他意無

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とにかくお金がない。慢性的な金欠。もちろんその責任は自分にあるのだけど、お金がないので反省や未来のための計画立案にカロリーを割く精神的余裕もない。そういうことにして怠けたい。殺したくなるから説教も遠慮したい。渾身の反省もポーズでしかない。これだけ悲観していればなにかしらの免罪符が得られるだろうという浅薄な考えが性根に刻まれているがゆえの下卑た脊髄反射でしかない。とにかくお金がない。勝手にお金が入ってきてほしい。本音を言うと僕のnoteに投げ銭してほしい。ほしい物リストを公開したときに、あれこれ恵んでほしい。広告を連打してほしい。Amazonのリンクから買い物してほしい。でも本当はこんなこと言いたくない。ずっと涼しい顔をしていたい。困っている人を助けたい。困っていない側として街を歩きたい。

 


 

大学四年の卒業間近、ゼミの四年生メンバー三人で教授になにかをプレゼントしようという話になった。女子Aから上がった案は、詩人にメッセージを代筆してもらい、それを額縁に入れプレゼントするというものだった。え、詩人?と一瞬だけ思った。本当に一瞬だけ思った。でもその詩人がどういう人か、実際に見てみる前からイメージだけで判断するのはよくない。だから僕らは休日に詩人のもとへ向かった。詩人は頭にタオルを巻いてジンベエを着ている30代くらいの人で、奥さんも子供もいるとのことだった。お土産品店がいくつか入っている建物の一角にスペースを借り、長机とパイプ椅子で音楽を聴きながら浮かんできた言葉ささっと書き出すことで生活しているらしい。僕はちょうど内定をもらえないまま卒業が決定した身だったので、なるほどそうやって糊口をしのぐことだって可能なんだなとか、努めて好意的なことを思うようにしていたのだけど、内心では「大丈夫か」と思っていた。『アフロ田中』で田中が似たようなことしていたからだ。しかし立案から予算のことまでぜんぶ女子Aに任せてしまっていたので、ここにきていっちょまえに水を差すわけにもいかない。だからまあいいか、そう思っていざメッセージを依頼。すると詩人はヘッドフォンを耳に当て、音楽を聞き出した。ミスチルだった。それから小さな声でぼそぼそ歌を口ずさみ、身体を前後左右に踊らせながら色紙に筆を走らせていく。僕ら三人は静かにその様子を見守っていた。途中、女子Bと目が合ったけどすぐに逸らした。

 

完成した詩を手に、スターバックスに寄ってみんなでコーヒーを飲んだ。確か当時の僕もとにかくお金がなく(学生なので当然)、本当はスターバックスになんて行きたくなかった。コンビニで100円のコーヒーでも買って早々に解散しても充分だと思っていた。とはいえ卒業間近なのだ。こういうひとときを無下にはしたくないと思った。

 

女子Aはスタバの店員(たぶん同じ大学の人)と知り合いだったらしく、カップに「Thank you!」というメッセージを書いてもらっていた。続く僕と女子Bのカップにメッセージはなかった。スタバのそういうところがな~と思いながら、席について書かれたての詩をみんなで読んだ。とにかく無難な言葉が並んでいて、プレゼントとしてはむしろ好都合にも思えた。それから卒業間近っぽい話をした。誰々がようやく進路決まっただの、来月の何日にこの街を出るなど、そういう話だ。同じ分野の男女がこのタイミングで付き合ったという話も聞いた。ふたりとも地方公務員になることが決まっており、それぞれの内定先である行政も近いとのことで、卒業後も充分に交際を続けられると判断してのことらしい。今にして思えばなにひとつ面白くない話だけど、当時の僕は「あいつとあいつが?」という点に気を取られ高揚していた。全然意外な二人ではなかったのだが、人の色恋沙汰が大好きなのだ。

 

不意に女子Aが「残念だったね」と言ってきた。

なんで?と聞き返すと、「あの子のこと好きなんだと思ってた」と笑う。どんぐり眼でひっくり返った。なんだって!?と思った。

 

確かに、関わりのある女の人が誰かと付き合うと、大なり小なり残念な気持ちが湧いてきたりもするかもしれない。「選ばれなかった」という事実がそこに残るからだ。かといってじゃあどうしても選ばれたかったのかと言われれば違うし、好きだったのかとなると話は別だ。バカにしてもらっては困るのだ。一応良い匂いがする人だな、とは思っていた。それに同じ分野でいえば、僕は別のおっぱいの大きい女子のほうが好きだった。一度なにかの飲み会の帰りに、そのおっぱいの大きい子と雪道を歩きながら進路の話をしたことがある。その子は「わたし、ほんとになにもしたくないんだ」と言って笑っていた。「おれも!」と同意した。その子にはずっと彼氏がいて、その彼氏は卒業後、消防士になったと聞いた。 なんだか公務員ばかりが登場する話になってしまった。僕の周りでいい思いをしているのは、決まって堅実なやつらだ。なぜ気づかなかったのか。気づかないふりをしていただけだ。

 


 

 

でもいいのだ。どんな立場でいようと悩みは尽きることはないと思う。悩むことによって、諸行無常に対するチューニングを行っているのだ。このまえの土曜日、いまの部屋に引っ越してから初めて友達が遊びに来てくれた。サイゼリヤでワインを飲み、フードコートで缶チューハイを飲み、夜のベンチでもまた色々と飲んでいたら恥も外聞もなくサイファーが始まり、フリースタイルだからという免罪符のもと罵詈雑言を吐き散らしてゴキゲンになっていると一人が潰れ、結局みんなで僕の部屋に向かって寝た。全然悪くなかった。言葉にするには腰が引けるが、たぶん不幸とは違うところに僕たちはいたと思う。そんな夜だった。

 

だからもう大丈夫です。僕のnoteに投げ銭したり、ほしい物リストを見てあれこれ恵んでくれたり、広告を連打したりAmazonのリンクから買い物してくれなくても結構です。今夜はなにか美味しいものでも食べてください。だって金曜日なのだから。僕はディスカウントストアで買った60円のカップラーメンを食べながらそんなあなたのTweetに「いいね」を押します。『ダイ・ハード4.0』のパソコンみたいに、エンターキーを押した瞬間に爆発したらどれだけいいか。風の薫りがすっかり秋です。

 

 

 

僕のnoteです。他意はありません。

note.mu

 

僕のほしい物リストです。欲望の欠片たちをぜひ覗いてみてください(他意無)。

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