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嵐だワッショイ!/『イントゥ・ザ・ストーム』

映画

 


『イントゥ・ザ・ストーム』予告編 - YouTube

 

『イントゥ・ザ・ストーム』を観た!

 

アメリカ中西部の街シルバートンを超巨大竜巻が直撃!バラエティに富んだ視点からその大災害を《体感》する、という超シンプル映画。正直言って期待値は全然高くなかったし、実際ぼくが観た新宿の劇場ではあまりお客さんも入っていないように感じた。たしかにいま竜巻と言われたところで、できることにも限界があるんじゃないか、とかなんとか、僕も高をくくる始末。

 

だが。

 

そもそも物が派手に壊れる映画は素晴らしい。破壊に必要なのは圧倒的なパワー。そのパワーが強力であればあるほど、抗いようが無ければ無いほど、結果としての破壊とそこに伴うカタルシスが脳内麻薬を分泌して陰口ひとつで打ちのめされるようなセンシティブな心を高みへと連れて行ってくれるのだ。

 

そして今回この『イントゥ・ザ・ストーム』で描かれている大破壊のつるべ打ち。阿鼻叫喚さえかき消される轟音。気がつけば僕はどこにいた?そう、高みにいたのだ。

 

この映画、「そんなことにまでなるの……?」と絶句してしまうような展開が数々待ち受けているため、無防備のままその嵐の中に飛び込んでほしい。ちなみに僕は予告編もずっと前に一度観た程度で、「竜巻映画」といった認識しかなく、いざ始まってエンディングを迎えるまでの89分間はもう大変だった。今年は沖縄で台風の直撃をくらい、停電した家の中で蝋燭一本の灯りを頼りに割れんばかりに暴れる窓に悲鳴を上げて過ごした身としても、この映画の素晴らしい点のひとつである音響の迫力に劇場内でも叫びそうになったほどである(さすがに24でそれはしない)。また、この映画、映像や音響の迫力だけではなく、そんな嵐に巻き込まれる、あるいは自ら突っ込んでいく登場人物たちの魅力も忘れてはならない。

 

竜巻のすげえ映像を撮らなきゃ帰れねえとばかりに改造車に乗って突き進む竜巻ハンター軍団に、嵐が訪れた街のハイスクールに通っている高校生兄弟、そのパパである教頭先生、YouTubeにスゲー動画を投稿して一躍有名人になることしか考えていない無職のアホアホコンビなど、台風の日に田んぼを確認しに行ったり崖に遊びに行ったりする系の面子がこの地球最大規模の殺人竜巻に挑むのである。それぞれの事情など、ほのかなドラマを絡めつつ、この歴史的瞬間の記録係としての役目も全うしてもらうといった形になっている。

 

登場人物の中でも特に熱いのが無職のバカ二人。どちらもいい歳のくせに実家暮らし、庭先に知能指数の合計が10程度のゴキゲンな仲間たちを集めてはジャッカスの真似事をしてスマホに収め、YouTubeでしょぼい閲覧数を稼ぐことしか能がないというどうしようもない人たちなのだが、そのどうしようもなさがどうしようもない竜巻と邂逅するとき、謎のケミストリーが生まれるのである。中学生のようにはしゃぎながら竜巻にカミカゼスタイルで突っ込むのは当たり前、間近に竜巻が迫っていようとも「ぎゃー!セックスより最高だ!」「おまえ童貞だろ!」という放課後ムードなトークをかませるもじゃもじゃハートのオーナーなので、こいつらが画面に現れるたび緊張の中に異様な興奮が生まれて一種のお祭りでも見ているような気分にさえなる。

 

一方で、竜巻ハンターのリーダーことピートも熱い男で、彼は「竜巻の目」を撮影することに人生をかけている節があり、その熱意に仲間たちもちょっと引いている。新人カメラマンがもうやだ帰るとほざこうもんなら厳しく罵倒し、そのあとちゃんと謝ったりもする。そんな彼が重要な場面で男気を発揮する展開には正直泣いちゃったし、そんな彼が追い求めていたあの光景とその先に待つものの神々しさ、そして儚さ、容赦のなさには息を呑んだ。命をかけて追い求めたその先にあるもの……『レスラー』や『ブラック・スワン』など、一時期のダーレン・アロノフスキー作品に見られたラストにも通じるものがあるとついさっき思った。

 

僕はこの映画を2Dで鑑賞したんだけど、もし3Dで観ていたらショック死したんじゃないかと思うほどの没入感と興奮を味わったのだ。

映画って楽しい!と「体験」したのは久々な気がする。

 

来週には『LUCY』とか『TOKYO TRIBE』とか公開されるのでみんなそっちを選ぶんだろうけど、本当にヘルタースケルターな体験がしたければぜひ『イントゥ・ザ・ストーム』を観てほしい。嫌なことがあると宇宙のこととか考えて「こんな小さなことで」と自らを勇気づける人がいるが、おれたちは無力だ!という現実を突きつけられることで何かが吹っ切れて楽しくなることって意外とありませんか?僕はまだよくわからないですけど、たぶんそういうものを、この映画で見つけることができるかもしれませんよ。