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【暴力祭り】この「元工作員」がすごい!

特集

 

なにが目的で映画を観るかといえば最高の暴力を観るためだという世界の常識に改めて立ち返ってみると、昨今の映画において魅力的な暴力を炸裂してくれる存在である「元工作員」に着目せずにはいられない。「元工作員」という響きには、「過酷な訓練」とか「国家のための非道」とか「癒えぬ深い悲しみ」「激しい後悔」「見いだせぬ生きる目的」など、否が応でもドラマ的に盛り上がる要素に満ちている。今回はそんな元工作員が活躍する映画を振り返って、おれたちの大好きな元工作員たちにマザー・テレサのような慈愛の眼差しを向けよう。

 

 

 

工作員その①『ボーン』シリーズのボーン氏

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工作員には所属していた組織に追われがちという特徴があるが、CIAにここまで追われ続ける男もそうはいない。ある任務に失敗したことから記憶を失い、情報漏洩を恐れたCIAに追われながらもその圧倒的な戦闘能力と情報処理能力で逃亡を続ける。CIAも負けじと派遣社員にバイトのお知らせを飛ばす感覚で世界各地に配置している殺し屋どもに指令を出し、ボーンの行く先を狙い打つのでのんびりする暇もない。身の回りにあるものを利用して相手の息の根を止める戦術描写の先駆者でもある。この映画を観てナイフ相手に丸めた雑誌やタオルなどで対抗すればいいのねと安易に考え、指を落とした男子も少なくないはず。

 

工作員その②『アジョシ』のテシク氏

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臓器売買組織に誘拐された近所の女の子を助けるべく韓国裏社会のクズどもを圧倒的戦闘力で血祭りにあげていく通称“おじさん”。無口で無愛想なので近所のおばさんなどからは変質者扱いを受けているが少女に朝ごはんをご馳走する面倒見のいい一面もあり。過去に妻子を喪っており、その悲しみを引きずっているが、少女誘拐事件に巻き込まれるや喪服姿のまま大暴れを披露するあたりもジョン・ウー魂に溢れている男である(劇中で小バカにされる)。工作員時代の仲間に協力を仰いで手に入れたグロック19を使用。鍛え上げられた肉体を晒しながらバリカンで頭を刈るシーンと片手で銃のスライドを何度も後退させるシーンを真似した男子も多い。演じるウォン・ビンの甘いマスクに冷酷な殺人術で映画公開当時はおりものシートの替え必須という情報が拡散されたほど女性人気の高い元工作員でもある。

 

工作員その③デンジャラス・ラン』のトビン氏

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伝説的凄腕とまで称されるCIAの元工作員。組織を裏切り(この設定も元工作員あるある)10年間逃亡した末に南アフリカケープタウンで捕まった。格闘術、心理戦共に長けており、新人工作員ライアン・レイノルズを翻弄しまくり。でかい図体から素早い攻撃を繰り出す。とにかくすごく強い。一撃一撃が重そうなところもいい。思えば『アジョシ』と同じく彼もバリカンで髪の毛を整えていたが、あの行為は元工作員あるあるなのかもしれない。演じるデンゼル・ワシントンは最新作『イコライザー』でも元工作員を演じるみたいなので「元工作員」俳優としてのキャリアをさらに極めそうな予感あり。

 

工作員その④『ハンナ』のエリック氏


Hanna fight scene [Eric Bana] - YouTube

こちらも元CIA工作員だが現在はフィンランドの森林地帯で文明を拒否するかのような生活を娘ハンナと送っている変人。その目的は組織への復讐であり、娘に暴力英才教育を施していているという困った男でもある。『キック・アス』のビッグ・ダディとあまりに被っているキャラ設定ながら、生真面目そうなエリック・バナが真剣に娘を鍛えている姿を見ていると、その深刻度になかなかの迫力を覚える。上に貼った動画にもあるように組織の追手を片付ける様をハラハラする長回しで演じている場面は面白いし、映画後半でオカマの殺し屋と戦うシーンのぼんやりした雰囲気も愉快。電波系元工作員としてその存在を光らせている。

 

工作員その⑤『96時間』シリーズのブライアン氏

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元CIA工作員にして病的な親バカ野郎でもあるブライアン氏は、別れた妻に引き取られている娘のキムのためなら何でもしてしまう。それこそアメリカからフランスのパリまで趣いて誘拐組織を壊滅させるくらいわけはない。休みの日には元工作員仲間たちとバーベキューをしながら「あの頃は良かったよな」という会話に花を咲かせているところも最高だ。娘以外にはほとんど関心がなく「娘のため」という大義のためなら非道な行いも片手間感覚で行えてしまうあたりもプロフェッショナル。またあまりにも暴れすぎるきらいがあるためか、大規模な復讐にも遭っている点がチャーミングなパパだ。

 

工作員その⑥RED/レッド』のみなさん

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超危険年金受給者、通称“RED”と呼ばれる元工作員たち。現役時代は数多くの殺しをこなしてきた強者たちである。冒頭、いきなりCIAの特殊部隊に自宅を襲撃されたフランクの呼びかけによって集結。一線を退いた身とはいえ、現役時代からの衰えを一切感じさせない戦闘力を発揮して“元工作員狩り”の理由を追う。演者たちの贅沢な顔ぶれからはジジババ版『エクスペンダブルズ』といった趣が感じられなくもない……と書いてはみたが、本家『エクスペンダブルズ』も充分ジジイばっかりなのである。ということで『エクスペンダブルズ』は前期高齢者暴力映画、『RED/レッド』は後期高齢者暴力映画と言えよう。

 

 

工作員その⑦スティーヴン・セガール

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画像は若かりし頃の御大。デビュー作である『刑事ニコ 法の死角』に主演した際にどういうわけか「元CIA」と謳われた男である我らがセガール(本人は事実を否定)。圧倒的な戦闘力とその説得力に併せて醸し出されるなんともいえない胡散臭さでは右に出る者が見当たらない。出演する映画でもほとんどが元工作員役であり、気まぐれに悪党を殺戮する奔放さが売りだ。眉間のしわを緩ませることなく武術留学先である日本で習得した様々な武術のハイブリッド攻撃でどんな屈強な男でも瞬殺。『エグゼクティブ・デシジョン』での死亡説さえ一蹴する不死身キャラで、元工作員というくくりを突き抜けている感もあるが、本人はなにより元工作員を演じるのが大好きな元工作員俳優なので今回のこの特集の締めを飾るにふさわしく思う。ちなみにぼくはセガールの喋る関西弁が大好きだ。『エクスペンダブルズ4』の悪役がドウェイン・ジョンソンなら『5』こそはいい加減しょうもないプライドなんて捨てて(そもそも『マチェーテ』には出てただろ)最強の悪役として登場して欲しい。

 

 

ということで元工作員に着目してみた。もちろん映画にはここで挙げた人物の他にも山のように元工作員がいて、それぞれが悲喜こもごもの人生を生きているのだ。今後もたくさんの楽しい元工作員映画が公開されることだと思う。それはぼくらが元工作員という響きにただならぬドラマを連想し続ける限り、なくなることはないのである。それに元工作員という人たちはあまり過去を語りたがらない生き物でもあるため、もしかするとあなたの近くのあの人も、元工作員、なのかもしれませんよ……?