箇条書き20220616

 

 

・『トップガン マーヴェリック』をIMAXレーザーで鑑賞。こみ上げるものがあった

 

・宝くじ300円当たった

 

・メルカリで安いTシャツ買うのにハマっている

 

・フィギュアのヘッド用ジョイント問題解決 →サランラップを巻きつける

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

・ワイドパンツなんか別に穿かなくていいと思えるようになった

 

・『ブレイキング・バッド』2周目。ソウル・グッドマン初登場シーンで思いの外テンションUP

 

・友達におすすめしてもらった一万円を切る空気清浄機を購入。鼻炎持ちなので爽やかな日々を

 

・自分が書いた短編を読んで泣いた

 

・乾燥で右手があかぎれ

 

・100枚セットで買ったKF94マスクのサイズがでかい

 

・ジャストサイズのマスクを参考にKF94マスクをハサミでカットして使用

 

・職場のアルバイト大学生が高確率で歯列矯正していて妬んでいる

 

・笑うと見える位置に銀歯がある

 

・通っている歯医者さんが繁盛しており、いまのところ月一ペース

 

・百均行くたび何が欲しかったか忘れる

 

・3ヶ月くらい本を読んでいない

 

・仕事であったことはすぐ忘れるのに、感情だけは消えない

 

・無地白Tの下にも白Tを重ねようと思いエアリズム購入

 

・炊飯器内のごはんが保温40時間目突入

 

 

短篇『おうちにかえる時間です』

 

 

 

 亜矢子ちゃんはトイレでブランケットを貸してくれた。わたしは断ったけど、彼女はこうやって腰に巻けばいいと実践して見せた。わたしと亜矢子ちゃんは同じクラスだったけど、話したのはそのときが初めてだった。

 

 それからわたしは授業中もずっと亜矢子ちゃんのことばかり考えていた。彼女の頭の形は、いまでもそらで描ける。提出しなくていい数学のノートには、亜矢子ちゃんの頭の輪郭を練習したあとがたくさん残っている。

 彼女はすぐにおなかがすくんだよねといって、わたしが食べていたグミをじっと見て、いいよあげるというと喜んでくれた。二個いいよっていうと、きゃーっていった。

 亜矢子ちゃん、弟いるんだっけ。

 うん、いる。

 似てる?

 どうだろう。そんなにだよ。みつきちゃんは?

 上にひとりいるけど。

 えー、お兄ちゃん?

 そうそう。

 仲いい?

 お兄ちゃんのこと好きな妹なんていないよ。

 借りたブランケットを返すために初めて亜矢子ちゃんの家にいったとき、そこでわたしは初めてはるくんにも会った。亜矢子ちゃんより6つ下。やっぱ似てるね、というと、そう? と彼女はちょっとそっけなかった。はるくんはおもちゃの剣をもって空をかくように振る。わたしも手刀で応戦する。興奮したはるくんはわたしを強くぶってしまう。亜矢子ちゃんが怒る。はるくんは泣いておしっこを漏らしてしまう。わたしはわたしのせいではるくんが怒られてしまったのと、いきなりのおもらしを見て頭が真っ白になり、結果なにもできなかったことが惨めで、未だにあの日のことを思い出す。はるくん、ごめんよ。ほんとうは全然痛くなかったけど、頑丈すぎるのもちょっと変かと思ってわざと大げさに痛いふりしてたら、亜矢子ちゃんがすごく怒っちゃって、わたしもいまさら説明できなくて、はるくんおもちゃを奪われて驚いちゃって、ああごめん。わたしは自分が情けなくなる。

 

 でも浴室から戻ってきた亜矢子ちゃんはいった。

 ごめんね。はる、みつきちゃんのこと好きだからさ。

 なのでわたしが

 わかってる。好きな子にはいじわるしちゃうよね。気にしてないっていっといて。

 そう答えると彼女は笑った。

 亜矢子ちゃんの家はおばあちゃんの家で、お父さんもお母さんもいない。これは有名な話なので、わたしももちろん知っている。おばあちゃんと呼ぶにはあまりにも若い雰囲気のまり子さんはいつも夕方になると帰ってきて、わたしを見るたび両手を振ってくれる。わたしが縁側に座って割れた鉢植えを眺めていると、彼女は亜矢子ちゃんち名物の、やたら味の濃い麦茶を持ってきてくれる。

 みつきちゃん、彼氏できた?

 えー。いらないですよそんなもん。

 でもみつきちゃん、モテるでしょう?

 そんなそんな。モテませんって。

 あの子はどんな感じ?

 亜矢子ちゃん? 毎日元気ですよ。

 そうじゃなくて。

 あ、そうか。めっちゃモテますよ。

 とそこに亜矢子ちゃんが戻ってきたのでまり子さんとわたしはお互いに笑い合って話を切り上げる。なんか楽しそうだな、と独り言のようにつぶやく亜矢子ちゃんには、ついつい意地悪したくなるいじらしさがある。

 

 

 

 もちろん宮本くんの件は別として。

 

 

 

 いつものように放課後になって亜矢子ちゃんの家に行こうと帰り支度をしていた。それなのに亜矢子ちゃんの姿がなくて、あれ? と思って何人かに聞いてみたら宮本くんじゃない? みたいなことをマリが、さらにはムギちゃんもいう。宮本くん? わたしは集まった断片的な情報から体育館裏に向かい、そこで野次馬となっている男子たちと、その視線の先にいる宮本と亜矢子ちゃんを見つける。

 

 変なバイトしてるって本当ですか?

 

 宮本くんの質問は、一部の生徒の間で勝手に話題になっている亜矢子ちゃんに関する根も葉もない噂のことで、じゃんけんで負けたんだか罰ゲームだかで宮本くんは、その真相を本人に質問する役に選ばれたらしかった。

 

 わたしはあの日ほど自分がなにかに対してこれほどまでに怒りを燃やせる人間なのだと実感したことはない。行為そのものもそうだし、体育館裏というミスリードを狙った場所選びも最悪。わたしはあの場にいたやつら全員をブルドーザーでひとまとめにひき殺したいと思った。ブルドーザーの免許を持っていたら本当にやっていたと思う。しかし無免許のわたしは教室に戻ってハサミを取ってきて宮本くんくらいは刺してやろうかと考えるのが精一杯で、その場をダッシュで離れ、でもまって、亜矢子ちゃんは? と思ってまたダッシュで戻り、ひとり教室に戻るところだった彼女のもとに駆けよった。

 

 でもわたしには彼女にかける言葉がなにもなかったのだ。

 

 一緒に学校を出て、暗くなるまで彼女の部屋でだらだらして、そんないつも通りをなぞったのもいわゆる恒常性みたいなやつだろうか? わたしたちはあの日、特になにかを話したわけでもないけど、いつも通りに過ごすことで非日常的な出来事やそのショックを塗りつぶそうとしたのかもしれない。

 

 そういうことに気づくのはいつだってちょっと遅いタイミングで、その夜わたしは再度追いついてきた感情に押しつぶされて泣いた。そのまま亜矢子ちゃんに電話をかけようかとも思ったけど、深夜一時にそれはまずいなという理性にまた邪魔をされた。みんな、人のことをなんだと思っているんだろう? 明日亜矢子ちゃんに学校で会ったらなんていおう? わたしはなんていえばいいんだろう? なにもない。なにも持ってない。こんな自分がたまらなくみっともない。

 

 

 

 ささくれだったわたしは本当に冷徹なので、何日か後に宮本くんが駅の階段から転げ落ちて左手首を骨折したときにも一切同情はしなかった。その痛みを想像する気にすらならなかった。天罰が下ったんじゃない? さようならって気持ちで話題にすら上げなかった。わたしは亜矢子ちゃんの家に通い、スーパーで買ったお刺身を醤油に漬けて次の日にどんぶりにして食べたりする。別々の漫画を同時に読んで、相手に全部説明することにちょっとだけハマったりする。なんとなくどちらからともなく、丸一日ずっと裏声だけで会話したりする。

 亜矢子ちゃんって、家だとじぶんのこと亜矢子っていうよね。

 えーいわないよー。

 いやなんで! いってるよ!

 うそー。なんでそんなこというの。

 だっていってるから。

 あやこ、いってないもん。

 みつき、きいたもん。

 で、飛んできたはるくんのパンチを避けるわたし。麦茶を飲んで、亜矢子ちゃんのベッドに寝そべっていると、世界の回復する音が聞こえてくる気がした。

 

 

 

 そんなある日の放課後、左手が肉まんみたいになっている宮本くんがわたしのところにやってきた。

 

 ちょっといいですか。

 

 ここ最近、宮本くんの様子が変だという話は耳にしていた。怪我をした彼は野球部を休んでいるか辞めたかして、坊主頭は伸びっぱなしで、学校も急に休んだりするようになり、なんか精神的に病んでるんじゃ? みたいにいわれていた。さらに問題なのが、宮本くんの自宅からはほど遠いはずの亜矢子ちゃんち近くの公園に宮本くんがいるのをわたしは何度か見ていたってことだ。ベンチに座って、前屈みになってスマホをいじっているだけなんだけど、あいつ、亜矢子ちゃんになにする気なんだ? 近くわたしのほうから声をかけようと思っていたくらいなのに。

 

 非常階段の踊り場で彼はいった。

 

 これを大橋さんに渡したいんだけど。

 

 それは手紙だった。

 こわ。

 読んでいいの? というと、確認してほしいと彼はいった。一つ折りされた紙を開くと、ボールペンによる固い文字が並んでいた。気は進まなかったくせに、最後まで読んでいた。

 

 宮本くんは、かけるべき言葉をちゃんと持っていた。

 

 自分の言葉を使い、わいてきた感情を抑制しつつ、でも隠すことはせず、ていねいに、真剣に綴っているのが伝わった。まずわたしはショックをうけた。わたしはもちろん宮本くんのことが大嫌いで、その感情を変更する気もないけど、この手紙は亜矢子ちゃんが真っ先に読むべきだったなと思って、そこにちょっと腹も立って、宮本くんに手紙を突き返し、今更なことをいった。

 なんでわたしがチェックするの?

 そしたら宮本くんは驚いたような顔をして、凜々しい眉毛の下のつぶらな目を動かしながら、

 だって川津さん、大橋さんの親友だから。

 といった。

 意味不明。親友ってか、わたしが好きなだけだよ。

 宮本くんは、わたしの返答への反応も早かった。

 大橋さんも絶対好きだよ。

 うるさい。自分でわたすべきだよ。

 感想をその場で伝えてあげる義理もないなと思ったわたしは、そのまままっすぐ家に帰った。一歩一歩、地面を蹴りつけるように。

 

 

 

 で、その日のうちに宮本くんは亜矢子ちゃんに手紙を渡した。

 

 

 

 果たして亜矢子ちゃんは宮本くんのことを許したのだろうか? 

 

 

 

 そもそも、亜矢子ちゃんは宮本くんにされたことを、どう感じていたんだろう? わたしが激烈に怒るあまり、彼女自身の感情に、きちんと目を向けられてはいなかったといえよう。

 

 

 

 亜矢子ちゃんは宮本くんと友達になった。

 

 

 

 んんん? なんで?

 なんでってのは変か。でも思う。なんで? まあいいのか。でもなんでよ。なんで? いいのは前提として、疑問は疑問。是非とは違うところにあるわたしの気持ち。

 

 

 

 わたしは宮本くんの所業を許すことはできない。でも、ああ、本当のところ、いうほど疑問でもなく、薄々そうなってしまう可能性に関して、ちっとも考えなかったわけではなかったのだ。

 そうか。

 わたしのなんで? はただの混乱だ。

 正確にはたぶん、

 どうしたらいいの?

 ね。どうしましょう。

 

 

 

 そうしてわたしは亜矢子ちゃんとの話し方を忘れてしまった。

 

 

 

 さらにわたしは高校生で、やることがあった。ずっと保留にしていたアルバイトでも始めようとか、ちょっと真面目に勉強していい大学目指そうとか、お母さんの口うるさい小言を回収していくようになった。なんだか助かった。ちょうど中間試験も近かったし、放課後になって学校を出て市立図書館に行けば一日がいたずらに長くはならなかった。

 

 

 

 ちなみにペン回しがうまくなりました。

 

 

 

 ひとりで過ごすようになって一週間が経ったころ、亜矢子ちゃんと宮本くんが付き合っているんじゃ? みたいな話も聞こえてくる。信じない。いや、というより強度が足りない。わたしは悔しさとさみしさで顔をゆがませることも少なくなり、いつも通り放課後になればまっすぐ図書館に向かい、殴って壊すイメージで数式を解いて解いて、複数の凡ミスから癖みたいなものを見つける。たしかにわたしはそういう人間です。鞄にノート類を静かにしまい、閉館時間ちょっと前に自動ドアを抜けた。ずっと我慢していたので思いっきり鼻をかみながら、薄紫のなか外灯がくっきり映える閑散とした駐車場を眺めつつ、ここでつばでも吐こうかしらと考えていると、すぐ横の掲示板近くに人影があることに気づいて硬直。それが亜矢子ちゃんであることもすぐわかる。なのにわたしは気づいていないふりをした。本当はめちゃくちゃびっくりしていたのに、駐車場の真ん中あたりまで歩いてうしろから「みつきちゃん」という声がして初めて気づいたふりをした。わたしはそのとき宮本くんの姿を探した。でもそこには制服姿のままの亜矢子ちゃんだけがいた。家からは遠いこの場所で、彼女はずっと待っていたのだろうか? なんて考えて胸がざわつくのに、わたしの声は思っていた以上に冷たく響く。

 亜矢子ちゃん。

 彼女は軽く手を挙げた。どこかくたびれた雰囲気だった。それでもわたしは彼女の二の句を待たずに歩き出した。彼女はついてきた。わたしは足だけを動かす。亜矢子ちゃんも黙ったままついてくるだけなので、それが煩わしかった。脇を通る車の音が彼女の足音を何度もかきけしてしまうので、気づかれないように振り返ったりはしてみたけど、彼女は一定の距離を保ったままついてくるだけだ。住宅街に入ってあたりが静かになると、亜矢子ちゃんの足音は復活した。わたしは後頭部で彼女との距離を感じながら、少しずつ足を速めた。なんならちょっと走ったりもした。彼女も走ってきた。わたしはついにほぼダッシュに近いかたちで走ることにし、バテて徐々にスピードを落とすも、彼女は決してわたしに追いつくことはしなかった。視界の端で見る亜矢子ちゃんは、肩で息をしながらうつむいていた。わたしはもう振り返ることをやめにして、そのまま家まで続く細い道へと曲がる。玄関に入り、鍵のかかっていないドアを背に息を整えた。

 

 のぞき穴のむこうに広がる誰もいない夜を眺めながら、今日のことを早く忘れたいと願った。

 

 もちろん無理でした。

 

 

 

 はるくんがいなくなったという報せをわたしが耳にした日、亜矢子ちゃんは学校を休んでいた。教えてくれたのは宮本くんだった。いなくなったってどういう意味? どういう意味って、そのまんまの意味だよ、行方不明。

 うそ。家出?

 違うと思う。

 はるくんは十歳で、あり得ない話でもないと思うけど。じゃあいま警察が捜している感じ? と聞けば、宮本くんは首を振った。

 どういうこと?

 大橋さんとこのおばさんがやめとこうっていってる、といった。宮本くんはまり子さんのことをおばさんって呼ぶんだ、と思うわたしに彼は続ける。

 たぶん、知ってる人がつれてったって考えてるみたい。

 

 知ってる人?

 

 わたしと宮本くんはその日の放課後、亜矢子ちゃんの家に向かった。でもだれもいなかった。連絡しても返事がないと宮本くんはいう。なので余ったもの同士で交流が始まる。わたしはわたしの知らない亜矢子ちゃんたちの様子を宮本くんから聞き、宮本くんの知らない亜矢子ちゃんたちの話をできるだけ教える。暗くなるまで亜矢子ちゃんちの近所をうろつき、もしかしたらラッキーなことがあるかもしれないじゃん、とはるくんの姿を捜す。でも見つからない。市内放送から暗いクラシック曲が流れ、子どもの声で帰宅を促すアナウンスが流れていた。宮本くんはふいに、なにも思い浮かばない、といった。

 奇遇だね、とわたし。

 わたしたちは踏切前で立ち尽くしていた。渡るかどうかも決められないので、何度も赤い点滅に照らされて、じっと焦っている。

 ていうか、こんなのうちらにどうしようもできなくない?

 亜矢子ちゃんは三日連続で学校を休み、四日目は登校して、普通にみんなと話して、でも休み時間になると教室を出てどこかにいなくなってしまう。宮本くんは亜矢子ちゃんに話しかけるが、すぐに終わる。

 大丈夫、

 といわれたらしい。

 

 そんなわけある?

 

 その日の放課後も、わたしたちはあてもなく歩きまわった。子どもひとりを捜すには、この町は広すぎる。徒労に終わるんだろうなというのも薄々。だからずっと亜矢子ちゃんの話をした。

 亜矢子ちゃんは変なバイトなんかしてないよ。

 わたしがいうと、宮本くんはしばらく黙ってから、わかってる、おれがクソなだけだから、といった。

 わたしもちょっと黙る。自分の中にある言葉を選んでみた。そもそも環境とか体調とかで、ふるまいなんて変わるものでしょ。調子に乗ったときの自分のふるまいを本当の自分みたいに思い込まないほうがいいよ。

 まだ残ってる。

 宮本くんは最低のばかをすることもあるけど、それはある日のある行動についての話であって、たぶん本当の宮本くんは普通にいいやつだよ。普通っていうか、ちゃんと諸々が整えば。

 このときの言葉は、いわばおまじないみたいなものだった。この言葉が宮本くんを楽にすればいいなと思ったのもあるが、同時にある種の縛りを彼の中につくりたかった。そしてわたし自身にも。

 

 

 

 宮本くんと別れたわたしは、亜矢子ちゃんを呼び出す。

 

 

 

 暗くなるギリギリのところで公園に現れた亜矢子ちゃんは、学校を休んでいたくせに制服姿だった。まり子さんに学校へ行けといわれて喧嘩になり、とりあえず制服を着て家を出て、ずっとふらふらしていたらしい。「ばかだよね」

 亜矢子ちゃんは照れくさそうにうつむいた。

「そんなことないよ。そんなことないこともないかもしれないけど」

 わたしは笑うのを我慢しているみたいなくすぐったさの中で、やるべきことを見失わないようにしている。

「亜矢子ちゃん、ごめんね」

「ううん」

「ここ数週間くらいのこと。ぜんぶ」

「わたしも謝りたかった。みつきちゃんに」

「ううん」

「でもなにをどう謝ればいいのか、実はまだよくわかってないかも。それでもいい?」

「いいよいいよ」

「みつきちゃんごめん」

「うん。てかそもそも亜矢子ちゃんには一ミリも怒ってないよ。わたしがわたしを好きになれなかっただけの話で、ぜんぶわたしのせいなの」といって、ああそうだったんだわたし、と自分で思う。それから、はるくんについて。

「だいじょうぶ」と亜矢子ちゃんはいい、わたしはそこで宮本くんも同じことをいわれてたなと思う。

「だいじょうぶじゃなくない?」

「ううん、知ってるの。どこにいるのか」

「あれ? 見つかったの?」

「ううん。そういうわけじゃないけど」

「どういうこと」

「たぶん、お父さんなの」

「お父さん?」

「やり直したいって思ってるんじゃない? わかんないけど」

「あー。そうなんだ」

 と拍子抜けしたふりをする自分にちょっと引いた。

「だからもうちょっとで解決するかも。わたし、お父さんに直接あって話してみるつもりなんだよね。はるを返してもらうように。そしたらみつきちゃん、またはると遊んでよ。みつきちゃんいるよっていったら、はるは絶対戻りたがるし」

 さて、といった感じで遠くを見る亜矢子ちゃんが、「今日はありがとう」といった。

あ、やばい、と思う。それでもわたしは動けなかった。

 ああ、だめだ。

 亜矢子ちゃんは来た道を戻っていく。

 お父さんのいる場所へ向かう。

 はるくんを迎えに行く。

 そしていろいろなことが起こる。

 亜矢子ちゃんはそれを受け止めてしまう。

 だからわたしはだれのことも許せなくなる。

 まるで火にくべるかのように、すべてを怒りでもって見つめる。

 そしてこの怒りがわたしの人生を通して消えることはない。

 

 絶対に。

 

 絶対に。

 

 

 

 亜矢子ちゃんの手首はわたしの手のひらにぴたっと収まった。ちょっとだけ汗ばんだ冷たい肌は張りつめる。彼女は振り返り、へ? と声を漏らす。わたしは口を開くも、言葉がなにも出てこない。どうしようどうしよう。「どうしようどうしよう」

「え、え、なに?」

「やばいやばい」

「なにが?」

「わかんないわかんない、でも待って。放すことはできないの。ごめん」

「え?」

「え? だよね。でも放さない、わたしは絶対に! わかんないけどなにも!」

「えええなに、わかんないわたしもなに? みつきちゃん、どういうこと?」

「わかんないよー! ごめんなさい!」

「えー!」

 マジでパニックだ。亜矢子ちゃんも目をまん丸にしてる。その色素の薄い瞳にわたしが映っている。ひどい顔だ。でもかわいい。わたしはいま、自分にがっかりはしていない。わたしはこの手を絶対に放さない。絶対に亜矢子ちゃんをひとりでは行かせない。どうしてもというのならわたしも行く。宮本くんだって呼べば飛んで来てくれるはず。でも本当はもっとちゃんと、しっかりした誰かを連れて行く必要があるのかもしれない。うんうん、たしかにそうだ。もっともっと考えなければ。

 

 だっていまこの時点ではまだなにも決まってない。

 

 亜矢子ちゃん。

 あの日、トイレで泣いていたわたしのそばにいてくれてありがとう。

 そこにいてくれてありがとう。

 どうかわたしにも同じことをさせてほしい。

 だってすべてはこれからだ。

 これから、決めるんだ。

 

 

 

 

 

 

短篇『ニート』

 

 友達のニートが親に殺されかけたからとうちに転がり込んで、そのまましばらく過ごしたかと思うと今度は上京するとかいいだして本当に出ていったのがここ一ヶ月くらいの話。そりゃさすがのおれとてずっと一緒に過ごすわけにもいかないよなあとは思っていた。うちの母親はとくになにもいわなかったけど、さすがに気を遣う部分だってあったろうし、そう考えれば自然な流れでこっちも助かったかなって感じなんだけど、ちょっとだけ寂しいのも事実だったりする。毎日おれの部屋で遅くまでマンガ読んだり、テレビを見たり、ラジオ聞いたり、話したかったら話すし、喋りたくなければ黙るし、なにをしているんだか夜遅くにどこかに出てそのまま戻ってこなかったり、そんな日々のリズムにもすぐに慣れて心地よかった。安藤には、誰かと一緒に過ごす才能があるのかもしれなかった。家に上がり込んできたこと以外、自分から特になにかを要求するとかもなかった。実家でもそうやって過ごすことで、何年もニートでいることができたのかもしれない。おれは部屋の隅に収まって本を読む安藤を見てそんなことを思っていた。

 

 やつは両親の部屋に金槌や包丁が隠されていたのを見つけ、そのまま最低限の荷物だけを持って家を出たのだ。お金に関してはわずかな手持ちの他にクレジットカードを使っていた。だれのものかは聞いても曖昧に笑うだけで答えなかった。やつがうちで過ごした最後の夜のこと、おれたちは家の近くの土手沿いにあるグラウンドで花火をした。風下に立って煙を浴びるおれを見てやつは笑っていた。花火もぜんぶ安藤が買ってきた。おれも出すよといったが、やつは断った。

「東京行くんだったらお金いるだろ? 節約したほうがよくない?」

「まあでも、お金尽きたらそれまでだよ」

 煙の向こうで安藤が笑った気もするが、めちゃくちゃ無表情な気もした。

 

 

 それから半年が過ぎ、久々に安藤から電話があった。

 東京に出て、じゃあいよいよ仕事とか探すのかなとか思っていたけど、やつはいまだに定職には就いていないといった。

「どこ住んでんの」

 最初は、と安藤はいった。

「知り合いの部屋に行って、その人が彼女と同棲するからまた別の知り合いの部屋に行って、さらにその知り合いの知り合いのって感じ」

 いまはなんのつながりもない人の家にいる、と安藤はいっていた。すごいな。そんな感じでいつまでもつのかな。ぼんやりとした相槌を打っているうちに、電話は終わる。おれはちょっとだけ浮ついた気分になって、近くのコンビニまで行ってカップラーメンを買って帰って食う。

 

 

 

 その後も安藤からは定期的に連絡が入った。

夏の終わりに差しかかったある日のこと、駅で男に突き飛ばされ階段から転げ落ちた安藤は、周りに集まった人たちから絆創膏や飴玉を恵んでもらったらしい。

「なにやってんの」

「ほんとほんと」

「じゃなくて、そのクソ野郎がだよ」

「まあね」

「まあねじゃなくて」

 その後安藤は数日かけて駅に張り込み、自分を突き飛ばした男を見つけ、一日かけて尾行して家まで突き止めた。それからさらに一週間尾行を続け、ついには男に声をかけ、本人に出頭を勧めた。が、向こうは再度抵抗を見せたので、色々あった末に思い切り股間を蹴り上げたらしい。

「マジで?」

「でも捕まることはないと思うよ」

「え、どっちが?」

「あ、こっちが」

「なんで?」

「通報はしないと思う」

「そういう話かなあ」

「最初は手の骨折ろうと思ったんだよ」

「え?」

「そいつ痴漢でもあるんだよ」

「うん……まあ」

「でもなんか痴漢って、性欲はあんまり関係ないらしいよ」

「ええ。そうなんだね。ん?」

「なに?」

「いや、なんか。なんだろう。なにかいいたかったんだけど。まあいいや忘れて」

「マジか。気になる」

 そろそろさすがに危なっかしい感じもして、おれは安藤の放蕩の終わりを強く予感する。定期的に入るこの連絡も結構楽しみにしていたんだけど。

 

 

 

 その次に安藤からの連絡が来たときには、おれのスマホは新しい機種に変わっていた。

 安藤は駅で見つけたターゲットの生活を調べ、把握し、生活費リストに加えることで新しいリュックと靴とズボンとシャツを手に入れていた。

「どうでもいいけど、いまどこに住んでるの?」

 安藤は一人暮らしのおじいちゃんの家に住みついていた。近所の人には遠い親戚だということにして、生活面、例えば買い物やネットでの手続きなんかを補助しているといっていた。だったらいっそのことそういう仕事に就けばいいのにとおれは思うのだけど、特に伝えなかったのは、そういう仕事が実際にあるのかよく知らないからだ。

とりあえず健康には気をつけろよといったおれに、安藤は「ありがとう」といった。「今日はちょっとお礼がいいたくて」

「お礼?」

 なんでもない会話が続いて、ぼんやりしたまま終わるんだと思っていたおれはソファーに埋もれていた身体をちょっとだけ起こす。

「一番最初、まこっちゃんが家に上げてくれなきゃ、多分いろいろがこうはいかなかったと思う。ありがとう」

「いいよ。なんだよ。死ぬのかよ」

 笑いながら聞いてみたら、むこうもちゃんと笑ってくれて安心する。

「みんないつか死ぬだろ」

 あそっち? ローテーブルにおいてあったマグカップの、冷めて常温というよりも、ずっと冷たくなっていたコーヒーを一口飲んだ。

「えー。なんかあった?」

「いやいや。いつもどおりだよ。たぶんこれからも」

「なんか困ってたらいってよ。お金とか。おれもないけど」

「いいって、そういうんじゃないよ。こうやって話聞いてくれていつも助かってるよ」

「ぜんぜん。おれも楽しいし。これからもいつでも」

「うん。ほんとうにありがとう、最後の最後まで」

「最後の最後なの?」

「ははは。これからも」

「いまどこ」

「いま? っていうと、ほんとうにいま? 風呂場」

「風呂場? 風呂はいってんの?」

「いや、ただいるだけだよ」

「大丈夫か。今日なんか食べた?」

「食べたよ」

「ふうん。太った?」

「なんて?」

「いや、体重。いまどんな感じなのかなと思って」

「どうだろう。あんま変わってないと思う」

「そうか。ならまあいいか」

「うん」

「あと、そうだ。またなにかあったら、いつでも戻ってこいよ。おれの部屋になら泊まっていいから」

「本当にありがとう。本当に。あとそうだ。もう大丈夫だと思うけど」

「はいはい」

「お母さんのこと殴るなよ」

「ああ」

「念のため」

「いや大丈夫。大丈夫ってのも嘘くさいだろうけど、もうしないよ。約束というか宣言というか。それにほら、もうおまえの大外刈くらいたくないし」

「なにそれ?」

「おれにやったろ」

「あれオオソトガリっていうの?」

「そうだよ。知らないでやってたのかよ」

「ははは。どこかで見たものをなんとなく真似ただけだよ」

「なんだよそれ」

「ごめん、ちょっとおれの話していい?」

「え?」

「おれの話っていうか、考える時間たくさんあったからわかったことなんだけど、嫌なものって逃げ回ったところでどうせ向こうからくるだろ? だから八つ当たりしてる暇はないんだよ。漠然とした話でごめんな。でもわかるだろ?」

 わかっている。

「そういえば後遺症とかないよな」

「え。オカンに?」

「いや、一応まこっちゃんに関してだけど、どっちもだよ」

「たぶんどっちも大丈夫だとは思うけど」

 物覚えが悪いのは昔からで、強いては挙げない。「おれはでも大丈夫じゃないかも。なにやってんだろうな」

「まあ落ち着けよ。たいていのことは振り返るより、じゃあどうするかを考えるほうがいい」

「へえ」

「なんかおればっかり喋ってごめん。あとでまた余裕のあるときにでも思い出してよ」

「そうする。ただ、もしものときはまたおれをぶん投げてよ。マシになったつもりでいるけど、まだまだ全然ダメなままだよおれは」

「そこは自分でなんとかできるだろ」

「できるかなあ」

「しろってことだよ」

「厳しいな。ありがとう」

 気がつくとおれのほうがぼやいていて不思議な感じだ。安藤に会いたかった。またこの部屋の庭側の窓から、こっそり音を消して入ってきてほしかった。おれは未だに鍵をかける習慣に戻れない。

 

 電話が終わって家のなかをちょっとだけウロウロしてだんだん落ち着かなくなってきたおれは、安藤に電話をかけなおそうかなとも思うけどそれはちょっとやめにして土手まで散歩することに。

 

 この時間帯の地平線はうっすら紫がかっている。

 

 流れる風は埃っぽいのにひんやりとしていて、小さいころの運動会を思い出した。だれもいないグラウンドの中心まで歩き、そのままじっと立ち止まる。このまえスーパーで安藤の両親を見た。普通だった。ゆっくりした動きでカートを押している小さな女の人と、おいかけて食パンをかごに入れる白髪頭の痩せた男の人だった。安藤だったら別に殺されずに済みそうな気もした。そういう客観的な視点を安藤の家に介入させることで、なにかを変えることだってできたんじゃないだろうか。

 

 どうせ安藤は殺せませんよ。

 

 おれんちでしばらくお預かりしますよ。

 

 だから……だからなんだ? いたずらにみんなが傷つくことも避けられるはずですよ? おれは自分がなにをいいたいのかよくわからない。そもそも、おれなんかに重要な言葉が吐けるとも思っていない。だから結局安藤の両親にはなにも伝えていない。気付かれないようにそっと店を出て、うっかり会ってしまわないように、何十分もかけて一つの方向にむかって歩き続けた。

 ああ、くそ。

 花火を買ってくればよかった。

 今度はちゃんと風上に立って火を点けて。

 

 

 

 それからおれは生活を変える。というか、まっとうする。ジョギングを始めたり、なんとなく買った本を読むようになって、自然とそれが習慣化して、空いた時間でバイトもはじめて、稼いだお金を母親に渡して、通い始めた柔術道場の月謝に充て、一年はあっという間に過ぎ、なんとなくも仲良くなった人も増える。バイト先の書店で知り会った杉作りんという大学生は映画が好きで、どこに感動したかをきちんと言葉にできて、世の中にはおれにはできないことができる人がたくさんいるなと思って、それが別に不快な感じでもないのが自分でも以外だった。恐怖の一つでも感じそうなものなのに。たまに杉作りんに誘ってもらって、いっしょにご飯を食べたりもする。彼女に安藤の話をする。彼女はすぐに安藤のことを覚える。

「きょうは安藤くんから連絡きた?」

「や、きてないよ」

「えー残念」

「もうこないと思うよ。わかんないけど」

「どんな感じの人なんですか?」

「安藤? うーん。背はおれと同じくらいで、顔は、なんだろうな。普通」

「普通ってなに」

「普通なんですよ」

「まあ見た目のことを聞いたわけではないんだけど」

「はは。あと、なんだろう」といいかけておれは言葉を見失う。「や、なんでもない」

「そういえばなんだけど、今度の映画だいじょうぶですか?」

「あ、うん? ごめん。だいじょうぶってどういう意味?」

「二時間くらい電源切るじゃないですか」

「ああ、そういうことか。ぜんぜん大丈夫です」

「ほんと? 気になりません?」

「そんな気を遣わなくても」

 とはいっても確かにその二時間のどこかで安藤からの連絡が来るかもしれないと思うと、やっぱ映画はちょっとやめとこうかなとすら思えてくる。

 なのでいろいろ考えて、安藤の番号を着信拒否にした。

 杉作りんと過ごす時間が増えるも、付き合うとかそういう話にはならない。おれがそういった話題を避けていて、彼女もそれに気づいているけど、どうして避けているかを説明したくないので、たぶんもうしばらくしたら彼女と過ごす時間も変わっていくと思う。おれはこの腕を握り返す安藤の力を忘れないでいるし、忘れちゃならないと思っていて、もしかするとこのままなんとかなるんじゃないかとどこかで安堵していた自分について考えるようになる。

 

 果たしていまのこの日々が、あの瞬間に期待したものなのだろうか? なんてことも。

 

 でもわからない。

 

 こういう話はだれにもしない。

 

 なのですべてがちっとも判然としないまま、おれはジムで汗まみれになり、何度も投げられ、押し付けられ、極められる。書店でのバイトもやめて、杉作りんとのやりとりもあっさり途絶え、またこの部屋に戻っている。

 

 母が寝てしばらくして、おれは自室の鍵をかけた。

 深夜一時。

 ネットニュースをあさり、部活の指導中に生徒に暴力をふるい、全治二ヶ月の大怪我を追わせた教師の情報をパソコンにメモする。事件のあった都道府県や市町村もとっておく。保存してバックアップもとる。それからまた別の記事を探す。

 

 ふいに風の匂いがした。

 

 冬よりも重さを得た、春の夜風の匂いだ。

 おれは窓に目をやる。

 鍵はしっかりかけられていたが、おれは動かない。息を殺して耳を澄ませ、しばらくしてからパソコンに向き直ると、安藤の名前で検索をかける。

 なにも出てこない。

 もう一度検索する。

 出てこない。

 でもおれは信じている。

 このどこかに安藤がいる。

 いつかまたこの窓を開けて入ってくる。

 だからずっと眠らないでいる。

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、フランク・キャッスル様

 

1/6フイギュアを買ってみた。

Amazonで2,000円ちょっとで素体から装備まで揃うお得なSWAT隊員。


きれいな目。可動フィギュアは様々なポーズをとれるので愛嬌があります。

 

しかしこれで満足というわけではなく、僕はこのフィギュアを素体に『パニッシャー:ウォー・ゾーン』のフランク・キャッスルを作りたかったのである。

 

なので早速メルカリで検索。まずはヘッド探し。するとどういう星のめぐり合わせか、素晴らしいヘッドを発見した。

どことなく『パニッシャー:ウォー・ゾーン』でフランク・キャッスルを演じたレイ・スティーヴンソンに似ている。『パニッシャー:ウォー・ゾーン』は2008年の映画なので、もしもあのフランクが現在も活動しているとするならば、流行りに乗ってツーブロックオールバックにしているかもしれないという想像も膨らむ。即購入した。

さらに検索を続けているとフィギュア用のミリタリーベストが出てきた。それがこれ。

なんてあつらえ向きな。

まんまパニッシャーのスカルマークが施された物が売っていたのです。即購入。映画と同様に首まわりにも生地があって最高。

 

残すはヘッドを装着するのみ。

 

ヘッドによってジョイントの形状が割とバラバラなので、ネットで慎重に調べてジョイント部分のみを購入。

 

やや期間が空いて到着したのがこちら。

ヘッド部分には大きめの空洞がありそこにジョイントパーツをねじ込んで固定するシンプルな代物です。

 

胴体部分に取り付けていきます。

 

 

 

 

 

 

ジョイントパーツが違ったみたいです。

 

 




 



















OMSBの『ALONE』最高。『波の歌』みたいな気分で過ごす


今日は休み。朝の8時頃起きて洗濯して干したあたりでまだ眠気が強く残っていたので仮眠するかと横になった。その時点で午前10時。まだまだこれからだと思っていた。目が覚めたのが午後1時。まだ大丈夫だ。これから出かけようとか思いつつもまた寝落ちして気づけば午後4時。

 

おしまいだよなにもかも。

 

昨日は遅番ということで本来であれば午後出勤であったはずなのに朝の8時に呼び出されて巨大ロボの調整をさせられた。事態は無事解決したが、僕は巨大ロボ担当のセクションから別セクションの担当になったので、本来であればこれは後輩の仕事だったのだが、後輩は爆睡していて連絡に出なかった。出勤時間帯的にも後輩は午前出勤なので起きてそのまま向かって早入り扱いにすればよかったのに、という感情が消えず、やがてそれは僕自身を世界で一番最悪な人間にした。

 

しかし午後に改めて出勤して後輩に謝られたとき、僕は「○○さんが悪いというわけではないので……」というヘラヘラした態度で片付けてしまう。本当であれば鋭い足払いで後輩を寝転ばせたあと「次はねえぞ」と宣言するべきだったのだ。僕に謝って気が抜けたのか、後輩はその後自分の仕事の確認作業を残したまま休憩に入ろうとする素振りを見せたのでそこはやんわり制止した。

 

好きな服を買っても着る時間がない。なので休みの日は披露宴ばりに服を着替えている。好きな服を着て鏡の前でエアガンを構える。ベストな合わせ方を模索している間は、悩ましくも充実した気持ちでいられる。


次の休みは『トップガン マーヴェリック』をなにかしらのラージフォーマットで観てこようと思います。ここのところ気持ちは全く創作物に向かないのですが、それらを吹き飛ばすエネルギーの予感、あります。

柄シャツの合わせ方革命②

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

前回、ファッション系ユーチューバーの「柄シャツのコーデに迷ったら柄に使われている色を拾って、それと同じ色のズボンを選べばいい」というアドバイス目から鱗を落とした僕は、その感覚を血肉にすべく自室のクローゼットを開いた。

 

僕は本当に「気に入った服の合わせ方」を脱いだ瞬間に忘れてしまう人間なので、今回のアドバイス内容においても習得するまでの反復が重要となる。訓練を開始します。その訓練とは、柄シャツ(または複数の色の含まれた服)を見た瞬間に色をピックアップ、即座に列挙するというものです。

 

では早速、ここ一年ほど古着屋で見つけては衝動的に買った柄もので試していきたいと思います。

 

 

①ナイキのゴルフポロシャツ(古着)

「黒」「白」「黒っぽい紫」!



 

②沖縄のおじいちゃん風シャツ(古着)

「白」「黄色」「ベージュ」「茶色」!

 

 

③定価で買えるほどの給料はもらっていないので見つけた瞬間嬉しくて買ったラコステのストライプポロシャツ(古着)

「ネイビー」「水色」「白」「黄色」!

 

 

 

④沖縄のおじいちゃん風シャツⅡ

「モスグリーン」「ベージュ」「グレー」「茶色」「白」?なんとなく「オレンジ」!

 

 

 

ざっとこんな感じでしょうか。最後のシャツに関しては色まんちゃー(沖縄の方言でカラフルの意。『ちむどんどん』は未見)だったのでなかなか大変でしたが、ひとつひとつ含まれている色に目を向けるのはなんだかとても豊かなことのように思えてきました。

 

柄シャツは好きだけど合わせるのがね、というぼんやりした思考の沼から脱出できるスキルを今後も強化していきたいと思います。

 

ちなみに冒頭で紹介したユーチューバーの方は、同時にこうもいっていました。

 

 

「迷っているときは色を拾えばいいですけど、必ずしも拾った色を使えということではないです」

 

 

 

 

清々しい青空の写真

 

 

とりあえず黒いズボンがあればなんとかなりそうですね。僕も黒いズボンばかり無限に増えていきます。

 

 

 

 

柄シャツの合わせ方革命

 

夕陽がまぶしすぎる。

 

ワクチン3回目接種のためお休み中。熱こそでなかったものの、ずっとだるい。でもワクチンを打っていなくても毎日だるかったので、もはや副反応かどうかも定かではない。だが僕は確実に昨日の自分より強くなっている。今日も窓辺で風に吹かれながら2時間寝ました。

 

すごくいい天気が続いている。昨日は朝起きてすぐにAmazonプライムビデオで『流出封印動画2』を観た。かつて大蛇の生贄にされた巫女の伝説が残る地に肝試しに来た大学生グループが想像を絶する目に遭う「姦姦陀羅(かんかんだら)」からさっそく画面酔いしてしまい、後半までずっと気持ちが悪かった(霊障)。でも全体を通して楽しい作品でした。高確率で動画に映っている人たちの現在が散々である点など、攻撃的なスタイルが好きです。

 

それから連続して『さがす』を鑑賞。監督の過去作『岬の兄妹』が全然好きではなかったのでかなりなめてかかったのだけど、断然こっち派。俳優陣が軒並みすごい。もっとこうしてほしかったというわがままな気持ちがノイズになっていたのは申し訳ないと思いつつも、倒れたクーラボックスのシーンの刺すような遣る瀬無さが忘れられないので、観てよかったです。

 

そして今日は韓国映画の『ビースト』を鑑賞。フランス映画『あるいは裏切りという名の犬』のリメイク作品。猟奇殺人事件の犯人を追うライバル同士の刑事たちがそれぞれ汚い秘密を抱えながら踏んだり蹴ったりする話。『あるいは~』は高校生のころ、近所のレンタルビデオ店で借りたのは覚えていますが内容は完全に抜けております。今作は楽しみつつも、要素を足しすぎて散漫だなという印象は中盤あたりからずっと残るはめに。殺人鬼か犯罪組織かのどちらかに焦点を絞ってくれればもうちょっと……どっちも好きな要素だけに難しいのは百も承知ですが……。ちなみに韓国映画における朝鮮族の描き方問題に関しては最近意識するようになりました。僕自身、無邪気に楽しんでいた時期があり反省しております。『新しき世界』の延辺の殺し屋とか。

 

それ以外の時間はずっと服に関して調べていました。よく見るファッション系ユーチューバーの人が言っていたのですが、柄シャツの合わせ方アドバイスに衝撃を受けました。

 

「柄に含まれている色を拾って、その色のボトムスを合わせる」

 

だそうです。

 

腰を抜かしてしまいました。

 

たぶん僕が知らなかっただけで「そういうもんだよ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。何となく知っている世界の約束事は、ときに声に出して人に伝えたほうがいいのかもしれません。僕のように帰り道を知らない人間も大勢いるからです。

 

その発言を聞いた僕はノートにメモを取りました。それから自分の持っている柄シャツを確認し、そこに含まれている色をピックアップしました。マジか。『マトリックス』一作目で主人公のネオが「カンフー習得」と言ったシーンを思い出しました。

 

今年はかっこいいサンダルとニットポロを追求していきたいと思います。

 

まだ同じ仕事をしています。ワクチン休暇があるのでそれを使ってやりたかったのです。

 

まだ夕陽がエグい。静かな日々の階段を……

 

 

The Biggest Thank You

 

 

GW前に出したZINEですが、思っていた以上の方々に読んでいただくことができました。驚くことに沖縄にいる弟の友人までプリントしてくれていました。

 

更には何人かの方から感想までいただけて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。みなさまの貴重なお時間を割いていただけただけでも光栄なのに、恐縮千万とはこのことです。あまりにも嬉しかったので、みなさんからの感想をスクショしてまとめて自分用のZINEを作ろうとしています。

 

やはり紙に印刷された文章はネットにアップするそれよりも、静かに染み入ってくる感覚があります。時と場合によるものなので、優劣は特にないと思いますが、ページをめくる作業の心地良さを再確認できました。

 

Vol.2もお盆休み前に出せたらいいなと思っております。

 

毎日好きなTシャツを着て過ごせる生活のために日々邁進いたします。

 

 

初ZINE『Midnight Invincible Children VOL.1』

 

 


ZINEを作成いたしました。

 

見開き1枚の漫画と、短篇を2本収録しております。

短篇はどちらも書き下ろしです。楽しんでいただけると幸いです。


全国のセブンイレブンで印刷できます(沖縄にもたくさんあります)。

期限は本日から5/5(木)の23:59までとなっております。

 

プリント料金は280円です。
※紙幣が使えませんので、お手数ですが小銭をご用意ください

 

印刷手順は下記のとおりです。

 

①「プリント」→「ネットプリント」と進む
②予約番号「69999212」を入力
③「小冊子」を選択→「右とじ/下とじ」選択

④お金を入れてプリント

 

GW前という一年でもトップクラスで仕事が最低な時期に心の均衡を保つべく、やりたいことにも精を出さなくてはとの思いから無事完成させることが出来ました。

 

すべてはマツさん(@matsurara)の作品を読んだり、両目洞窟人間さん(@gachahori)のZINEに触れたことがきっかけです。こういうきっかけをいつも与えてくれるTwitterが僕は大好きです。

 

感想もいただけると嬉しいです。

 

調子に乗れることがあるのは幸せなことなので、Vol.2も出せたらと思います。

 

今年中にいまの仕事も辞めます。キモすぎるので。

 

 

 

休みの日の夜、急に気分が塞ぐ時間


「仕事を辞めた日の帰り道に聴きたい曲」をリストアップしている。シーズン1の最終回的な雰囲気でワクワクするような、足を弾ませるもよし、胸を締め付けられるもよしで、いまから期待が膨らむ。

 

僕の職場は田舎にある。最近新しく来た上司も、都内のど真ん中から異動してきた人で、そのローカル感に戸惑っていることだろう。都会基準のやる気や頑張りが空回るどころか、部下にいなされたりする魔のエリアなのでやりづらいことこの上なしだ。心中お察しします。ただこちらとしても非常にやりづらく、辞める前提で動いていることもあってあと一歩頑張ることができなくなってきているのでよく怒られる。いくつになってもよく怒られるという環境は不快だ。自分の責任じゃないか? みたいに考えることは結果としてあらゆる遠回りにつながるのでやめた。相手に責任がまったくないわけでもあるまいし。以前も書いたけど、僕の方こそ基本的に今の職場環境に怒っているので、露骨かそうじゃないかの違いだけで基本的に我々は怒り合っている仲なのだ。もっと仲良く出来たらいいのですが、できるだけ関わりたくないのが本音です。

 

舞城王太郎の新作『短篇七芒星』が群像2月号に掲載されていたという情報を遅番中に発見し、即購入して読んだ。かつて芥川賞候補にもなった2012年の『短篇五芒星』から早10年。10年ってマジか、と思ったが今回も読みごたえのある短編が7本一気に発表された。

 

『奏雨(そう)』は名探偵モノで、刑事が喫茶店で探偵に連続殺人鬼「足切り」に関する情報を伝えるところから始まる。タイトルにかけたある映画が重要な要素として出てくるなど、言葉遊びが楽しい一篇。

 

『狙撃』は『短篇五芒星』収録の『バーベル・ザ・バーバリアン』を彷彿とさせるスナイパーもの。ある世にも奇妙な出来事が主人公に訪れる、寂寥感が味わい深いドライな一篇。

 

『落下』は深夜百太郎系のホラーな一編。引っ越してきたばかりのマンションでいきなり投身自殺があり、それ以降「恐怖」にまとわりつかれる家族の物語。でも決して後味は悪くなく、恐怖を解体してみせる生きる者のたくましさ感じる一篇。

 

『雷撃』は舞城版『富士山さんは思春期』。

 

『代替』は『淵の王』などにも通じる登場人物ではない「視点」が主役の物語。ある邪悪な男が生まれたその瞬間から周囲を滅茶苦茶にしていく様をただじっと眺める「俺」。やがてその邪悪な男は、石で頭を潰されるが……。読者と感情移入についての話?意図してるかは別として、そう読みました。

 

『春嵐』は他人のトラブルに首を突っ込んで大変な目にあった兄のかわりに、逃げてしまった愛犬を捜す妹の話。兄の彼女といっしょに河川敷を話しながらただ歩くという場面がなによりも尊く読める、爽やかな一篇。

 

『縁起』は幼い娘に「生まれる前の記憶」について訪ねてみたら予想外に詳しい返答をされ、それを聞いた妻が不安定になったので色々悩む男の話。神とか呪いについての深夜百太郎系。主人公が最後に打った大博打がちょっとだけ『レッド・ドラゴン』のラストみたいでした。

 

ということで僕も二ヶ月ほどまったく触っていなかったPOMERAを開いてぼーっと打つという行為をここ数日続けている。うまく行っている感じはあまりないけど続いている。うまく行っている感じがしてすぐに燃え尽きてしまうよりはずっといい状態のように感じる。

 

最近くるりの『水中モーター』(『THE WORLD IS MINE』収録の方)をずっと聴いている。夏みたいに暑かった日の、コインランドリーで初めて聴いた。なんだか小説書きたいなと思いました。

 

 

2022年4月4日

休みなので転職サイトを眺めている。その間も職場からメールが来るので返信しつつ、「覚悟しろ覚悟しろ覚悟しろ」と念じながらスクロールしていく。つらくてなにもしたくないけど、なにもしていないよりなにかしている方がわずかばかり負担が軽くなる、気がする。気のせいでも、自分に優しい方のまやかしを選んでいきたい。


昨日、久々に『ダイ・ハード3』を観た。『ザ・バットマン』のリドラーの話題から転じ、Twitterで名前が上がっていたので観たくなった。なぞなぞテロリストに翻弄されるジョン・マクレーンとゼウスのかけあいが楽しい。途中ジョン・マクレーンに銃を向けられ素性を聞かれたトラック運転手が「美容師だよ。嘘嘘!運転手だよ!」と謎の発言をするところも最高だった。今作のジョン・マクレーンは先手必勝といわんばかりにベレッタを撃ちまくるので、その殺気だった雰囲気にパニクるのもしょうがない。あとみんなアスピリンフリスクみたいにバカバカ服用してて凄かった。次は『ミスター・ガラス』を観ます。


今日はずっと雨で、明日は晴れるらしい。僕は今日は休みで、明日はずっと仕事なのに。雨の日はそんなに嫌いじゃない、外に出なくとも罪悪感がわかないから、なんてことを思ったことがある。でも今日のように出かけたいという思いがあると、雨が抑圧的な存在に思えてくる。抑圧的なものは心身に悪影響なので洗濯ものを部屋に干したあと、電源の入っていないこたつに入って寝てしまった。起きたたらまだ雨で、体は冷えていて、髪の毛も切っていないままだったので、また意識が遠のいた。

 

つまりしっかり休んでいる。休みの日は休むことしかできない。もう何日も小説を書いたりしていない。考えることは多いけど、着手していない。読むこともなくなった。そういう時期だから、というのが心地のいい言い訳になってきている。


自分がいつか書いた短い話をいくつか読んでみようかな、と思ってこたつに電源を入れました。寒いと人は大勢を巻き込んでしまいたくなる。

 

 

三年半ぶりに帰省した。

 

三年半の間に伯父と祖父母が亡くなった。空港まで迎えにきてくれた家族の車に乗って各家を回り、線香をあげた。一泊二日の予定だったので、懐かしむ時間はあまりなく、挨拶をして移動するの繰り返しで、長い一日目はあっという間に終わった。寝不足と疲れで車に酔い、夕方以降はずっと唸っていた。それでも大切な時間だったと感じる。

 

今の仕事を辞めてやると勇んでから早3年。ようやく転職サイトの記入事項をこれまでで最も埋めることに成功した。しかし今の職場で何を得たとか、強みだとかになると、積み重ねてきた苦痛だけが浮かんできて、ただただ苦しくなってくる。この苦しみはなんなんだ?と考えているうちにまた時間だけが過ぎそうで怖い。

 

職場の環境も定期的に大きく変わる。順応するために都度バタバタし、大事なことに対して興味がないふりを続けていた結果、すべてがすり抜けていくようになってしまった。僕は伯父や祖父母にもっと会いたかった。

 

もっとちゃんと怒るべきだったように思う。ずっと腹が立っていたのに、平気なふりをしてきた。それは怒っていないふりばかりしてきたからで、怒りを表明する方法が自分のなかでうまく機能しないからだ。少しずつでもいい、怒りはしっかり表明するべきだ。

 

自分が休みの日に飛び交うメールから事態を推測して落ち込むこと、上の決めたシフトによって変動する生活リズム、乱れる自律神経、反故にする約束と弁明、逸する機会の数々、僕はずっと怒っている。そしてその怒りに従った先の景色も、見ておく必要があると強く思う。

 

この土日も遅番で、月初で、僕は体力の許す限り怒り続けようと思う。小学生のころ、親と喧嘩して泣きながら家の外の柱をクワでちょっとずつ削っていた人間としても。