MidnightInvincibleChildren

広瀬アリスは広瀬すずの夢を見るか?

 

大学受験以降、試験に合格できないカラダになってしまった。広瀬すずの活躍を見守る広瀬アリスのような気分で毎日を過ごしています。このまえ帰省していた兄を空港まで送るため車を走らせていたら、ロス市警並の車線変更をかましたワゴンに接触されました。幸いどちら側にも怪我はなかったけど、ぼくは事故に関する対応が初めてだったので超緊張。相手のおばあちゃんも事故のショックで超動揺。呼んだ警察にそれぞれの連絡先をメモしてもらい、あとは保険会社に対応を任せることにしてそのおばあちゃんとは別れました。現在ぼくは綺麗で燃費のいい代車に乗って、ユニクロまでドライブに出かけたりしています。

 

ユニクロにドライブしたついでに外で夕飯も済ませてしまおうと思ったぼくは思い出深いファミレスに寄った。そこは大学一年の夏休みに、集まったメンバーで十二時間ぶっ通しで涼宮ハルヒの話をした場所だった。当時のぼくは『涼宮ハルヒ』シリーズが世界で一番面白いラノベ&アニメだと思っていたので、「舞台は作者の出身地である兵庫で間違いない」とか「鶴屋さんの親は絶対ヤクザ」とか「長門キョンのことが絶対好き」などと気持ちの悪い話を十二時間もしていたのだった。途中「あ、さすがにそろそろきついな」と思った瞬間は度々訪れたものの、今となってはいい思い出。あの日クールだったメンバーたちは今じゃどこのファミレスでも見当たらないな。ぼくはチキンドリアを食べて帰った。

 

これも今週のことなんだけど、うちの母親をマルチに誘い入れた張本人である埼玉のおばさんを空港まで送ってきた。パンプスを買いたいというおばあちゃんも乗せて三人でのドライブだった。空港に着いて昼食をご馳走してもらっていると、そろそろかなと構えていた「マルチのセミナーにぜひ参加したほうがいい」話が始まった。ぼくはくるりの『犬とベイビー』における冒頭の歌詞と同じ気分になり、終始水を飲んではおかわりを貰うことで場を凌いでいた。すぐ横でなんの話をしているのかさっぱりという顔をしていたおばあちゃんが「そろそろ帰ろう」と言い出すまで、おばさんはしゃべり続けていた。おばさんはほんとうによく喋る。誰がどう見たって「きっつー……!」という顔を相手がしていようとも、それに気付かないふりをできるのが年の功というやつか。そういえば高岡蒼甫(現・高岡奏輔)主演の傑作『さんかく』の冒頭でも、気の弱い田畑智子をその親友である矢沢心ねずみ講に勧誘し、田畑側の付き添いである高岡蒼甫が帰り道で苦言を呈するといった場面が出てくるけど、ぼくはあのシーンが超好きだ。車で送ってやっただけでも感謝しろやと思いながらおばさんを見送ったぼくとおばあちゃんは、ほんとうになにもなかったかのように帰路につき、その途中でパンプスを買った。おばあちゃんの足のサイズは23センチだった。家につく直前でおばあちゃんが「あんたは運転が上手」と言ってくれたので、ぼくはマルチのことなんて忘れていい気分で過ごしていたというのに、その夜母親に「おばさんからなにか話聞いた?」と言われて「なにも……」と嘘をついた。マルチは人を不幸にします。

 

最近、ほんとうに気分が沈んだときなどに、自分がこれまで書いてきた小説を読み返して加筆修正をおこなったりするのにハマっている。小説の中の主人公はマルチにも悩んでいないし無職でもないし時間に縛られていない上に何度もやり直せるので勇気をもらえる。ただつい先日、ぼくが去年の十月に書いた小説を読み返していると、内容から当時の焦燥が見て取れて結果最低な気分になった。沖縄で米兵を殴った無職が逮捕時に「無職」と報道されることが嫌なあまり、仕事を探しに向かった東京でヤリマンと読モと半グレをボコボコにして朝方の新宿で途方に暮れるといった身も蓋もない内容なんだけど、最後の最後で脳みそが消えてしまったように堂々巡りを繰り返す主人公の姿にいまいち納得がいかなかった。ここはもういっそのこと、最高にポジティヴなバイブスを醸して幕を下ろすことにしてしまうべきだったんだと思った。「結局勝てない話」も嫌いじゃないけど、せっかく嘘をついているんだから世界の退屈な理に縛られたままで楽しいのだろうか? という最高にクールな視点に立ったぼくは、ヤリマンと読モと半グレをボコボコにした主人公が、束の間の高揚に身を任せ、朝方の知らない街を勇敢なリズムで歩いていくというものにしようと思った。そもそもヤリマンとか読モとか半グレを殴ったくらいで反省するような主人公、嫌だし。気が滅入るだけだし。

 

ほぼ毎日オナニーしてしまいます。達成感ややりがいとは縁がない日々を過ごしているうちに、オナニーの気持ちよさがピラミッドのてっぺんに君臨し、その席を他に譲ってくれないままでいるためだ。『イニシエーション・ラブ』を読んで「女子力が上がる!」などと迂闊なことを言ってしまう広瀬アリスは、LINEでの「ラブホ」発言が流出しても順風満帆な広瀬すずをどんな気持ちで見守っているのだろうか、などと考えながら、今日も射精。射精。射精。