MidnightInvincibleChildren

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観……た……!

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去る6月20日(怒)にマッドマックス 怒りのデス・ロード』IMAX3D版を鑑賞したところ、ぼくのIQがグングン上がってしまったため、今回の記事はとりたてて知性に富んだ内容となっているかと思われます。

 

鑑賞前より、試写等で鑑賞していた方々から発せられる「素晴らしい!」という賛辞の嵐に見舞われたぼくの心はすっかり貞操帯をつけられた美女のように潤いつつも固く強張り、「期待する恐怖」に震える夜をいくつも過ごす羽目となりました。もちろん予告の段階で目の覚めるような映像の乱れ打ちに血圧を上昇させていたのですが、とはいえ、とはいえと臆病風に吹かれるぼくは血圧を抑えるべく毎日水を大量に飲み始めた始末。水が貴重となった世界を描く『マッドマックス』を、まるで挑発しているかのような愚行。ぼくはすっかりボロボロだった。

 

いま思えばなんて馬鹿な男なのだろうと、自分をあざ笑うことだけで腹筋が割れてしまいそうだ。この映画はぼくのチンケな不安なんてハナから相手になどしていない。ものすごい勢いで突き進み、衝突し、突き破り、突き破り、突き破り続ける暴走車のように、ぼくの頭の中の取るに足らない雑念たちをスクラップへと変えていった。

うわああああああああああああああああ!

いまの咆哮に意味はない。ただ叫びたかったから叫んだまでだ。何度だって叫んでやる。ほら!(いまこれを書きながら叫んでいます)。人生最高!

 

まず驚いたのが、今作がとても美しい映画だったというところ。鑑賞前はこれでもかと野蛮で猛々しく残酷な映画だと思っていたし、実際に違うわけではないのだけど、本当に息を呑むほど美しい場面も山ほどある。むしろ野蛮で残酷で猛々しいシーンほど、そこに溢れる衝動たちに胸を打たれ美しく感じる。そうしたいと思ったら走るし飛ぶし殴るし蹴る。それで何が悪い。叫ぶしぶつけるし奏でてやる!ワー!!!みんな死ね!

 

この映画、誰ひとりとしてモタモタしない。序盤、烙印を押されそうになるマックスが砦の中を逃げ回るシーンですでに早回しが使われていてどんぐり眼。人の追いかけっこなんてカーチェイスに比べたらそりゃスピードの面で遅くなるのは当然なはずなのにワー!!!もう早い!もちろん狂気の改造車が入り乱れるチェイスシーンはとにかく衝突、大破の乱れ打ち。人間が車外にいるのは当たり前!ぶつかりゃ飛んでいくけど仕方ない!砦の支配者イモータン・ジョー率いる「ウォーボーイズ」は名誉の死を誇りとするマッドなやつら!みんなよく観てろ!派手に死んでやるぜ!ワー!!!本当に死んだ!!!

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この映画、例え敵であろうともその行動にこちらの感情が揺さぶられてしまうところが実に良い。大勢で出撃したかと思うとその中の一台に大量のドラムが備え付けられていて、士気高揚のためにみんなでドンドコやっているシーンなんか笑いながらも興奮で目に涙が浮かんでくる。なによりあのギター野郎!ずっと弾いてるんですけど!炎も出る!偉い!劇場にいた軽音部たちが嫉妬の炎を燃やしていた。

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 ここでマックスの魅力についても触れておきたい。今回はシリーズ初のキャスト変更がなされており、オーストラリアの暴れん坊メル・ギブソンからイギリスの多動野郎トム・ハーディにバトンが渡されている。かすれた声で愚痴をこぼしたり女相手だろうと容赦のない取っ組み合いを観せる一方、視線を交わすことで意思疎通を図ったり、渋い顔で遠慮がちに親指を立てるなど「森のくまさん」のような愛らしさを放ってみせる。美女たちに囲まれても「おれに構うな!」と警戒を解かない少年性も素晴らしい。あとこれに触れないわけにもいかないのだが、気高き女戦士フュリオサとの激しい攻防の末、奪い取ったグロックを自らの太ももでワンハンドコックしてみせるシーンの手際なんてワー!カッコイイ!!!献血をしたあとなんかは激しい運動を控えるように言われるものだが、生きた血袋にされていたはずのマックスは管を外した直後だろうと休むことなく激しい動きを見せまくっていた。彼が世紀末ヒーローたる所以なのである。

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女性陣の活躍も今作における重要なファクターだ。イモータン・ジョーからの信頼も厚い女戦士フュリオサ、演じるシャーリーズ・セロンの熱演も相まって本当に高貴。左の義手もかっこよく、目的地を目指し邁進する姿は今作のMVP間違いなし。ジョーの美人妻軍団もさることながら、シャーリーズ・セロンの美しさ(かっこよさ)は際立っていた。マックスの肩を銃座にして狙撃するシーンがすごく良いですね。ちなみに美人妻軍団の中では、個人的にあの白髪の生意気そうな人が好きです(オリジナルの祈りを見せたり、ある人物に植物の種を抱かせてあげる優しさで涙……)。

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ここまで今作の勢いのいい点ばかりを挙げてきた。しかしこの映画、荒々しい戦闘が去り、夜が訪れるや否やハッと息を呑むようなブルーに包まれる。束の間の静けさには荘厳さすら感じる。今作は映像がとにかく美しい。日中でも真っ青な空と黄色い砂地のコントラストが映え、加えて真っ赤な爆炎が添えられる。だからずっとリッチな気分!

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まだまだいいところは山ほどある。ぼくは観ているあいだずっと興奮で感極まり、ついには一瞬だけゲロを吐きそうになったほどだ。でもここで一から十まで論うのは野暮だ!というか、観ればわかる!観なきゃわからない!ストーリーもちゃんとある!怒り、拳を固く握るはずだ!触れていないトンデモ要素も山ほどあってウワーオとなること請け合い!ちょっとでも気になるのなら劇場に急いで損はない(はず)なのだ!

 

ちなみにぼくはあと数回ウワーオとなる予定でいる。今作の鑑賞後、震える足を引きずって歌舞伎町のキャッチロードを歩いていると、高音で笑いながらキャッチの腕を掴んで離そうとしないマッドネス・ババアを見かけたのですが、「なんか物足りないなあ」と思う程度にはIQと精神のタフネスが向上します。つまり観れば観るほどどんどん賢く、どんどん強くなる。まるで『さんねん峠』みたいな映画ですね。これを観たあとなら『スカーフェイス』のクライマックスのような大暴れも可能!心の中のイモータン・ジョーに「Say hello! My little friends!!!」と言いながら何も持たずに飛び蹴りしましょう。困っている人がいたら力を貸し、立ちはだかる敵に対しては始めこそ逃げちゃったとしても戻って皆殺しにすればオールオッケーなのだ。またひとつ生きる技を映画から学んでしまった。とどまることなくこのフューリーロードを突き進んでやろうではないか。