『トランスフォーマー/ロストエイジ』にIMAX童貞を奪われた僕は

 


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本当にろくなもんじゃないです。橋田壽賀子を肯定するわけじゃないけど渡る世間に鬼はなしだなんて言ってられません。鬼は目立たないところで目立たせない人間を相手に横暴を繰り広げているだけに過ぎません。最低だ。うんざりだ。なにもやる気がおきないくらいだ。でもそれは先天性のものだから鬼のせいじゃないかもしれないけど、とにかく鬼は最低だ。あぶりだして椅子に拘束してカナヅチで足の指を一本ずつ潰してやりたいくらいだ。メル・ギブソンの『ペイバック』でそういうシーンありましたよね。すごく痛そうでした。最近で言うと『新しき世界』でもそんなことをしていると思わせるシーンがありましたね。心が強張りエネルギーが湧いてくる素晴らしいシークエンスです。

 

その日も僕はついに頭が変になって、どうすればいいかもわからずにうずくまっていました。お呼びじゃない怒りに駆られて自分の両の頬を拳で打ちまくり、かすかなめまいを覚えながら息も絶え絶えに天井を眺めていました。これは大学一年の頃、引きこもり状態に陥っていた時期にも見られた衝動でした。もうなにもしたくない。なにもしていないのにそう思いました。僕は外に飛び出し電車に乗りこむと丸ノ内線飯田橋、そこから東西線に乗り換えて木場まで向かいました。木場。そう、IMAXの劇場があるあの木場です。

 

僕は時間ギリギリの到着だったこともあり、全力疾走で映画館へと飛び込みました。緊張と激しい運動による動悸で全身が揺れるような感覚に陥りながら『トランスフォーマー/ロストエイジ』を一枚。IMAX3Dで。

 


映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』予告編 - YouTube

 

トランスフォーマー』シリーズへの思い入れといえば、1800円で何億円分もの破壊を見せてくれるという点です。マイケル・ベイの破壊神ぶりが遺憾なく発揮されていて、発揮されすぎているがあまりもう何を見ているのか途中から分からなくなる知能指数粉砕映画として毎回強烈な印象を残してくれます。一作目は鑑賞後、一緒に観た同級生を置いて帰るくらい脳に異常をきたしていたし、二作目は…………よく覚えていないけど三作目に至っては……………………僕がいまこうやって文章を書ける状態にあることは奇跡に近いのかもしれませんね。

 

そして今回、絶大な威力のベイヘム映画をIMAXの3Dで鑑賞する。死ぬんじゃないかと僕は思いました。でもこれは賭けでもありました。

 

IMAXメガネを着用した僕は、まずその明るさに驚きました。これまで体験してきた3Dではどうしても画面の薄暗さが気になって鑑賞後かなり疲弊したりもしていましたが、IMAXは違います。そして画面が大きい。その没入感たるや。そして今回、この『トランスフォーマー/ロストエイジ』をIMAX3Dで鑑賞する正しさを実感したのは本編が始まり、オプティマス・プライムがここぞ!という瞬間に大暴れをするシーン。これまで『トランスフォーマー』シリーズが映像暴力と呼ばれていた理由としてとにかくゴチャゴチャした物体が勢いよく動いた挙句ゴチャゴチャしたなにかに衝突してゴチャゴチャする、という点が挙げられますが、IMAX3Dだと画面が明るい上に3D表現によって背景とトランスフォーマーたちがちゃんと分離して見えるため、その複雑な姿が背景と重なって混乱することがなく、すっきり観やすいのです。すごい!この調子なら二時間も余裕……あ、『ロストエイジ』は165分あるんだった……でもきっと大丈夫!

 

前作でシカゴを大破壊したトランスフォーマーどもが、良いやつ悪いやつに関係なくCIAとKSIという大企業が関わる特殊部隊によって狩られまくっていることが示される前半部、ここがとにかく最高。大量の火薬を用いて徹底して攻撃、破壊。彼らを守ったり匿おうとしようもんなら人間だろうと容赦なく殺すという“墓場の風”の恐ろしさ、そこに巻き込まれるテキサスのキチガイ親父、マーク・ウォールバーグマイケル・ベイ映画お馴染みのじゃじゃ馬系ヤリマン顔女(超好き)&その彼氏の逃亡劇など序盤から異常な飛ばしっぷり。なにがすごいって車が派手にクラッシュするシーンのつるべうちなのですが、乗っていた人間が車外に放り出される描写までしっかり入れる隙のなさ。この事故じゃ本当に人が死んでいるんだぜ!というディテールが緊張を強いるのです。思えば二作目の『トランスフォーマー/リベンジ』でも空母が『アルマゲドン』風に攻撃されて沈みゆく中、乗組員の無数の死体が破片と一緒に浮遊するという描写を入れていたし、マイケル・ベイは本当にゾッとするディテールを欠かさない監督ですね。最低で最高!

 

それにしても今回はシャイア・ラブーフのクソみたいなギャグやイチャつきシーンがないので物語がサクサク進むところも嬉しかったです。

 

ここで一つ。実はすごく悔やまれることなのですが、僕は途中、ちょっとだけ睡魔に屈してしまいました。しかし、目を覚まして「しまった!」と思うも、物語に取り残されるほどストーリーは進んでいなかったことが幸いです。

 

香港での大破壊も素晴らしかったです。人間側のバトルも異常なテンションで繰り広げられるためもうお祭り気分です。マーク・ウォールバーグプロテインがトランスフォームしたぶっとい二の腕が人に叩きつけられるのを見ると「うわ!すごいパワーに違いないぞ!」と興奮します。

 

この映画を観終わった僕はゆっくりとした足取りで食堂に入りカレーうどんを食べました。そして観る前まで胸を占めていた薄汚なくささくれた感情が霧散していることに気づいたのです。これは……。

 

もうこのままじゃどんどんバカになって終いには野垂れ死ぬだけの運命なんだという絶望感から自棄になっていた僕ですが、いくらか軽くなったこの気持ちと脳みそに胸が踊るような気分でした。帰りに寄った本屋で買い物をした際に、420円を支払わなければならないところ、600円を差し出すという奇行に走ってしまいましたが、気分は沈みません。思わず自分で笑っちゃったくらいの余裕がありました。なにを悩んでいたのか、なにを恐れていたのか、それら全てを僕は思い出せませんし、簡単な算数も全然できなくなっている。そもそも映画がどんなストーリーだったのか、と言われると実はよくわかっていなかったりしますし、帰りの電車の乗り換える駅も思い出せない。だけど、幸せ。


松任谷由実 - ひこうき雲 - YouTube

 

トランスフォーマー/ロストエイジ』が初めてのIMAXでよかった。あたし、後悔なんてしていないよ。これからいろんなIMAXを経験するのかもしれない。でも、『トランスフォーマー/ロストエイジ』のこと、きっと忘れない。ありがとう、『トランスフォーマー/ロストエイジ』。ばいばい、『トランスフォーマー/ロストエイジ』。いつか思い出して、ちょっと笑うね。