残酷で陰鬱でリッチなドラマ『ハンニバル』 にどハマリしたぼくは、変に間をあけてはならぬと意気込み、世に言うIkkimi(一気観)を敢行したのであった!
【警告】以下ネタバレあり
season1~2までのあらすじ
FBIアカデミーの講師ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)は、自閉症スペクトラムの一種として異常なまでの共感能力を有していた。そんな彼の能力を買ったFBI行動分析課のボス、ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は、アメリカ各地で起こる事件の捜査協力者としてウィルの起用を提案する。しかしFBIコンサルタントで元心理学者のアラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)は精神的な負荷を懸念してウィルの起用に反対。そこでジャックは起用の条件として、高名な精神科医ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)にウィルの精神鑑定を依頼。かくして全米各地で起こる猟奇事件の捜査が始まるのだった。
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しかし、最強極悪サイコパス・レクターの策略により殺人の容疑をかけられたウィル。彼は拘留中の身でありながら殺人事件を解決に導いたり対レクター用サイコパスを送りつけるなどして善戦。なんとか無実も証明されて釈放となった彼は、いよいよレクターと全面戦争を始める……かと思いきや、そこに食肉加工会社を経営する変態大富豪メイスン・ヴァージャーが登場。ウィルは彼の妹マーゴを妊娠させたり、どういうわけかレクターと蜜月の時を過ごしたりと大忙し。挙句の果てにはレクターといっしょに海外へ逃亡しようとの計画も動き出す。バカ!しっかりしろよ!しかしすべてはレクター逮捕のために仕組んだ作戦だった。決戦の夜、FBI捜査官のジャックとレクターは激しく殺し合い、それを目撃したアラーナはレクターに篭絡されたアビゲイルに二階から突き落とされ、遅れて駆けつけたウィルもレクターの華麗な手さばきで開腹、追い打ちをかけるように目の前でアビゲイルの首まで裂かれてしまう。
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まんまと逃げおおせたレクター博士は、海外行きの飛行機の中で、かつて自らのセラピストだったベデリアと談笑するのだった……。
レクター逃亡編
おい、レクター!
ということで外国逃亡中も次から次へと人を殺し食すハンニバル・レクター。しっかり職に就いているという点からもその常軌を逸したバイタリティがうかがえます。なめた若造を殺害するまでは百歩譲るとしても、派手に装飾して人目につく場所に飾っちゃったらFBIは絶対気づくと思うんですけど、リスクをおかしてどうなるか、どう逃げおおせるかを考えるのが好きなんでしょうね。それともほかの意図が……?前シリーズのラストでめちゃくちゃにされた面々の安否が不明なのが気になるところです。
舞台をヨーロッパに移したことで全編厳かな雰囲気漂うあたりも癪に障りますね。
待ってました、我らがウィル・グラハム!
復活して早々にイタリア・フィレンツェを訪れ得意の見立てを披露していました。骨を砕き、皮を剥いで綺麗にたたまれた「心臓」がレクターから自分へのメッセージ。そんな彼を「許す」というウィル。なんだかラブストーリーのそれですが、アビゲイルも殺されているんだし、ちゃんと厳しく接してほしいものです。
レクターの過去を調べるウィルの目の前に現れた千代。演じるTAOさんは『ウルヴァリン:SAMURAI』 でウルヴァリンと逃避行する女性だったり『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』 でレックス・ルーサーの秘書を演じていた方です。ハンニバル・レクターといえばおばさんが「紫」という名前の日本人なのでその人の子供か孫か親戚とかでしょうか。
一方、満を辞してジャックの登場です。生きててよかった。元気そうなのもそうですけど、すっかり「虎の目」になっていたところも痺れますね。
イタリアに集う主要メンバー。嵐の予感がします。
ハンニバル・ハント編
レクターにひどいことをされた面々が集っての復讐大会。
金と暴力にものをいわせるメイスン。
「二度目はそうはいかない」とばかりに知略を巡らせた容赦のない攻撃でレクターをボコボコにしてみせたジャック。
肝心のウィルは……千代に邪魔されたあげくに開頭されかけ、さらには顔の皮まで剥がされかける始末(ぜんぶ未遂)。傷だらけのヒロインって感じでしたね。一連の話は映画『ハンニバル』 でも描かれていたものですが、メイスンのたどる結末に関しては原作通りみたいです。
そんなこんなでウィルにふられてしまったレクターは、ついに逮捕されます。これまでに一体何人の犠牲者が出たのやら。ここからはいよいよ映画で描かれてきたような、安楽椅子探偵ライクなレクターが拝めそうで、一安心です。
レッド・ドラゴン編
ついに 映画化もされた『レッド・ドラゴン』編に突入です。
身持ちを固めたウィルと、精神病院でも相変わらずのレクター。捜査に乗り出すにあたって、ふたりは久々に再会するとのことですが、嫌な予感しかしません。ウィルに家族がいるなら尚更です。
一方で、「噛みつき魔」ことダラハイド。しっかり身体を鍛えているのは、どういうことなんでしょうか。タトゥーを綺麗に見せるためなのでしょうか。変身願望のある人物なので、そういった心理から鍛えているのかもしれません。ぼくも嫌なことがあった日のあとは、髪を切ったりお風呂に入ったり筋トレしたりと、自分を「更新」させるのでなんとなく気持ちがわかる気もします、という余談。
映画と同じように物語が進んでいくので、思い出しながら楽しんでいます。ダラハイドと女性の物語は結構切なかった気もします。孤独な魂が共鳴して、そこにひとつの美しい瞬間が生まれるのであれば、それはそれで物語としてひとつの完結を迎えたっていいとぼくは思いますが、残念なことにこの世界にはレクターがいるんですね。混沌をもたらして楽しむという、その実子供っぽすぎる幼稚な欲求に辟易します。ダラハイドもレクターなんかを崇拝しなければ……。
悔やまれます。
やはりダラハイドとリーバの関係は切ないですね。後半ではまさかのウィルとダラハイドがエンカウント。ウィルはぶん投げられていました。やはり体を鍛えていることもあって、ダラハイドはフィジカル面でも強敵なのかもしれません。
でましたね、レクターの悪行。しかしウィルの奥さんが肝っ玉母さんでなによりでした。とはいえ重傷を負い、息子は父の過去を知ってしょんぼり。散々です。
残すところあと2話。この時点ですでに映画とは違う「レッド・ドラゴン」との決着のつけ方に期待が高まります。
チルトン博士はこのシリーズ一不憫です。かつては殺人鬼に腹を割かれて臓器を取られ、レクターに罪をなすりつけられた挙句に顔面を銃撃されたかと思えば今回の仕打ち。あんまりですね。すべてはレクターが醸すバイブスとそれに感化された周囲の責任。ということで相変わらずハンニバル・レクターへの怒りに燃える回でした。にも関わらず、ウィルはといえばレクターからの愛に気づいてハッとするなどずいぶんと暢気なものです。
ということでついに次回で最終話。大団円と行くのでしょうか。
最終回ということもあって「レッド・ドラゴン」の恐ろしい戦闘力が発揮されていました。ドライブバイで車列を混乱させたあと、いったい何人の警官を射殺したのでしょうか。なんにせよ、そこから始まるウィル&レクターの逃避行に愕然。なるほど、というか最初の方からずっと気づいていましたが、作り手は今作を倒錯したラブストーリーとして描いていたようです。そういう意味ではジジイの目線で見た『殺し屋1』 みたいなもんですね。仲違いばかりしていたふたりが、最後の最後に協力して恋の邪魔者をボコボコにする。美しいと思います。
全話完走の感想
は~終わった!
ということで『ハンニバル』season3もこれにて終了。打ち切りだなんだという噂は耳にしていますが、このラストを見ると初めから終わらせる気満々だったようにも思えます。撮影中に打ち切りが決まったからこのオチにしたとかそういうことでしょうか?どちらにせよ、物語的なオチもついてぼくは満足です。
全39話を鑑賞したことになるのですが、season1の「びっくり猟奇大会」みたいなテンポが個人的には好みですね。様々な死体を見ているだけで元が取れる、といった気持ちになれました。レクターに厳しくしろ!との思いはモーフィアスことジャック・クロフォードが代弁するかのように熾烈な暴力をお見舞いしてくれたのである程度満足です。それにしてもseason3の最終話のタイトルが『羊の怒り』ということなので、どうしたって『羊たちの沈黙』 を意識せざるを得ません。やはりseason4の制作は念頭に置いていたのかも。噂では、いろいろと準備さえ整えばseason4だってやるよ、と製作者の方がおっしゃっていたそうなので、俄然期待しておきます。それまではトマス・ハリスの原作 でも読もうかな。クラリス役は誰になるのでしょうか、とかそういうことを考えながら、準備を整えておきましょう。
バッファロー・ビルのチン隠しダンスは絶対観たい!!!