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野蛮×狂気×乳首=『300〈スリーハンドレット〉帝国の進撃』

 

圧倒的不利な状況にも関わらず「うるせえ!皆殺しだ!」と殺戮の限りを見せてくれた映画『300』を劇場で鑑賞したのが高1のこと。フォレスト・ウィテカー似の友人と観に行った気がする。けっこう楽しんだ気もするけどだんだんとスローモーションがくどく感じてきて、「おい!みんなもっと早く動いてよ!」とウザいバイトリーダーみたいなことを胸の内で思っていたのも事実。鑑賞後、ベタ褒めする友人に対して黒い感情を燻らせたりもしていた。ザック・スナイダー監督は好きだけど、肝心なところで諸手を挙げ兼ねる存在であることはいまも変わらない。

 

今回その続編が公開されるといったところで思い入れもないしたぶん観ないんだろうな……と蔑ろにしていると、この映画を観た人たちの多くが「どうかしている」との感想をやたらと漏らしていて、「どうかしているのなら……」と劇場へ足を運んだ。本当にどうかしてた。

 

ちなみに今作『300〈スリーハンドレット〉帝国の進撃』を鑑賞後に、前作もいま観れば以前よりも響くかもしれないと予想した僕はさっそく『300』を観返してみた。そしたらちゃんとこっちもどうかしていて、半裸でムキムキのおっさんたちが野蛮な侵略者に対してそれを上回る野蛮で応えるという気持ちのいいお話だった。なによりスパルタの王レオニダスを演じるジェラルド・バトラーはどんな役を演じていても野蛮人にしか見えないという彼の美点を存分に発揮していてうっとりした。


This is Sparta. Full scene. - YouTube

本作の白眉であるペルシア側の使者に自分たちのスタンスをきちんと証明するシーン。こうありたいものだ。

 

その他にも嬉しい見所としてスパルタの兵の一人にあのマイケル・ファスベンダーがいるというところだ。優男なイメージもあるかもしれないが、この人妙に口がでかくて歯が小さいのか大きく笑うと時折般若のような表情になるためスパルタ軍兵士役も迫力があってよかった。スパルタン・ジョークを連発し周囲とベタベタする腐女子に優しい男でもある。

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野蛮モードのファス。腹筋もちゃんと割れてて偉い(チンコも超でかいらしい)。

 

そのほかにもグッときた点として、我が親愛なる『パニッシャー:ウォー・ゾーン』であの凶悪ナルシスト“ジグソウ”を好演したドミニク・ウエストまで出ているということ。

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 相変わらず悪そうないい顔が上手い。

↓ちなみに『パニッシャー:ウォー・ゾーン』でのご尊顔。

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ドミニク・ウエスト演じるセロンが評議会で王妃に性的ヤジを飛ばしたりとすごくタイムリーな鑑賞タイミングだなという感慨に胸を打たれた。映画ではヤジられたのがスパルタの王妃なので、暴力で応答しているあたり本当に映画っていいなあと改めて痛感。いくら東京都といえスパルタに勝つことはできないのだ。


塩村あやか議員にセクハラ野次!!そして涙 - YouTube

 

もちろん全体的に楽しんではいるものの、やっぱり多用されるスロー演出が途中からまどろっこしく感じてくるのは相変わらずで、全編決め画のような映画、というか原作であるグラフィックノベルのコマ割りを意識した演出でもあるので仕方がないといえばそうかもしれないがもうちょっとメリハリが欲しい気もした。気がしただけで必要とは言っていない。余談だけど映画を観ているとすぐ眠くなるのってやっぱり病気かなにかなのでしょうか。

 

 

『300〈スリーハンドレット〉帝国の進撃』は、一作目における「そのころ他の場所では……」という話だった。ということでスパルタの兵士たちは主軸となって活躍しない。でもあの前作の続編なのだ。生半可なことはできないぜという監督のガッツなのか、色々気合が入っている。まずバイオレンス度は前作より上がっているように感じた。マシマシである。興奮した馬の迫力ある顔面をスローで大映しにするトゥーマッチなシーンでは自然と笑みがこぼれたし、ケチることなく飛び散りまくる血も粘度が高く重たそうで妙な快感があった。正直観ている間はずっと知能指数が低下していく音が聞こえていたので、ほとんど内容や話の筋は覚えていない。そもそも本当に観たのかどうかさえ疑わしいくらいだけど、僕はちゃんとエヴァ・グリーンの乳首を思い出せる。本作における白眉は誰がどう観たって彼女だ。

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目の縁を黒く塗り冷たい視線を投げつつ多くの野郎ども相手にも恐るべき戦力で立ち回る彼女の勇姿。ためらいなく殺戮を繰り広げたかと思いきや、艶かしい谷間や生脚を見せつけ「アタシ、あんたが欲しいわ」と精巣に直接話しかけてくる最強の女。演じるエヴァ・グリーンはこんな野蛮で血まみれで正直狂っているとしか思えない映画においても一切の省エネを見せず惜しげもなく乳首を披露してくれる世界一いい人だ。映画界の聖女である。

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とてもいい表情。お高い女優さんだと思っていたけど、世界一正しいお高さだった。

 

その他に今作にどういった見所があるかといえば人が大勢死んだり燃えたり船が大爆発したりするシーンなど山盛りだ。それでいて100分くらいで終わる。この僕でも寝ない。とにかく「エネルギーが最近足りないなあ……」と思っている人は迷わずこの映画を観に行ってほしい。僕はこの映画を観て以来、あんなに得意だったフェルマーの最終定理の証明どころか因数分解もできなくなったし、毎日が楽しくていまも笑っています。