おれたちゃパジャマがユニフォーム/熱血治験レポvol.1

 

 


Radiohead ~ You And Whose Army (Kingdom of ...

 

金が必要なのだ。虎の眼で東京の街をさまよい歩くぼくは、職なし金なし希望なし。何が正しいのかを判断する利口な脳みそも持ち合わせていないため、衝動的に人を殴り、殴られ、女を抱いた。こんな日々いつまでも続くはずがない。西村賢太の小説を読みながら恵んでもらっている布団の上で丸くなれていることに感涙しつつもこのままじゃダメだ、もうあの手を使うしかない、そう思い喜んで禁忌へと飛び込むことにした。上等だよ。おれは健康優良モルモットだ。

 

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①治験情報紹介サイトに登録

ぼくはまずインターネットで「治験」と検索した。世の中には治験の情報を紹介してくれるサイトがあるらしいので早速登録。ここで登録料なるものをとるサイトもあるようだけど、ぼくの選んだサイトではそんなものはなかった。タダで紹介してもらわなきゃ、モルモットになる意味がない。

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②治験情報紹介サイトから病院を選出

そもそも治験は「どこで行われているものなのか」を知らなければならない。大手製薬会社が市販する新薬のテストをしていたり、既存の市販薬の更新を行うためにテストをしたりなどもあれば、医療現場において薬の効果などのデータを取る際にテストを行うなど様々だ。ここでぼくは気になった実施団体を片っ端からネットで検索し、評判をチェックしてみた。その中で入院中の生活の様子など、なんとなくイメージを固めることもできるのだ。ぼくは評判の良かった医療法人の行っている治験にメールによる申し込みを行った。もちろん人数によっては選考から漏れることもあるのだけど、同時にいくつかの治験を行っている場合がほとんどなので、こちらの希望を伺いながらそれらのうちどれかに食い込めたりもする。2日ほどすると病院側から電話があり、ぼくは希望したやつとは違う治験に参加することが決まった。

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③事前の健康診断

 薬を試す上で、健康状態は重要である。ぼくははるばる治験会場でもある病院へと赴き、健康診断を受けた。身長体重から血圧、尿検査、心電図、採血といった感じだ。前日は夜の九時から絶食。大量の水を飲むよう指示があり、当日の朝も空きっ腹に2リットルほど水を飲むように言われていた。恐らく血がサラサラになるのだろう。看護師さんは若い女性が多く、ぼくは血圧で引っかかってしまった。「緊張してますか」と腕を揉んでくれる看護師さんに対して、頬を赤らめ乙女のようにウブな気持ちになった。この日は健康診断に併せて、治験で使用する薬の説明がある。冊子を渡され、どのような目的か、どういった効果がある薬か、副作用はあるのか、謝礼はいくらなのかなど丁寧な説明がなされる。ぼくが服用する予定の薬は、血中のなにかを上げるか下げるかする薬だった。副作用といえば、やや下痢っぽくなる人が出たり出なかったりと、そんな感じだった。日程は4泊5日を2回。通院1回。説明を受けながら、首の関節と拳を鳴らした。

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④入院までの日々

健康診断で無事に通過したかどうか、後日病院に確認の電話を入れなくてはならない。ぼくはなんと血液検査で引っかかってしまったので、再検査に赴いた。健康診断前は筋トレをするなと言われていたのに、ダンベル運動をせっせと行っていた結果が血中に現れていたのである。再検査をなんとかパスしたぼくはいよいよ入院に向けて身体づくりを始める。脂っこいものや塩分糖分を摂りすぎず、酒もダメ。カフェインも控えるように言われ、飲み物といえば水か麦茶。動物性タンパク質を摂りすぎることにより血中のなんとかが上がることも避けなければならないので、とても健康的な生活を送ることとなった。

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⑤入院当日

ぼくは入院生活に備えてあるものを用意した。それは古本だ。読みたいと思っていた本を買い込んで、日がな優雅に読みふけろうという算段だ。それからパソコンも持込み、創作活動にも勤しんでやろうと思った。結果、荷物は重くなった。本もパソコンもかさばって鬱陶しい。ちなみに入院中はむこうが用意してくれるパジャマに身を包むので着替えは行き帰り分持っていれば問題ない。そのかわり下着は山ほど持っていった(もらすかもしれないと不安だった)。

当日もぼくは水だけを摂取し、病院に到着して早々に尿、血液、血圧などを検査する。ここで引っかかったら当日帰宅を余儀なくされたりもするらしい。ぼくは問題なかったのでそのまま病室へ。部屋は共同。まずベッドにいくと用意されていたパジャマに着替え、番号の入った札を首から下げ、スリッパで院内を移動。スケジュール表が壁に貼られているので、それをチェックしながら空いている時間は基本好きに過ごさせてもらえる。もちろん運動はダメだけど、院内には漫画も数多くあるし、談話室的なところにテレビもあるので、時間はいくらでも潰せるのである。

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⑥入院生活

ぼくはとにかく持参した本や漫画を読み漁った。漫画で言えば『新宿スワン』を読んだ。『うしおととら』も読んだ。あとは適当にいろんな漫画の1、2巻を読んで次といったスタイルですごしていた。驚くべきことにゲームまである。プレステ2で『バイオハザード4』をプレイした。でもメモリーカードがないので、進んだところでセーブはできない。刹那的な遊び方である。

食事はお弁当が支給される。栄養バランスが計算されているので残すことは厳禁だが、おいしかったので問題はない。お風呂は予約表に記入して入るシステム。一人30分。洗面台はずっと解放されているので、顔はいつでも洗い放題だった。

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⑦薬

2日の朝に薬を飲んだ。粉薬で、決められた分量を残すことなくきっちり水で飲み下し、その後、何度も採血を行った。同じところに針をブスブス刺すわけにもいかないので、プラスチックの細い管を血管に刺しっぱなしにし、そこに通したチューブで定期的に血液を採取することとなった。ぼくは自分の血がチューブを出入りするさまを見ていると気分が悪くなったけど、見なければいいだけの話だ。前かがみになった看護師さんの垂れた前髪の揺れを眺め、ぼーっとすることに専念した。ぼくは末端冷え性なので、血の出が悪くなることが多々あり、その都度看護師さんに腕をもんでもらっていた。でも血管に管が刺さった状態で揉まれるとなると、素直に喜べるわけでもなく、ずっと平静を装っていた。生理食塩水でチューブ内の血液を押し返す際のひんやりした感覚は気持ちよかった。

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⑧謝礼

謝礼には様々な受け取り方がある。まず健康診断に赴くだけで交通費3000円が手渡しされる。お金をもらって健康状態を確認できるので、これだけでも素晴らしいことだ。

また、一度目の入院期間が終了し、退所する際にも10,000円が手渡しされる。残りは二度目の入院終了の際に、事前に伝えておいた口座に振込まれるといった手はずだ。もちろんこれは治験内容によって様々ではあるが、結果としてぼくは計10万近くの謝礼金を受け取ることができた。その間のぼくはというと、本を5冊読み切り、数々の漫画の冒頭部に触れ、たっぷり睡眠をとるなど、超健康的な生活を送っていたのである。

 

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ざっくりとここまで書いてきたが、以上がぼくの体験した治験の現場である。治験に参加したいけどなんだか怪しいので迷っている、そんな誰かの参考になれば幸いである。お金をもらって健康診断を受けるという最初の部分だけでも十分お得だと思うので、ぜひお試しあれ。ちなみにぼくは副作用か、女性に対してちょっと怒りっぽくなりました。