The Man Who Bullshitting

 


相変わらずクソみたいな環境でなんとか呼吸を続けている。こういう愚痴をなんの配慮もなくこぼせる場が必要なくらいずっと気を張っている。これはもう僕の性質なので、そこを改善するというひどく時間の掛かりそうな方法を取るより環境の方をなんとか整えていけたらなと思っています。

 

職場に人がいない。人がいればまだなんとかなる気がする。ただ人員不足を埋めるために新しい人員を確保してもその人を教育する人がそもそもいない、なぜなら人員不足なので。じゃあ人をもっと雇おう、でも教育は……という状態が続いているので、たぶんこの職場はいま迷子なのだ。僕はジャックの不安な心です。ジャックを見捨てて外を勝手に歩けたらどれだけいいでしょう。

 

生活リズムも安定しない。早番遅番などというシフト制の勤務なので、早番の翌日が遅番で、そのまま遅番が連続して休みに入って、結局昼まで寝てしまうであろうから予定も入れないままで……気が付くとそんな感じで三ヶ月ほど経とうとしている。

 

日課としていたスクワットもやめてしまいました。疲れるからです。

 

僅かな時間で漏れ聞こえてくるニュースも不快なものばかりで、向き合わなければならない課題というよりも、避けて通りたい穴のような、張りのない気持ちで迂回している。

 

職場に嘘つきがいる。僕もよく嘘をつくのだけど観ていてやっぱり気分はよくない。嘘にも最低限のマナーがあると思うのだけど、杜撰で自分ばかりを先行させた子供じみた嘘ばかりをついている。色んな人に色んな種類の嘘をつき、その場にいない人を敵に仕立てあげることで一時的な味方をつくろうとする。結果、いたずらに波風ばかりが立っている。陰口とかそういうネガティブな磁場を形成し、その中でぐるぐるしているやつらは結局周囲のちょっとした思いやりとかを食い物にしていくので、いい人から順に疲れてしまう。

 

今日も今日で色々あったため休日にもかかわらず出勤したらその嘘つきがいた。僕がいない間に僕のことに関してもいろいろと愚痴っていたらしいので、本人に直接謝ったら全然気にしていない風を装ったあとでこう言った。

 

「忙しいのはわかりますが、引き継ぎメモとかでちゃんと共有してくれると助かります」

 

僕は共有ノートに引き継ぎ内容を記録した記憶がはっきりと残っていたので、ん?と思ったがなにも言わなかった。あとでこっそり確認してみるとちゃんと引き継ぎ内容を書いていた。なんなんだあいつ。怖すぎる。二度と話したくない。

 

そんな日々がしばらく続き、僕はついに限界を迎える。

 

人員不足は悪化の一途をたどり、繁忙期にもかかわらず三つの部署それぞれの作業を同時に行わなければならなくなった。不明点の詳細を聞くためにほかの職員に連絡を入れてもなしのつぶて、片方では結果ばかりを催促されるなかついに気を失ってしまった。

目が覚めると病院のベッドにいた。

 

ついにこういう日がきてしまった。そう思いながら首を静かにもたげた。

 

すると、ベッドサイドには人がいる。

 

あの嘘つきだ。嘘つきは「大変だったんですよ」と言った。

 

「あの忙しいなか倒れちゃって、こっちとしてもどうしていいかわからないじゃないですか?電話はかかってくるし現場にも出なきゃならないのに」

 

僕は点滴の打たれている左腕を眺めている。

 

「伊藤さんが救急車を呼んで、それで運ばれたんですよここに」

 

青白い腕だった。ヒビ割れのような手の甲が、あまりにも醜くかった。

 

「体調管理も責任のうちだと思うんです。よろしくおねがいしますね」

 


その夜、僕は点滴の針を引き抜いてスーツを身にまとった。倒れた日と同じ格好で職場に向かい、警備を解除する。作業室の灯りをすべてつけると、そこに保管してあるエアダスターの中身を順に空けていく。かれこれ数十本。あとはいつも通り機器の起動をタイマーでセットするだけだ。深夜0時。静かにドアを閉め、非常階段を駆け下りた。

 

 


これは誰の記憶にも残らなかったお話だ。

 

なぜか。

 

退屈だからだ。

 

下手くそな嘘と同じで、誰も興味がない。

 

興味をもってほしければ行動することだ。

 

人々が待ち望んでいることを。

 

ゴッサムシティの諸君。

 

この夜も忘れてみせてくれ。

 

できるもんならな。

 

 

 

 

 

「東京都心の夜景(ヘリコプターから空撮)」