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2016年公開映画ベストワーストいろんな賞

 

 

【2016年公開映画ベスト10】

 

   1位 ボーダーライン

 2位 デッドプール

 3位 この世界の片隅に

 4位 アイ アム ア ヒーロー

 5位 映画 聲の形

 6位 ドント・ブリーズ

 7位 永い言い訳

 8位 ヘイトフル・エイト

 9位 マジカル・ガール

  10位 COP CAR コップ・カー

 

 

ベスト10選評

 
10位:『COP CAR コップ・カー』

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 なんにもないド田舎で繰り広げられる悪ガキ二人と汚職警官の攻防。些細な思いつきでも招く結果はしっかり凄惨。それでいて、ドライなテンションの果てに待つあの街の景色には強く胸を打たれます。創り手の眼差しに、かっこいい優しさがあったもんだと胸がいっぱいになりました。

 

 

9位:『マジカル・ガール』

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怖い夢を見て目覚めた夜、なんでもない暗がりに気配を感じたりする全自動想像力というものが僕らにはあるので、気にもとめなかった会話、ちょっとした仕草、あのドアの向こうに各々の絶望を見る。雨の有楽町で溜息が漏れるほどの不穏を味わいました。最高です。

 

 

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 長い長い映画だけど、ラストで味わうあの突き抜けるような感動は何なんだ。なんかもういろいろあったし、超疲れてるからいがみ合う体力もねえや、みんなおつかれ!という境地に観客を連れて行ってくれる、心洗われるような一本。大好きです。

 

 

 

7位:『永い言い訳

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「空っぽな人間」だからなんだってんだ。誰かにとっちゃどうでもいい。そんな誰かに触れることで、義務めいた雑念なんて一蹴できるかもしれない。そこから始まる何かがあるかもしれない。身につけた自己嫌悪なんて脱ぎ捨てて、いまそこにいる人たちと生きてみようと思えてくる一本。

 

 

 

6位:『ドント・ブリーズ』

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これを作ったことがもうかっこいい。そう思わせてくれる映画が今年は何本かありました。本作もそのなかのひとつ。 与え楽しませるのも技術で、その技術がスマートでありながらも、時に身の毛もよだつような逸脱まで見せてくれるのであれば文句なしでしょ。ということで最高に楽しんだ一本。超キモかった。

 

 

5位:『映画 聲の形』

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原作漫画にいたく感動した身としては映画『たまこラブストーリー』 を撮った山田尚子が監督を務めるという前情報で期待を大きくしていたのですが、いやあ、良かったですね。めちゃくちゃ居た堪れなくて。鑑賞時、とんでもなくささくれだった気分だったのに、気がつきゃ夜の池袋をズンズン歩いていました。僕も落ちていく誰かに手を出す勇気がほしいし、落下する僕を見てそう思う誰かがいてくれたらどれだけいいかとも思う。

 

 

4位:『アイ アム ア ヒーロー』 

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 漫画原作が完結していないのに映画化なんて尻切れトンボになるか続編つくるかのどっちかじゃん……と思って鑑賞したところ、非常にガッツ溢れる傑作でした。タイトルにテーマを絞るという英断。僕らの見知った「日常」の崩壊。なかなか火を吹かない猟銃。大泉洋の背中の眩しさ。なめててごめんなさい。最高でした。

 

 

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これも『ドント・ブリーズ』と同じで、物語の中身もさることながら、これを創りあげ、世に出したことそのもののかっこよさを感じた一本。当時の世界を描き、笑って怒って泣いて笑う。そんな日々の営みすべてに慈しみを持って触れたような感覚。膨大な情報なのに、圧があるのに、ずっと優しいままのその佇まいは畏敬の念を覚えるほど。能年玲奈の演技も含めてあまりにもたくましい映画だと思います。 

 

 

2位:『デッドプール

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不謹慎なふるまいもたまにすべる軽口もすべてがいじらしい。僕は誰よりも照れ屋なデッドプールが大好きだ。 好きな人と好きなところで幸せになってほしい。いや、なるべきだ。邪魔する奴はひとり残らずぶっ殺せ!

 

 

1位:『ボーダーライン』

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 私利私欲と際限のない暴力がひとつの機関となって回り続ける麻薬ビジネス。その渦中に放り込まれたFBI捜査官の視点で描く「狼」どもの世界。めそめそ泣こうが誰も相手にしない殺伐と、美しい撮影、わかりやすいのに重厚な演出など、ゾクゾクがおさまらない強烈な一本。ベネチオ・デル・トロの暗くて深いあの瞳が、銃口のようにこちらに向けられていて、ずっと気が気じゃなかった。

 

 

 

いろんな賞

 

【ベストガイ賞】

『映画 聲の形』より

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永束友宏(CV.小野賢章 

出てくるだけでもう泣きそうになります。『シークレット・サンシャイン』ソン・ガンホもそうですけど、無邪気でちょっと鬱陶しいけど、それでもそばにいてくれる誰かって最高ですね。

 

 

 

【ベストガール賞】

 

セーラー服と機関銃-卒業-』より

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星泉(橋本環奈)

 

 

この世界の片隅に』より

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浦野すず⇒北條すず(能年玲奈⇒のん) 

 

細かいことは下に貼った過去記事でも述べているのですが、ベストガールに選出させていただきましたこのお二方、実を言うと「まあまあやれてたらそれでいいかな」というどうしようもなく失礼な態度で臨んでしまったキャラクターでもありました。でも!バカが!演じる彼女らのポテンシャルを見誤った自分の薄汚い心に蹴りを入れ、この場で心より感謝の気持ちを伝えたいと思います。橋本環奈はその勝気な性格をうまく取り入れ、薬師丸ひろ子版とは一味違う星泉を演じきっていました。そしてのんこと能年玲奈も、キャラクターのちょっとした感情の機微まで大切にすくい取り、「ぼーっとしている子」の胸の内まで見事表現しきっていて打ちのめされてしまいました。本当にありがとう。ふたりとも来年も大暴れしてくれ。

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

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【ベストビッチ賞】

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デイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー 

ジェニファー・ジェイソン・リーってほうれい線と顎の突き出し方がたまらないですね。騒ぐたびぶん殴られる、というシーンでも悲壮感がない、最後まで憎たらしいキュートな役でした。

 

 

 

【ベストタンクトップ賞】

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この肩幅と二の腕!

 

 

 

【ベスト無職賞】

『オーバー・フェンス』より

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白岩義男(オダギリジョー

函館で失業保険を頼りながら職業訓練校に通う男。なにもない部屋。ビール2缶とコンビニ弁当。地味な色のポロシャツ。夏の函館を彷徨うその姿は、どうしてあんなにも色っぽいのでしょうか。なめた態度の若いおねえちゃんたちに静かにキレる場面もグッときます。僕も夏の函館で無職として過ごしたい。そんな憧れを抱かせてくれました。函館いきてえ。

 

 

 

【どうしようもないクズ賞】

軽薄で卑怯で欲望に従順な虎の威を借る大馬鹿野郎。目の当たりにした「暴力」に興奮したこいつが商店街で暴れだすシークエンスでは不快度が天を突くようでした。しかも下の下としか言いようのないあんな行為まで……。それにしても樋口毅宏『テロルのすべて』 でもそうだったけど、キャラクターの大衆的浅薄さを表現するアイテムとして『ONE PIECE』 を使うという手法がここでも見られましたね。13巻でルフィがギャグとしてゾロを殺しかけるまではめっちゃ面白かったよ……。

 

 

 

【ベスト有村架純賞】

アイアム ア ヒーロー』より 

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早狩比呂美

にゃーん!

 

 

 

【ワースト有村架純賞】

『何者』より

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田名部瑞月

ベストの『アイアムアヒーロー』とワーストの『何者』ですが、有村架純の使い方で言えば「別にどちらも似たような感じだった」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ぜんぜんちげえよ!個人的な所感として『アイアムアヒーロー』の場合、作り手が有村架純になにをさせたいか、なにをさせたら楽しいかを試みていた感じがあったので、観ていてたいへん気持ちよかったです。なんだかよくわからない「正しさ」を担わせる道具としての、がらんどうな有村架純なんて観たくありません。猫パンチで『ロボコップ3』 の忍者ロボットみたくさせてやる!

 

 

 

【ベストエンディング賞】

『貞子vs伽椰子』

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あの切れ味。劇場からは自然と笑いが沸き起こり、みな爽やかな気分で席を立つことができました。聖飢魔Ⅱの『呪いのシャ・ナ・ナ・ナ』も最高。

 

 

 

 【皆殺し賞】

アイアム ア ヒーロー』の地下駐車場

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守ることを決意する場面だけではよしとせず、「守り抜く」その過程を気の遠くなるような発砲、リロードで描ききった姿勢に感動。飛び散る血しぶきがこれまた景気よくとても良かったです。

 

 

 

【ベスト楽曲賞】

『貞子vs伽椰子』より

聖飢魔Ⅱ『呪いのシャ・ナ・ナ・ナ』

www.youtube.com

あの爽やかな余韻に一役買っている名曲。

 

 

デッドプール』より

DMX『X Gon' Give It To Ya』

www.youtube.com

笑っちゃうくらい過剰なオラオラ感がデッドプールのチョイスっぽくていいですね。

 

 

この世界の片隅に』より

コトリンゴの楽曲全部

www.youtube.com

映画の血肉となる素晴らしさだったと思います。

 

 

『何者』より

中田ヤスタカ『NANIMONO(feat.米津玄師)』

www.youtube.com

げー!『何者』っぽいな〜!という感じがちゃんとしていて良いと思います。

 

 

 

 

【ベストガン賞】

 

アイアムアヒーロー』の猟銃

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悪の教典』に続いて物語を加速させる装置としての猟銃メソッドを活用した新たなる傑作が生まれました。こちらの相手はゾンビなので、その威力を過剰なまでの弾着効果で表現してくれていたのでたまりません。 

 

 

『ボーダーライン』のアサルトライフル

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アサルトライフルが怖い映画は傑作」というセオリーがあるのですが、たまにサブマシンガンと大差ないような描き方をしている映画が出てくるとモヤモヤします。 『ボーダーライン』のアサルトライフルはしっかり命を奪う道具としての鋭利さを損なわない演出がなされていました。怖いですね〜。

 

 

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 薬莢に「50AE」と刻印されてあったので50口径のデザートイーグルっぽいです。パワー系ですね。これを好んで2丁使うあたりもヒーローものの醍醐味を感じます。

 

 

『COP CAR コップ・カー』のアレ

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UZI系列のなにかだろうと思っていたのですが、こういう空砲銃らしいです。 悪くないですね。

 

 

 

 


 

 

 

【2016年ワースト映画】

膨れに膨れ上がっていた期待値とのギャップにぶん殴られた一本。登場人物同士のやり取りも繰り広げられるアクションも「え!」というくらい心弾まなかったです。自分は映画を観ながら感じる「もったいない」という感情に耐えられないんだなという自己覚知を得られました。スリップノットは面白かったです。 

 

 

 

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洒落臭さにくじけた一本。柳楽優弥はとても良かったのだけど、演じるあのキャラクターや物語がぜんぜん魅力的に思えなくて、映画内のテンションが高まるにつれ、自分の感情とみるみる乖離していくのが寂しかったです。こういう話だとどうしても『ザ・ワールド・イズ・マイン』を連想してしまって、割り切るべきなんでしょうが比較をする自分がいました。一言で言っちゃえば菅田将暉のこともちゃんと殴ってほしかった。その一方で菅田将暉はとても良かったですね。本当にそういう人間に見えてきました。

 

 

 


 

 

2016年も多くの映画に出会いました。はっきりいって観た本数で言えば去年や一昨年よりも下だとは思いますが、それでも充分いい映画ばかり観たなあといった感慨でいっぱいです。また新しい年が始まります。何を楽しむにも一定の余裕というものが必要なので、それを維持・向上させつつ、やれアクションがかっこいいだの俳優が好みだのをこれからも言い続けていけたらなと思っております。

 

それではみなさん、良いお年を!

 

 

 

 

 去年のベスト10です ↓

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一昨年のベスト10です ↓

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