『アメイジング・スパイダーマン』のタイトルを初めて聞いてショックを受けたのは「それを自分で言っちゃうのか」という点だった。
嫌われたらどうしようと日々悩み続けて大事な思春期を滅茶苦茶にしてしまった僕からすればよくもそんな恐れ多いことができるものだと感服したほどだった(最初は死ねと思った)。
そんなテンションで見た『アメスパ』は「こんなんスパイダーマンじゃない!」というオタクがアイドルに抱く幻想を壊されたときのようなショックで当時大学生だったにも関わらず本分の学業にちっとも身が入らなくなった。
サム・ライミ版のピーターは本当にどうしようもない童貞だった。
スタイルもあまりよくなく、髪は七三……九一? 服もダサい。いじめられてる。
「シャキッとしろ!」との説教を40代のおっさんなどから喰らってしまいそうなほどに腑抜けた笑みを常にたたえ、声もなよなよ。隣に住む幼馴染のメアリー・ジェーンを窓から盗み見、自己紹介の練習をするというキモさ。そのときの声もなよなよ。なよなよの権化だった。
そんな明らかに“足りていない”人間代表みたいなピーターが、ある日“大いなる力”を手に入れてしまうという点にぼくはまず興奮したしだから応援もする。
どんどん重さを増す責任と残酷な現実にもがくピーターについ泣いてしまったりもした。
一方で今回のピーター・パーカーは、そういった感じじゃない。
写真が好きという点は一緒だが、いじめられているわけではない。
いじめられっ子を助けてあげるようなポジションで成績も優秀だがガリ勉キャラでもなくスケボーを片手に飄々と学園をゆく。群れはしないがブレもしねえ。文化系の女子はそんなピーターと接する際、明らかにメスの顔をしている。
そしてクラスのパツキン女ともすぐに仲良くなって、クモの能力を得たあともジョークを飛ばしながら悪党退治…………
そういうこともあって、続編である『アメイジング・スパイダーマン2』にもあまり期待を込めてはいなかった。
ただ一方で「一作目は悲劇の前フリ」かもしれないという予感もあったので、もしかしたらもしかするかもしれないぞと劇場へ向かったのだった。
そんでもって今度の敵はこいつらだ!!!!!!!
電波系電気男【エレクトロ】!
空飛ぶデコ若【グリーン・ゴブリン】!
囚人操縦サイ型ロボット【ライノ】!
今回は敵が「人気者を殺そう!」というテンションでスパイダーマンを襲うところがすごく良かったです!!!
本当に人気者ってムカつく!!!
自分の背中が見えない銃創で埋まっているってことをちゃんと自覚してくれなきゃ!!!
誰からも認めてもらえなかった冴えない男が大きな力を手に入れたら?
人気者を殺す!!!
しがらみと病気はくれたのに愛をくれなかった親のせいで余命いくばくかでストレスフルな若社長が大きな力を手に入れたら?
人気者を殺す!!!
街の人気者に恥をかかされた挙句に捕まってしまった自己顕示欲強めの犯罪者が大きな力を手に入れたら?
人気者を殺す!!!
というわけで今作、「人気者って実はキツい」という目から鱗な真実がこれでもかと描かれていて思っていた以上に楽しめました。
こっちのピーターも大変だ。
僕ってば君のムカつくところしか見ていなかったみたいだ。
恋愛パートが死ぬほどウザかったけど
いまちょっと心に余裕がないから許して欲しい。
ぼくたちはまだ、相互理解への第一歩を踏み出したばかりなのだから……
次作でも……頑張ってくれやスパイディ。