Where is my mind? Here!

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※今回の内容には映画『ノック・ノック』のネタバレが含まれております

 

 

 

心に不安の種があると映画や小説をうまく咀嚼できない、ということはこれまでにも何度も言ってきたのだけど、僕はもうここ数年ずっとそれだ。頭も感情も物語についていけないまま、一向に良くならない。それでも観たいし読みたい。なんなら自分でも考えたりしたい。なのにうまくいかない。注意も散漫でジッとしていられない。どうしようもない。

 

 

 

 

 

 

去る土曜にオフ会をした。サシ飲みだった。メインで使用しているTwitterアカウントを作ってかれこれ5年経つが、その方のことは初期からフォローしていたので、Twitter上での付き合いも5年ということになる。雨の赤羽で落ち合った僕らは、そのまま駅前の鳥貴族に入った。いい感じの店を開拓するのもアリだけど、なんかちょっと怖いからとの理由が一致したのだった。サシ飲みという状況に緊張しながらも、結局その夜は5時間も飲んだ。ダイエットを始めたての僕は久しぶりにビールを飲み、いい気分で帰宅。帰りの電車を間違えた。

 

 

つい先日『ノック・ノック』を観た。「家族思いのよきパパ」であるキアヌ・リーヴスが、ひとり過ごしていた雨の夜に突然現れた見知らぬ若い女二人といろいろあって3Pしてしまう。翌朝目が覚めると台所を散らかしながらはしゃぐ二人の女。彼女たちは帰る素振りを一向に見せず、彼の生活を蝕んでいく……という話だ。

 

 

サシ飲みしたその方は、Twitterで「怨念マン」と名乗っており、誰もが胸のうちに抱きつつもその表出を躊躇しがちな言葉を真摯に吐き出し続けている。その揺るぎなき一貫性。筋の通った方に違いないと思っていた。会って早々、怨念マンさんは鞄から袋を取り出した。「もうお持ちでしたら申し訳ないんですけど」と彼が差し出してくれたのは一冊のアメコミ。

え!!!

僕は愕然とした。それは『パニッシャー MAX:ビギニング』の邦訳本だったのだ。

  

 

アメコミヒーローの中でパニッシャーが一番好きな僕は、この邦訳本も必ず買おうと決意したまま、なにもせず漫然と日々を過ごしていたのだ。忘れたころに、まさかこのような形で手に入れられるとは思ってもみなかった。完璧なタイミング、完璧なチョイス。身震いした。自分はいまとんでもない男と対面している。鞄の中に財布とレシートとゴミしか入っていない自分が恥ずかしかった。

 

 

『ノック・ノック』を観終わった僕は、手元にあるメモを見返してみた。冒頭でも書いたように僕はここ数年物語に集中することが非常に難しい状態なのだけど、せめて映画から受けた着想をメモしようと、ノートとペンを傍らにおいて鑑賞している。趣味である創作活動にも役立てたいからだ。そのノートには「うるさい」「死ね」「はやく終われ」の文字が何重にも書き殴られていた。

 

 

怨念マンさんとは簡単な身の上話から映画、アメコミ、学生時代のちょっとエモい話などをした。エモい話というのは、その対象への隠しようのない憧憬が必須なのだけど、僕と怨念マンさんの「そうあってほしかった学生生活」と「振り返ってみれば意外と輝いて見えるあの一瞬」観が一致したのかもしれない。僕は人の学生生活の思い出話を聞いて胸をキュッとさせるミュータントなので、しみじみその時間に耳を潜めた。私服でニーハイを履く女はヴィランだし、友人の活躍はちゃんと嬉しいのである。

 

 

『ノック・ノック』を許せない。我が胸の裡にヒエッ、と思いつつも、僕はまだイライラしていて、口元を何度も手で拭った。うっすら髭が生えてきていた。ちょうどむしゃくしゃしていた時期だったことも影響しているのかもしれない。いや、そもそもちっとも趣味じゃない。よりにもよってなんでこんな気分にならなければならないんだ。

 

 

怨念マンさんは、僕がネットにあげている自作小説を褒めてくれた。読んでくれていたのだ。まあまあ長いのもあるに……。そのときの僕はなぜ人が醜い行いに手を染めてまで偉くなりたがるのか、その片鱗をみた気がした。褒めてほしいのだ。承認欲求という言葉が選別なく蔑視されつつある昨今、日頃の生活で小銭のように承認を貯めていけるのであれば僕だって小説を書きこそすれども、ネットに上げるようなことはしなかったはずだ。イレギュラーな方法じゃなきゃ得られそうもないからそう選択したのだ。そんな僕のへの温かなレスポンスに出会え、心から嬉しかった。

 

 

なにが一番不愉快だったかを考えたとき、ルイスの件は絶対に見過ごせない。過去に訳あり的なほのめかしも鬱陶しい。あいつらはいじめっこだ。村上龍の小説『半島を出よ』 で、福岡を占拠した北朝鮮のコマンドに対しイシハラが堂々と宣言した言葉が脳裏をよぎる。こいつらは敵だ。

 

 

怨念マンさんにいただいた『パニッシャー MAX:ビギニング』を読んだ。年老いパニッシャーを政府が暗殺者としてスカウトするという物語だ。僕の愛してやまない映画『パニッシャー:ウォー・ゾーン』に大きな影響を与えているという情報は得ていたが、序盤のパーティー襲撃や、鉄柵に突き刺した敵を真上から踏み抜くという暴力描写まで引用されていた。燃え尽きることのない怒りに囚われた男フランク・キャッスルの向かうところはすべてが阿修羅道。だから彼は先に言う。「逃げろ」。痺れるぜ。

 

 

僕は『ノック・ノック』に言ってやりたい。「逃げろ」。悔しかったのでマイリストから速攻で削除してやったぜ。この怒りを糧になにか楽しいことをしてやる。絶対にしてやるぞ。僕はいま泣いているのです。どうしたらいい?どうすれば。まず泣き止むべきだ。それからなにかを食べるべきだ。しっかり睡眠もとる。暖かくする。運動をする。清潔でいる。それでもだめなら相談する。どの策も怠るな。敵は多い。尽きることもない。

 

 

怨念マンさんとの飲み会はとても楽しかった。精神衛生の向上をハッキリ覚えた。彼だってままならない日々を生きているのだ。しんどい現実をひとりじっと見つめるのはよくない。劇場で観る映画のように、他者の気配に助けられることもあるのだと思う。それを忘れないように、ここに書いておく。背景タイラー・ダーデン様。僕はジャックの『ノック・ノック』に激怒し、無様な人生の継続を誓った灰色の脳です。

 

 

 

 

 

P.S.

現在構想中の短編は「クラウドファンディング池松壮亮をぶっ飛ばす映画の制作費を集める中条あやみファン」の話です!よろしくお願いします!

 

 

 

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