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我が精巣~二階堂ふみ編~

 


映画『私の男』予告編 - YouTube

 

原作『私の男』は大学四年の夏か秋か冬に読んだ(確実に春ではない)。桜庭一樹さんが直木賞を受賞した作品で、書評家の大森望豊崎由美も褒めていたことだし読んでみることにしたのだ。当時の僕は町山智浩やライムスター宇多丸の映画評を真似してほざくようなミーハーガイだったので、その筋の人間が勧めた本はとにかく手を出し夏休み最終日よろしく大急ぎで教養を身に付けようと思っていたのだ。

 

 

この本を読んだ当初、僕は怒りのあまり普段十数回が限度の腕立て伏せを三十回もこなせたほどで、なにがどう癪に障ったのかなんてよくわかりもしないまま、とにかくむしゃくしゃする感情のままに「ばーか」とか「ふざけんな」を連呼していた。世は不況で将来の展望もなくいたずらに増えていくコンプレックスに余裕を維持しにくい状況だったことも関係しているのかもしれない。なにより気に入らなかったのは、主人公の「腐野花」、そしてその“養父”である「淳吾」の、じっとりと感傷的な、その閉じた世界観だ。いま思えばそういう物語なんだから……ってことではあるのかもしれないが、当時は閉じた世界でキモい宇宙を創造しているサブカルカップルに対して強烈な憤りを抱いている時期でもあり、そういった連中への情状酌量を放棄するスタンスだったことも大きく影響している。閉じた世界でキモい宇宙を創造するだけならまだしも、『私の男』では見逃せない悲劇まで起こっていて、そこが本当につらくて許せなかった。要はそれだけ夢中になって読んでいたってことなので、すごい小説ではあるんだろうけど、それだけに許せないといった感じだ。「『セブン』や『ミスト』のオチにマジギレしている人ほどその映画を楽しんでいる」論である。

 

 

さて、映画『私の男』に関してだが、その予告編で二階堂ふみ浅野忠信の指をしゃぶるシーンでまず勃起した。たしかに養父から性的虐待を受ける女の物語ではあるけどいざ映像化……しかも二階堂ふみが……僕は出身が同じでありサブカルチャーに傾向した発言も多く飛ばしていた二階堂ふみに対してやや冷ややかな姿勢をとっていたのだが(サブカル女を嘲笑することで自信を保っているからである)、この胸の高鳴りを無視することはできなかったのだ(勃起も)。

 

二階堂ふみを初めて知ったのは園子温監督作の『ヒミズ』の予告編で、「宮崎あおいに似てる!」との驚きと「出てきていきなりキスシーンもあるのか」という感心が同時に湧き起こったのを覚えている。それから数々の作品を経て、今作ではフィンガーサックに始まりA⇒B⇒Cと惜しげもなく演じる気配。宮崎あおいは『NANA2』で妊娠するビッチ役を市川由衣に譲渡したが、二階堂ふみ、まだ19歳なのに果敢だ。

 

 

上記の内容は真っ赤なうそだけど鑑賞後にそうつぶやいてしまうほど二階堂ふみはすごかった。とても19歳とは思えない……と思ったがつぼみがAVデビューしたのは18だし、そう考えると一瞬立ち止まってはしまうがすごいことに変わりはない。ちなみに19歳のころの僕はキスの味も知らなければオナニーも右手でしていたし慶應義塾大学に合格する頭もなくその余地もなかった。二階堂ふみはすごいのである。

 

僕の金玉がコートジボワールvs日本戦直後の渋谷並に騒いだ場面を例に挙げよう。起床した二階堂ふみがタンクトップにパンツだけというラフな姿でベッドから抜け出す場面で、その尻を覆う柔らかな生地(ピンク)にまず腕組みをしてしまった。その後、中学校の制服に着替え食卓につくも、浅野忠信演じる淳吾(海上保安官)から10日ほど海に出なくてはいけないと告げられるシーン。二階堂ふみ演じる花は不貞腐れパンに乱暴にジャムを塗って食べるが、そんな彼女の口元についたジャムを浅野忠信が拭って舐めたかと思うや制服の上からふみの胸を両手で揉みしだき始めたところで僕はズボンの中に手を突っ込んでチンポジを直した。その後濃密な絡みが始まるのだけど、制服を脱いだ 二階堂ふみの思いのほか大きい胸が収められたブラジャー、腰をひねった際に浮き出る肋骨、辛抱たまらないとはこのことだ。ギンギンになったマイコックを服の裾で覆うことでどこか許された気持ちになっていると浅野忠信二階堂ふみの腕を持ち上げたかと思うや否や腋を舐め始め、思わず劇場内にも関わらず大声で叫びそうになった。官能が過ぎる。「二階堂ふみ 巨乳 腋舐め」の後ろにXVIDEOSと足して検索をかけたいくらいである。

 

と、ここまでだとつぼみがよく演じているような田舎の農村に住む女の子が義父とやっちゃう系のAVみたいだけどそこでこの映画、真っ赤な血が絡み合う二人に滴り落ちてくるという象徴的なシーンが出てくるので、ああ、映画観てたんだっけと気づかされるもそこから先、大人しくなっていく我が息子に後ろめたさを感じるはめとなったのである。この関係は禁忌的ではありつつも、当人たちにとっては「人には言っちゃいけないけど……」くらいな感じにも見える。お風呂でおしっこする、的なあれと一緒だ。当人たちはきっとそういう人なのだ。

 

観ていてリッチな気分になる画作り、そして印象的な音使い、坂の上と下で見せる二人の主従関係、ラストシーンに至ってはニコラス・ウィンディング・レフン監督っぽかった。監督は原作と違って主人公の花を得体の知れない存在として描こうとしていたように感じたのだけど、二階堂ふみの芋っぽくもあり我が強く時に艶めかしさすら漂うあの目がすごく活きていたと思う。浅野忠信も色っぽいゲスが似合う。喋る前によく咳払いをするところからも、花が支配したい対象である淳吾という受け身で不器用な感じが漂ってくる。

 

その後、続けてみたステイサム主演の『ハミングバード』が不意打ち的に切なかったので気分はすっかり持っていかれてはいるけど、『私の男』を観て以来、流氷に乗った宮崎あおい二階堂ふみが突き飛ばすという画が頭に浮かんで離れないのも確かだ。