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「おれはまだ本気出してないだけなんだが?」とお前は言うが

映画

 

本気ってなんだろう。


そこがまずさっぱりわからないので、「まだ本気出してない」などとは迂闊に言えなくなった。高校の頃までは人とゲームとかしててムキになってときなどによく言っていた気がするけど、そもそもなんのメリットがあっていまお前は“本気”を出してないんだよって感じだし、いうだけ悲しくなっちゃう結果が見え見えなのだ。でもきっと虚勢を張り続けられるだけの環境がそこにあったとき、30や40、ひいては50、60になってもそんなことを言い続けてしまうような人間だって当然でてくるわけだ。

 

 

 

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 こいつだ。

 

デブチンエイブは三十半ばで実家住まい。父親の経営する会社にコネで入社するもエクセルの表計算も後回しにほしいフィギュアをポチッてばかりの日々。お母さんには子供のように甘やかされている。さらにはうっすらハゲてきているにもかかわらず……

 

自信満々!

 

どこかで「自分がモテないのはおかしい」と思っている - Midnight Invincible Children

 

 

 

そんなエイブは知人の結婚式で出会ったメンヘラ女に恋をした。自分でもいけるんじゃないか?というセンサーが反応したのだ。オタクが綾波レイ長門有希を好きな理由とだいぶ近い(ここで綾波レイ長門有希しか挙げられないのはぼくの限界)

 

そんなエイブは怒涛の速さで声をかけ電話番号をゲット。速攻連絡、家まで会いにも行ってしまう。全然好意をもたれていない相手にもずけずけと自分の魅力をアピールするエイブ。はっきり言ってすごくうざい。トイザラスに「返品させろ!」とフィギュアもって怒鳴りに行くシーンからして困ったちゃんすぎる。ダメでなにも成し得ていない自分のことを“ダークホース”と自称する始末なので、いいかげんにしろよとみんなが思っている。でもそんな鬱陶しいエイブの熱烈アピールにメンヘラ子もちょっとずつ応えてくれるようになり、ふたりは思わぬ接近を果たすのだが、そこで彼女からある告白がとびだして……

 

 

 

 

 

ぼくはこの映画のDVDを実家のソファーに深く腰かけ股をおっピロげながら観ていた。

 

前半のいじわるなダメ人間描写を眺めながら、これから「転機」が訪れて「人生を見つめ直」し「成長」を果たすまでをどう見せてくれるのかなと考えてついウトウトしてしまった。

 

 

 

ぜんぜんそんな話じゃなかった。

 

ぼくはウトウトしている場合じゃないことに気がついてそこからはずっと映画に釘付けだった。

 

非常に困った。

 

こんなはずじゃなかったのに。

 

とにかくショックを受けてぼくはこの映画を見終えたわけだけどどうしてくれるんだって気持ちでいっぱいになった。数多といる「おれはまだ本気出していない」人間の中で、ほんとうに“本気を出せる”人はどれだけいるのだろう?

 

そんな問いに対するひとつの答えのようなもの……とでも、いうのだろうか……。

 

ガビーンとなりました。ばかげた邦題やポップな予告に悪意すら感じられます。みんな大好き『ファイト・クラブ』の監督、デヴィッド・フィンチャーはかつてこう言いました。

 

「オレはいつだって観客の心に傷を残す映画が大好きだった」

 

至言。


しばらく忘れられそうもないとんだ通り魔映画でした。