どいつもこいつも辞めちまえ!【映画に学ぶ!この退職が熱い!!!】

 

“長らくお世話になりました~っと!”  

魔墓呂死特攻隊長 仁(映画『狂い咲きサンダーロード』)

 

 

アルバイトであろうと正規雇用であろうと、辞意の表明とは非常にハードルの高い行為である。辞めるに至る理由だって必ずしも肯定的なものばかりではないだろうし、それを伝えるとなると夜眠れなければ朝布団から抜け出すのも億劫に思えてくることもあるだろう。また、辞意の表明と雇用側である上司や先輩や同僚とこれまで築いてきた関係性とを天秤にかけてしまうし、自分が抜けることで会社側にかかる負担というものも考慮しなくてはならないらしいし、後継者への業務内容の引き継ぎも求められる場合もあるし、そういうことを考えているうちに辞めたその先に待つ自分の未来への悲観が芽生えてしまうことだってないとは言えない。つまり辞意を表明するには、岩をも動かすような巨大な勇気が必要なのである(そうでもない人もいる)。

 

そんなとき、少しでも自らを鼓舞するために役立ててもらいたいのがフィクションの力である。フィクションとは現実におけるのっぴきならない事象を凌駕することができる数少ない領域なので、こちらが思いつきもしなかったアイデアを堂々と提示してくれることが多々ある。そこで今回は血潮がたぎるほどの超ホットな退職シーンが登場する映画をわずかではあるが厳選して紹介したいと思う。それらの中で行われるそれぞれの辞意表明に少しでも勇気をもらい、「辞意表明したいけどなあ」と思っている誰かの一助となればとぼくは願っている。ちなみにぼくは大学のころ、心の底から忌み嫌っていたアルバイトを、店長への辞意の表明が怖いから(すぐ怒るから)という理由で一年間先延ばしにした末に、「今後の進路について深く考えた結果、勉学に専念したい」という大嘘をついて辞めたことがある。いまとなってはいい思い出で、思い返すたびに美しい日々の記憶しか蘇ってこない。

 

 

激アツ退職その①

【超・自傷

(映画『ファイト・クラブ』)

★こんな人におすすめ
  • 上司がムカつく
  • 仕事にやりがいを見いだせない
  • 好条件での退職を望む

 

世を拗ねる男達に絶大な支持を得ている大傑作映画『ファイト・クラブ』において、エドワード・ノートン演じる主人公“ぼく”は、大手自動車企業のリコール査定士を勤めている。出張に次ぐ出張の日々。自社が製造する車の欠陥によって起こった事故の様子を検証し、リコールするかどうかを判断する。社会的にどうであれ、会社にとって不利益ならばリコールはしない。倫理なんてなんのたしにもならない世界で、業の深い判断を繰り返さなければならない。気がつけば“ぼく”は不眠症になっており、夢か現かまどろむ意識の中を彷徨い続けている。出社して上司から渡される出張用の航空チケットもそのネクタイの色も出会い頭のテンションもすべてが気に食わない。そんな“ぼく”はタイラー・ダーデンというカリスマあふれる男と出会い同居した末に、殴り合い地下組織【ファイト・クラブ】を設立する。見ず知らずの男たちと殴り殴られるその痛みを通して生きる喜びを得ていくのであった。ある日、タイラーからクラブメンバーへ、「だれかに喧嘩を売って負けろ」という宿題が出される。“ぼく”がファイトの相手に選んだのは会社の上司。“ぼく”はそこで、最高の退職劇を披露する。

 

STEP1:上司の部屋に伺おう

f:id:sakabar:20141013212146j:plain

 

STEP2:上司の嫌味に耐えよう

f:id:sakabar:20141013212251j:plain

 

STEP3:社外秘の情報で脅そう

f:id:sakabar:20141013212727j:plain

 

STEP4:交渉しよう

f:id:sakabar:20141013212801j:plain

 

SUTEP5:怒らせて人を呼ばせよう

f:id:sakabar:20141013212936j:plain

 

STEP6:自傷しよう

f:id:sakabar:20141013213224g:plain

 

FAINAL STEP:自傷し続けよう

f:id:sakabar:20141013213455g:plain

 

これらの流れを踏むことで“ぼく”は電話、コンピューター、ファックス、一年分の給料、特待航空券48枚を手に入れ円満に退職。「余暇も大事にしたいあなた」が羨む生活を手に入れたのである。

f:id:sakabar:20141013214115j:plain

退職完了。晴れやかな顔だ。

 

 

激アツ退職その②

【FUCK YOU】

(映画『ウォンテッド』)

★こんな人におすすめ
  • 上司がムカつく
  • 同僚もムカつく
  • 職場での自分は本当の自分じゃないと思っている

 

主人公のウェスリーはルーチンワークにうんざりしている会社員。弱気な性格から、陰湿な上司の豚ババアに目をつけられ、勤務態度を叱責される毎日。パニック障害の兆候も現れているしこのままじゃストレスで死んでしまう。現在彼女と同棲中ではあるが、主人公の留守中に彼の同僚とこっそりファックにしけこんでいる始末。そんな同僚も同僚、人の彼女を寝取っておきながら飄々とした態度で友人面をしてくるし、なにかと主人公に奢らせようとしたり、下に見ている感満々で非常に不愉快。そんな鬱屈とした生活を送っていたある日、とんでもなくゴージャスな女に声をかけられるウェスリー。逆ナンかと身構えていると、彼が幼い頃に生き別れた父のことを知っていると女は言う。しかもその父が凄腕の殺し屋であり、つい最近殺されてしまったらしいのだ。自分はプロの殺し屋だった父の血を受け継いでいると諭され、自己肯定感を向上させたウェスリーは、その日以来、本当の自分はもっともっとすげえやつなんじゃないのか?という可能性に突き動かされ、退屈な職場に辞意を叩きつけることを決意するのだった。流れは以下の通りである。

 

STEP1:絡んできた上司に思いの丈をぶちまけよう

f:id:sakabar:20141013231406j:plain

 

STEP2:社内のみんなにも聞こえるように練り歩こう

f:id:sakabar:20141013231453j:plain

 

STEP3:憎い同僚に近づこう

f:id:sakabar:20141013231522j:plain

 

FAINAL STEP:Fuck You!

f:id:sakabar:20141013231714g:plain

結果、ウェスリーは誰にも舐められることなく最高に狂った退職をかましたのである。彼はその後、超絶ブラックな暗殺組織に転職し、映画後半では再度似たような行動に走るのだが、どこに行っても結局長続きしない流浪の民映画としても本作はかなり味わい深い。彼の場合、属するのではなく自ら起業するほうが性に合っていたのかもしれない。試行錯誤を繰り返し、ほんとうに自分に合った居場所を見つけるのも良いじゃないかと優しく伝えてくれる本作は、最高の退職映画と言えよう。

 

 

 激アツ退職その③

【人間関係総決済】

(映画『ある会社員』)

★こんな人におすすめ
  • 上司がムカつく
  • 会社の方針に疑問を抱いている
  • 人生を見直したい

 

殺人請負会社に勤めて10年の主人公ヒョンドは、共に仕事をした非正規の若者フンを会社の指示通り殺害しようとするが、命の危機に瀕しながらも家族へお金を届けて欲しいと懇願する彼につい情を働かせてしまう。フンのお願い通り、お金を手に彼の家族のもとを訪れたヒョンドだが、そこで出会ったのはフンの母で元歌手のミヨン。なんとミヨンはヒョンドが現在の仕事に就く前に心の支えにしていた一発屋の歌手だったのだ。かつて憧れていた人物との遭遇と、ビジネスのためなら容易く命を消費する会社の方針にうんざりしていたヒョンドは、第二の人生をスタートさせたい願望を強くする。しかし会社側がそれを許容するはずもなく、次第にヒョンドを追い詰めてくる。さらには、彼が非正規の「首切り」を先送りにしていたこともバレてしまい、いよいよ会社側は激怒。一度対峙してしまった以上、もう後には戻れなくなった会社に対し、社内一の社畜であったヒョンドは大胆な行動に出るのであった。

 

FIRST STEP:オフィスを襲撃しよう

f:id:sakabar:20141014000318g:plain

 

FINAL STEP:そのまま潰そう

f:id:sakabar:20141014000540g:plain

使い捨てられる非正規、現場経験の乏しい無能上司がのさばる、従うことこそ美徳といった現代社会における企業内の現実を批判しているのかなんなのかよくわからない不思議な映画だが、とにかくヤケっぱちになった人間の笑っちゃうくらいの無謀さを派手に描いている点を含め、圧倒的に清々しい本作。主人公が銃という名の辞表をもって弾丸という名の辞意を炸裂させまくるクライマックスには、その迷いのなさにこちらが狼狽えてしまうような迫力がある。出世したヒョンドのネームプレートが、部下の放った弾丸によって粉々になるシーンを入れたり、陰湿な上司との「仕事が好きな人間がどこにいる!」という赤裸々すぎる問答をしながらの殴り合いがあったりと、会社への不満をアクションという比喩に乗せて表現する勢いの良さとガッツは、辞意表明への一助にもなることだろう。ひとつ前に挙げた『ウォンテッド』のラストも、ほぼこんな感じです。

 

 


 

 

ということで常軌を逸した豪快な辞めっぷりばかりではあったが、世の中には創作内とはいえこれだけの辞め方が存在している。辞意を伝えるにはとてつもない気力を要するかもしれないが、彼らのとった突飛な行動を通して、少しでも前向きな気分になったりバカバカしい気分になっていただけたのなら幸いに思う。ぼくらが忘れてはならないこととして、苦手な上司や同僚といえど、いきなり自分の顔を殴り始める人間には呆然とするし、キーボードで殴れば歯が折れるし、銃で撃てばくたばるのである。上記の映画で表現されていたすべては、要するに強い強い意志であり衝動だ。あなたのその虎の目こそ、未来へと続く網膜スキャナー付きドアを開かせるのかもしれない。