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ミュータントって税金高そう

 

シリーズ最新作『X‐MEN:フーチャー&パスト』が最高だったので改めて『X‐MEN』について考える機会が増えた。シリーズは一通り全作観てるし観たあとはだいたい「自分もミュータントだったらこういう能力でもってあいつとあいつを殺して……」みたいなことをしばらく妄想してしまうくらいに楽しんできた。最新作が最新作なだけにどうしても過去作を振り返りたい気分になった僕は、さっそくTSUTAYAに行って『X‐MEN2』を借りてきた。振り返りたいんだったら一作目から全部借りろよと思うかもしれないけどそういう思われるのを覚悟の上で『X‐MEN2』だけを借りた僕の胸の内を色々と察してほしい(増税)。それで『X‐MEN2』を再度鑑賞したいま、“マイノリティーとしてのミュータント”論など数々のハスラーによって論じられてきた今シリーズだが、僕もそれに倣ってあの能力ほしいとかあのシーンかっこいいとか好きよ嫌いよ諸々を羅列していきたいと思う。

 

 

 

【X‐MEN】(2000)

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シリーズ一作目。最後に観たのは一年半ほど前だったと思う。ウルヴァリンの髪型がどうかと思うほどダサいのはご愛嬌。実際ウルヴァリン、この時点で100歳以上?なわけでとっくにジジイだし余計な自意識もないんだろうな。そういうところがかっこいい。物語的にはプロフェッサーX率いる【X‐MEN】(人間との共存を望むミュータント軍団)とマグニートー率いる【ブラザーフッド】(人間を駆逐しようと試みる武闘派ミュータント軍団)との戦いを描いていたけど【ブラザーフッド】の面子がいまいちパッとしない能力のやつらばかりでちょっと面白い。ボスのマグニートーは磁気を操る最強ミュータントだし、変身能力&ヴァンダムばりの股割りだって見せてくれるミスティークも貴重だけどセイバートゥースとかいうあいつ!

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黒目が大きくて可愛い。きゃりーぱみゅぱみゅみたい。

こいつ「ガウガー!」とかいいながらウルヴァリン投げ飛ばしたりしていたけど能力が「すごく野性的」?っていかんせん地味……。原作ではウルヴァリンのお兄ちゃんだったりするらしいんだけど一作目からこんな扱いで出していいキャラなんだろうか。あともうひとりトードとかいうやつもいて、要はカエルみたいに舌が伸びるわジャンプ力すごいわ壁這ってのぼれちゃうわで脅威になりうる存在ではあるのかもしれないけどミュータントとしては地味な部類だしやられ方に至ってはなにもそこまでやらなくても……というほどに無慈悲。

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こいつがトード。演じるはダース・モールでお馴染みのレイ・パーク。よく動きます。

 

あとは……無理やりミュータントにされた議員さんがトコロテンみたいになる場面とか印象的。今シリーズにおいてマグニートーは見せ場王としても有名だけど今作では無数の銃を宙に浮かせる場面が絶望感に満ちていて素晴らしいです。主要的な扱いを受けているローグというミュータント少女がいるけど、触れた相手の生気・能力を吸い取ってしまうというさげマン系能力によって本当にかわいそうな目にばかり遇う子で、シリーズを追うごとにメンヘラチックになっていく点もすごく切ないのでメンヘラでさげマンというレッテルを貼られて苦しむ方にも今シリーズはオススメなのであります。

 

 

 

【X‐MEN2】(2003)

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シリーズ二作目。今回はミュータントVS人間という図式で物語が展開。よって一時的にマグニートーたちとも協力する。今作の白眉はなんといってもナイトクロウラーというミュータントが単身でホワイトハウスに殴り込みをかける冒頭シーン。

 


X-Men 2: White House Night Crawler - YouTube

 

実写で瞬間移動能力者の戦闘を描いた画期的で気持ちのいいシーンですね。

それにしてもこのナイトクロウラーを演じるアラン・カミングという俳優、『007/ゴールデン・アイ』のパソコン野郎ボリス・グリシェンコや『チョコレートドーナツ』のドラァグクイーンを演じていた俳優さんだと知って驚いた。

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バイセクシャルの方だそうです。

 

思えば一作目と今作を監督したブライアン・シンガーマグニートー役のイアン・マッケランもゲイであることをカミングアウトしている人たちだし、ミュータントという題材を通して「差別」というテーマを描いている側面があり、そこにどういった思い入れを持つかで印象が変わってくる映画でもあるのかもしれない。劇中でアイスマンが実家に里帰りし両親にミュータントであることを告げるシーンの緊張感は、ぼくが大学一年のころ、大学に全然行っていないことを両親に問い詰められて白状したときのことを想起させて思わず震えた(よくよく考えれば全然同じではない)。 

 

「盛り上がりに欠ける」と評された前作を反省してか、今作は楽しいシーンがてんこ盛りだ。特殊部隊が「恵まれし子らの学園」を襲撃した際に次々と披露される子供たちの能力にはワクワクさせられる。マグニートーが銃を構えて待ち受ける大量の特殊部隊員に対し、彼らが装備している手榴弾のピンを一斉に引っこ抜いて皆殺しにするという場面に至ってはガッツポーズものだ。みんな死にやがれ!そういえば本編で印象的に登場する“あっかんべー”要員の少年がいるが、彼の能力は“キモイ舌”ってことでいいのだろうか。あと最後の方でジェイソンは助けてあげても良かったのではないだろうか。ちょっと可愛そう。というかジェイソンに関してはすべてが可愛そう。セルフイメージが少女という点に関しては、やっぱりね、ほら、そういうことなのかもしれない。切なくなってきた。ジェイソンを助けろ!!!

 

 

 

 

【X‐MEN:ファイナル ディシジョン】(2006)

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悪名高きシリーズ三作目。今回も人間側とミュータントの衝突が描かれるがマグニートー軍団との共闘はなく、X‐MEN、ブラザーフッド、人類の三つ巴的展開になる。主要キャラが死にまくる乱暴な展開と大味なアクション描写で有名だが、後者に関しては楽しくて大好きだ。マグニートーが車列を襲撃するシーンもかっこいいし後半でゴールデンゲートブリッジを動かす場面、マグニートーは巨大なものを動かしてナンボな男だからこういう場面を入れてくれただけでも最高だ。

 

今作の大味な空気を代表するかのようなジャガーノートというドスドス走るだけのバカ(演じるはヴィニー・ジョーンズ)も最高だ。全シリーズに登場してドスドス走りながら「アイムジャガーノート、ビッチ!」と叫んでいてほしいくらいだ。

素晴らしい動画があったのでおすそわけです。


Greatest x-men character = Juggernaut - YouTube

 

それにしても今作は監督がブライアン・シンガーから大味料理人のブレット・ラトナー(『ラッシュアワー』シリーズの人。大好きではある)にチェンジしたことからゲイ的要素が一気になくなってしまった。それに楽しく気ままに振舞ったはいいけどこれまで築いてきたものをめちゃくちゃにして結局なにも残らないこの感じは、学生時代に仲のよかった人間の大半とは卒業後連絡すら取らなくなるというあの感じに似ている気もするので、そういう視点で鑑賞すると味わい深いものになるかもしれない。

 

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それにしてもこのトゲ男は本当に不憫な能力で思い出すたびにちょっとおもしろい。

 

 

 

ウルヴァリン:X‐MEN ZERO】(2009)

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シリーズの四作目でありウルヴァリンを主演としたスピンオフシリーズ一作目。ウルヴァリンがいかに長生きか、そして彼の誕生に関する物語である。この作品における好きな点はなんといっても冒頭に登場するミュータントのみで構成された特殊部隊【チームX】だ。アジア系のミュータントガンマンも熱ければ戦車の砲弾を素手で弾き返す巨漢、ライアン・レイノルズ演じるおしゃべりがテロリストの一斉掃射をポン刀大回転で切り抜ける場面も愉快だし……とそこのシーンだけは何度でも見返したい。

 

それにしても『X‐MEN』で雑魚扱いだったセイバートゥースウルヴァリンの兄として再登場。あのガウガー唸るライオン刑事とはつながりはないみたいだし、シリーズを追ってきた観客にも色々と気を遣わせ始めるが、ここは大人にならざるを得ない。

 

ラストで登場するデッドプールはこんな扱いでいいものかとまたしても混乱してしまうけど、演じるのがあのスコット・アドキンスで、スタントトレーニング時にもミュータント並みの身体能力を披露しまくっているのでそこを楽しんだもの勝ちな気もする。

 


Scott Adkins Test Moves For XMen Origins ...

 

 

 

【X‐MEN:ファースト・ジェネレーション】(2011)

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シリーズ五作目?監督は『キック・アス』のマシュー・ボーン

プロフェッサーXことチャールズと、マグニートーことエリックの出会いとX‐MENの創設、そして苦い決別までをキューバ危機に絡めて描いた作品。なにがいいって敵として登場するケヴィン・ベーコンだ。ナチの研究員兼ミュータントであるセバスチャン・ショウを演じているのだけど、いつもニヤニヤ余裕綽々だしおしゃれだしいけ好かないけど魅力的。マグニートーに行う鬼畜テストもさることながら能力も強けりゃ率いるやつらも全員おしゃれで悪役としても文句なしだ。ちゃんと苦しんで死んでほしいと思える。

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また若き日のマグニートーによるナチの残党狩りや、チャールズとエリックの深い絆、仲間集めの高揚感、能力の見せ場、それらすべてを気持ちのいいテンポと気の利いた演出で見せてくれるマシュー・ボーンの手腕。シリーズを通して観てきたファンからすれば、後にマグニートーとして暴虐の限りを尽くすエリックの深い悲しみと癒えようのない傷、そこに寄り添おうとするチャールズの献身、共にマイメンを得た二人の幸せな日々、そして訪れる悲しき決別を詰め込んだ今作には胸を強打された人も多いはずだ。監督のそういう器用な面に一抹のいけ好かなさを感じる人がでるのも納得の一本。全編に溢れる007イズムも楽しい。

 

 

 

ウルヴァリン:SAMURAI】(2013)

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シリーズ通算六作目でありスピンオフシリーズ二作目。

舞台が日本で、どんなミュータント戦争が行われるかと思えばなんともいえない珍妙な日本描写の連続でそれはそれで楽しい。ニンジャやヤクザが主な敵として回復能力のなくなったウルヴァリンを攻撃してくるなか、一応敵のミュータントも出るには出るけどそいつも悪魔の毒々女ってだけでスペクタクル的なアクションは望めないときた。

 

そのなかで盛り上がりに一役買っているのが真田広之と新幹線ではないだろうか。甲冑を身にまとい日本刀を振り回してウルヴァリンと対峙するヒロユキが発した「ワッカインオブモンスター、アーユウ!?」というセリフは最高に好きだ。そして今作の白眉である走る新幹線上でのヤクザとの死闘。ぴょーんと飛んで、どんどん死んでいくヤクザたち。そのシーン以降をあまり思い出せないほどに楽しいシーンだった。あとはもう特に覚えていないのは、劇場で鑑賞した日はすごく疲れていたからかもしれない。

 

 

 

【X‐MEN:フューチャー&パスト】(2014)

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シリーズ通算七作目。『X‐MEN:ファイナル ディシジョン』と『X‐MEN:ファースト・ジェネレーション』両方の続編という不思議な位置の映画でもある。

 

 2023年、人類およびミュータントはミュータント殲滅マシーン“センチネル”の暴走により滅亡の危機に瀕していた。これじゃあみんないなくなっちゃう。ということでプロフェッサーXとマグニートーは手を組んで“センチネル”開発の起源である1973年にウルヴァリンの精神を送ることでこの荒廃した未来を救おうというドラえもん的作戦に出る。そのため1973年と2023年の二つの時代で物語が同時進行することからシリーズ歴代の登場人物が勢ぞろいする。

 

今作で最高なのはなんといってもクイックシルバー!ピューーーン!

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超高速で動くことができるミュータントで劇中で描かれる圧倒的な描写から考えるにあのマグニートーにすら勝てると思わせるほどの無敵っぷり。周囲が人類との共存だ戦争だと眉間にシワを寄せて侃々諤々言い合っている中、一人だけノンポリ感全開でコンプレックスをこじらせることなく人生を謳歌しているその屈託なき瞳がとても魅力的だ。彼のシーンだけでも何度でもみたい。思えば今シリーズには「あのシーンまた見たいな」と思わせる箇所が必ず出てきて、それゆえになんだかんだ追い続けてしまうのかも。

 

今作の展開はもうなにをいってもネタバレになってしまうような気がするんだけど、なによりも思うのはウルヴァリンよ本当にお疲れ様でしたってこと。百何十年も生きて多くの別れを経験してきた彼にとって今作のエンディングは本当に涙腺にくる。一応シリーズを通して観てきた僕としては、ほのかに喪失感も覚えはするものの、その苦味も含めて胸を打たれるラストだったし、クイックシルバーをもっと出せという不満も次作まで我慢していようとの気持ちにさせてくれた。

 

ということでこの最新作は監督としてカムバックしたブライアン・シンガーの今シリーズに対する落とし前なんだと捉えられる一本となっていて、公開が終わるまでにもう一度くらい観ておきたいしDVDがリリースされても何度か観返すことになるだろうと思う。クイックシルバーでのスピンオフを観たい気もするけど、彼は大真面目な人たちの中でのびのびと走り回っている姿が素晴らしいので、まあそれは別にいい。

 

 

 

 

うろ覚えのままこんなに長いこと意味もないことを書き連ねてしまったけど、今シリーズは定期的に見たくなる魅力を持っているので、なんだか妙にむしゃくしゃするなという人などが、せっかくだし観てみようかなとか思い立って、ちょっとでも高揚した気分を味わえるのならいいなと僕は思う。僕は現在無職で寄る辺のない日々を過ごしているがこの『X‐MEN』シリーズを観ているとそういった心の隙間を圧倒的な能力で埋めてしまいたいというありふれた欲望が頭をもたげるのを感じるのである。ここでいうところの「圧倒的な力」が加藤智大の場合2tトラックやダガーナイフであり、僕はそういうことを考えるとき、ふと誰も傷つけない能力でもいいかなと思うのである(ちなみにもし得られるとして僕がいま一番ほしい能力は「液体全般を自在に操る」というもので、モグラの能力をもった友人が高速で穴を掘り進めている際に、そこへ大量のダムの水でも流し込んで溺死させる、という妄想をよくする)。