『海がきこえる』という夢をみました 【特集:それでも夢の話をする】

 

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私はこれから、夢の話をします

この間、二度寝した。

朝の6時半に一度起床し、コーヒーを飲みながらテレビをみたりして過ごしていたけど、やっぱり眠いのでまた布団に潜り込んだ。冬とはいえ、陽は完全に昇っていた。カーテンを開けた窓から差し込むサンシャイン・シャワーを浴びながらの二度寝だ。朝陽を浴びると自律神経は目覚めるというが、関係ねえ、迷うことなく爆睡。

 

そして夢をみた。

 

 

 

それはある映画を観るという夢だった。タイトルは『海がきこえる』。ジブリのあの作品だ。ちなみに僕はホンモノの『海がきこえる』を観たことがなかったので、「あー、ずっと観ようと思ってたんだ」みたいなテンションでちょっとワクワクしていた。

 

 

 

物語は自分が登場人物のような没入感を伴って進む。

 

舞台は日本の何処かにある架空の町。近くに海のある、やたら高低差の激しい立地の町だった。

その町で一番高い丘の上には、木製で球体の大きな建造物がある。たぶん展望台的な何かだと思う。反対側は海に面した崖だから、波の音が届かなくもない。なるほどだから『海がきこえる』なのかと僕は思っている。

 

登場人物は高校生らしい。展開が連続性を欠く抽象的な感じなので文脈をつかみにくい(夢だし)。おおまかにいえば以下の様な感じだった。

 

主人公の男の子は転校生でこの町に馴染みはない。放課後、例の展望台で時間を潰している。その展望台には同じ高校のいじめっこがいて、他の生徒をいじめていた。主人公の男の子は、それを止めようと、いじめっこに暴力をふるう。で、はっきりとは描かれないけど、たぶん殺してしまう。

 

でもバレない。事故に偽装したとかだろうか?とにかく話は進む。ヒロインも現れ、罪悪感を抱えた主人公との交流が、微熱のような、どこかけだるいタッチで描かれていく。

 

ただ残念なことに、これはあくまでも僕の夢なのできちんとオチにはたどり着いてくれない。物語は未完で、気がつけば僕は僕本人として舞台であるその町にいる。どうもこの『海がきこえる』という作品は未完らしく、世間ではその続きの憶測が飛び交っていたりと一部でカルト的な盛り上がりをみせているらしいのだ。らしいのだ、というか僕はそう思っている。どうせ夢の中なので、すべては最初から前提として意識の中にある。だから僕には明確な目的もあった。

 

未完であるこの作品には、作者の残した結末部分のプロットがどこかに存在しており、僕はそれについて取材して回るためにこの町に来ているらしかった。

 

ということで作者の関係者の家に赴く。この『海がきこえる』の作者は女性で、劇中に出てきたヒロインと同一人物。だがもう亡くなっている。虚実の皮膜が存在せず、わけがわからなくなってくるが、当の僕は「つまり作者(ヒロイン)の死の真相こそこの物語の結末にかかわる重大なヒントなのではないだろうか」とジャーナリズム精神を炸裂させていた。

 

取材対象である関係者は、坂の途中にある小さな売店を営むおばさん。作者との関係も「親戚」というアバウトなものだったが、それでも僕は雑談を交わしながら取材を進めた。日が傾いてきたので、「今日はちゃんと終電で帰れるかな」とか考えている。それを察した様子のおばさんは「今晩はうちにとまっていけば?」と言った。もっと探せば遺品も出てくるだろうとの事だったので、僕はその言葉に甘えることにした。

 

夜も深まり、居間のような場所でテレビを観ていた僕は、おばさんがもってきた遺品を受け取る。それは作者が大学時代にサークルの会誌に寄稿したという漫画だった。デビュー前の作品ということか!僕はそれをパラパラとめくってみる。

 

気が付くと僕は、小綺麗な会議室にいた。そこはどうやら雑誌の編集部らしく、みんながそれぞれの仕事に追われている様子で激しく出入りしている。その中には実際に雑誌の編集部に勤めている友達や、落語家の友達なんかもいる。編集長と思しき田畑智子まで入ってきて、僕の持参した「サークルの会誌」のチェックを急ぐように言った。その漫画はいつのまにかスキャンされ、みんなのパソコンで共有されていたため、僕もベテランと思しきおじさんのデスクトップでその内容を確認する。内容は大まかに以下の通り。

 

 

・ものすごく緻密で綺麗な絵(大友克洋の息子がボールペンで描くみたいなタッチ)で、ラプンツェル級に長い髪を持った女子高生が描かれている

 

・夜の人気のない電車内で、自分の長い髪を枕に眠る女子高生

 

・彼女のもとに顔の映らない男が近づく。スーツ姿。その手には日本刀が握られていて、「自分の生きる価値」についてのモノローグが挿し込まれる

 

・他の車両に乗っていた猫を抱いたおばあさんの、血にまみれた生首のコマが挿入。このスーツ男が殺人鬼であることが示される

 

・髪の長い女子高生と、その姿を見下ろすスーツ男の見開き。ページの端の方には「TO BE CONTINUED」の文字。直接「死」が描かれているわけでもないのに、ページには抗いようのない絶望感が満ちている。読んでいるみんなが、この女子高生の死を直感した

 

 

読み切りというわけでもなく、連載中のある回だけを抜粋したような内容にみんながざわめく。編集長である田畑智子がこれを世間にどう発表するかの会議を始める中、僕と友達とベテラン編集マンのようなおっさんが、パソコンのモニターを食い入るように見つめ続けた。完全に心を奪われていたからだ。

 

 

 

 

といったあたりで僕は目を覚ました。

 

 

 

夢の名残

目覚めた瞬間は、茫然自失状態のまま数分。

 

薄々感づいてはいたけどやっぱり夢か。なんだこの夢。

 

布団から抜け出した僕は、とりあえずメモを取ってみた。しかし、ペンを走らせれば走らせるほど、ディテールが消失していくのを感じる。ものすごく悔しい。映画の冒頭部を改めて見直したい。あの漫画もまた読みたい。しばらく悶々としていたが、やがてそれも鎮まっていく。なんだか寂しい。

 

でもまあいいか、と僕は思った。いまもこうやってブログの記事にまとめてみたはいいものの、読み返しては「なぜ2018年に『海がきこえる』なのか」とか「なぜ田畑智子なのか(すごく良かった)」とか「なぜ」の連続だ。夢を見た当の本人のくせに、野暮ったい横槍マンになってしまう。

 

ただ、この夢を見たことで胸の裡で響き続けるこの気持についてその後もいろいろと考えてみた。なんとなく、鬼頭莫宏漫画の読後感にちょっと似ているなと思いました。『ぼくらの』しか読んだことないけど。あと、『海がきこえる』もこれを機に観てみようかな。などと思いつつ、人のみた夢の話に2600字も付き合ってくれてありがとう。感謝。