。あなたはとても勇敢な人間なのです。バイトで嫌な経験をし、「辞める」という形で一区切りつけた猛者たちを、どこかのある部族の間では「イングロリアス・マザーファッカー」と呼ぶそうです。

 

 

イングロリアス・マザーファッカー

僕自身、自慢ではありませんが、これまでにいくつかのバイトを経験してきました。そしてそのすべてで筆舌に尽くしがたい思いを味わってきました。しかし世間一般の基準においてそれらは「大したことない」だの「人生において必要」だの、随分と勝手な言葉で片付けられてしまう程度のものだったようで、人前で話そうにもためらわれることばかり。こんな肩身の狭い思いまで残していくなんて、バイトとはどれだけ恐ろしいものなのでしょう。以下には、そんなバイトと僕の記憶の数々を記していきたいと思います。

 

★寿司屋vsイングロリアス・マザーファッカー★

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大学三年の一年間、僕は大学近くの寿司屋でバイトをしていました。きっかけは卒論に集中したいという先輩からのお願い。回転しない寿司屋ということもあり、ついつい背伸びしたい年頃であった僕は二つ返事で快諾。火蓋は切って落とされたのです。

 

【メモリーズ】

  • あまりの無能っぷりに数時間にわたる説教
  • のちに「ここのバイトは必ず一回は俺に雷を落とされるから」と大将ニヤリ
  • 映画鑑賞という僕の趣味に対し「お前のそれは否定はしない。でも俺はここでお客さんの人生の話を聞いてるほうが断然面白いと思うけどね」という否定
  • 常連の社長さんに「バイトの時給いくらなの?」と聞かれた大将が50円盛って報告
  • ある日カウンターの中でお弟子さんとバイトたちの話をしていた大将が「そういう世代なんだろうね」とポツリ
  • 最終日に「言われたこともできねえんなら要らねえぞ」と言われる

 

【マザーファッカーズ・アンサー】

  • 大学で外せない実習があると伝えオリジナル夏期休暇をとる(二週間)
  • 樽のビールを厨房内に散布
  • 貴重な珍味を残飯だと思って勝手に下げ、三角コーナーに捨てる
  • 常連さんが注文していた蟹の数を間違えて渡す
  • 空き時間は全員をサブマシンガンで撃ち殺す妄想
  • 要求されていた後任者を探すことなく、シフトに穴を開けて辞める

 

なんと一年もの間そんなバイト先に勤めていた僕は、最終的に前任者の先輩と同じく「卒論や就活があるため」という理由を告げ、後任の誰かを連れてくることを条件に辞めることが決まりました。しかし「もうすぐ解放される!」という興奮に酩酊した僕は、後任者をさがすことなく最終日を迎え、運の悪いことに当日発熱してミスを連発、大将に無能っぷりと後任者を連れてこなかったことを同時に怒られバッドエンドを迎えます。激高した大将の「言われたことできねえんなら要らねえぞ」という発言に対して「どのみち今日で辞めるから関係ねえわ」と内心ほくそ笑むほど異様な精神状態に陥っていた僕は深夜にまで及んだバイトの帰り道、口笛を吹きながら記念に携帯で自撮りをしたほど超ゴキゲン。バイト関係者の連絡先も速攻で削除しました。

 

妄想内掃射で愛用していたサブマシンガンMAC-10です ↓

www.youtube.com

 

 

 

 

★人材派遣アルバイトvsイングロリアス・マザーファッカー★

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大学を無内定で卒業した僕にとって人材派遣会社への登録は自然な流れ。倉庫内軽作業などの比較的簡単な業務を単発で入れるところもなんだか魅力的。人間関係を築くリスクを思うと気が遠くなるので、ここはひとつ、後腐れを気にせず収入を得られる派遣に決まりだ。そう思った僕でしたが、ここでも自らのアイデンティティーと向き合うハメになるのでした。

 

【メモリーズ】

  • 軽作業とは名ばかりの重い商品
  • 派遣の挨拶を無視する社員
  • 終日「ポケット般若心経」の検品で発狂寸前(ノルマである検品数に達しないと罵声が飛ぶ)
  • 長時間立ちっぱなしの作業にて、午後の作業開始直後に元ヤン風おばさんが「眠いだるい疲れたやる気ないって人にはさっさと帰ってほしいくらいなんですけどねえ!」と怒鳴り、全体の士気低下
  • 緊張で喉が締まって声が出づらくなったのを「やる気がない」とみなされ叱責を受ける
  • でんでんそっくりな社員のおじさんから指示を受けるも滑舌が悪く聴きかえすたびに罵声
  • 帰り際、名前を記入する用紙に記入し忘れたことを思い出し、戻って記入していると警備員のおじさんが「バカばっかだな」とつぶやく

 

【マザーファッカーズアンサー】

  • 少しでも感じの悪い現場だと、「もう二度と会わない」ことを武器に全力で手抜き
  • 交通費を出さない現場に対しては、移動で疲れたぶん堂々と休む
  • 「わからないまま進めずに、ちゃんと質問して」の言い方が少しでも高圧的だと絶対に質問しない
  • 業務終了直前にミスをして、後始末を社員に任せ帰宅 
  • 倉庫を出てすぐに「死ねジジイ」と独りごちる
  • 倉庫を出てすぐに「死ねババア」と独りごちる
  • 二日連続勤務にも関わらず二日目は行かない風邪をひいて寝込む
  • その倉庫のある地域には近づかない

 

そもそも派遣バイトは、一番はじめの会社での登録の際にする書類への記入がいやに面倒くさくてため息が出ますね。あそこからもう気分はどんよりです。

現場の当たり外れはもちろんあって、帰省した際のおばあちゃんのように迎え入れてくれる現場もあれば、そうじゃない現場もあります。どちらに当たるかは運かもしれません。ただし、前日になってもまだお仕事メールにやたらと募集が上がってくるような現場は人があまりいつかない会社かもしれませんので、ある程度参考にはなると思います。

とはいえ派遣バイトのいいところは、長く関わることを考慮して無理な社員などと無理に関係性を築かなくてもいいところです。クソな態度には堂々とムッとしていいのです。好きなだけ仁王像のような顔をしましょう。

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挨拶を返されなかったときの僕です ↑ 

 

 

まだ見ぬマザーファッカーたち

 今回は僕自身の数少ないバイト経験を振り返って書いてきましたが、世界にはまだまだイングロリアス・マザーファッカーが大勢います。自分の失敗した話をするのに抵抗を覚えさせるような環境に身を置いている方が大半だと思うので、なかなかその姿、武勇伝に触れる機会がないと思います。

しかし、SNSの発達に伴って「顔が見えなきゃいいや」との高度な心理的発達を遂げた人類が増加。実はちょっとネットを覗くだけで、よりマザーファッキンなエピソードに触れることができる、そんな豊かな時代でもあるのです。

バイトが嫌だ、バイト先の人間が憎いと心をすり減らすあなたは、より間近でイングロリアス・マザーファッカーに遭遇できる藤岡弘、(探検隊)のような存在なのかもしれません。それはとてもラッキーなことです。イングロリアス・マザーファッカーを目撃したときは、「あれがイングロリアス・マザーファッカーか!」と声をあげましょう。そしてイングロリアス・マザーファッカーの言動からたくさんの勇気をもらいましょう。彼らは生きることを肯定してはばかりません。そのエネルギーはきっと、よりよい未来への第一歩を、すべての者に踏み出させるのです。

 

あるいは、いまこの記事を読んでいるあなたこそが、次の世代を担う新たなイングロリアス・マザーファッカーのひとり……なのかもしれません。

 

 

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【早い者勝ち!】 あなたのお名前、残ってる?

 

春の空を舞う貯蓄

 

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みなさん、春ですよ。

 

春とはすなわち冬の終わり。気温が暖かくなり、日照時間も長くなるため、心が穏やかになります。新たな年度になることで、新生活をはじめる方もおられるかもしれません。どんな出会いが待っているのか、期待に胸をふくらませている頃でしょうか?

 

え?

 

期待することをやめて生きることに決めた……?

 

別れが相継ぎ、精神的な負荷も多く、それに刺激されてかあたり一面死の香り。冬の寒さで蓋をした記憶たちが、新芽のようにむくむくと顔を出し、いま向き合うべき課題で手一杯なのに、もう用のない憂鬱までもが背後から肩を叩く。

忌むべき記憶の夜泣きして

構ってあげると味をしめ

もっともっとと乳せがむ

赤子のような傷痕よ

 

ということで最低な精神状態が続く。それでいいのか2017。貧乏にいじけるな!不遇に構うな!ニヒリズムに負けるな!

 

俺たちのハッピーエンドを探しに行こうぜ!!!

 

 

(次回、これまで経験したアルバイトでの思い出とその辞め方をまとめた記事『イングロリアス・マザーファッカー』をアップします。乞うご期待!!!)

 

 

自宅鑑賞映画(2017年3月編)

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

スティーブ・ジョブズ』(3/5)

ダニー・ボイル版。良かった。ダニー・ボイル作品で一番好きかも。脚本の構成がいい。ドラマの生み方もうまいので、感動しながら必死で盗もうと目を血走らせていた。

 

『なりすましアサシン』(3/12)

Netflixオリジナル作品。監督が『キック・アスジャスティス・フォーエバー』のジェフ・ワドロウだと知って鑑賞。いい塩梅のアクションコメディ。アクションがぬるくないのもいい!

 

『13時間 ベンガジの秘密の兵士』(3/12)

Amazonプライムビデオで見放題で配信されていたので鑑賞。マイケル・ベイの実話ベース二本目。跳ねるRPG。人体を真っ二つにする50口径。戦闘に赴く車中でコンタクトを落とすなど、「戦場怖い」描写がたっぷりで最高。なにより篭城戦における迫撃砲の恐ろしさ。戦闘シーンを何度でも鑑賞したい一本。

 

『この世に私の居場所なんてない』(3/13)

Netflixで鑑賞。サンダンス映画祭で賞を獲ったやつだとか。監督は『ブルー・リベンジ』の主演の人。すごい。「世の中」という日常への鬱憤を募らせる主人公が、空き巣に入られたことから地獄めぐりを始めるという話。どこに転がるかわからない展開が不気味で楽しい。ちょうど四年ほど前から僕が書こうと思っていた「彼氏に同棲を解消された女が重力を失う」って話のやりたかったことが、まさにこの映画って感じ。最高のお手本を見つけられたのでそういう意味でも大満足。イライジャ・ウッド発達障害っぽい無職を演じていて、このキャラがまた最高。2017年のベスト無職候補ですね。

 

『メキシコ 地獄の抗争』(3/16)

Netflixで鑑賞。麻薬カルテルの日常を学ぶ上で大変勉強になる一本。カタルシスの後のHell goes on感。

 

シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(3/20)

Netflixで鑑賞。カラッとテンポ良く進む快作。『アイアンマン』のジョン・ファブローがマーベル側にこんなこと言われたのかな~?と邪推してしまうオーナーとのやり取りも楽しい。なによりお腹がすいた。

 

ロンドンゾンビ紀行』(3/20)

Netflixで鑑賞。一時間半なのが最高。しっかりグロいのにユルい。高齢者たちの活躍も楽しいブリティッシュゾンビ映画の佳作って感じ。

 

『ヘルウィーク』(3/24)

Netflixで鑑賞。大学生が調子に乗って最悪なことになる映画。我慢すれば何かを得られる、なんて幻想は捨てて生きていきたいものです。

 

『Mammy/マミー』(3/25)

君のフランチェスコ氏に勧められての鑑賞。Netflixにて。前半は息子のファッキンADHDぶりに嫌いな知人を想起して挫けそうになるが(表情の作り方までいっしょ!)、吃音症の元教師の登場から集中できた。Instagram演出もADHDの「感覚」演出ととることでまああり。ラストはやっぱり切ない。思えば初ドラン作品でした。なるほどなあこんな感じか、と思ったけど観てる人からすればこれが一番人を選ぶ作品だったりするとか。いつか別のも観ます。

 

 

 

計9本!

 

 

 

 

 

股間に凄テクいいあんべえ

 

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いいあんべえ(いいやんべえ)

意味:(沖縄の方言で)いい按配。きもちいい。心地いい。調子がいい。

 

 

 

 

 

 

春の匂いがする。

 

日曜日。窓から入りこんでくる風にコーヒーの湯気が踊る。僕はスマホとパソコンの両方でTwitterを開いている。ぼろを纏えど心は錦。今朝みた夢で女を刺した。

 

知らない女だった。いきなり部屋に現れ、両親の腹部をプラスドライバーで突き刺していくので、やむを得ず台所の包丁を手に致命傷にならないところを切りつけた。何度も何度も。痛覚がないのか、女はまったく痛がらない。恐怖に全身が強ばりながら、それでも女を切り続けた。やがて救急隊員が到着。女を拘束し、両親を治療してくれる。あなたも服を脱いでくださいと言われ、血に濡れたTシャツを脱いだ。姿見に映る自分が目に入る。腹筋がバキバキに割れていた。『アジョシ』のウォン・ビンかと見紛うほどの美しき上半身。そこで目が覚めた。爽やかな朝にも関わらず、全身がブルブル震えていた。夢の中で上着を脱ぐからだ。そう思って二度寝した。今日は本当にいい天気だ。

 

昼間から飲む酒は最高である。昨日も天気が良かった。春のような浮つきをおぼえた僕は、昼間からドン・キホーテへと向かい、氷結ストロングと惣菜を買い込んで近くの公園へ。ベンチに座ってすっぽんぽんの樹を眺めながら飲食を楽しんだ。暖かな陽光に当てられ酔いが回る。人が花見を愛する理由を、ここ数年で理解できるようになってきた。

 

去年も花見をした。関東に十数名いる高校時代の友人のグループラインで呼びかけ、上野恩賜公園に当日集まったのは僕を含めて三人だった。仕方がないので明るいうちから居酒屋に入り、他愛のない話をする。それはそれで楽しかったのだけど、夜になってさらにひとり減り、僕は残った友人と二人、途方に暮れた。途方に暮れた人間が向かうのは決まって新宿だ。僕は友人と沖縄出身のママが営んでいる二丁目のバーに入り、全島エイサー祭りの映像を見ながら歓談。勢いのついた僕らはそのまま二軒目へ。僕はそこでチンチンを触られ、見送りに出てくれたママには胸を揉まれた。今となっては、あれはあれでいい花見だったと思う。

 

チンチンを触られる、で思い出したが、最近AVの『凄テク』シリーズをよく観ている。『凄テク』シリーズとは『〇〇の凄テクを我慢できたら生★中出しセックス!』のことである。AV女優が素人に声をかけ、あの手この手で射精を促すのだが、それを十分間堪えられると生中出しセックスしなくちゃならない、というクレイジーな企画だ。僕は企画物があまり好きじゃなくて、どれだけ安っぽくてもドラマ仕立てにして欲しいという「うるさ型」なのだけど、この企画に関しては面白いので大好きだ。何が面白いのかというと、女優の様々な表情を見ることが出来るからだ。ある女優はなかなか射精させることができない焦りから次第に不機嫌になっていく。つばがもう出ないからローションをよこせ、とスタッフに言ったり、一言も喋らず無表情のまま単調な動きで萎縮したポコチンをシゴき始めてしまうなど、なかなかにスリリングだ。こうした女性側の焦りがチンチンをいじけさせるという悲しいすれ違いが、ありのまま記録されていているので胸を打つ。その一方で、最後まで余裕を絶やさず、エロくあろうと努めるプロフェッショナル型の女優は、次々と男どもを射精させていくので、それもまた興味深い。「どう触れるかではなく、どうムードをつくるか」という真髄が拝め、非常に学びがある。

 

そんなこんなで昨日は悪酔いをしてしまい、夜はずっと気持ちが悪かった。もう酒は飲みたくないと思った。それでも、半ば無理をして向かったサイゼリヤでクラムチャウダーをふた皿平らげたら治った。この世界にはもっと温かいスープが必要なのだ。だから僕らは春を待つ。今月中に『アシュラ』と『クーリンチェ少年殺人事件』と『哭声/コクソン』と『キングコング:髑髏島の巨神』を観る。桜が咲けば花を見る。気分が乗れば酒を飲む。ネガティブに構う時間を蹂躙しよう。違うか相棒。

 

 

P.S.

『凄テク』シリーズで「最後に抜いたのはいつか?」と聞かれた男どもの言う「3日前」は絶対嘘

 

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年2月編)

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

 

マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2/2)

Twitterでフォローしている人のその年のベスト1だったので鑑賞。

 

座頭市物語』(2/2)

Amazonプライムビデオにて、なんとなく目に入ったので鑑賞。

 

『Mr.タスク』(2/3)

前々から気になっていたので鑑賞。冒頭の『キル・ビル・キッド』、結構ドキッとした。

 

ジョン・ウィック』(2/3)

Netflixにて再鑑賞。ジョン・ウィックをヨイショするシーンのせいか、意外とテンポが独特。 

 

ジュラシック・ワールド』(2/4)

 『マグニフィセント・セブン』でクリス・プラットにハートを奪われたので鑑賞。身体の分厚さがたまらない。 『ジョン・ウィック』との共通点として、主人公が腕時計を文字盤が手首の内側に来るようにつけている。クリプラは海軍出身、ジョン・ウィック海兵隊上がりという設定なので、そういう文化があるのかも(銃を構えていても確認しやすいから?)。

 

『死霊高校』(2/7)

面白い!!!上手いホラーはカッコイイ。

 

メメント』(2/7)

映画飲みでノーランの話になり、近作にあまりのれなかった方々がこれは面白いと言っていたので鑑賞。

 

『灼熱の魂』(2/8)

ヴェルヌーヴにハマった二年前ぶりの鑑賞。初鑑賞時は「長い映画」だという印象を受けたけど、改めて筋を知った上で観ると、画面から片時も目が離せない。

 

JSA』(2/10)

パク・チャヌクの作品、そういえばこれ観てなかったなと思い鑑賞。最高。こんなにも切ない仕事サボリ映画があるか。

 

GANTZ:O』(2/24)

Netflixの配信が早かったので鑑賞。『GANTZ』のいいところが詰まった90分。芸人の声優もことごとく良かった。

 

トリプルX ネクスト・レベル』(2/24)

トリプルX:再起動』というめちゃくちゃ面白そうな映画が公開するということで、肝心の二作目未見じゃ挑めないだろうとレンタル。アイス・キューブ主演で監督はリー・タマホリ。最高。僕の好きだった時代のアクション映画って感じ。マズルフラッシュと弾着がCGじゃないだけで嬉しい。なにげにロジカルなアクションでやりあうのも良い。話はここ最近の『ワイスピ』。いいとこばっかり。

 

雨に唄えば』(2/26)

ラ・ラ・ランド』があまりにも退屈で、ミュージカル映画リテラシーがないからでは?と思っての鑑賞。めちゃくちゃ楽しい。大好きなジャッキー映画のルーツを見た気分。急に歌って踊り出すってのは「作劇上の大きな嘘」であって、だからこそこれだけ華やかに派手にかっちりとしたやつこそ観たい。初めて『マトリックス』のカンフーシーンを観たときのヌルっとした感じ、それこそが『ラ・ラ・ランド』への感触に近いかも。ジーン・ケリーの動きはさすがにすごすぎる。

 

 『ジャージー・ボーイズ』(2/26)

ラ・ラ・ランド』へのリベンジ二本目。鑑賞は二度目。ミュージカル映画ではない。が、カーテンコールの至福は相変わらず。話の筋が一通り分かった上だったのか、今回は初回よりも楽しかった。ラッキーピエロハンバーガーが食べたくなる。あと『ラ・ラ・ランド』、たぶんミュージカルリテラシーの問題じゃないと思う。ただの好き嫌い。

 

 

 

 

計13本!

 

 

 

 

殺人鬼+殺人マシン/『クリミナル 2人の記憶を持つ男』

 

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『クリミナル 2人の記憶を持つ男』を観た。監督は『THE ICEMAN/氷の処刑人』のアリエル・ヴロメン。脚本は『ザ・ロック』のデヴィッド・ワイズバーグ&ダグラス・S・クック。僕はとても勘がいいのでしょうか。この時点でなんだかゴキゲンな気がしていたのです。

 

あらすじ

ロンドンでCIAエージェント(ライアン・レイノルズ)が殺害される。彼はテロリスト(ジョルディ・モリャ)に追われるハッカーマイケル・ピット)を保護しており、その隠れ家を知る唯一の存在だった。テロリストの狙いは、ハッカーが開発した核ミサイルを遠隔操作できるシステム。一刻を争うCIA(ゲイリー・オールドマン一同)は、記憶移植手術を研究する博士(トミー・リー・ジョーンズ)を呼び出し、凶悪な死刑囚ジェリコケビン・コスナー)にその記憶を移植する人体実験を実行させる。エージェントの記憶が保たれる48時間以内にハッカーを捜すよう命じられるジェリコだったが、あまりにも性格が凶暴だったため、護送中に逃亡、シャバでの自由を謳歌するのであった……

 

ジェリコという男

ケビン・コスナーが凶悪な男を演じる映画といえばあの『スコーピオン』が思い起こされます。エルビス・プレスリーを愛してやまない異常者がカジノを襲撃するも、仲間に金を持ち逃げされたのでひたすら暴れ回るというゴキゲンな映画。ということで今作でケビンコスナーが演じるのは死刑囚、その名もジェリコ。なにをしてきたのかはぼんやりと語られる程度ですが、話を聞く限り大勢の人間を殺してきたらしい。その凶悪さを買って勧誘に来たギャングまで惨殺しているとのことなので、その見境のなさたるや、超危険人物であることは確かです。彼は激情型のサイコパスで、善悪の区別がつかないばかりか、自らの行動の結果を予想することもできない。いくら死刑囚とは言えそんな男に大事な記憶を移すなよ!と一瞬思いますが、彼は幼少期に父親からの虐待で頭部に怪我 → その後遺症で前頭葉が未発達 → 他者の記憶を植え付けるための余地が残っている、という物語上のロジックがあるので一安心。こういう一言があるのとないとじゃ没入度も変わってくるので嬉しい限りです。

 

今作においてジェリコはまさに「獣」。街に繰り出せばろくなコミュニケーションも取らずに暴力と略奪を繰り返すのみ。しかしそんな彼の脳内では移植されたCIAエージェントの記憶が徐々に蘇り始め、いままで感じたことのない感情の芽生えさせるのでした。暴言を吐いた直後に謝罪の言葉が口をついて出るなど、野蛮な行為にも歯止めがかかってしまう。しまいには一度も会ったことのない「妻」や「娘」に対する愛情まで芽生えるのだから、サイコパス的には大混乱。こういった「怪物に人間性が宿る」という普遍的なコンセプトが、ケビン・コスナーの疲弊の滲む顔にはよく似合っています。厚手の服を重ね着しているので、どことなくひょうきんな熊さんのようにも見えてきますね。

 

でもちょっと待った。せっかく野蛮なサイコパスだったのに、優しい心を手に入れたら面白みに欠けるのでは?そんな懸念が浮かんできたかと思います。でもだいじょうぶ!移植された心優しい記憶の持ち主は、とはいえCIAのエージェントなのです。言うなれば訓練を受けた殺人マシン。ジェリコの戦闘力はむしろ向上し、持ち前のバーバリズムと移植された戦闘スキルの合わせ技で大暴れを見せてくれます。手にとった家具や手斧で敵を滅多打ちにするそのファイトスタイルは、近年の韓国映画に見られるバイオレンス描写を彷彿とさせるほどリズミカルで重く、それがまた心地いい。ほとんどミョン社長(『哀しき獣』)です。殺したばかりの死体に向かって「ウアー!!!」と叫んで見せるところも最高。銃を手にすればテキパキした動きで発砲。お得なキャラクターだなあ。

 

作り手の真摯さ

キャラクターだけではありません。この映画は、エンターテイメントを丁寧に作り上げようという真摯な思いに溢れています。まず銃声がでかい!銃が怖くないと盛り上がりませんからね。さらに弾着効果も妙にこだわっていて、頭を撃たれたキャラクターの後頭部からビロビロの塊がぶら下がるのが一瞬見える。そんな細かい描写はなくても支障はないはずのに、それでも入れてくれる優しさ。さらに魅力的な女殺し屋も登場。丁寧な演出の中にケレン味も忘れない、その精神が実に大人です。銃とか弾着効果とか殺し屋とかそんな話ばかりしてますが、そういった点に目を向けられるほど大枠の物語に身を委ねられる土壌がある。そんなところが胸中を温かくしてくれます。

 

豪華キャストの共通項

ということでたいへん楽しい映画だったのですが、さらに重要なポイントがあります。ここからが本題といっても過言ではありません。というのもこの映画、キャストがとても豪華で、「知ってる!」顔が勢ぞろいしているのです。それもそのはず、ここ十年で大変な盛り上がりを見せているヒーロー映画出演者たちが、これでもか!と出演しているのです。以下、一覧!

 

ケビン・コスナージェリコ

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『マン・オブ・スティール』の父親(地球での)

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ライアン・レイノルズ(殺されたエージェント)

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デッドプール』のデッドプール

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ガル・ガドッド(エージェントの妻)

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ワンダーウーマン』のワンダーウーマン

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ゲイリー・オールドマン(CIAロンドン支局長)

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ダークナイト』シリーズのゴードン

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トミー・リー・ジョーンズ(博士)

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キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の大佐

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ジョルディ・モリャ(無政府主義者

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アントマン』でプレゼンを聞いていた人

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アンチュ・トラウェ(ドイツ軍出身の殺し屋)

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『マン・オブ・スティール』のファオラ

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スコット・アドキンス(CIAエージェント)

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ドクター・ストレンジ』のカエシリウスの部下

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詳しく探せばもっと出てくるかもしれません。それだけ現在の映画業界におけるヒーロー映画が利かせる幅が広いということでしょう。

 

 

ということで『クリミナル 2人の記憶を持つ男』は、見所多い快作でした。唯一言いたいことを挙げるとするならば、スコット・アドキンスのアクションシーンが一切なかったところでしょうか。とはいえ、物語上その必要性を感じる場面は特になかったので、ストレスになるというわけでもないと思います。本作の脚本を担当したダグラス・S・クックさんは2015年に亡くなられています。エンドロールでは本作が追悼の意とともに捧げられていました。面白い映画をありがとうございます。R.I.P.

 

 

 

歌と踊りと覚めない夢と

 

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『ラ・ラ・ランド』を観た。IMAXで。思いのほか心踊らない。スクリーンじゃみんな踊ってるのに。勃起しないおチンチンに、泣きながら「おい!」と怒鳴りつけた夜のことが蘇る。ミュージカル映画との相性が悪いのかもしれない、という疑念に沈痛しつつ帰宅。
 
ミュージカル映画に明るくないため、「これまでのハリウッド(ミュージカル)史に捧げる」という視点が持てない僕は、この映画を「夢を見る二人」の物語として鑑賞することにした。ここでいう「夢」とは、ざっくり言うとハリウッドでの成功のことだ。でもあのエンディングを見る限りでは、これは違う視点の話のように思えた。あの2人の愛の物語なのだ。彼らの間には覚めない夢のような愛があって、それはラストのあるシークエンスで彩り豊かに描かれている。あそこは演出として大好きなタイプのものだったので、うるっとはきた。でも全体的に、よくわからない映画だった。本当にわからない。どうしよう。感情がポンと抜けるような瞬間に、ついには出会えなかった。
 
歌って踊り出す、というのは僕にとっては「作劇上の大きな嘘の一つ」という認識なので、変に文脈に沿ったりせず、空気が渦を巻くくらい盛大にやってもらった方が楽しいはず、と思う。どうせ歌って踊るのであれば、文脈を蹴散らすくらいにやってほしい。今回、それを感じられたのはそれこそ冒頭のハイウェイでのシーン。あそこは、そういう意味でワクワクした。
 
こうなったらミュージカルリテラシーを向上させてみるぞ!ということで、『ラ・ラ・ランド』鑑賞翌日に『雨に唄えば』を借りてきた。めちゃくちゃ面白い。ジーン・ケリーの歌唱力、及びダンスのスキルに愕然した。演舞であり、演武でもあった。ファンの女の子から逃げるために車を台にして路面電車の屋根に飛び乗り、そこから反対車線の走るオープンカーに飛び移るシーンなんて、それこそ個人的な映画の原初的な喜びであるジャッキー映画そのものだ。なるほど、ジャッキー・チェンジーン・ケリーが好きだったんだろうな。自分の愛するもののルーツを目にした僕は感動した。『シャンハイ・ナイト』のマーケットでのシーンなんて、ジャッキーからジーン・ケリーへのリスペクト溢れるオマージュじゃん、と遅ればせながら気づくこともできた。なるほどなるほど。ミュージカルリテラシー……アップ!!!!!
 
続いて『ジャージー・ボーイズ』を観た。ミュージカル映画、というわけではなかったけど、あの最高のカーテンコールシーン。ああ、なんて幸せなんだ。みんなが歌って踊っている。感情が昂ぶる至福のシークエンスだ。幸せ。そう思う僕は、同時にほかの映画のことも思い出していた。『ハッピーボイス・キラー』だ。
 
『ハッピーボイス・キラー』のアレをミュージカルと呼んでいいかに関しては判断しかねるんだけど、一応歌って踊っていたのでここに挙げておく。それこそ先述していたように、文脈を超えた形で歌って踊っていた。あの飛躍によってしかもたらせられなかった幸せな光景には号泣した。また観たいな。大好きな映画だ。
 
『ラ・ラ・ランド』に戻ろう。オマージュ元も、すべてではないが「なるほどね」と思える部分も出てきた。とはいえジーン・ケリーを観たあとだと、どうしても『ラ・ラ・ランド』の動きは『マトリックス』のカンフーシーンみたいに感じられてしまう。なにかが飲み下せたような気がした。なるほど、『ラ・ラ・ランド』はミュージカル版『マトリックス』なのかもしれない。
 

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みんなが踊っている。
力がみなぎってくる。
 
 

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なにはともあれ、またいつか機会を見て『ラ・ラ・ランド』を鑑賞したいと思う。待ってろ!『ラ・ラ・ランド』!その日を迎えた俺の、ミュージカルリテラシーを舐めるなよ!!!
 
 
P.S.
あと『ラ・ラ・ランド』、アカデミー作曲賞美術賞、撮影賞、歌曲賞、監督賞、主演女優賞受賞おめでとうございます!!!ステージの端の方に立っていたゴズリングが最高でした!
 
 
 
 

見たい夢を見る(長門有希編)

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夢をみていた

『ラ・ラ・ランド』日本版キャッチコピー

 

 

一度だけ、 見たい夢を見たことがある。

 

大学一年の頃、『涼宮ハルヒ』シリーズにどハマリした僕は、その中でも特に対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース(これを早口で諳んじるレベルでハマっていた)の「長門有希」にお熱。彼女は読書家という設定で、アニメ版では毎回長門有希が実在の本を読んでいることも見所の一つだった。中でも一期の実質最終回に位置するアニメオリジナル回『サムデイ・イン・ザ・レイン』において、彼女は阿部和重の『グランド・フィナーレ』と綿矢りさの『蹴りたい背中』を読んでいる。どちらも芥川賞受賞作ということで、この時期の長門有希ちゃんは芥川賞受賞作の消化期間中だったのかな?と推理した僕は、その日のうちに『蹴りたい背中』を購入。「にな川」というキモいアイドルオタクのことがどうしても気になってしまう主人公「ハツ」は、そんな彼の背中を見て「蹴りを入れたい」と思う。久々に読んだ『蹴りたい背中』は、そんな物語だった。その内容がどうしても長門有希ちゃんの心を代弁するかのようないじらしいものに思えて仕方がなくなった僕は、興奮の坩堝にダイブ、休憩を挟むことなく一気読みした。最高の小説だった。これを読んで、棚に戻すことなく部室の机に置いておくばかりか、居眠りをするキョンの「背中」にカーディガンをかけて去っていく長門有希やん。破顔する僕はベッドに寝そべりながら「ちくしょうマジか~」と漏らし、後頭部をかきむしっていた。窓からは初夏のさわやかな風が入り込んできた。

 

そして夢を見たのである。僕は青々とした芝生生い茂る知らない民家の庭にいた。そこにはビニールプールがあって、SOS団のメンバーが水浴びをしている。ホースからほとばしる水が陽光をキラキラと反射させている。最高の、夏の景色。その中で長門有希は、いつも変わらぬ無表情とアニメでも着ていた水着姿で、他の面々と水を浴びている。僕は彼女を性的な目で見ているわけではないので、その姿にやや気恥ずかしさを覚えるものの、僕はその夢の中において、恐らく登場人物の一人ではない感じだった。そんな実体のない、幽霊のように彷徨うだけの視点として目の前の光景を慈しんでいた自分だったが、不意に長門有希がこちらに向かって近づいてくる。彼女には僕が見えているのかな、やっぱり宇宙人だしそういうのもアリなんだろうな、と思う僕の腕を取った長門有希は、そのまま膝を付けと指示するように、腕を引いてきた。僕は当然のように芝生の上に膝をつくのだが、すると彼女は、どういうことか僕の背後に回り込むと、バン!と勢いよく蹴りを入れてきたのだ。前のめりに手をつく僕は、「これは『蹴りたい背中』だ」と思った。

 

目を覚ました僕は、冷めやらぬ興奮と同時に、どこか割り切れない想いを抱いていた。あまりにも直截的すぎて、夢の中ですら「そのまんまじゃん」と思っていた気がする。芸がなさすぎるあまり、貧しい気持ちになってきた。本当に欲しいもの、でも得難いものというのは、こんなふうに手に入れちゃダメなんだと思った。僕は人生における大事なことを、長門有希からの背中への蹴りで学んだ。

 

 好きなものを大事にしていきたい。僕は自分の好きなものをちゃんととっておき、ふとした瞬間に引き出しては、その色香に想起される記憶に触れたい。長門有希への好意にめまいを覚えていたあのころの僕は、函館の夏の匂いにつつまれていた。熱されたアスファルトの香り、釣具屋の磯臭さ、ひんやりとした夜気の爽やかな肌触り。僕はいつだって見たい夢を見ている。

 

 

 

 

過去にも 「夢」の話が出てくる日記を書いていたので貼ります ↓

『ぼくは勉強ができない』じゃございません

 

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Sweet - Fox On The Run - Promo Clip (OFFICIAL)

 

 

全然勉強ができない。そのことについてここ数年、考えたり考えなかったりしている。おそらく僕の知能レベルもさる事ながら、性格にこそ大きく起因する話なんじゃないかと最近になってようやく思い至るようになってきた。僕にはすぐ人に話を合わせてしまう癖があって、それはかなりの悪癖で、いろいろな弊害が後になって一気に押し寄せ、曖昧な笑みや過剰な謝罪で対応するしかなくなる。そういう場面はこれまでにも何度もあった。わかったふりをしてしまうのだ。会話の全貌をいち早くつかみたいがために、多少の疑問や謎を流してしまう。全貌にたどり着いたところで、要点をスルーしているので結果「は?」となることが多く、相手も「は?」となる。そうなるともう殺し合いだ。そのせいもあって殺伐とした日々を送っているが、殺伐ついでに勉強もできないとなると、それはやっぱり嫌だ。ぜんぶナシはおかしいでしょ、ちょっとくらい与えてくれ、という思いが尽きることはない。

 

なぜ話を合わせる癖があると、勉強ができないのか、というと、もうそのまんまなんだけど、言葉や文章に対してもテンションだけを合わせてしまうのだ。ふんふん、なるほどなるほど、と頭では思ってはいても、それはいつもの癖からくるリアクションというだけで、なにも頭に残りやしないのだ。そういうことから、資格の勉強などをしようにも、いざ本番を迎えたところで「は?」となる。そんなこんなであらゆる試験には落ちてきたし、「成功体験の乏しい自分」だけが月日とともに強化されていくだけ。もう疲れました。『ぼくは勉強ができない』という小説でも書こうかな。

 

な~~~にが『ぼくは勉強ができない』だ、と大学時代、『ぼくは勉強ができない』 を読んだ僕は思った。函館にある、函館山が望める日当たりのいい部屋のベッドの上に寝そべる僕は、村上龍『69 sixty nine』 の方が断然好きだったのだ。『ぼくは~』の方は、山田詠美の「私の理想のイケてるナマイキボーイ」感に、他の軟弱な男どもも見習いたまえ、という当てつけ臭さを感じ取ってしまい、鬱陶しくてたまらなかった。軟弱な男どもだからだ。一方で『69 sixty nine』の主人公だが、嘘つきで卑怯で軽薄ではあるものの、結局最後まで好きな女の子にキスひとつもできなかった。その一点だけとっても『エクスペンダブルズ2』の冒頭に登場する改造トラックくらい「なんだか」愛おしい。自分の感じた「なんだか」は蔑ろにしたくない。その感情こそ僕だけのものだからだ。当時の僕は、過ぎ去ったばかりの高校時代を振り返りながら、最高の男子高校生を描けるのはいったい誰なのかばかり考えていた。その一環として手にとった『ぼくは~』は苦手だった。主人公はぜんぜん馬鹿じゃなく、むしろ大人さえたじろがせるほど聡明なくせに、それなのになお、みんなに勝とうとばかりしている。端的に言えば全然ダサくないのだ。親父の金玉に帰れ。みんな慎ましくあるべき、だとは思わないので好き勝手やってもらって構わないけど、僕はちょっと遠くに離れておくね、ば~い。そんな小説だった。

 

そもそも男子高校生という生き物がダサくないはずがない。ブームを測る尺度としてすぐ登場させられる天下の女子高生がそもそも絶望的にダサいんだから、男子がダサくないはずがない。女子高生はダサい。おしゃれな服を着ていてもダサいし、髪を巻いてもすね毛剃っていてもダサい。男子はおしゃれしないし髪も巻かないしすね毛も生やしっぱなしなので言わずもがなダサい。極めつけは、ダサいダサくないに必死なところが一番ダサい。これがいわゆる「ダサイクル」というやつだ。石黒正数先生が『ネムルバカ』でそう描いておられた(いま調べたら「駄サイクル」でした)。

 

石黒正数先生といえば代表作である『それでも町は廻っている』 が最終回を迎えた。最終巻である16巻を読んだ僕はしんみり。ほとりちゃんの「夢への第一歩」を描くエピローグの加減が絶妙でとても良かった。あくまで「高校生活3年間」の話なので、大団円!!!すぎないあのラストもちょうど良かったと思います。だって人生はこれからも続くんだもの。

 

人生は続く。僕は勉強ができないし、往年のアイドルは線路に立ち入り、若手女優は出家、工作員が正男を暗殺する。余生にしがみつく生臭いクソジジイどもは、「かつての苦労」を盾に呪いの壁を築き続ける。レッドカーペットの染料はやつらの血で決まり。ニヒリズムを滅多刺しにしよう。僕はもう話を合わせるのをやめる。人との会話では否定から入るし、水だって差せば腰も折る。力ずくで自分の話題に持っていく。自分だけずっと喋る。そんな人間になるくらいなら、真面目に勉強したほうがマシ。

 

 

 

 

 

 

(*^^*) (*^^*) 

 

(ಠ_ಠ)

 

 

 

 

 

血にまみれたテメエ

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気分が沈んだときはどうしたらいいんだろうと毎回気分が沈むたびに考えている。元気なときには実行できるようなことさえままならない。昨日は特にひどくて、とにかく何もしたくなかった。布団の上に横になっている時が唯一まあちょっとマシかなといった程度で、あとはずーっと得体の知れない倦怠感に支配されていた。いままでなら本や映画などに触れて気分の切り替えを図れたところだけど、昨日に関してはそれすらもできず、唸り声を上げながら本を開くも文字が像を結ばない。ページにぎっしり詰められた何百字もの記号をただ眺めているような茫漠たる心地。じゃあ運動だ。そう思い立ち上がって数分ぼーっとしていた。それからまた横になった。やっぱりいま最もしっくりくるのはこの体勢だな、と思ってひたすら臥褥。神経症に対する治療に森田療法なるものがあって、症状への囚われから脱してあるがままの境地を手に入れるため、ひたすら横になる、という治療段階が設けられているのだけど、なるほどこれは効果てきめん。なにもしたくなければなにもしなければいいのだ。変に細かい義務感を積み上げることで手に負えなくなっているのなら放り投げてしまえ。そう思っていたはずなのに、気がつくと寝相の問題か、腰などの骨ばった部分が痛いような気がしてきてもう無理。僕はその場で横になったまま「ふざけんじゃねえクソッタレ!」と叫んで、両足をピンと伸ばした。それから立ち上がり、焼きそばをつくった。焼きそばを炒めながらも、「バカ、この……バカが」と乏しい語彙力で罵倒を続け、不謹慎な行動が授ける高揚を借りて元気になれることを期待していたというのにどんどん胸が悪くなっていった。こんなふうにつくった焼きそばなんて食えるか!そう思って味見をしたら美味しかった。僕はお腹が空いていたのでしょうか。

 

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ところで今日はバレンタインデー。バレンタインデーといえば学生時代のエピソードトークだけど、僕自身これといった思い出はない。というのも、部活に入っていない人間は問答無用で弱者扱いされるド田舎で育ったので、意識すらせずに済むほどなにもなかったのだ。しかし兄がサッカー部だったこともあり、兄のもらったチョコレートを弟と一緒に頬張った経験は何度かあった。その当時から僕は思っていた。所詮、女に見る目などないと。

 

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土曜日、午前中に起床した僕は天気がいいので外出でもするか~と思いながらテレビをつけた。すると「王様のブランチ」がやっていた。相変わらず洒落臭いテンションだけど、それが妙に心地いい朝だってあるのも事実。白湯を飲みながら着替えることもせずのんびりテレビを眺めていた。すると、バレンタインデー前ということもあり、チョコレートのCMに出ている三人娘(広瀬すず、土屋太鳳、松井愛莉)へのブランチ・インタビューが始まる。うひょ~、こりゃいいぞ、と僕は思った。可愛い女の子が大好きだからだ。すると、ブランチのインタビュアーが、三人にそれぞれの名の書かれた札を持たせて「この中で一番モテるのは?」という質問をした。結果は以下のとおり。

 

広瀬すず → 【土屋太鳳】

土屋太鳳 → 【広瀬すず

松井愛莉 → 【広瀬すず

 

これは穏やかじゃないぞ、と思った。僕は女の子同士が仲良くしている雰囲気は大好きだけど、垣間見える歪みは苦手だ。やっぱり嘘じゃん!という気持ちになるからだ。ここでインタビュアーは、広瀬すずに【土屋太鳳】と挙げた理由を聞いた。広瀬すずは「なんかもう、守りたいオーラ全開じゃないですか」と答えた。うるせえ。続いてインタビュアーはほかのふたりに対し、【広瀬すず】を挙げた理由を聞いた。まずは土屋太鳳が答える。「すずちゃんはメールがすごく可愛い」。インタビュアーはすかさず、それはどんな内容だったのか、と質問を重ねる。これには送り主である広瀬すずが答える。「お肉食べに行こうね、とか」。広瀬すず土屋太鳳両名爆笑。そのまま抱き合う。間髪入れずに番組は「ピコ太郎がジャスティン・ビーバーと共演を果たした」という内容のトピックへと移る。

 

本当にいいのかそれで。

 

松井愛莉が一言も喋ってなかった。すず&太鳳が盛り上がっていたメールの話題、それってもしかして、松井愛莉にはぜんぜん関係のない話だったのかもしれない。心なしか、表情も暗かった。土屋太鳳と広瀬すずが仲良さげなのは誰の目にも明らかだが、その影に隠れてしまっていた松井愛莉の姿を見ていると、気が気じゃなくなってくる。僕は知っている。三人でいるときの、一人でいるとき以上の孤独を。「あ、ふたりは頻繁にメールし合う仲なんだ……」、「お肉食べに行く約束とかしてるんだ……」などと、あの場にまったく関係のないはずの僕は胸を痛めていた。広瀬すずのような人間は、確かにいる。言葉にはしないが、態度などによるあたりが強いA行動パターンの人間は確かに多い(A=aggressiveness)。しかしその一方で「無邪気さ」に身を委ねることで、周囲に対する配慮を欠く自分から目を背ける人間も許せない。僕はチャーハンのグリーンピースや酢豚のパイナップルに一度も怒ったことはないが、無神経な言動にあぐらをかいて気持ちのいい思いばかりしている奴を見ると、なんとかして邪魔をしてやりたくなる。いつかの自分を重ねているから……。土曜の朝から嫌な気分になった。その後外出した僕は缶チューハイを手に入れ、GUで790円の紺のスウェットを買った。バカ野郎が。気分は晴れなかった。

 

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じゃあ三人の中で誰が一番タイプなのか?と聞かれれば、広瀬すずと答えるだろう。それとこれとは話が別だからだ。広瀬すずは可愛い。生意気そうなところも魅力に転じている。出演作にも恵まれている。土屋太鳳はこのまま『まれ』とかいう最低な朝ドラで主演を張ったという過去だけを錦の御旗にしている場合ではないと思う。あ、でも『鈴木先生』があったか。ごめん。松井愛莉に関しちゃ、もっとごめん。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のドラマ版であなるを演じていたのは覚えている。でもいまとなっては飯豊まりえのほうが露出多いよね。ごめんなさい。本当にこんな話するつもりじゃなかったんだ。みんなに幸せになってほしい。

 

気分が上がらないときは雑誌などに乗っている有名人の対談を立ち読みすると元気が出る、ということに最近気がついた。たまたまそれで元気になれるってだけの日だったのかもしれないが、対談を読んでいると、自分もその中にまじって一緒に会話しているような気分になり、脳内で「人と会話」という実績が解除されるからだと思う。『文學界』2017年3月号に載っている羽田圭介村田沙耶香の対談が今月のオススメです。朝井リョウとは違い、村田沙耶香さんの発言に対して真摯な返答をする羽田さんが見所です。

 

 広瀬すずと土屋太鳳のあの姿を、僕は忘れない。

 

 

 

 

書き下ろし短編:『白濁を耳に』

 

「う、ゥウッ……グッ……アッ……!」

 

 その少年の放った声は、講義室の静寂にいとも簡単に飲み込まれてしまった。おれはすぐさま言葉を添えることはせず、肌を刺すようなこの沈黙をもって、彼自身に感じてもらうことにする。少年はひどい猫背姿で立ち尽くしたまま、浅い呼吸を繰り返しているが……。

「うん、ありがとう。みんなはどうだったかな? いまの彼の演技を聞いて、どう感じた?」

 いくつも並ぶ白の長机には、大勢の生徒が敷き詰めるように座っている。みながみな、自らの中にある感想を咀嚼するように口をつぐんだり、俯いたりしていた。中にはまじまじとおれの顔を見つめる者もいる。いい顔だ。おれはさりげない微笑みでもって応える。

「そこの君」

 鳴らした指でそのまま指し示すと、その女生徒は小さな声で「ふぇ……」と漏らし、横断歩道を渡る前のように、左右を確認してみせる。

「そう、そこの君です。ポニーテールでメガネの君。お名前は?」

「ひゃ、ひゃい、あのう……渡辺美莉亜と言います。あ! わ、わたし宮崎先生の大ファンで! 大宮ソニックシティのライブにも行って……」

 先程までとは打って変わって、生徒たちからはあたたかな笑い声が沸き起こった。少女は饒舌になっている自分から、はたと我に返り、頬を赤らめ俯いてしまった。

「ありがとう美莉亜ちゃん。とても光栄です。そんな美莉亜ちゃんに質問をひとついいかな。緊張しないでね? いまの彼の演技を聞いて、どんな状況が頭に浮かんだかな?」

「うう……じょうきょう……ですか?」

「うん。なんでもいいんだ。自由に、感じたままを答えてほしいんです」

 彼女はあごの先に指を当て、天井を仰ぐ。伸びた前髪の隙間から覗く眼鏡のレンズが、鈍い光を放った。

「ええっと……えー、なんだろ……戦場?」

 再びあたたかな笑いが起こる。どうやら美莉亜ちゃんは、このクラスの人気者のようだ。おれはついつい、この空間にいるかつての自分を想像してみた。

「なるほど! いいですよいいですよ。戦場?」

「は、はい……若い兵士がいて……そこは戦場で……お腹を怪我してる? そんな姿が浮かびました……」

「あ~。なるほどなるほど。彼は若い兵士で、お腹を負傷している。それで漏れた声がさっきの田中くんの演技、ということだね?」

「は、はい……!」

 おれは手に持っていたメモ【勝気なヒロインに論破され、たじろぐ主人公】を教卓の上にそっと伏せる。

「いいですね~美莉亜ちゃん。まずね、想像力が豊か! これはとっても大切なことでね、豊かな想像力というものは演技にも活きてきます。いいですよ、ありがとう! じゃあ他には? 他にこんな情景が浮かんできたよ~というひと、いたら挙手をお願いします!」

 互いに顔を見合わせ、はにかむ生徒たち。その中の数名が遠慮がちに手を挙げる。素晴らしい。おれは長机の間を縫って歩きながら、「いいですね~いいですよ~、先生とてもやりがいがあります」と笑いを誘った。「じゃあそこの君! お名前と、浮かんだ情景!」

 

「えーと、花村拓人です。浮かんだ情景は……学園ですね。高校というか、そういう感じの。それで制服はブレザーで……あ、これも浮かんで……そのキャラの髪は黒でツンツンしていて、たぶんヒロインからはウニとかそんな感じのあだ名で呼ばれているキャラで――」

 

「石田輝留と申します。わたしも学園が浮かんできました。あとはそうですね、わたしの場合この主人公にはドSな親友がいてたぶん小学校のときからの関係で、あ、関係っていっても変な意味じゃなくいや変な意味でもいいんですけど――」

 

「リドル昌也っす~。あ、そうっす、一応ハーフっす~。自分の場合はアレっすね~。一応最初は学園ものなんすけど、一応ヒロインをかばって事故で死んで異世界に転生したばかりの一応主人公なんすけど、実は意外と一応適応力のあるキャラで――」

 

 気がつくと浮かんだ情景ではなくキャラ設定の妄想を発表する時間となっていた。おそらく一人目の渡辺美莉亜を褒める際に「想像力」というワードを意識して使用したがために、その言葉がみんなの頭の中でひとり歩きしてしまったのだろう。

 未だ教卓の横で猫背のまま立ち尽くし、自分の演技への感想はおろか、各々の勝手な妄想を聞かされている田中くんの気持ちを思うと、不憫で仕方がない。ここで一旦空気をリセットしなければ。特別講師としての腕が試されるときだと思った。

「はい! みんなありがとう! 今年の新入生は想像力が豊かな人ばかりなんだね。はっきり言って先生、驚いてます。先生が通っていた時よりもすごいです。はい。それはそうと! 先ほど田中くんに演じてもらった演技のお題なんですが、ここで改めてね、答えを発表しようと思います。じゃあここは田中くん本人の口から、与えられていたお題の発表、お願いできるかな?」

「え……あ、はい! お題? は、はい!」

「じゃあ……お願いします!」

「う、ゥウッ……グッ……アッ……?」

 再び静まり返る講義室の中心で、おれはかつて監督に何度もリテイクを求められた在りし日を思い出していた。

 

 

 

『劣悪少女隊ぱぴぷ@ぺぽ』の主人公・道明寺タカシ役での大ブレイクをきっかけに業界のメインストリームに躍り出たおれは、その後も勢いを落とすことなく若手声優界を牽引した。声優雑誌の表紙を飾り、メインパーソナリティーを務めたラジオ番組も大好評。デビュー当時からお世話になっていた先輩声優、冨樫桃華に気に入られていたこともあって、声優同士の交流を深める飲みの席にもよく呼んでもらっていた。

「ほんと、優翔くん、大物になったよねえ」

 ピクサー映画のメインキャラクターを演じることが決まった冨樫桃華が銀座のバーで開いた祝いの席にて、おれは彼女からそう言われた。周りにいる誰もが彼女の言葉に賛同し、おれの謙遜は瞬く間にかき消される。

「そんなことないですよ桃華さん。桃華さんの足元にも及びません」

「また~。前もそんなこと言ってたけど、すごいんでしょう? 若手男性声優と言ったら、いまや誰もが優翔くんの名前を口にする時代だもんねえ」

「いやいやいやいや。そうは言いますけどね桃華さん。今度のピクサーだって、メインどころはどうせ芸能人枠だからって誰もが思っていたところの大抜擢じゃないですか。天下のピクサーですよ。ぼく大好きですもん。『シュレック』とか」

「あはは~ほら~! すっかり口も上手くなってるし~! そりゃラジオも人気でるよね、わたしも大好きだもん」

「え! 桃華さん、ラジオ聴いてくださってるんですか?」

「実はヘビーリスナーなんです。うふふ。ラジオネーム【処女膜からやまびこ】。あれはわたしなんだよ」

「ま、マジで……え! うっわ、ちょ、待ってくださいよ、本当ですか桃華さん! まいったなあ……今後メール読むとき緊張しちゃいますよ~ははは」

「ねえ」

「あ、はい」

「桃華って呼んでよ」

「え?」

「桃華」

「…………桃華」

 その晩、おれと桃華はキスをした。

 だがそれっきりだった。

 その数日後、彼女のニャンニャン写真が流出したのだ。相手は、どっかのバンドのベーシストだった。

 

 おれは何日も酒に溺れた。あのキスは一体なんだったんだ。

 女とは。

 頭の中で渦巻く疑問の答えがそれであるかのように酒を煽り、店のトイレを汚し、ほかの客から顰蹙を買った。己の傷を見つめれば見つめるほど、自分がどれだけ冨樫桃華を尊敬していたのかを痛感した。たった一度のキス……その先に待っていたはずの……。おれは彼女相手なら、喉を生業道具とする声優にとって禁忌であるはずのオーラル・セックスだってしたはずだった。喜んでしたに違いない。いまだってしたい。したくてたまらない。オーラル・セックスがしたい。オーラル・セックスをすると、きっと楽しい。オーラル・セックスという救い。オーラル・セックスという秩序。オーラル・セックスという倫理。オーラル・セックスという茫漠。オーラル・セックスというなにがし。オーラル・セックスという……オーラル・セックスとは? スマホで調べてみる。「性器接吻」。オーラル・セックスとは性器接吻。オーラル・セックスこそ性器接吻。オーラル・セックスという性器接吻。

 性器オーラル・接吻セックス……。

 死すら覚悟していた。そんなおれを支えてくれたのは、同じラジオ番組でパーソナリティを務める新垣大輔だった。おれより五年ほど後輩だが、歳は三つしか違わず、人当たりのいい好青年。一人っ子のおれは、彼のことをまるで弟のように思い、接した。彼もまたこんなおれを慕ってくれた。

「宮崎さん、元気出してくださいよ」

 まだ出禁を食らっていない新宿のバーで彼と飲む。こんな場末で、ふたりの人気声優が酒を飲んでいるとは誰も思うまい。思う存分語らった。

「写真が流出……おれはね、大輔くん。この件に関してひとつ思うところがあるんだ」

「なんです?」

「なんでそんなものを撮るのだろう?」

「わかりますよ。ああいう人らは結局見てほしいんすよ。普通出て困るもの撮らないっすもん」

「やっぱり? まさか新垣くんも、撮ったりしてないよな?」

「撮るわけないです」

「彼女はいるの?」

「彼女はいます。これですけど」

 口の前で両手の人差し指を交差させる新垣大輔。なにはともあれ、人と会話をするだけでも、心の風通しは良くなった。

「大輔くん、ありがとう。乱暴に酒を飲むのも、今日で最後にする」

 しかしそうはならなかった。

 おれがやけ酒に溺れている間にも、着実に仕事をこなし、きちんと成果を出していた新垣大輔の人気は、瞬く間に手の届かない高みへとのぼってしまっていたのだ。

 

 

 

「みんな、実は先生、今日のために用意してきたものがあります」

 田中くんを席に戻したおれは一枚のCDをカバンから取り出す。

 みんながおれを見ている。

 おれも生徒ひとりひとりの顔を見つめ返した。

 呼吸は浅い。緊張している? この宮崎優翔が? 

 面白い。

 おれのすべてをかけたプロジェクト。

 その狼煙は、今日この場所で上がるのだ。

 

 

 

 新垣大輔の人気に疑問はない。甘いルックス。芯のある声。表現力豊かな演技。軽妙なトークに、時折出る地元関西の訛り。実際会って接していても、清潔感があり、いつもいい香りがする。肌だって綺麗だ。ヒゲなんて月に数回剃る程度なのだろう。ラジオの収録中に、トークのノリに乗じて抱きついたことがあるが……おっ勃った。男のおれでそうなのだ。彼と絡んだ女性声優に、女性ファンからの殺害予告が届くのも仕方がないと思えよう。それくらい、新垣大輔の人気に疑問はない。でも不満はある。おれだって人間なのだ。並べられた事実を、常に飲み下せるわけではない。そんな不満はラジオ番組中の態度に露骨に現れてしまった。ネットやSNSではおれの不機嫌そうな声色への批判が溢れ、大して年齢も離れていないというのに「老害」とまで言われる始末。

「おれが……老害……?」

 再び酒に溺れた。もうなにもかもをかなぐり捨てたくなった。

 そんなときだった。

 

「君、このまえもここで飲んでいたよね。オーラルセックスがどうのってずっとぶつぶつと言っていたから覚えているよ。悪い酒の飲み方をしている若者がいるな。そう思ったもんでね。いやなに、怪しい者じゃない。いまから名刺を渡すよ、ちょっとまってね、あれどこにやったかな、あったあった、ははは、しまった場所を忘れるとは……私はこういう者だ。話を聞いておいても損はないと思うよ」

 

 その初老の男は、栗原哲哉といった。プロデュースをしている、と言った。ぜひ仕事の話がしたい。栗原は微笑んだ。

「どうだい、宮崎くん。興味はあるかい」

 おれはバーボンを一気に飲み下し、グラスをカウンターに叩きつけるのと寸分違わぬ動きで首肯した。

 

 数ヶ月ぶりに、実家の両親へ電話。

「優翔? 元気かい? すごく活躍してるそうじゃない。母さん、もう年寄りだからさあ、あなたが出てる漫画とか……あ、ごめんなさい、アニメって言うのよね。ほんとうに疎くてねえ。でも頑張ってるんだってねえ。お隣のけっちゃん、もう高校生なんだけどね? あなたの活躍知ってるって。すごい人だって言ってたわよも~泣いちゃって私。あんたが定期預金を勝手に解約したときから母さん思ってたわよ。この子は大物になるって」

 母さん……。

「ほら、お父さんもちょっとは話しなさい。せっかく優翔が忙しい中電話くれてるんだから」

「ああ、はいはい。もしもし……優翔か? 母さんはああ言ってるけどな、父さんはあの日、お前のことぶん殴ってやろうかとも思ったんだ。ははは。でも父さんあまりにもショックでな、動けなくなったんだぞ。ははは。しかしそれがいまや……ああ、そうそう。この前のハワイな……良かったよ。ありゃいい場所だ」

 親父……。

 

 久しぶりに声優専門学校時代の友人、出川との食事。

「おれらの中じゃ、優翔が一番の出世頭だな。アニメも吹き替えも全部チェックしているぜ」

 出川は現在、製薬会社の営業をしているという。

「ところで覚えてるか、優翔。島崎純恋。いたろ、あのヤリマンだよ。あいつ結婚したらしいぜ。相手は戸塚だよ。講師の戸塚。子供が出来たんだってさ」

 おれは言葉を失った。

 今度、そこで特別講師をするよ。力なくそう伝えると、出川は自分のことのように喜んだ。

 

 真夜中にふと目を覚ますと、傍らには愛犬のアチャモがいた。

「あちゃもたん、パパですよ~。パパにちゅーは? ちゅー」

 普段からハウスキーパーに世話を任せっぱなしだったためか、顔のすぐ近くで激しく吠えられてしまう。なんて畜生だ。小型犬の鳴き声は、神経に障る。

「おまえだけは味方でいてくれよ!」

 ウィスキーグラスをフローリングの上に叩きつける。意外と頑丈なもので、割れやしない。ベッドから抜け出したおれは再びウィスキーグラスを手に取ると、改めてフローリングの上に叩きつける。ウィスキーグラスは甲高い音を立てながらフローリングの上を滑り、部屋の隅にそっと盛られてあった、出したてと思しきアチャモの柔らかな糞便にめり込んで音もなく止まった。おれはトランクス姿のままその場に崩れ落ちた。冷たいフローリング。言葉がない。漏れる嗚咽。

「ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……ウッ……グウウ、クッ……ハッ……、ヌッ、グググ……ギイ……アッ、ンンッ……スウウウウウ、ヌハァ……アッ、ヌウウオッ、カッ……ハッ……」

 ふと、自らの嗚咽がある一定のリズムでもって繰り返されていることに気がついた。これも職業病というやつだろうか。悲しむことさえ演じてしまっているとでもいうのか。おれは自らの首を両手で掴むと、渾身の力で握り締めた。やめろ。やめてくれ。おれの本当の悲しみを返してくれ。おれはおれの悲しみを悲しみたいだけなんだ。

 気がつくと、ハウスキーパーのジョイさんがすぐそばにしゃがみこみ、その豊満な肉体で小さくなったおれの身体を包み込んでいた。

「Easy……easy……」

 耳元で囁かれる聖母のアンセムにおれは声を上げて泣き、やがて気を失った。

 気がつくと、閉め忘れていたカーテンの隙間から朝日が入り込み、泣き濡れた顔を照らしていた。

 おれはすぐさま栗原プロデューサーに電話をかける。

 

「ひとつ、企画案があるんですが」

 

 おれの反撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

 学務担当者が用意してくれたラジカセに焼きたてのCDをセットする。

「これ、実はまだどこでもかけてないやつなんです。本邦初公開、ってやつですね」

 講義室内にどよめきが起こった。生徒たちは隣同士で顔を見合わせ、その興奮を共有している。

「といってもですね、これは曲――というわけではありません。みなさんがこれから学んでいく、プロの声優としての演技。その参考になるいわば教材というか、力になれるようなものを真剣に考えて作られたものなんです。ぼく自身、この専門学校であらゆることを学びました。当時の講師に言われたことは、今でもはっきりと覚えています。そんなぼくから、当時の自分に伝えたいこと。それを念頭において作りました」

 おれは再生ボタンに指をのせる。

 この音源の制作は難航した。自分にウソをつかない。それがなによりも譲れないルールだった。栗原プロデューサーとは何度も話し合った。時には衝突することもあったが、おれのこの熱意でもって納得させた。

「顔つきが変わったよ」

 徹夜続きの栗原プロデューサーは、濃いブラックコーヒーを飲みながらそう言った。

 過去の自分に戻れるうちは、人は変われない。

 

 そう信じてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宮崎優翔の! 

『かんたんな感嘆』! 

 みなさんこんにちは。声優の、宮崎優翔です。今日は私宮崎が、声優を志す皆さんのために、様々な感情表現、いわゆる感嘆――の技術を、かんたんに紹介していきたいと思います(笑)。キャラクターに命を吹き込むのがぼくたち声優の、なによりの役割です。様々な感情を理解して、それを表現する術を身につけることで、アニメや映画、ナレーションなど、声優としてのお仕事で活躍することができるようになる……のかも(笑)?

 明日の主人公はテメエ自身!(©『劣悪少女隊ぱぴぷ@ぺぽ』)

  ってなわけで(笑)

 早速いってみましょう!

 

 

 生徒たちからは、自然と拍手が沸き起こった。

 

 

レッスン1 《基礎編》

 【驚き】

  「ンッなァ……?」

 【悲しみ】

  「グッ、うう、つうう……!」

 【喜び】

  「ンッフッ……」

 【怒り】

  「ックゥ……!」

 【後悔】

  「アッ……」

 

 

 みな、息を呑むように音声に聴き入っていた。おれは腕を組み、いまの地位に身を置いてもなお学びに貪欲であるかのような体で、音声が流れるラジカセを細めた目で見つめ続ける。

 

 

レッスン2 《応用編》

 【ヒロインが急に着替え出したとき】

  「なッ……!」

 【屋上から望む街並みが燃え盛っていたとき】

  「な……ッ!」

 【父親が黒幕だったとき】

  「ナッ……!」

 【通学途中に見かけた美少女が転校生として教室に現れたとき】

  「ンッ……ぁ……?」

 【背後の写真立てが突然倒れたとき】

  「ンッ……?」

 【犬の糞を踏んだとき】

  「ヌぅッ……?」

 【腹を殴られたとき】

  「カッ……アハァッ、ハァ……!」

 【顔を蹴られたとき】

  「ヌハアッ! ッカァ……!」

 【腹部への攻撃で吐血したとき】

  「ッ……ポゥあ……カァッ!」

 【惨劇を目の当たりにして嘔吐するとき】

  「んグゥッ……ボロロロロロロロロロロ!」

 【拷問されているとき(我慢編)】

  「グッ……ウウウウッ! ヌウゥウッ!」

 【拷問されているとき(絶叫編)】

  「グァ、がああああああああああああああああああああああああああ!」

 【そのまま覚醒したとき】

  「あああああああああぁぁぁァァァアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

 誰かが唾を飲み下す音が聞こえた気がした。いや、幻聴などではない。おれのプロとしての技術――そのレパートリーの豊富さや繊細な表現力に、誰もが荒肝を抜かれたような顔をしていた。

 そして内容はいよいよ、おれが最後まで決して譲らなかった、執念の賜物とでも言うべき領域へと突入しようとしていた。

 

 

レッスン3 《成人向け編》

 

 

 ざわめきが起こった。

「すげえ」

 誰かの漏らす声が聞こえる。

 

 

 【乳首を責められているとき】

  「ハッ……なアァ……!」

 【局部を触れられたとき】

  「クゥッ……!」

 【オーラル・セックスをされているとき】

  「アァッ……! アア! ハアッ……!」

 【オーラル・セックスをしているとき】

  「じゅるるるるるるるるるるるる!」

 【オーラル・セックスをしぶられたとき】

  「ンッ! ンーッ!」

 【初めての挿入】

  「アッ……ハァ……ァッタ……カイ……!」

 【ピストン中】

  「んはァ! んはァ! んはあッ……ウウウギモチィッ!」

 【絶頂

  「あ、やばい! やばいやばいやばい!」

 【絶頂

  「ゴメンナサッ……ッッッ……!」

 【絶頂③】

  「スッ、スゴィうわっ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ、ワッ」

 

 収録した内容とは異なる音声に、おれは我が耳を疑った。たいへんだ。CDにキズが入っている? あるいはこのラジカセが古いのか。おれは平静を装いながら、しかし迅速にラジカセを小突いた。

 

「ワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッワッ」

 

 音の細かな反復はさらなる加速を見せる。今更ながら、なぜ用意できるものがラジカセだったのか、データファイルではなくCDなのかという疑問が噴出する。しかしここで焦りを見せれば、この状況が招かれざるものであることが生徒たちに周知されてしまう。彼らの神聖な学びの場において、その熱意に水を差す真似は許されるはずもない。

 再度、小突いた。

 

「ワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワア、ア、ア、ア、ア、ア、ウワウワウワウワウワウワウワウワウワウワウワウワWOWOWWOWOWWOWOWWOWOWWOWOWWOWOWWOWOWWOWOWワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワウワウワウワウワウワウワウワウワウワウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ、ウ、ウ、ウ、ウ、ウワウワウワワワウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウワウワ…………

 

 

 講義室は、幾重もの声に包まれた。

 椅子から転げ落ちる男子。出口に向かって走っていた女生徒が彼にぶつかって転倒した。耳を押さえ悲鳴を上げる女生徒もいる。かばうようにして抱きしめる男子の姿も。絶頂時に漏れる声の断片が木霊するこの空間において、もはや平静を保てる者などだれもいなかった。まるで永遠に続くかのような……煉獄。そのリズムは限界まで加速していく。

 だが不思議なことに、おれの心は落ち着いていた。

 平穏、そのものだった。

 混沌に喘ぐ生徒たちのなか、自らの席に着いたまま、力強い眼差しでおれの顔を見つめている生徒がいた。その目には、うっすらと涙が浮かんでいるようにも見える。おれも彼の目を、その魂を見つめ返す。

 田中くんだった。

 おれは鳴らした指でそのまま彼を指し示す。

 彼は喉を隆起させたあと、迷いなく口を開いた。

  

 始めよう。

 おれたちの反撃を。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年1月編)

 

『続・男はつらいよ』(1/1)

 

仁義なき戦い』(1/1)

 

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(1/1)

 

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(1/1)

 

スカイライン‐征服‐』(1/2)

 

イコライザー』(1/3)

 

ミスター・ノーバディ』(1/10)

 

『葛城事件』(1/11)

 

『白鯨との戦い』(1/14)

 

宇宙戦争』(1/14)

 

『ハイヒールの男』(1/15)

 

『スノーピアサー』(1/17)

 

江ノ島プリズム』(1/20)

 

ちはやふる 上の句』(1/21)

 

ちはやふる 下の句』(1/21)

 

県警対組織暴力』(1/31)

 

 

 計16本!