舞城王太郎大好き人間なのに長らく買わずにいた『深夜百太郎』を買った。
この本は舞城王太郎が2015年に毎晩1話ずつ怪談をTwitter上に発表、それを百日続けるという百物語企画をまとめたものだ。そのため50話ずつ二冊に分けて本になっており、僕は何日もかけてゆっくりと前半五十編を読み切った。
舞城王太郎らしいなかなか胆力の要る企画だけど、かといって手を抜いている印象はどこにもなかった。せっかくなので印象に残った作品を挙げていきたいと思います。
二太郎『倒れた木』
神隠し系。後味の冷たさが好き。
神隠し系。後味の冷たさが好き。
三太郎『地獄の子』
好きな一遍。女の子の設定からして悍しくていい。
五太郎『二階の火の玉プリンス』
かわいい話かと思いきや、「萌えによる消費」への強烈な呪いが返ってくる。
六太郎『ゆらゆら』
怖いし、自分の行為を振り返って全てが間違っていたのではないかと後悔する、そんな冷たい後味。
怖いし、自分の行為を振り返って全てが間違っていたのではないかと後悔する、そんな冷たい後味。
七太郎『ぐるぐる』
少ない文字数でじめっと伝わってくる「お母さん」の毒性が効いています。
少ない文字数でじめっと伝わってくる「お母さん」の毒性が効いています。
九太郎『家族の手』
ほんわかした話かと思いきや、語り手だけが感じていたものがラストで明かされる。うまい!
ほんわかした話かと思いきや、語り手だけが感じていたものがラストで明かされる。うまい!
十一太郎『友達の部屋』
寂寥感あふれる傑作。
寂寥感あふれる傑作。
十五太郎『兵藤くん』
河童をモチーフにしてるのに、土着的な要素のないホラーにしてて新鮮。
河童をモチーフにしてるのに、土着的な要素のないホラーにしてて新鮮。
十七太郎『穴の蓋』
町で見かける「クモ女」についての話。面白い。『あうだうだう』的な抜けのよさあり。
二十三太郎『隣の豚』
ワンチャン狙いの軽薄さ漂う語り口にこちらが油断してるところをついてくるラスト。それでいて最後の一言も軽くて好き。
二十八太郎『入れない家』
すごくムカつく「兄嫁」がちゃんとみんなにムカつかれてるところがいい。怪異を日常として描く作品かと思いきや意外な展開。
三十三太郎『猿の夢』
個人的に夢と猿の組み合わせはなんとなく怪談って感じだなあと思う。それはさておき、冷たく、哀しい雰囲気が『バーベル・ザ・バーバリアン』にも似ている鬱舞城。
個人的に夢と猿の組み合わせはなんとなく怪談って感じだなあと思う。それはさておき、冷たく、哀しい雰囲気が『バーベル・ザ・バーバリアン』にも似ている鬱舞城。
三十六太郎『横内さん』
ボーイミーツガールものだ!と思っていたが、時間を超越した恐ろしい怪異の物語。哀しいけど好きな人の声を響かせ続けることで絶望を退ける主人公がもはや尊い。
三十七太郎『空の大王』
夫の連れ子のことが突然鬱陶しく感じるようになった主人公がその理由を考える話なのだけど、これ!といった怪奇現象の起こらない奇妙な読後感。三十三太郎『猿の夢』にも似た「狂気」系。
三十八太郎『忠犬バッチ』
めちゃくちゃ好き。同級生からの熾烈な暴力に日々晒されている兄と、愛犬バッチの物語。アイヌ語で「神」を意味する言葉「カムイ」が「噛む犬」を語源とするように、バッチは「バチが当たる」などの「バチ」でもあるのかも。
四十太郎『体育館でかくれんぼ』
開けた体育館で「かくれんぼのフリをする遊び」をしていたら本当に人が消えてしまうという話を飛躍させ、南米ペルーの人身売買組織とか、どうしてそこに繋がるんだというチョイスを堂々としているところが憎いですね。
四十五太郎『高架下の首吊りストーカー』
得体の知れない存在をどうとらえるか?という怪談の視点で遊ぶ掌編。唐突な暴力があまりにも過剰で苛烈なのは舞城読んでる感ある。
得体の知れない存在をどうとらえるか?という怪談の視点で遊ぶ掌編。唐突な暴力があまりにも過剰で苛烈なのは舞城読んでる感ある。
以上!