MidnightInvincibleChildren

血にまみれたテメエ

 f:id:sakabar:20171108210800j:image

 

気分が沈んだときはどうしたらいいんだろうと毎回気分が沈むたびに考えている。元気なときには実行できるようなことさえままならない。昨日は特にひどくて、とにかく何もしたくなかった。布団の上に横になっている時が唯一まあちょっとマシかなといった程度で、あとはずーっと得体の知れない倦怠感に支配されていた。いままでなら本や映画などに触れて気分の切り替えを図れたところだけど、昨日に関してはそれすらもできず、唸り声を上げながら本を開くも文字が像を結ばない。ページにぎっしり詰められた何百字もの記号をただ眺めているような茫漠たる心地。じゃあ運動だ。そう思い立ち上がって数分ぼーっとしていた。それからまた横になった。やっぱりいま最もしっくりくるのはこの体勢だな、と思ってひたすら臥褥。神経症に対する治療に森田療法なるものがあって、症状への囚われから脱してあるがままの境地を手に入れるため、ひたすら横になる、という治療段階が設けられているのだけど、なるほどこれは効果てきめん。なにもしたくなければなにもしなければいいのだ。変に細かい義務感を積み上げることで手に負えなくなっているのなら放り投げてしまえ。そう思っていたはずなのに、気がつくと寝相の問題か、腰などの骨ばった部分が痛いような気がしてきてもう無理。僕はその場で横になったまま「ふざけんじゃねえクソッタレ!」と叫んで、両足をピンと伸ばした。それから立ち上がり、焼きそばをつくった。焼きそばを炒めながらも、「バカ、この……バカが」と乏しい語彙力で罵倒を続け、不謹慎な行動が授ける高揚を借りて元気になれることを期待していたというのにどんどん胸が悪くなっていった。こんなふうにつくった焼きそばなんて食えるか!そう思って味見をしたら美味しかった。僕はお腹が空いていたのでしょうか。

 

 f:id:sakabar:20171108210807j:image

 

ところで今日はバレンタインデー。バレンタインデーといえば学生時代のエピソードトークだけど、僕自身これといった思い出はない。というのも、部活に入っていない人間は問答無用で弱者扱いされるド田舎で育ったので、意識すらせずに済むほどなにもなかったのだ。しかし兄がサッカー部だったこともあり、兄のもらったチョコレートを弟と一緒に頬張った経験は何度かあった。その当時から僕は思っていた。所詮、女に見る目などないと。

 

f:id:sakabar:20171108211008j:image

 

土曜日、午前中に起床した僕は天気がいいので外出でもするか~と思いながらテレビをつけた。すると「王様のブランチ」がやっていた。相変わらず洒落臭いテンションだけど、それが妙に心地いい朝だってあるのも事実。白湯を飲みながら着替えることもせずのんびりテレビを眺めていた。すると、バレンタインデー前ということもあり、チョコレートのCMに出ている三人娘(広瀬すず、土屋太鳳、松井愛莉)へのブランチ・インタビューが始まる。うひょ~、こりゃいいぞ、と僕は思った。可愛い女の子が大好きだからだ。すると、ブランチのインタビュアーが、三人にそれぞれの名の書かれた札を持たせて「この中で一番モテるのは?」という質問をした。結果は以下のとおり。

 

広瀬すず → 【土屋太鳳】

土屋太鳳 → 【広瀬すず

松井愛莉 → 【広瀬すず

 

これは穏やかじゃないぞ、と思った。僕は女の子同士が仲良くしている雰囲気は大好きだけど、垣間見える歪みは苦手だ。やっぱり嘘じゃん!という気持ちになるからだ。ここでインタビュアーは、広瀬すずに【土屋太鳳】と挙げた理由を聞いた。広瀬すずは「なんかもう、守りたいオーラ全開じゃないですか」と答えた。うるせえ。続いてインタビュアーはほかのふたりに対し、【広瀬すず】を挙げた理由を聞いた。まずは土屋太鳳が答える。「すずちゃんはメールがすごく可愛い」。インタビュアーはすかさず、それはどんな内容だったのか、と質問を重ねる。これには送り主である広瀬すずが答える。「お肉食べに行こうね、とか」。広瀬すず土屋太鳳両名爆笑。そのまま抱き合う。間髪入れずに番組は「ピコ太郎がジャスティン・ビーバーと共演を果たした」という内容のトピックへと移る。

 

本当にいいのかそれで。

 

松井愛莉が一言も喋ってなかった。すず&太鳳が盛り上がっていたメールの話題、それってもしかして、松井愛莉にはぜんぜん関係のない話だったのかもしれない。心なしか、表情も暗かった。土屋太鳳と広瀬すずが仲良さげなのは誰の目にも明らかだが、その影に隠れてしまっていた松井愛莉の姿を見ていると、気が気じゃなくなってくる。僕は知っている。三人でいるときの、一人でいるとき以上の孤独を。「あ、ふたりは頻繁にメールし合う仲なんだ……」、「お肉食べに行く約束とかしてるんだ……」などと、あの場にまったく関係のないはずの僕は胸を痛めていた。広瀬すずのような人間は、確かにいる。言葉にはしないが、態度などによるあたりが強いA行動パターンの人間は確かに多い(A=aggressiveness)。しかしその一方で「無邪気さ」に身を委ねることで、周囲に対する配慮を欠く自分から目を背ける人間も許せない。僕はチャーハンのグリーンピースや酢豚のパイナップルに一度も怒ったことはないが、無神経な言動にあぐらをかいて気持ちのいい思いばかりしている奴を見ると、なんとかして邪魔をしてやりたくなる。いつかの自分を重ねているから……。土曜の朝から嫌な気分になった。その後外出した僕は缶チューハイを手に入れ、GUで790円の紺のスウェットを買った。バカ野郎が。気分は晴れなかった。

 

f:id:sakabar:20171108210820j:image

 

じゃあ三人の中で誰が一番タイプなのか?と聞かれれば、広瀬すずと答えるだろう。それとこれとは話が別だからだ。広瀬すずは可愛い。生意気そうなところも魅力に転じている。出演作にも恵まれている。土屋太鳳はこのまま『まれ』とかいう最低な朝ドラで主演を張ったという過去だけを錦の御旗にしている場合ではないと思う。あ、でも『鈴木先生』があったか。ごめん。松井愛莉に関しちゃ、もっとごめん。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のドラマ版であなるを演じていたのは覚えている。でもいまとなっては飯豊まりえのほうが露出多いよね。ごめんなさい。本当にこんな話するつもりじゃなかったんだ。みんなに幸せになってほしい。

 

気分が上がらないときは雑誌などに乗っている有名人の対談を立ち読みすると元気が出る、ということに最近気がついた。たまたまそれで元気になれるってだけの日だったのかもしれないが、対談を読んでいると、自分もその中にまじって一緒に会話しているような気分になり、脳内で「人と会話」という実績が解除されるからだと思う。『文學界』2017年3月号に載っている羽田圭介村田沙耶香の対談が今月のオススメです。朝井リョウとは違い、村田沙耶香さんの発言に対して真摯な返答をする羽田さんが見所です。

 

 広瀬すずと土屋太鳳のあの姿を、僕は忘れない。