MidnightInvincibleChildren

長い1月

 
 

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スマホ用のBluetoothキーボードを買った。
 
打鍵に問題アリかと思っていたが結構強めに打つと調子がいい。この文章はコクーンシティのスタバで打っている。バチバチ打っている。殴りつけるような打鍵。それが俺の文章のグルーヴを焼き付ける秘訣なのだ。
 
 
なにが文章のグルーヴだ。日曜に『蜘蛛の巣を払う女』を観た。楽しいサスペンスアクションで、画の見せ方にきちんと血が通っていて丁寧な印象……要するにめちゃくちゃ楽しかった。フィジカル面でも活躍するハッカー最強演出に疑問を抱く人もいるだろうけど、個人的には「何かに精通している人はその他のこともある程度器用にこなす」という持論があるので、むしろ腑に落ちるような印象。物事の理を解いているからこそなんらかのエキスパートになれたはずなのだ。ということでマイケル・マン監督の『ブラックハット』に引き続き、リスベット・サランデルという女傑の誕生を心から楽しみたい。氷上を走るバイクのシーンの目の覚めるような興奮は忘れません。サイコー!
 
 
などと言っている間に1月が終わる。
 
 
今月は正月早々大してやることもないのに職場で文鎮としての役割を全うした。動かざることマグロのごとし。そのおかげか、今月の給料がちょっとだけ増えていた。
 
 
職場のあまり人望のない人の開催した小規模な新年会にも参加した。計5人集まった。みんな翌朝早いという人ばかりで、2時間半でお開きとなった。僕は新しい環境に飛び込むのも大事だなという気持ちを胸に2019年を過ごしていきたいと思っていたので、参加したという実績解除に満足した。
 
 
今月はTwitteきっかけで二名の方と会った。一人目はディレクター業に始まり様々な活動に従事している方だった。昨年末にお誘いいただいたこともあって大宮のサイゼリヤで三時間ほどお話した。本気の身の上話をし合って、僕は僕の人生のあまり振り返ってこなかった部分を振り返り、伝えることで、取りこぼしてきた諸々の感情をいくつか咀嚼できたような気がした。大学時代に引きこもって、その状況から抜けたはいいものの、日々に対する居心地の悪さと後悔からくる諦めの強要に疲弊していた僕はオタサーのドアを叩いたのだ。そこにいたみんなが僕の当時の状況を「人によってはままあること」としてさり気なく受け止めてくれ、僕もそこにすんなり甘えられたのでうっかり忘れていたが、実はめちゃくちゃありがたいことだったなとか、そういう気持ちを十年越しに抱いたりした。僕の話を傾聴し、引き出してくれたMさんあっての経験だし、これはある程度一緒に過ごしてきた人相手にはしづらいものなので、やっぱりどんどん、いろんな人に会うべきだと思った。
 
 
二人目の方からはポメラDM20を譲っていただいた。ポメラはめちゃくちゃ高いので、数カ月先を目処に金でも貯めるかと思っていたのだけど、まさか無償で譲っていただけるなんて。Twitterは時としてとんでもない側面から光を差しやがる。2019年、世界はこんなにもめちゃくちゃで心が曇ってしまいそうにもなるが、いやいや本当にありがたいことです。僕はもう東京方面に足を向けて眠れません。さらにそのお方は、ポメラの調子があまりよくないからと、お菓子のおみやげまでくださり、脳がパンクした。僕は物をいただく側のくせになにも用意しておらず、いくら生活苦のまっただ中とはいえ誠意を示すべきだった。今年こそ『HIGH&LOW』に手を出すぞ。本当にありがとうございます。
 
 
なぜ生活苦に陥っているのかというと、給料が低いのもそうだが、新年早々、部屋のブレーカーが腐食していたせいで給湯器とエアコンがショートしたからだ。よりにもよってこんな寒い時期に。しかもシフト制の勤務形態のため、確認やら修理やらで部屋を訪問してくれる業者の方との時間がなかなか合わず、ほぼ一週間近く風呂なしの生活が続いた。さすがに風呂には入らないといけないので、薬缶で沸かしたお湯で洗髪したり、蒸しタオルで身体を拭いたりしていたが、ひと駅隣にある銭湯まで赴いたりもした。それが結構な出費と疲労を生み、僕はすっかり虎の目に。職場の機械が不調を起こしそうになるたび「今年は機械運に恵まれていないのではないか」「おまえも僕をこけにしているのか」ときつい態度に出た。
 
 
だからこそ一週間ぶりにお湯が出た日の感動は忘れられない。
 
 
でもたぶんすぐ忘れる。
 
 
この前、インスタントコーヒーを飲もうとして、スイッチを入れ忘れたケトルから直接水を注いでしまった。幸いにもすぐ気づいたが、そこで僕は新しい粉を追加するよりも沸かし直したお湯を多めに入れることでなんとかしようとした。結果、ぬるくてめちゃくちゃ薄いコーヒーが完成したわけだが、こんなふうに、なにかを取り繕おうとしてめちゃくちゃになることが多い。絡んだ紐の両端を勢いよくひっぱるような真似ばかりしている。
 
 
なにはともあれ、これからも色んな人に会っていけたらなと思う。
 
 
結局のところ、いい人頼みの人生なのだ。昔っから。