ベスト10選評
10位:『誘拐の掟』
『ラン・オールナイト』も素晴らしかったけど、個人的な好みとしてはこちら。ド外道の手がかりを追って薄汚く寒々しい街を私立探偵が黙々歩く。それだけで楽しい。幸せ。「7:30」a.k.a.鬼畜なサイコ野郎である犯人コンビが獲物となる少女に出会ったその瞬間、ドノヴァンの『アトランティス』が流れ出すシーンの不謹慎な高揚感が忘れられない。45口径をガンガン撃ちながら強盗を追い詰める冒頭やDEAへのガラス越し顔面パンチ、ホームレスの少年との交流、地下室の惨劇など今振り返っても好きなシーンがたくさん。
9位『ハッピーボイス・キラー』
なんといってもエンディング。謎の多幸感に苦笑しながらも号泣。ぼくにはこの主人公を身勝手な人間だと切り捨てることができませんでした。
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8位『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
前作も最高だった『M:I』シリーズ最新作。もはやトム・クルーズは観客に「どうかしている……」と思わせる天才になってしまったので、こっちの心配もよそにどんどん次のステージへと進んでいってしまうが、その姿はずっと見ていたくなるような謎の多幸感で溢れている。本人が喜々としてやっているからなんだろうけど、超人でありながらも今作では引き立て役を買って出るなど実にスマートな余裕まで見せてくれて、それがまたたまらない。ジャッキー・チェンに次ぐエンタメ・クレイジーなトム・クルーズにはまだまだ死んでほしくないけど、次回作だってこの高すぎるハードルを越えてくれるんじゃないか、まあ越えるんだろうなと思わずにはいられないのであった。あとレベッカ・ファーガソン、超好き。足を引っ張る女性キャラなんてとっくに時代遅れだと、超大作映画がどんどん宣言してみせる年だった。
7位『ナイトクローラー』
「進めサイコパス!」映画。おぞましい一方で痛快なところもたまらないですね。
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6位『ハイヒールの男』
「どこまでが真面目なんだ……?」と思わせつつも、作り手の迷いのなさで一切白けることなく突き進む怪作。同じ枠に『神の一手』もある気がしますが、主演俳優のアンニュイで色っぽい表情と繰り出すアクションのキレが好みだったので、こちらを選出。ブスなオカマにビンタしてはっとしちゃうシーンなんて何度でも観たい。
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5位『ストレイト・アウタ・コンプトン』
ヒップホップ弱者であるぼくだけど、創作することにまつわる快感であったり、大きな流れの中にいる高揚感、なによりぼくの大好きな青春の黄昏を描いているところがたまらない。実録ものは大体そうなんだけど、この映画でもエンドロールで号泣しました。それにしてもアイス・キューブの息子、似すぎだな~。
4位『キングスマン』
ぼくは「ざまあみろ!」って気分になりたくて映画を観ているところがあるので、この映画におけるある「ざまあみろ!」シーンには感涙。教会大殺戮シーンなどもそうだけど、不謹慎で軽薄なものだからこそ表現できたこの映画の豊かさをかなり楽しみました。
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3位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
全水準が高騰している奇跡のような映画なのは言うまでもないけど、パーソナルな部分に引き寄せて拳を握ることだってちゃんとできたところもありがたい。走って撃って飛んで壊す。小賢しいセリフ抜きにあれだけのことを繊細に語り切った作り手たちの手腕にも感服仕り候。層が厚すぎてめまいがします。
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2位『クリード チャンプを継ぐ男』
数多の熱いシーンもさることながら、さりげない演出の数々も心憎い一本。何人かの方も感想でおっしゃっていたけど、この映画はゆとり世代と揶揄された経験のある人なんかにこそ観てほしい。ぼくは泣き腫らした虎の目で劇場を後にしました。いまここで新しい物語が動き出したのだから、これから戦っていかなければならないぼくらも階段を駆け上がり、開けた視界に広がるフィラデルフィアの街並みを共に望もうじゃないか。ロッキー・バルボアはちゃんと存在しているんだぜ!
1位『恋人たち』
誰かに話を聞いてほしい人々のままならない日常と、ちょっとした折り合いのつけ方は、普段ぼくらの生きる世界ではあまりにありふれていることだからこそ、映画として目の当たりにすることで強烈に身につまされる。とにかくぼくなんかは人の痛みに構ってられるほど強くないから、だからこそ、この理不尽な世界でどうにかこうにか生きていられるんじゃないかと思う一方で、人のなんてことない言動の中に、温度のある光のようなものを見いだせて初めて、今日は空が綺麗だとか、連なるように視界が開けていくのかもな、とも思う。以下、人生は続くのでした。
いろいろアワード
2015年も数多くの映画に出会えました。全体的に新しい時代の幕開けを告げるような映画を多く観たような印象です。また新しい一年が始まります。それではみなさん、良いお年を!