橋本環奈のことを考えながらご飯を食べることは胃に優しい。それだけ時間を忘れて咀嚼してしまうからである。咀嚼回数は多いほうがいいらしいので、橋本環奈について考えることは、すなわち健康増進への第一歩なのだ。
ぼくは昨年末にOVERTUREという名の雑誌を購入した。多くのアイドルを特集している雑誌だ。その2015年12月の号には特集として、プロインタビュアーである吉田豪氏による橋本環奈インタビューが掲載されていた。ぼくが橋本環奈について知っていることといえば、彼女がものすごく可愛いということだけだ。それで充分だとも思っていたが、ここは勇気を出してその内面も覗いてみようと思った。
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ちなみにそのインタビューは本当に素晴らしい内容だったので、気になる人はぜひ雑誌を買って隅から隅まで読んでほしい。以下には、ぼくがインタビューを読んで見つけた印象的な発言や新たに知ることのできた情報、ぼく個人の思ったことなどをざっくばらんに書いていきたいと思う。(出典:「アイドルであり続けること」橋本環奈×吉田豪 【OVERTURE No.005】 )
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インタビューではまず、彼女の普段の言動などに触れている。以下引用。
(ブログやインタビューでの発言なんかを見ていてもネガティブな要素がゼロと言われ)
私ですか? そうですかね?
この堂々たる態度にやられる。
(戸惑いや不安があってもリアルタイムで発言しない姿勢を指摘され)
言いたくないです。だって言葉は悪いですけど、ウザくないですか?
かっこいい!
(悩みとして過去に挙げられていたことが、「ほくろが多いこと」くらいだったことを指摘され)
そうそうそうそう! すごくしょうもない悩みですみません(笑)
んなことないよほくろもすごくかわいいよ。
(自分を売るよりもメンバーを紹介していきたいという思いがすごく伝わると言われ)
なんでわかったんですか(笑) 私はグループで売れたい気持ちもすごくあるし、いまはこの形だけど、メンバーひとりひとり個性があるから、それはやっぱりみなさんに伝えていきたいじゃないですか。だけどすっごい一部ですけど、「もっとメンバーの名前を出したほうがいいんじゃないか」とか言われて。私、言ってるけどなと思いつつ。だからそれは伝わってないのかなって。
メンバーへの熱い思いを吐露する一幕。後半ではやるせない感情を覗かせている。ぼく自身、「もっとメンバーの……」とか言っている「すっごい一部」の連中に対する激しい怒りを禁じえない。物事の上澄みのみ汲み取って、鬼の首を取ったかのように大声を上げているだけの愚か者に違いないので、決して許してはいけない。しかし、それでもファンを喜ばせることが第一だと言い切る彼女の姿勢には、激しく感服する次第である。
まずライブに来てほしいっていう気持ちが一番大きいんですよ。観てほしいし、観ずしてほかのメンバーどうこうって 書いてる人はちょっとなって。まず知ってほしいです。
この発言を読んだ直後、ぼくはTwitterでRev. from DVL全メンバーのアカウントをフォローしました。
(メンバーに会わないだけで寂しいという過去の発言について)
ああ、なんか寂しくなっちゃうんですよ、あのうるささがいいというか。
彼女のメンバー愛に疑いの余地はない。
(グループ名、よく間違われないかという質問に対して)
はい。「Rev.fromデビル」って呼ばれたりしますけど、REVってハイチの言葉で夢っていう意味がありますし、レボリューションの略でもあって。そこにはすごく思いはこもってるので……革命を起こしたいですね。
後半でいきなりチェ・ゲバラになる彼女。内で滾る魂の熱さを垣間見せた瞬間である。
(垣間見せる気の強さから九州女的な部分はあるのかとの質問に対して)
ああ、でもよく言われます。九州って、九州男児で亭主関白が多いって思われがちですけど、九州男児より九州女子のほうが強いんですよ。みんなお母さんのほうが強いって言いますし、私もその血は受け継いでるかもしれない(笑)
襟を正さずにはいられない発言である。
(同じ福岡出身の漫画家、松本零士の口癖が「ぶち殺すぞ」であることに関して)
あの……私、そんな言葉は……。
(「福岡の人間にとっては挨拶代わりだ」という松本零士の発言を伝えられ)
ヤバいですね。訂正させてください! そんなことはないです! 女子はそんな言葉は遣わないですね(笑)
男子に関しては否定していないところが心憎い。ちなみに橋本環奈の映画初出演作である『奇跡』(監督:是枝裕和)では、「バリクソいてえ」という彼女のはつらつとした発言を聞くことができる。
その後、インタビューは昨今のアイドルブームとその終焉の気配について踏み込んでいく。それに伴い、彼女の考えるアイドル論に関しても、次々と熱い発言が飛び出す。インタビューを読む限り、橋本環奈はアイドルという生き方に真摯に向き合っていることが明らかである。それもまた闇雲なひたむきさとは違い、自分の進むべき道を冷静に見据えるクレバーさが感じられるところも素晴らしい。ある時期を境に「私もうアイドルじゃないんで~」とか言い出すようなタイプに関してはっきり「嫌」だと言ってのける姿勢にも一切の迷いがない。アイドルを辞めるときも「夢のない辞め方」だけはしてほしくないとの言葉に対しても、あっさり同意を示す。ここでさらにインタビュアーの吉田氏は踏み込む。彼女が好きなタイプについて「器の大きい人」を挙げていることに関してである。彼女はここでもブレない。
だって好きなタイプを聞かれたらそう答えるしかないんですよ。特にないから。いま興味がないっていうのもありますけどね。
どこからでもかかってこいと言わんばかりの、その態度。「神様!仏様!かんな様!ちっちゃいけど態度はデカイw」というキャッチフレーズに負けない威風堂々。彼女に認知すらされていないぼくが言うのも至極おかしい話ではあるが、彼女の眼中にないことがこんなにも嬉しいなんて、不思議な気分である。ここまで開かれた存在となると、もはや彼女が神々しい概念のようにすら思えてくる。ちなみに彼女は、好みのタイプを聞かれて身長何センチ以上だとか、かっこよくて脚が長くてだとかをピーチクパーチクのたまってせめてもの夢さえ抱かせないアイドルに対してもはっきり「嫌ですね」と言ってのけている。ありがとう。本当にありがとう。肩こりが治りました。腰痛が嘘のようです。慢性鼻炎が気にならなくなりました。心が穏やかになりました。人に優しくなれました。空を覆うような寂しさが晴れました。いくつもの眠れない夜がなんてことのない過去になりました。ちょっとだけ頑張ろうと思えました。言い訳より先に頑張ってみようと思いました。
2016年。
ぼくらの新しい年が始まる。