MidnightInvincibleChildren

2017年公開映画ベストワースト色んな賞

 

 

【2017年公開映画ベスト10】

 

 1位 ナイスガイズ!

 2位 ベイビー・ドライバー

 3位 ハードコア

 4位 ザ・コンサルタント

 5位 ローガン

 6位 ゲット・アウト

 7位 T2 トレインスポッティング

 8位 この世に私の居場所なんてない

 9位 哭声/コクソン

 10位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

 

 

 

 

ベスト10選評

 

10位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

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エモい!あらゆるキャラクターにドラマを担わせるその采配力など、ジェームズ・ガンの手腕に胸が温かくなりました。なにより、観ている間ずっと楽しかった。一作目より好きなくらい。

 

 

9位:『哭声/コクソン

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僕は怪談の類が大好きかつ苦手で、受け取ったそのあとにあらゆる文脈が自分の中に息づき、周囲のあれこれをすべて恐怖に結びつけてしまう全自動連想モードに陥ってしまうからなのですが、この映画はそんな各々に芽生える文脈を次から次へと暴力的に錯綜させ、いま自分がどこに立っているのかすら観客に認識させない、その振り回しっぷりがなぜか痛快。ソフトを買ったら『複製された男』の隣に置きたい。

 

 

8位:『この世に私の居場所なんてない』

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映画を観ていて「自分のベスト10にこの作品を入れたいな」と思わせる映画がたまにあるのですが、今年においては今作がそれ。思いもよらぬところまで連れて行ってくれる小さな冒険譚としてもう最高。個人的な話で申し訳ないのですが、2013年ごろから「彼氏から『重い』ことを理由にふられた女の人が『重さ』を失った状態で街をさまよい、あらゆる事件に巻き込まれていく」小説を考えていて、たぶんこの映画のようなことをしたかったんだと思います。悔しい!でも面白い!

 

 

7位:『T2 トレインスポッティング

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こちらも一作目よりも更に好きな続編。前作の「どうしようもない日常との決別」も、いまになって振り返ると全然人事じゃなく、ちょっと憚られる言い方だけど「これって僕の映画じゃないか!」とすら思ったほど。20年後、こいつらみたいになっている確率がおそらくめちゃくちゃ高い僕は、この映画を戦々恐々としながら観終わったのだけど、「物語」に包括されるラストにはとんでもなく眩いものを提示してもらった気分に。僕にとってのベグビーと、おっさんになって再会したときのためにも、とりあえずベルトのバックルに武器でも仕込もうかな。

 

 

6位:『ゲット・アウト

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ダニエル・カルーヤが弟に似ているので、ラストの展開には快哉を叫びました。 前半の、「確実におかしい会話」の連続も面白いし、そこから浮き彫りになる「理解者ヅラした敵」のふてぶてしさ。なにより、持つべきはフットワークの軽い親友という人生訓!

 

 

5位:『ローガン』

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頭を悩ませながらも何度も劇場に足を運んだ作品。『ランボー/最後の戦場』にも似た暗澹とした手触りの先に待つのは、希望としての「物語」で、今年はそういう話が多かった気がします。

 

 

4位:『ザ・コンサルタント

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 殺し屋モノが大好きだからこそ、そのアレンジ方法には口うるさくなってしまうのですが、今作における「そういう話だったのか」に関しては、明らかに悲しい、だからこそ作りての優しい眼差しが響いて、良い悪いを超えて好き。「物語の規模」が僕にはとても温かいものに思えました。それでいてアクションはしっかりハードで今っぽく、見応えのあるものになっていた点も良し。

 

 

3位:『ハードコア』

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いかにアクションで「物語るか」に対し、これだけの工夫とアイディアを誠実につぎ込んでくれたつくり手たちには拍手しかない。顔も見えない主人公をちゃんと好きにさせる、勢いに負けない優しい演出の数々に感涙。『ドント・ストップ・ミー・ナウ』は皆殺しの合図。エンディング曲も最高!

 

  

2位:『ベイビー・ドライバー

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冒頭のカーチェイスからまんまとride-onしました。各キャラクター、みんなが好き。エドガー・ライトに関しては、いままではそこまで好きというわけではなかったけど、振り返ってみるとしっかり落とし前をつけさせてきた人なんだなと痛感した次第。最高に面白かったです。劇場配布ポスターがほしすぎてTジョイに問い合わせたくらい。

 

 

1位:『ナイスガイズ!』

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ヘラヘラと軽快に悪を挫く最高のやつら。この映画みたいな感じで生きていきたいよ、と痛感した2017年のベスト1。冒頭、謀殺されたポルノ女優の亡骸に上着をかけてあげる少年のシーンに代表されるような、そこはかとない優しさ、正しくあろうとすることの尊さを描いている点も捨て置けない。ままならないことが前提のような世界でも、たまには成功するんだよ!

 

 

 

色んな賞

 

【ベストガイ賞】

 

『ハードコア』より

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ヘンリー

エスカレーターで倒れかけた女性を支えようとする一瞬の仕草、共闘シーンで見せる力のこもったOKサイン。不意に脳裏をかすめる幼いころの記憶の「その先」など、一言もしゃべらないくせに僕はこいつがたまらなく好き。 

 

 

【ベストガール賞】

『ナイスガイズ!』より

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ホリー・マーチ(アンガーリー・ライス) 

娘、最高!

 

 

 

 

【ベストマブダチ賞】

 

ゲット・アウト』より

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ロッド(リル・レル・ハウリー)

世の中には「友人の恋人」問題というものがありますが、彼はその問題における正しいスピリットを忘れず、感動的な行動力を見せてくれます。こんなダチに、私もなりたい。

 

 

 

【ベスト無職賞】

 

『この世に私の居場所なんてない』より

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トニー(イライジャ・ウッド

犬の散歩と「忍術の練習」ばかりしている謎の男。これがまた頼りないようでいてそうでもなく、かといって何かを任せるにはやっぱり不安な、絶妙な塩梅の男で最高。

 

 

 

 

【ベスト楽曲賞】

 

『ハードコア』より

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『For The Kill』(Biting Elbows)

圧倒的爽やかさ。

映画ではエンドロールで歌詞も表示されますが、これがまたいい。

 

 

 

2017年劇場公開作ワースト

 

ジョン・ウィック:Chapter2』

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ワーストに上げるほどかって気もするけど、前作の頃からそこはかとない乗り切れ無さを覚えていて、二作目でそれが決定的になったことがショックだったので選出となりました。アクションに関してはリアルな長回しファイトもいいけど、もっと大胆な演出による「増し」込みでのメリハリがほしい。なにもオリヴィエ・メガトン級に割れよということではないですが、全体的に瞬間最大風速的興奮に欠ける印象となりました。 駅の雑踏の中、サイレンサー付の銃でこっそり撃ち合うシーンはものすごく笑ったけど、それすらもやもやの一部となるくらいチューニングに困る映画。 好きなジャンルだからこその過敏さに飲まれてしまったのかも。といっても『3』は観ますけどね。

ちなみに「しまった~」と感じた度合いで言えば『銀魂』の方が圧倒的でしたが、福田雄一作品というコンテンツとの相性な気もします。福田雄一作品は本当に合わないけど、ムカつくと同時に世界の豊かさのようなものも感じるので、世界的にろくなことがなかった2017年、僕は『銀魂』を肯定したいのです。

 

 

 

そして2018年……

 

 

【2018年公開映画予告編賞】

 

キングスマン:ゴールデン・サークル

www.youtube.com

いくつかバージョンがありますが、チャニング・テイタムが「Fuck Yeah!」と叫ぶバージョンがとにかく最高。心が健康になります。

 

 

『レディ・プレイヤー1

www.youtube.com

有無を言わせぬ予感の波に、ただただ高まり、震えます。

 

 

『SICARIO2:SOLDADO』

www.youtube.com

大将、絶望を一丁!

 

 

 

 

 

 

ということで2017年もこれでおしまい!来年も楽しい時間が多いといいですね。

 

 

adios!

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『バイオハザード リベレーションズ アンベールドエディション』の"レイドモード"に取り憑かれた男

 

もう何度も何度も書いているけど、ここのところ映画や小説といった「物語」に触れてもまったく集中できないので、もっぱらゲームに没頭している。それも『バイオハザード リベレーションズ アンベールド エディション』に入っているミニゲーム「レイドモード」しかやっていない。そこで今日は、僕が異常なのではなく、このゲームが本当に面白いということを伝えるため筆を執ります。

 

 

ある夏の日

今年の夏に実家からXBOX 360を送ってもらった僕は、大好きなバイオシリーズの未プレイ作品『バイオハザード リベレーションズ アンベールド エディション』を購入。2013年発売の作品だ。

  

 

 

ちょうどお盆休みの時期だったこともあり、キャンペーンモード(いわゆるストーリーのある本編)を三日ほどかけてクリア。第一作目から何度も登場しているジル・バレンタインクリス・レッドフィールドとの再会に微笑みながら、『5』に至るまでの出来事を知る。中身に関しては『6』ほどトゥーマッチじゃなく、「そこを歩くという恐怖」が久々に味わえたのでよかったよかったと思った。次いでミニゲームである「レイドモード」のプレイを開始。それがすべての始まりだった。

 

 

 

「レイドモード」とは

 

 

レイドモードは、60ものステージ+最難関ステージ「ザ・ゴーストシップから成るミニゲームだ。更にステージは以下の3つの層に分けられている。

 

DARK stage1~20 (勢いで突破可能)

DEEP stage1~20 (易しいステージに戻って装備を整えながらの突破)

ABYSS  stage1~20 (ほぼ死ぬ)

 

武器とキャラクターを選択して各ステージごとに設けられている「クリア条件」を達成すればいい。クリア条件は、主に「~に到達せよ」とか「◯◯を倒せ」などで、達成すると経験値とボーナスポイントが得られる。経験値をためればプレイヤーのレベルが上がるし、ボーナスポイントを使えば武器の強化を図れるのだ。

 

ステージによって異なるが、1ゲームあたり3分~といった具合なので、何気なく始めると経験値やポイント欲しさから、わんこそばのように止めどころを見失った。ステージを進むごとに難易度も上がるので、こっちもムキになる。僕はどちらかと言うと難しいゲームよりも、爽快な気分で強い銃を撃ちまくれるものが好みなんだけど、とはいえシリーズを追ってきた身としては『ザ・マーセナリーズ』などの達成感がどれだけ美味かを知っているので、ついつい連日数時間、レイドモードに熱中した。

 

そんなこんなで気がつけばABYSSに足を踏み入れていた僕だったが、その難易度に悪戦苦闘。こうなったら武器をとにかく強化したり、レベルをマックスの50まで先に上げたうえで堂々クリアすればいい。そう思いボーナスポイント稼ぎに没頭。完全な作業と化した。するとどうだろう。日々心が死んでいく。まるで人生そのものだ。

 

 

トリニティボーナス

ボーナスポイントが貯まれば心も潤う。最善の使い道をきちんと考え、武器強化の順番や取捨選択でウンウン唸りながらも、うまくいけばそれに応じて生き延びる確率も向上していく。しかしお気に入りだからとポイントを大量に費やして強化していた武器があるのに、レベル上げにともなって標準時から高性能の更にいい武器が手に入ってしまい、なんだかお金を無駄にした気分だなと後悔が頭をもたげることも多い。調子が狂うと、ミスが増え余裕が消える。苛立ちや絶望から、泣き叫んだことも少なくない。

 

このレイドモードのやりこみ要素には恐ろしいものがあって、ステージを「推奨レベル以下」「ノーダメージ」「敵全滅」でクリアすると「トリニティ・ボーナス」なるものが得られるのだ。もちろんボーナスというくらいだから、ボーナスポイントだって多く得られるし、「レジェンダリーパーツ」と呼ばれる武器の強化パーツまでもらえるのだ。例えば武器のリロードがリロードアクションなしで行われる「オートローダー」(素早い敵に囲まれている時のリロードアクションは命取り)や、所持している全種類の弾薬を使用できる「グラトニー」など、使用すると戦力が段違いになること間違いなしの垂涎アイテムがある。

 

でも当然のようにトリニティ・ボーナスの達成は難しい。特に難易度が高いのは「ノーダメージ・クリア」だ。ちょっと当たるだけでもダメなのだ。例えばクリアまでの所要時間が30分ほどのステージでトリニティ・ボーナス獲得に励むも、最後の最後でピチピチ跳ねてる魚の化物が腕をかすめようもんならすべてが水泡に帰す。それはあまりにも悲しいことなのだ。

 

このゲームはオンラインで協力プレイをすることもできる。ネットを見た感じでは、みんなオンラインで協力プレイをし、トリニティ・ボーナスを達成、ゴキゲンなアイテムを手に入れているようだ。しかし僕のXBOX 360は古いタイプのやつなので、外付けの無線LANアダプターを取り付けなければオンラインに繋げない。有線ならできるらしいけど、内蔵型の360もあるというのに今更外付けアダプターを買う気になれない。だったらXbox ONEかPS4を買う。

ということで世界と繋がることもなく、僕はひとり黙々と挑戦を続けているのです。

 

※現時点(2017/12/9)で僕がABYSSでトリニティモードを獲得できたステージはstage1とstage9だけです。ふざけんじゃねえっての

 

 

 ザ・ゴーストシップ

そんな僕だが、この4ヶ月ほど飽きることもなくプレイを続けた結果、レベル50に達することができた。DARKからABYSSまでの全60ステージもランクSでクリアした。

それでもまだ達成できないことがある。

それは最難関ステージ「ザ・ゴーストシップ」のクリアだ。

このステージ、なにがそんなに難しいかというと、まずアイテムが出現しない。つまりスタート時に所持している武器弾薬回復アイテムだけで乗り切らなくてはならない。

もちろん対策はある。武器に装着する改造パーツには、「アモマグネット」や「ハーヴェスト」、「マジックポケット」、「コルヌコピア」といったアイテムの出現率をアップさせたり、一定時間経過すると弾薬を数発回復したりといった、魔法のようなものもあるのだ。

しかしそれで安心するにはまだ早い。そもそも出現する敵の数が尋常ではないからだ。さらに終盤では、高レベルの敵が同時に大量出現。魑魅魍魎相手に大立ち回りを強いられるだけではなく、連続してボス戦をこなさなくてはならない。現時点での僕の所持している武器のスキルなどでは無理だ。弾だってすぐ尽きてしまう。なのでここ最近はまたボーナスポイントを貯める日々が続いている。作業モードだ。早く最強になって大暴れしたい。そんな思いが僕を突き動かす。

 

 

レイドモードの好きなところ

最後に、今後も長く付き合っていくであろうこのゲームの、個人的に感じる魅力も挙げておこうと思う。

 

①キャンペーンモードでは使用できないキャラで遊べる

個人的には女性キャラしか使いたくないんだけど、能力値などの問題から「キース3」を好んで使用している。ナイフではなく二本の短刀を振り回すので、弾の節約にちょうどいい。「ザ・ゴーストシップ」のアイテム回収プレイの際はもっぱらこいつ。吹き替え版だと小野大輔の声でしゃべります。

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ジェシカ2のきわどさ

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じゃあ女性キャラなら誰が良いかと言われれば、もちろん全員好きなのだけど、特に印象深いのは「ジェシカ2」。エロいとかを通り越してどうかしている。そもそもこんなに露出していたら怪我の危険性とか感染率とか馬鹿みたいに上がるはずだけど、そんなことお構いなしのふてぶてしさにやられます。吹き替え版だと水樹奈々の声でしゃべりますよ。

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③強化した武器の爽快感

色々ありますが、セミオートタイプのスナイパーライフルであるPSG-1に「フルバースト」と「オートローダー」を装着し、圧倒的な弾幕でぶよぶよのスキャグデッドを撃ちまくっているときがとても楽しいです。

 

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④武器タグ「ライトウェイト」

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武器の中にはタグ付きのものもあり、それぞれ特徴がある。僕は中でも「ライトウェイト」というタグが好きで、このタグの付いた武器を持っていると移動速度が早くなるのだ。根がせっかちにできているため、ゲームを操作しながら「もっとはやく走れよ!」と激昂することも多いのですが、そんな気持ちの悪い自分と向き合わずに済む最高のタグです。

 

 

レイドモードでマジギレした瞬間

ついでなのでこちらも挙げていきたいと思います。

 

①レジェンダリーパーツ「レベルキャンセラー」を手に入れるためABYSSのstage9に挑戦するもピチピチ跳ねる魚の化物に接触して一からやり直さなくてはならなかったとき

 

②レジェンダリーパーツ「レベルキャンセラー」を手に入れるためABYSSのstage9に挑戦、見事達成するも「レベルキャンセラー」ではなくしょぼいアイテムしかもらえなかったとき

 

③攻略法を学ぼうとネットのプレイ動画を漁るも、うp主が当たり前のように「オートローダー」や「グラトニー」を装着した武器を使用していたとき

 

④即死攻撃を回避したつもりが回避できずに即死したとき

 

⑤ザ・ゴーストシップのアイテム回収リタイアプレイを何十回と試みたにも関わらず、「オートローダーⅣ」と「グラトニーⅢ」しか手に入っていない現状を振り返ったとき

 

 

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 みんなも『バイオハザード リベレーションズ アンベールド エディション』のレイドモードをやりましょう。PS4、XBOX ONE、NintendoSWITCHでも出てますよ。

 

 

 

 

 

 

ふたり映画のススメ

 

 

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gingerweb.jp

 

先日、Twitterにてある記事が賑わった。ひとりで映画を観たいけどちょっとハードル高く感じているアラサーシングル女性に向けて書かれた記事なのだが、これが一部で炎上したのだ。たしかにとても野暮な話ではある。余計なお世話は人を苛つかせる。とはいえ、そもそもが「ひとりで映画を観たりもしたいけど、ちょっとハードルが高い」と思っている人向けの記事っぽいので、僕自身、特に腹が立つとか、腹を立てている人に腹が立つとか、そんな両者をみて笑うなどはできない。それは単に僕が論理的な一線を強く意識しているとかそういうんじゃなく、ここのところなんだか憂鬱で、ふさぎ込みがちで、あれだけ大好きだったいろんな創作物に触れることすら億劫になり、自分でも得体のしれない何か、それこそ『ゴドーを待ちながら』のゴドーにあたるものをただ待ち続けているかのようなこの漫然な日々に囚われてしまっているからに他ならない。以前なら腹を立てていたようなことに遭遇しても「そうは問屋が卸さない」とは思わなくなった。

 

でも僕は昔から、映画は絶対に一人で観る派だったのです。中学のころまでは友人と映画館に行くことを楽しみとしていたのだけど、あるとき漠然と「みんなそれほど映画が好きなわけじゃないっぽいぞ」ということに気づいてしまい、高校に上がってからはひとり映画のイージーでドープな味わいにどっぷりと浸った。どうせ映画館で観るならR指定じゃなきゃ嫌だと、チャレンジングな鑑賞をのびのびと行うことができたし、余韻に浸るための散歩も自由。僕が通い詰めていた地元の映画館は、その真後ろにきれいなビーチがあったため、よく白い砂浜に腰掛けて海を眺めながら「幸せだなあ」とため息をついていた。気分はすっかり若大将なのである。

 

そんな僕だが、高校3年生の冬に一度だけ、クラスメイトと映画を観にいったことがあった。その男子は運動部で、気さくな人柄から男女ともに人気があった。モテる男子高校生というのは、自尊心の暴走をコントロールできないのか、基本的に鼻持ちならないやつばかりだったというのに、そのクラスメイトは二枚目寄りの三枚目といった風情の、人気も納得、快男児だった。

 

そんな快男児からいきなりEメールが届いた。「今度いっしょに映画でも観に行かん?」と書いてあった。僕は送り先のメールアドレスを確認したが、僕だけにしか送信されていなかった。うわ、マジか。サシで映画を観に行かないかとは、どういう風の吹き回しなんだ。そう思った僕だが、もちろん誘いにのった。簡素な文面からなんとなく、卒業間近の愛惜を感じとったからかもしれない。それに僕は日頃から観た映画の面白かった部分などを彼に誇張して伝える習慣があったので、僕を誘うなら映画だろうという、彼の心遣いも感じていた。僕らは来る土曜日にリドリー・スコット監督の『ワールド・オブ・ライズ』を観に行くことにした。

 

映画を観終わった僕らは、真冬の曇天の下、あてもなく歩いた。映画は面白かったけど、ぶわーっとはしゃぐような内容でもなかったため、オープニングの大爆発シーンと、ディカプリオがテロリストに捕まって金槌で指を叩き潰されるゴア描写に話題は終始した。学校ではよく話すけど、こうやって外で、しかも二人っきりで話すことなんてこの三年間一度もなかったんじゃないかと思った僕は急に緊張して、なにを話していても収まりの悪さを感じていたが、たまたま見かけた雑貨屋に入って仮装用のカツラなんかをかぶっているうちにどうでもよくなってきた。

 

それから僕らは同じ高校のOBがバイトしているラーメン屋で夕食を済ませ、バスに乗って帰った。三年間の思い出とか、今後についてとかを深く話したわけでもなく、本当にそのまま「また月曜に」と解散。当時の僕は映画をひとりで観ることを半ば信条のようにしているところがあったのに、その日はふたりで映画を観れたことが思いのほか響いていて、意外と悪くないじゃんと思ったりもした。

 

つまりあの感じを希求し、でも得られずに悩んでいる人たちに対して、新たな選択肢を提示する意味で書かれたのが例の記事なのかもしれない。そう思って再度よく読んでみたら、どちらかというと「他人から寂しい人と思われることが嫌な人」向けのおせっかい記事に思えてきて、もうどっちでもよくなりました。あえてひとりを楽しむもよし、自分なりの策があるのなら実行するもよし、ひとりがいいというのならそのままでもいい、それだけの話なのだ。だって僕ら程度の能力からすれば、この世界はあまりにも広大で複雑で、だからこそ自由でもあるのだ。届ききらないゆえの自由。でももちろん自由じゃなくたっていいのだ。甘んじて受け入れるのも、抗うのも、どっちつかずで悶々とするのもいい、もうなんだっていい。例えば僕の好きな曲で『地獄でなぜ悪い』という曲があって、知らない人からすれば「え、地獄とかいやだ」と思うかもしれないけど、それをあえてタイトルで高らかに宣言することで、逆説的にエンパワメント効果の獲得に成功していると思う。歌っている人の名前はちょっといまど忘れしちゃったんだけど、グリコ森永事件の似顔絵にちょっと似てる、とても人気のある男性シンガーです。ちなみに僕は『SUN』や『恋』という曲も好きなのでオススメです。

 

 

 

 

 

note.mu

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年11月編)

 

 

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『マリアンヌ』(11/4)

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Amazonプライムビデオで鑑賞。小さいころの「洋画」の感触を思い起こすような一本。超面白い、というか妙に心地良い。ゼメキスの演出はもちろん、スティーヴン・ナイトの脚本による後味も好き。ってことで『カサブランカ』も観なきゃ。

 

 

 

『トリプル9/裏切りのコード』(11/11)

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Netflixで鑑賞。豪華キャストと手堅い演出。ずば抜けて痺れるわけじゃないけど、ほしいものはくれる感じ。なのに本命にはならない感じ。ディテールで光る点は山ほどあるにもかかわらず……という不思議な映画。

 

 

 

『淵に立つ』(11/11)

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Netflixで鑑賞。見入った。浅野忠信というブラックホールを中心に、引力の狂った登場人物たち。面白い。

 

 

 

『マッドタウン』(11/17)

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Netflixで鑑賞。こういうテンポの映画は劇場で観なきゃなあと思った次第。食人族ジェイソン・モモアカルチャー・クラブの『カーマ・カメレオン』を聴きながら女の人をポキッと締めるシーンを観て、向こうの人の『カーマ・カメレオン』像について考えてしまう。『ザ・コール』でも変態殺人鬼が拷問の際に『カーマ・カメレオン』を流していた。物騒な雰囲気とはかけ離れている曲調だからこそ映えるってことじゃないの?と思っていが、この映画において、夢を抱いてアメリカに移り住むも荒野の食人族に成り果てたジェイソン・モモアのキャラクターがこの曲を聴いているという文脈はなかなかグッと来る。やつにとってのカーマはアメリカのことなのかもしれない。キアヌは罰されない『ノック・ノック』野郎といった感じで、本当に弱そうなイモータン・ジョージム・キャリーにはまったく気づかなかった。また来年とか観ます。主役の子がタイプです。

 

 

  

フェア・ゲーム』(11/26)

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Netflixで鑑賞。同監督の『バリー・シール』が面白かったので、過去に撮られていた実録物として鑑賞。知らなかったけど、あんまりな話にフォース憎悪が加速。責任を細分化することで罪悪感も分散し、今後も人々はしょうもない理由で死にまくるんだろうな、という暗い気分に。それでも毅然として立ち向かうことを選んだ夫婦の姿が塞いだ心に風穴を明けてくれた……気もする。

 

 

 

探偵はBARにいる』(11/26)

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テレビでやってたので観ていたけど、寝落ちしちゃったのでNetflixで再鑑賞。 大学時代は映画を観るために深夜バスに乗って札幌まで繰り出したりしていたので、町並みが映るだけで感慨深い。心地の良い塩梅のエンタメノワール。正月とかにだらだら観たい。

 

 

 

『タッカーとデイル/史上最悪にツイてないヤツら』(11/27)

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Netflixで鑑賞。ホラーの文脈を逆手に取ったコメディ。楽しい。ただあの使い方するなら保安官の銃はオートマチックタイプにすればいいのに……

 

 

 

WHEELMAN』(11/28)

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 Netflixで鑑賞。ゲッタウェイドライバー版『オン・ザ・ハイウェイ』のような映画。一夜の物語というタイトさと、派手すぎない抑えた展開、ラストのフランク・グリロの表情など、なんだか忘れがたい映画。1時間半という点も(*^^*)。

 

 

 

以上、8本。

 

気分が散漫かつ鈍麻な月だったので、物語に触れるのが億劫でした。

12月は30本とか観たいな~(*^^*)

 

 

 

 

今年のエモかった瞬間ランキング42位

 

 

 

駐輪場で同じアパートに住んでる東南アジア系の男女に会った。交際してるのか結婚してるのか定かではないけど、たまに見かける人たちだ。後方に立つ僕に気づかない様子の2人。不意に女性の方が男性のほっぺにキスをした。続けてお尻を撫でた。かと思えば、そのまま股の間まで手を伸ばして金玉のあたりを触りはじめるので、僕はどんぐり眼のまま固まった。男性の方は黙々と自転車に鍵をかけていてるだけだ。女性がようやく僕に気づいて、恥ずかしそうに笑ったあと「こんにちは」って言うもんだから、僕も「こんにちは」と返した。急いで横を通りぬけ、自分の部屋へと向かった。不思議とバツの悪さは希薄だった。

 

二階堂ふみそっくりな笑みが、僕をいつまでも見ていた。

 

 

 

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あれもこれも面倒くさい/『「狂い」の構造~人はいかにして狂っていくのか?~』

 

 

僕は本当にTwitterが大好きなので、眠れない夜なんかはバズったTweetにぶら下がる異常なテンションのアカウントを片っ端からブロックすることで充足感を得ている。一方で、ギョッとするような事象にぶつかることも多々ある。はっきりと違和感を覚える言動ややりとりだって、当然のように、結構な確率で揺蕩っているものだ。

 

僕だって自分の部屋の中で全裸のままウロウロすることがあるが、仮に部屋が人通りの多い道路に面した1階で、かつ窓も開けっ放しの状態だったらさすがに躊躇う。でもそれがまったく気にならない人もいる。他者という存在の得体のしれない側面に触れたときひとは緊張するが、時に僕はその緊張を恐怖に近いものとして受け取っているのかもしれない。

 

四年前に読んで大変感銘を受けた本『「狂い」の構造~人はいかにして狂っていくのか?~』を再読した。実家に帰った際にまとめて持ってきた本の中に含まれていたのだ。この本は小説家の平山夢明氏と精神科医春日武彦氏が対談形式で語る「狂気」についてのあれこれが収められている。ほとんど雑談といった雰囲気なので、半ば乱暴とも思える勢いの良さで進んでいくところもあるのだけど、ふとした瞬間に瞬間最大風速を喰らう箇所が飛び出してくるので退屈しない。むしろ面白いがゆえに心が忙しなくなる、そんな本だ。

 

 

この本は基本的に、「面倒くさい」という感情は「狂気の孵卵器=おかあさん」という視点で貫かれている。目の前に危険が迫っていても「面倒くさい」という感情を優先してしまい解決策をとらない人は、どういうわけか結構な割合で存在する。被害を受けることと解決策をとることでは、明らかに後者のほうがまだ楽なはずなのに、優先順位があべこべになっているのだ。そのいびつな状態はさらなる悪い状態を招きかねない。ここで出てくる平山氏の知人の例が興味深い。

 

平山 知り合いで、レンタルビデオを10ヶ月返さなかったヤツがいるんだけど、延滞料で16万円ぐらい取られたんです。不思議なのは完全に忘れていたわけじゃなくて、彼はいつも「返さなくちゃ!」と青いビニールケースを見る度に思ってるんです。そこでテープがすべてあれば返しに行くんだけど、残念なことに6本借りたうちの1、2本だけちょっとどこかに紛れてわからなくなってしまった。だから気持ちとしては、「返さなくちゃ」と焦るんだけど、まずは探すところから始めないといけないわけで、そうなるともう、やっぱり面倒くさいから……。

 

 確かに常識的な対応とは程遠い話ではあるが、ちょっとだけ耳が痛くもある。というのも、ここ最近ネットなどでよく目にする「タスクの先送り」が当てはまる例にも思えるからだ。それこそ僕自身も陥ってしまいがちなことなのだけど、ここで大切になってくるのはバランス感覚だと平山氏は続ける。

 

平山 バランス感覚というのは個人個人では成り立たない。個ではないですよ。例えば、黒いか白いかというのは、黒があったり白があったりするからわかるのであって、黒しかない世界だと「俺って黒すぎる」みたいな考えはまったく成立しない。で、逆に「いや、おまえは白いよ」と言われるかもしれないわけで。

 結局、比較対象である他者とのつながりみたいなものを意識に刷り込んでいないとバランスが成り立たない。心の天秤がない状態になってしまう。

 

レンタルビデオ延滞を例に考えたとき、天秤の片方に「面倒くさい」、もう片方に「延滞料金のことやお店にかかる迷惑」を置く。本来であれば、どちらかに傾くことはあれ「面倒くさい」側に振り切ってしまう前にバランスをとろうと重い腰を上げたりするものだ。しかし、それでも動かない人がいたら?もはやその天秤すら持たない状態の人間がいたら?

 

平山氏は人間のそのような状態を「バルンガ病」と呼んでいる。

 

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バルンガとは『ウルトラQ』に登場する風船怪獣のこと。自我やプライドといった個の部分が不健康に肥大化している状態のことを、バルンガに例えてそう言っているっぽい。

 

春日 謙虚さは「ゆとり」がないと生じないもんね。狂った人はそれなりに理屈はあるんだけれど、それでもう頭のなかがいっぱい。あの目一杯さが周りを圧倒するよね。

 

 

 

とまあこんな感じで、面白おかしく狂気について語らう中で、核心に触れるような発言もテンポよく飛び出すので興味が途切れない。平山氏や春日氏の潤沢な引き出しから飛び出す様々な事例もインパクト大だし、作家ならではのユーモラスな喩え話が絶妙にテーマを補足してくれて気持ちもいい。

 

中でも僕が好きなのは、「第二章 バルンガ病の人々」で出てきた“言葉”についての話だ。春日氏は「理不尽な行動を取るときの理由」についてこう述べている。

 

春日 単純に言葉に取り憑かれることがあるんじゃないかと思うわけ。万引きなんかでも、たまたまさ、「万引き」という言葉なのか、あるいは「もったいない」という言葉なんだか知らないけどね、なんかそういう言葉だけがもう、キャッチフレーズみたいになって、それで実際にやっちゃうとか(中略)なんかそういうことってあるんじゃないかという気がするのね。

 

平山 「言霊」ですよね。結局、何かの言葉によって、非常に雑に、ランダムにばらけていたものが、キュッと締まるわけじゃない。

 

自分の行為を正当化するキャッチフレーズを見つけると、人はその言葉に縛られて行動しているように見える。結局はここでも「絶えず考えること」を放棄した「面倒くさい」が顔を覗かせる。このように人を捕らえる言葉の中でも、とりわけ強力なものがあるという。それは「やっぱし」だ。

 

春日 妙な具合に調子が上がってくるとさ、すべてが「やっぱし」っていう言葉に駆動されていくわけ。あらゆることが「やっぱし」で、例えば電車乗り遅れても、「やっぱし」でさ。そうすると世界はドミノ倒しみたいに……。

平山 しかも、「やっぱし」だから、「こうなることは俺は予測はしていたんだ」って?

春日 そうそう。

平山 諦観がありますよね、「やっぱし」には。

春日 何やっても「やっぱし」になっちゃうから、ひでえことになる。

平山 ほんと、ほんと。

春日 だからその「やっぱし」ってのは、俺、なんかグッとくるものがあったね。 

平山 「やっぱし」っていうのも、要するに思考停止させてるんでしょう?

春日 うん。思考停止はさせつつも、何かものすごい吸引力がある言葉じゃない?

平山 ちょっと自分たちも使いそうだよね。

春日 でしょう? 車で人を轢き殺して、「やっぱし」とか言いそうじゃない?

平山 「俺、やるような気がしてたんだよ」みたいなね。だから俺のせいじゃねえよって。これは誰かにさせられたか、何か大いなる秩序にハメられた結果であるんだ。

 

この会話を読んで背筋を凍らせるのは僕だけではないはずだ。

 

 

この他にも本書には興味深く、愉快でエグい話がたくさん詰まっている。ざっと振り返ってみても

 

  • 人殺しの見る世界は画素数が少ない説
  • 選挙に出る=躁病
  • もったいないは人を狂わす
  • ケツ穴に高射砲の弾を入れた男
  • アウトレイジ』の処刑シーンのモデルとなった自殺
  • 新幹線に轢かれると人は粉になる
  • 殺人鬼には嗅覚の鈍い人間が多いのか

 

などなど枚挙にいとまがない。

さらには先月Netflixで配信されたデヴィッド・フィンチャー製作のドラマ『マインドハンター』にも登場する殺人鬼エド・ケンパーを始めとする世紀の人殺したちにまで話は広がる。出版されたのが2008年といまから約10年も前ということもあり、発達障害などに関する言及の範囲がやや狭く感じるところもある。それでも得体のしれない、雑な空気の蔓延をひしひしと感じる今日このごろ、「狂気」理解の第一歩として本書を読んでみるのもいいかもしれない。

 

個人的には、「夜の公園で見た亀の甲羅と謎の女」の話が、ホラー作家平山夢明氏の本領発揮といった趣の話で最高でした。

 

 

 

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年10月編)

 

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

 

 

『マギー』(10/2)

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Netflixで鑑賞。こんな暗い話だったの!?と愕然としました。義母の扱いが、父性強調のためにぞんざいに感じられますね……

 

 

 

『恋人たち』(10/3)

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Netflixで鑑賞。劇場鑑賞以来だけど、三者三様が見せる届かない相手への独白と、その独白を拾おうとする視野の外にいた人たちの存在が熱く胸を締め付ける。

 

 

 

『ボーダーライン』(10/5)

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Netflixで鑑賞。相変わらずエミリー・ブラントの扱いが酷すぎるが、デルトロのモラルの向こう側に行ってしまったかのような闇のような目がたまらない。悪魔のような相手に悪魔のような制裁を下す、そんな私怨すらも巨大なパワーに管理されてるという徒労感。あとなんだかんだヴィルヌーヴは外連味の人で、そこが好き。

 

 

エクスペンダブルズ3/ワールド・ミッション』 (10/10)

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Netflixで鑑賞。 劇場で2回観た際は血が出ない、アクションのカット割りが見づらいなどで不満でしたが、改めてみると後半のドンパチも大まかなアクションの流れがちゃんと連ねられていて、グンと好きになりました。良い!

 

 

『ヒーロー・ネバー・ダイ』(10/14)

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Netflixで鑑賞。最高。恥ずかしげもなくエモい。そこがとてつもなく良い。

 

 

 

グリーン・インフェルノ』(10/14)

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Netflixで鑑賞。丁寧だなと感じる点はわかるけど、好きではないといった感じ。イーライ・ロスの映画はちょっと苦手かもしれません。

 

 

 

アウトレイジ ビヨンド』(10/18)

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レンタルBlu-rayで鑑賞。初見時は話の筋を見失っていましたが今回はちゃんと追えた!目をガン開きした桐谷健太と塩見三省、ジャージ姿の三浦友和が特に良い。

 

 

猿の惑星:新世紀 ライジング』(10/22)

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レンタルBlu-rayで鑑賞。深夜のバルト9でウトウトしながら観て以来でしたが、いい。戦車の砲台視点で猿たちの突撃を見せる画が最高。

 

 

 

ザ・コンサルタント』(10/23)

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Netflixで鑑賞。今年の1月ぶり。2度目は敵側の挙動にも注意が向いてより楽しかった。

 

 

 

『ノック・ノック』(10/24)

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Netflixで鑑賞。ただでさえ気持ちが浮かないときに観てしまったためか、心から最低な気分に。1時間40分のピンとこない説教を受けたような徒労感。もうここは意地でも、不条理劇成立のためにキチガイ側に都合よくことが進む点を受け入れたくない。浮気男制裁だけならまだしも、喘息持ちのルイスの件はしょうもねえ戯言で片付けさせてはいけない。初期の黒澤映画なら犯人は死刑!掃除して帰れバカ。

 

 

 

『セキュリティ』(10/25)

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Netflixで鑑賞。深夜のモールで籠城戦。大好きなシチュエーションなぶん不安もあったけど思いの外気持ちのいい映画で大満足。バンデラス最高!

 

 

 

『キッズ・リベンジ』(10/28)

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Amazonプライムビデオで鑑賞。なあなあに着地させないオチが好き。あとお姉ちゃんかわいい。

 

 

 

 『キアヌ』(10/29)

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Netflixで鑑賞。キアヌかわいい!コメディ映画だからこそ映える外連味溢れる銃撃戦メソッドが活きてた。メソッドマンも最高。アメリカ人はすぐ愛する対象でカレンダーを作る。

 

 

 

以上、13本!

 

 

 

 

 

架空の上司と戦おう!

  

 

「融通」だの「柔軟性」だのとご高説を垂れるくせに当のテメエは柔軟性のかけらもなく独自の『仕事論』を押し付けそんな自分を棚に上げるばかりか「センス」というワードの頻出する説教を決まってこちらの業務が立て込んでいるときに始める本来なら誰からも好かれていない現実を一番の「課題」として認識し解決に尽力すべき尊敬強制搾取型の餓鬼道に堕ちた生乾き臭い服しか着ないオッサンは、僕の歯茎に剃刀の刃が隠してある理由について熟考してろバカ!

 

 

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Where is my mind? Here!

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※今回の内容には映画『ノック・ノック』のネタバレが含まれております

 

 

 

心に不安の種があると映画や小説をうまく咀嚼できない、ということはこれまでにも何度も言ってきたのだけど、僕はもうここ数年ずっとそれだ。頭も感情も物語についていけないまま、一向に良くならない。それでも観たいし読みたい。なんなら自分でも考えたりしたい。なのにうまくいかない。注意も散漫でジッとしていられない。どうしようもない。

 

 

 

 

 

 

去る土曜にオフ会をした。サシ飲みだった。メインで使用しているTwitterアカウントを作ってかれこれ5年経つが、その方のことは初期からフォローしていたので、Twitter上での付き合いも5年ということになる。雨の赤羽で落ち合った僕らは、そのまま駅前の鳥貴族に入った。いい感じの店を開拓するのもアリだけど、なんかちょっと怖いからとの理由が一致したのだった。サシ飲みという状況に緊張しながらも、結局その夜は5時間も飲んだ。ダイエットを始めたての僕は久しぶりにビールを飲み、いい気分で帰宅。帰りの電車を間違えた。

 

 

つい先日『ノック・ノック』を観た。「家族思いのよきパパ」であるキアヌ・リーヴスが、ひとり過ごしていた雨の夜に突然現れた見知らぬ若い女二人といろいろあって3Pしてしまう。翌朝目が覚めると台所を散らかしながらはしゃぐ二人の女。彼女たちは帰る素振りを一向に見せず、彼の生活を蝕んでいく……という話だ。

 

 

サシ飲みしたその方は、Twitterで「怨念マン」と名乗っており、誰もが胸のうちに抱きつつもその表出を躊躇しがちな言葉を真摯に吐き出し続けている。その揺るぎなき一貫性。筋の通った方に違いないと思っていた。会って早々、怨念マンさんは鞄から袋を取り出した。「もうお持ちでしたら申し訳ないんですけど」と彼が差し出してくれたのは一冊のアメコミ。

え!!!

僕は愕然とした。それは『パニッシャー MAX:ビギニング』の邦訳本だったのだ。

  

 

アメコミヒーローの中でパニッシャーが一番好きな僕は、この邦訳本も必ず買おうと決意したまま、なにもせず漫然と日々を過ごしていたのだ。忘れたころに、まさかこのような形で手に入れられるとは思ってもみなかった。完璧なタイミング、完璧なチョイス。身震いした。自分はいまとんでもない男と対面している。鞄の中に財布とレシートとゴミしか入っていない自分が恥ずかしかった。

 

 

『ノック・ノック』を観終わった僕は、手元にあるメモを見返してみた。冒頭でも書いたように僕はここ数年物語に集中することが非常に難しい状態なのだけど、せめて映画から受けた着想をメモしようと、ノートとペンを傍らにおいて鑑賞している。趣味である創作活動にも役立てたいからだ。そのノートには「うるさい」「死ね」「はやく終われ」の文字が何重にも書き殴られていた。

 

 

怨念マンさんとは簡単な身の上話から映画、アメコミ、学生時代のちょっとエモい話などをした。エモい話というのは、その対象への隠しようのない憧憬が必須なのだけど、僕と怨念マンさんの「そうあってほしかった学生生活」と「振り返ってみれば意外と輝いて見えるあの一瞬」観が一致したのかもしれない。僕は人の学生生活の思い出話を聞いて胸をキュッとさせるミュータントなので、しみじみその時間に耳を潜めた。私服でニーハイを履く女はヴィランだし、友人の活躍はちゃんと嬉しいのである。

 

 

『ノック・ノック』を許せない。我が胸の裡にヒエッ、と思いつつも、僕はまだイライラしていて、口元を何度も手で拭った。うっすら髭が生えてきていた。ちょうどむしゃくしゃしていた時期だったことも影響しているのかもしれない。いや、そもそもちっとも趣味じゃない。よりにもよってなんでこんな気分にならなければならないんだ。

 

 

怨念マンさんは、僕がネットにあげている自作小説を褒めてくれた。読んでくれていたのだ。まあまあ長いのもあるに……。そのときの僕はなぜ人が醜い行いに手を染めてまで偉くなりたがるのか、その片鱗をみた気がした。褒めてほしいのだ。承認欲求という言葉が選別なく蔑視されつつある昨今、日頃の生活で小銭のように承認を貯めていけるのであれば僕だって小説を書きこそすれども、ネットに上げるようなことはしなかったはずだ。イレギュラーな方法じゃなきゃ得られそうもないからそう選択したのだ。そんな僕のへの温かなレスポンスに出会え、心から嬉しかった。

 

 

なにが一番不愉快だったかを考えたとき、ルイスの件は絶対に見過ごせない。過去に訳あり的なほのめかしも鬱陶しい。あいつらはいじめっこだ。村上龍の小説『半島を出よ』 で、福岡を占拠した北朝鮮のコマンドに対しイシハラが堂々と宣言した言葉が脳裏をよぎる。こいつらは敵だ。

 

 

怨念マンさんにいただいた『パニッシャー MAX:ビギニング』を読んだ。年老いパニッシャーを政府が暗殺者としてスカウトするという物語だ。僕の愛してやまない映画『パニッシャー:ウォー・ゾーン』に大きな影響を与えているという情報は得ていたが、序盤のパーティー襲撃や、鉄柵に突き刺した敵を真上から踏み抜くという暴力描写まで引用されていた。燃え尽きることのない怒りに囚われた男フランク・キャッスルの向かうところはすべてが阿修羅道。だから彼は先に言う。「逃げろ」。痺れるぜ。

 

 

僕は『ノック・ノック』に言ってやりたい。「逃げろ」。悔しかったのでマイリストから速攻で削除してやったぜ。この怒りを糧になにか楽しいことをしてやる。絶対にしてやるぞ。僕はいま泣いているのです。どうしたらいい?どうすれば。まず泣き止むべきだ。それからなにかを食べるべきだ。しっかり睡眠もとる。暖かくする。運動をする。清潔でいる。それでもだめなら相談する。どの策も怠るな。敵は多い。尽きることもない。

 

 

怨念マンさんとの飲み会はとても楽しかった。精神衛生の向上をハッキリ覚えた。彼だってままならない日々を生きているのだ。しんどい現実をひとりじっと見つめるのはよくない。劇場で観る映画のように、他者の気配に助けられることもあるのだと思う。それを忘れないように、ここに書いておく。背景タイラー・ダーデン様。僕はジャックの『ノック・ノック』に激怒し、無様な人生の継続を誓った灰色の脳です。

 

 

 

 

 

P.S.

現在構想中の短編は「クラウドファンディング池松壮亮をぶっ飛ばす映画の制作費を集める中条あやみファン」の話です!よろしくお願いします!

 

 

 

note.mu

 

 

 

 

埼玉のいいところ

 

 

 

 

 

『埼玉のいいところ』

Lyrics:MCバー坂

 

 

 

 

 

うるせえ馬鹿 海ねえからなんだ 東京までだいたい電車一本

池袋もほぼレペゼン埼玉 東上線 埼京線 関根元

どんどんアゲていこうぜレートにテンポ 御託はもう十分だろ

飲み込むバイブス やばい名産物 一都五県 南無阿弥陀仏

 

 

埼玉いいとこ 家賃安い

埼玉いいとこ 晴れ多い

埼玉いいとこ 一部都会

埼玉いいとこ 挙げろ今すぐ

 

 

まゆゆぱるるこじはるにみおりん ももクロにいるプリティな緑

スタダつながりエビ中のぁぃぁぃ スパガの巨乳浅川の梨奈ぴ

同じく巨乳で女優の夏菜 彼女の生まれたしかあそこ戸田

脚の長さじゃスバリ菜々緒だ 新川優愛も後を追うそうだ 

加藤で言えばシルビアに綾子 みな実に裕子は芸人が好き

竹内結子ミムラ海荷 まだまだ尽きない美女のメッカ

だけどもう 弾切れだ これ以上は もう無理だ

夏は暑いしヤンキー多い 『スーサイド・スクワッド』舞台は埼玉

 

 

埼玉いいとこ ほぼ東京

埼玉いいとこ ニッカボッカ

穿いた男挨拶を無視

MA-1 肩にかけるヤリマン

 

 

無理に褒めることがマジで不毛 遊びに行くより住む専用

心霊スポットマジ多い ワンボックスカー改造マジ多い

火事多い、かは統計を調べろ 無責任発言炎上のもとだろ

星野源とかも生まれてる 風間ゆみは乳揉まれてる

 

 

群馬は都丸紗也華がいる

千葉には桐谷美玲いる

茨城磯山さやかいる

栃木はあいつだ手島優

神奈川はもはや挙げきれねえ

埼玉 マジで愛してる

埼玉 これからもよろしくね

どこまでも続く彩の国

その奥に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我がS極たち

 

 

三連休を利用して沖縄に帰ることになったのは良いものの、スタンリー・キューブリック恩田陸や大学時代にブログを愛読していた風俗嬢がそうであるように、僕も飛行機が苦手なのでした。風俗嬢も同じ理由を書いていたが、根本的に鉄の塊を信用していないからだと思う。同じ理由から絶叫マシンも嫌いで、たとえ事故の起こる確立がかなり低いものだとしても、自分はその確率の低い事象にからまれるような人間だと思っている。だから帰省のたびにいくらかの緊張を覚えてしまう。

緊張対策として、僕は飛行機にのる際は必ず音楽を用意するようにしていた。個人的にはあの巨大な鉄の塊が轟音を立てて加速し地面から浮遊する離陸時のバイブスが特に苦手なので、そのタイミングに合わせて音楽を聴き、気分をごまかすようにしている。今回、成田発沖縄行きの飛行機の離陸時に僕が再生したのはカニエ・ウェストの『パワー』だった。

 

Netflixでダウンロードしておいた『ボーダーライン』を鑑賞し、二本目の『ヒーロー・ネバー・ダイ』鑑賞中に那覇空港に到着した。1年ぶりの沖縄は夜の9時過ぎ。関東はすでに朝夕と冬のような気温を見せる日もあるというのに、ここはまだまだ夏。湿度も高いので空気がまとわりつくようでうざい。でもいくらか気持ちは緩んでくる。このうざさにはどこか浮ついたものも感じる。久々の実家に着いて早々、物置と化している部屋に荷物を置いてくたびれた布団で寝た。めちゃくちゃ暑かったのでクーラーを付けて寝た。実家で過ごす夏のイメージは、クーラーから漂うほのかなカビ臭さに凝縮されている気がした。

 

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翌日になると今度は弟が帰省したので、父親と一緒に空港まで迎えに行き、帰りに沖縄そばを食べた。僕と弟は父と別れ、祖父母に顔を見せてこようとドライブすることになった。車の中でBAD HOPの『MOB LIFE』を流しながら、『フリースタイルダンジョン』の晋平太戦におけるパフォーマンス並びにその後ラジオでの弁解までを含めたT-Pablowの悪口で盛り上がった。

 

祖父は耳が遠いので補聴器をつけている。おしゃべりな祖母の悪口が嫌いなので、けっこうな頻度で聞こえないふりをするという『レボリューショナリー・ロード』のようなテクを見ることができる。夏頃はあまり元気がなかったと聞いていたので心配していたが、ここ最近はまた盛り返してきているとのこと。一緒に行った居酒屋でも出てくる品々を次々と平らげていた。88歳の食欲に負けじと僕と弟も出された料理を食べまくった。後ろのテーブルではその店の小学生の娘がもやしのひげ根をとっていた。

 

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僕はこの帰省で初めて姪っ子と対面した。兄はこの春先に父になっていたのだ。眉毛が驚くほど太いその子は、その大きな目に映るものをなんでも凝視した。抱っこされながらも必ず外側を向きたがるので、どさくさに紛れて僕が抱きかかえたところで気づかれなかった。感動したので、たくさん写真を撮った。兄たちが帰ったあとに見返してみても、とにかく眉毛が太かった。

 

昼寝しているあいだに叔母がやってきて母とだべり始めたので挨拶をすると「太ったね」と笑われ、太っている従兄に似ているとまで言われた。これとまったく同じことを前日に母方の祖母にも言われていたので、寝起きの僕は大変に気分を害し、海まで歩くことにした。ラジオクラウド爆笑問題・田中とハライチ岩井が猫についてトークするだけの番組を聴きながらさとうきび畑の間を縫って海まで降りていく。日は沈みかけていたし、僕は便意に襲われていたので、観光施設に立ち寄って排便。地平線に沈む夕日を眺めていると、特別楽しい訳でもないのに楽しいような気持ちになった。

 

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僕は確実に太っていた。祖父のお祝いのため久々にスーツを着たところ、ズボンがあまりにもきつすぎて吐きそうになったのだ。でもそんなことはどうでもよくて、祖父のお祝いは和気藹々と進められた。また姪っ子と対面できたので、その点でも心がウキウキする。僕たち兄弟は賑やかしを頼まれたので、それに応えるかたちでカラオケを歌ったり、祖父へのメッセージを述べたりした。最後にはお祝いの締めとして、みんなでカチャーシーを踊ることになった。沖縄を出てからのほうが、こういう沖縄っぽい流れをすんなり受け入れられるようになった気がする。その日は普段あまり踊りたがらないシャイな祖父も自ら立ち上がって踊っていたので、お祝いが無事成功したことを実感した。帰りはみんなで祖父の家により、オリオンビールを飲んでダラダラしてから解散した。母の運転する車でシーサイドレストランに寄り、ハンバーガーを買って食べた。

  

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三連休はあっという間に終わる。留学帰りの弟は留学先で「アニメのイントネーションってやっぱり変だよね?」と言われ『ONE PIECE』のゾロとサンジの声真似をしたらウケたという話をした。そんな彼は僕よりも一日はやく沖縄を出た。僕は僕で部屋に置きっぱなしにしていた小説や漫画を持ち帰ろうと段ボール箱に詰めていく。ふと机の一番下の引き出しに入れっぱなしにしておいたAVも回収しておかなければと思い、一年ぶりに引き出しを開ける。するとそこには僕のAVが綺麗に並んで収められていた。つぼみのDVDはCDでいうところの星野源の『恋』みたいなものだからしょうがないにしても、北原夏美のドラマ仕立てAVを家族の誰かに見られたという事実は、一応覚悟はしていたこととはいえなかなかの心許なさで手が震えた。段ボール箱ふたつ分の荷物をコンビニから送った僕は行き先も決めずにドライブをする。なにか映画でも観ようかなと思って我が青春の詰まった町・北谷町美浜に行ってみたけれど、沖縄市に一昨年出来たイオンライカムに客を取られたと思しきその寂れ方に痛いほどの寂寥感を覚えた僕はなにも観ずに帰った。心がS極に引っ張られているのを感じた。

 

目に映るあれこれが僕の心をつかんで離さなくなる不安定な精神状態のとき、僕はそのあれこれのことを「S極」と思いこむ癖があった。それは大学進学前、残された時間を満喫しようと友達と毎日ドライブをしていたころにも陥った状態だった。「S極」はつまり人や物や景色を通して見えてくる「何かの終わる予感」なのだと思う。たった数日いただけで?と混乱した僕は家に戻ってFMラジオを聴きながらソファーに寝込んでしまった。するとラジオからはアンジェラアキの『手紙~背景 十五の君へ~』が流れてきた。高校の卒業式では、卒業生全員でこの曲を歌った。「もう18歳だけどな」と思いながら歌ったことをよく覚えている。式で僕の隣に座っていたのは学年のミス1位に選ばれたクラスメイトの女子で、全然話したことなかったけど最後の最後に「こいつ歌下手だな」と思われたくないと思って一生懸命歌った。なんだか「一生懸命歌った」という文章からは、綺麗な歌声は聞こえてこない気がする。とにかくそんなことを思い出してまた哀しくなった。同じ制服を着て、体育館に並んで、電車もない田舎で、畑ばっかりで、そんなところで18年!胸のうちのN極がバグりそうだった。

 

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そんなこんなで僕は強烈に小説を書きたいと思った。かつて沖縄を舞台に書いた『マザファッカーズ・リユニオン』という小説に不足していることを自覚しつつも、うまくつかむことのできなかった要素が僕の中に蓄積しつつあるように感じたのだ。群像か新潮の一次選考も通過しなかった拙作で、思い入れが強すぎるあまりコントロールできなかった不細工な作品だ。距離が必要だったのだと思う。そして今回も結局、距離をとるために時間に頼ってしまった。もうずいぶんといろんな時間が流れてしまっていた。焦るというより、機が熟したのだと思いたい。のんきに太っている場合ではないのだ。

 

 

 

帰る日の朝、母親が早くからクッキーを焼いてくれた。僕はそれを手に飛行機に乗り込んだ。離陸時のBGMはM.O.P.の『Ante Up』。ぜんぶ帳消しにする。

 

youtu.be

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年9月編)

 
 
 
 
『ネイキッド』(9/2)

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Netflixで鑑賞。結婚式当日の1日を全裸スタートで何度も繰り返す新郎版『恋はデジャ・ブ』。「どう式場まで駆けつけるか」から「なぜ自分は全裸なのか」に目的が移っていくのも楽しい。ただ女性器に関するあるネタで、いたたまれない気持ちになった。もっと優しくしてほしい。
 
 
 
『ソウ ザ・ファイナル』(9/3)

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Netflixで鑑賞。話やオチはまあ何でもありな感じなので特に感動はないけど、ホフマンが超むかつくくせに万能でうんざり。このシリーズは一番腹立たしいやつほど万能で長生き。それはさておき、ネオナチが4人同時に試されるゲームのシーンが一番面白い。もうめちゃくちゃ。
 
 
 
ザ・ガンマン』(9/4)

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Netflixで鑑賞。大好きピエール・モレル監督作。劇場公開時にけっこうな不評を耳にしていたのだけど、ショーン・ペンのバキバキの肉体、グロック18、破片の恐怖をしっかり描写する爆発シーンなど、アクションへのフェティッシュさで最後まで楽しみました。でも部屋でダラダラ見るのに適している感じはある。マーク・ライランスは偉い。ピエール・モレルの次作も楽しみ。

 

 

 

ピクセル』(9/6)

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Netflixで鑑賞。ギャグの対象年齢が低いのか高いのかブレを感じてしまうのはまあしょうがないと思う。まあまあ面白かったです。いや、悪くなかったです。

 

 

 

『愚行録』(9/6)

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レンタルDVDで鑑賞。人と接する際に訪れる嫌な瞬間の切り取りと、そこに向けられた妻夫木聡の虚無の滲む笑みがたまらない。「悪い東京の大学生」映画としても最高。なにより小出恵介演じる男が、個人的なある知人に何から何までそっくりだったので、彼のシーンでは瞬間最大風速的に感動してしまいました。個人的にはあのキャラクターを描いただけでもう勝ち。満島ひかりの細くて長い指が気持ち悪く蠢く場面も忘れがたい。イヤミスらしいあんまりなオチもほどよくて、そのほどよさが僕は好き。もっとエグく見せても当然いいけど、この塩梅も悪く無い。

 

 

 

サウスパーク/無修正映画版』(9/8)

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Amazonプライムビデオで鑑賞。子供に悪影響なコメディアンをめぐってアメリカとカナダが戦争する……楽しい!フセインにセフレ扱いされているサタンがこれまた良いキャラで泣ける。

 

 

 

スポットライト 世紀のスクープ』(9/14)

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レンタルDVDで鑑賞。このちょっと前にヴァーホーベンの『エル/ELLE』を観たことからカトリックがテーマとして扱われる映画を観たいと思ったのがきっかけ。幕引きシーンとエンドロールに示される町の名前一覧に絶句。途中出てくる虐待神父の「あ……これは……」といった雰囲気などからも感じたけど、世界規模の宗派かつ信仰による絶対的な関係性が成り立つ場で暴力的な支配が生まれないわけがない。そんなシステムへの絶望が浮かび上がる中、自らのできる範囲で真摯に真実を追い求めていく登場人物たちの姿勢には感動。フィクションじゃないぶん胸糞も悪いが、『セブン』のラストでサマセットがつぶやいたセリフのような気持ちにもなる。

 

 

 

『ルーム ROOM』(9/15)

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レンタルBlu-rayで鑑賞。トラックの荷台から見上げる「薄曇りの空」にこれだけ衝撃を受けるとは。本編はいたるところに「ああ、そりゃそうだよな」と思わせるシーンが散りばめられている。内容が内容だけに見ている間本当に気が滅入ってしまい、だからこそ母を見つめる子の視線にすがりたくなった。ラストシーンで「部屋」に感じる印象の変化も秀逸。と同時にこういう事件が今もどこかで起こっているのかもと考えて気が張ってくる。ちなみに脱出後に会話する警官がしっかり有能に描かれている点も超いいですね。

 

 

 

 『あなたを抱きしめる日まで』(9/16)

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Netflixで鑑賞。こちらもカトリック教会の悪行隠蔽体質を暴いた実話がモデル。ラストでシスターの吐く言葉があまりにも虚しいのと、それでも信仰に則って言葉を返したジュディ・ディンチが痛烈。この内容でいてめちゃくちゃテンポが良いのも嬉しくて、取材を引き受けるかどうかの葛藤を五秒くらいでサラッと描いたのは画期的。気難しいジャーナリストとわかってないようでいてわかっているおばあちゃんのコンビものとしても楽しい。生き別れた息子役の俳優さんの顔がまたよくて、見ているだけで泣けてくる。

 

 

 

ベルファスト71』(9/17)

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Netflixで鑑賞。IRAが潜伏する町へパトロールに赴いた軍隊の新兵がたったひとり取り残される話。暴力の即物的な感じが良い。なにより工作員役のショーン・ハリスの顔面力。目が真っ黒。これを機に北アイルランドの歴史やIRAのことを遅ればせながら勉強しています。

 

 

 

『ミッドナイト・スペシャル』(9/20)

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Netflixで鑑賞。超能力を持った息子をカルト教会や政府から守るというかぐや姫みたいな話。マイケル・シャノンのラストの表情にやられた。

 

 

 

『エイリアン』(9/25)

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レンタルDVDで鑑賞。『プロメテウス』観るつもりだったけど再生できないディスクを借りてしまったので。小さい頃から銃とかエイリアンの造形とかが大好きだったんだけど、いまでもチンチンっぽいものはだいたい大好きです。

 

 

 

ブレードランナー』(9/27)

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 レンタルBlu-rayで鑑賞。ディレクターズカット版のラストの切れ味が好きだけど、劇場公開版も映画に入っていきやすくて好き。

 

 

 

 以上13本!