ベスト10選評
10位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
エモい!あらゆるキャラクターにドラマを担わせるその采配力など、ジェームズ・ガンの手腕に胸が温かくなりました。なにより、観ている間ずっと楽しかった。一作目より好きなくらい。
9位:『哭声/コクソン』
僕は怪談の類が大好きかつ苦手で、受け取ったそのあとにあらゆる文脈が自分の中に息づき、周囲のあれこれをすべて恐怖に結びつけてしまう全自動連想モードに陥ってしまうからなのですが、この映画はそんな各々に芽生える文脈を次から次へと暴力的に錯綜させ、いま自分がどこに立っているのかすら観客に認識させない、その振り回しっぷりがなぜか痛快。ソフトを買ったら『複製された男』の隣に置きたい。
8位:『この世に私の居場所なんてない』
映画を観ていて「自分のベスト10にこの作品を入れたいな」と思わせる映画がたまにあるのですが、今年においては今作がそれ。思いもよらぬところまで連れて行ってくれる小さな冒険譚としてもう最高。個人的な話で申し訳ないのですが、2013年ごろから「彼氏から『重い』ことを理由にふられた女の人が『重さ』を失った状態で街をさまよい、あらゆる事件に巻き込まれていく」小説を考えていて、たぶんこの映画のようなことをしたかったんだと思います。悔しい!でも面白い!
7位:『T2 トレインスポッティング』
こちらも一作目よりも更に好きな続編。前作の「どうしようもない日常との決別」も、いまになって振り返ると全然人事じゃなく、ちょっと憚られる言い方だけど「これって僕の映画じゃないか!」とすら思ったほど。20年後、こいつらみたいになっている確率がおそらくめちゃくちゃ高い僕は、この映画を戦々恐々としながら観終わったのだけど、「物語」に包括されるラストにはとんでもなく眩いものを提示してもらった気分に。僕にとってのベグビーと、おっさんになって再会したときのためにも、とりあえずベルトのバックルに武器でも仕込もうかな。
6位:『ゲット・アウト』
ダニエル・カルーヤが弟に似ているので、ラストの展開には快哉を叫びました。 前半の、「確実におかしい会話」の連続も面白いし、そこから浮き彫りになる「理解者ヅラした敵」のふてぶてしさ。なにより、持つべきはフットワークの軽い親友という人生訓!
5位:『ローガン』
頭を悩ませながらも何度も劇場に足を運んだ作品。『ランボー/最後の戦場』にも似た暗澹とした手触りの先に待つのは、希望としての「物語」で、今年はそういう話が多かった気がします。
4位:『ザ・コンサルタント』
殺し屋モノが大好きだからこそ、そのアレンジ方法には口うるさくなってしまうのですが、今作における「そういう話だったのか」に関しては、明らかに悲しい、だからこそ作りての優しい眼差しが響いて、良い悪いを超えて好き。「物語の規模」が僕にはとても温かいものに思えました。それでいてアクションはしっかりハードで今っぽく、見応えのあるものになっていた点も良し。
3位:『ハードコア』
いかにアクションで「物語るか」に対し、これだけの工夫とアイディアを誠実につぎ込んでくれたつくり手たちには拍手しかない。顔も見えない主人公をちゃんと好きにさせる、勢いに負けない優しい演出の数々に感涙。『ドント・ストップ・ミー・ナウ』は皆殺しの合図。エンディング曲も最高!
2位:『ベイビー・ドライバー』
冒頭のカーチェイスからまんまとride-onしました。各キャラクター、みんなが好き。エドガー・ライトに関しては、いままではそこまで好きというわけではなかったけど、振り返ってみるとしっかり落とし前をつけさせてきた人なんだなと痛感した次第。最高に面白かったです。劇場配布ポスターがほしすぎてTジョイに問い合わせたくらい。
1位:『ナイスガイズ!』
ヘラヘラと軽快に悪を挫く最高のやつら。この映画みたいな感じで生きていきたいよ、と痛感した2017年のベスト1。冒頭、謀殺されたポルノ女優の亡骸に上着をかけてあげる少年のシーンに代表されるような、そこはかとない優しさ、正しくあろうとすることの尊さを描いている点も捨て置けない。ままならないことが前提のような世界でも、たまには成功するんだよ!
色んな賞
2017年劇場公開作ワースト
『ジョン・ウィック:Chapter2』
ワーストに上げるほどかって気もするけど、前作の頃からそこはかとない乗り切れ無さを覚えていて、二作目でそれが決定的になったことがショックだったので選出となりました。アクションに関してはリアルな長回しファイトもいいけど、もっと大胆な演出による「増し」込みでのメリハリがほしい。なにもオリヴィエ・メガトン級に割れよということではないですが、全体的に瞬間最大風速的興奮に欠ける印象となりました。 駅の雑踏の中、サイレンサー付の銃でこっそり撃ち合うシーンはものすごく笑ったけど、それすらもやもやの一部となるくらいチューニングに困る映画。 好きなジャンルだからこその過敏さに飲まれてしまったのかも。といっても『3』は観ますけどね。
ちなみに「しまった~」と感じた度合いで言えば『銀魂』の方が圧倒的でしたが、福田雄一作品というコンテンツとの相性な気もします。福田雄一作品は本当に合わないけど、ムカつくと同時に世界の豊かさのようなものも感じるので、世界的にろくなことがなかった2017年、僕は『銀魂』を肯定したいのです。
そして2018年……
ということで2017年もこれでおしまい!来年も楽しい時間が多いといいですね。