MidnightInvincibleChildren

書き下ろし掌編:『Beat inside the bush』

 

 

 

須藤さんと飲むのが好き。好き好き。好きなの。うふふん。須藤さんは職場の先輩だった人。過去形なのは転職してしまったから。面接の際に、うちの職場の待遇のヤバさを不採用覚悟で愚痴ってみたら同情を買って親身になってもらえたとか話していた。須藤さんにはそういう気持ちのいい正直さがある。だからほぼ毎週飲んでる。てか、須藤さんの転職先はうちよりもずっと待遇がいいらしく、しょうじき羨ましい。か~。やだやだ。悔しいのでビールいいですか? あっし飲みますので。須藤さんも「どんどん飲みな飲みな痛風だけは気をつけな~」と言ってくれるので、うふふふふふ、じゃあもういっぱいだけ、中ジョッキで。須藤さんと飲むときは決まって割り勘だけど、転職してからは羽振りがいいので、いつもちょっと多めに出してくれる。ので、申し訳ない。いや、やっぱありがたい。マジ超好き!

 

みたいなテンションも近くに座る大学生軍団の大声にかき消される。でけえバッグ大量に並べてるところからしてテニサーか? テニサーだね。コールしてますね。コールしてるね、若いね若いね。声量やっば。みたいな感じで私たちが枝豆ほじくりながら話すのは、私の職場にいる安達健さんについて。新卒採用でうちの会社に入って数年、私よりもふたつ歳下だけどいまではマネージャー的ポジションについていて、休日は積極的に社長と食事とかゴルフに行ったりするような、そういうタイプの社員。まあ一言で説明できちゃうんだけどいまちょっと言葉出てこないので私は自分の手を重ね併せてすりすりすり……。背はそんなに高くないけど色白で髪が真っ黒で、実年齢よりもちょっと幼く見える。実年齢よりもちょっと幼く感じるのはなにも見た目だけの話じゃなく、未だに全然学生っぽい言動を見せるので、こっちもそんなに気をつかうことなく接することができるっちゃできる。といっても安達さんはたぶん家とかではネットばっかり見てるタイプの人っぽいので、ネット用語的な言葉が会話の端々で突然とびだしたりと、そういうノリはちょっと寒いと思うが、まあ、それはいま一旦置いておこう。大事なのは、今日出勤した彼の首に、赤いキスマークがついていたという点だ。

 

安達さんは違う部署で同い年の北川紗矢華ちゃんと付き合っているが、本人的にはそれを秘密にしているつもりみたい。でもみんな知ってる。私は朝の通勤時に、駅から職場までの道のりで前を歩くふたりが腕を組んでいるのを観たことがあったし、須藤さんは駅構内にあるカフェで二人がモーニングをとっているところを観たことがあるらしい。

 

私はいまの会社に転職して研修時に会ったときから北川紗矢華ちゃんのことが苦手だ。なんというか、彼女のなぞっている「女子」像が幼く感じるのだ。小学生のころいた、いじわるな子って感じで、物事や人に対していちいち現金なところがある。そういう振る舞いに義務感でも感じてるの? とすら思うときもある。

 

ちなみに北川さんは安達さんと違う部署なので、例のキスマークは安達さんと同じ部署の女達に対する牽制の意味もあるんじゃなくって? と須藤さんが言うのを聞いてなにかがいやに腑に落ちる。そもそも彼ピッピの首にキスマークって、マーキングだよね? ひえ~。うちのダーリンだっちゃ? あの女~! とゲラゲラ笑っていると心が急に罪悪感との均衡をとろうと働いたのか、私は自分の話を始める。

 

「でも気持ちはわかるんですよ。私も大学のころ付き合っていた彼氏にキスマークつけようとしたことありますもん」

 

「あ、そうそう。気持ちはね、私だってわかる。ただ百歩譲って学生ならね。仕事でそれするか~と思うんであって」と須藤さん。それですね~まさに。

 

「でもでも、私のとき、学生ですけど、彼氏は嫌がりましたよ。いやいや、首だと見えるじゃん。見せるためにやってるじゃんって。まあそりゃそうじゃん、と思いましたけどね。でも確かにあのときは彼氏の言うことが冷静でしたね。ダサいっすもんね。あぶね~」

 

「そうそう、もう見せつけが先に来てるから、彼氏も気分よくないんじゃないの? よっぽどおめでたくないかぎりは」

 

「ですよね。ってことはじゃあ、安達さんはおめでたいってことですね」

 

「そりゃ安達さんはおめでたいよ」

 

「かかか、あ、だってほら。まえ話したっけな。安達さん、自分が友達と飲んだときに撮った動画とか見せてくるんですよ。し、か、も! 見せる前に『おれの友達、マジでばかでさ~』みたいなこと言って! そう言われてから見せられるもの、だいたいリアクションに困らないですか?」

 

「わかる無理~」

 

「いや普通に若い男の子たちがギャハギャハ笑ってるだけのなに言ってるのかもわからない動画ですよ? 人に見せるものじゃないですって。しまえしまえ」

 

「安達さんね~、そこも学生っぽいよね、結局」

 

新しいビールが到着した。泡の涼しげな苦味で口の中を満たす。ジョッキの表面を覆う霜に、指先で丸を描いてみる。キスマークがダメなら、じゃあなんならいいのか、そもそもマーキングが必要なくなるにはどうすればいいのか? お酒が回って私も須藤さんも「あれ」とか「みたいな感じ」とか「なんとか」を多用するので、まったく話が深みを得ない。

 

はは、深みって。

 

深み、要るか? 要りません。だって話はぐるぐる迂回しながらもちゃんと進展し、私に大事な経験を思い出させてくれたから。脳の片隅に置きっぱにしていたものに、ようやく光が当てられたのです。わかる? 私はわかる。

 

愛のあるセックスについて。

 

私が口に出した途端、須藤さんは口を放した風船みたいに笑い始めるが、私は自分の発した言葉の響きにハッとして固まる。あ、あああ愛のあるセックス? ワオ~。素面だったら即死だった。

 

でも私は知っている。愛のあるセックスについて。だからこそ、ここで私は笑わなかった。この言葉の強度を信じられているから。

 

もちろんキスマークを残そうとしたような私だ。当時の彼氏とて、キスマークを断ったというだけで、ちょっとAVっぽい真似をしてみたいという提案なんかはわりとしてきて、私もまんざらじゃなかったので、エッチな下着をつけて相互オナニーとかした。穿いているパンツに射精もされた。私のことを笑っている須藤さんだが、本格的に奔放なのは須藤さんのほうだと私は思っている。最近いつセックスしました? と聞こうと思っていると、ふと須藤さんが神妙な顔で「私ね」と言った。

 

須藤さんは潮を吹けるタイプらしい。

 

潮吹きって痛いって聞くけど実際はどうなんだろう?

 

でもお気に入りのAV女優は潮吹きを売りにしているけど毎度「気持ちいい~!」と言いながら吹いているから、痛いなんて嘘なのかなと思っている。須藤さんにも聞いてみようかな。でもそれはちょっと違う気もする。いまは喉にストッパーがかかっていて、質問を投げられない。

 

私は潮を吹いたことはない。

 

「やっぱ潮吹くときって『イク~!』とか言うんですか?」

 

 という私の質問に、須藤さんは首を傾げる。

 

「え、でもあんまり『いく』とか言わなくない? キムは言う?」

 

いわれてみればそうか。「言わないっすね」

 

「いくときは基本黙ってるね」

 

「黙~……まあそうですね」

 

でも潮を吹くことが究極の絶頂というわけではない的なことを、以前どこかで読んだことがあるので、あまり悔しくはない。まあ比べることでもないのか。だってべつに潮は吹けなくていい。もちろん、わざわざ告白してくれた須藤さんの前では言わないけど。

 

だってね須藤さん。私一回だけあるんです。どうしても忘れられないことが。

 

ビールのジョッキについた霜がとけて水滴となり、私の描いた丸の上に一本の筋をつくっている。あれ、急に静かになって。ちょっと須藤さん、聞いてますか? ていうか起きてますか? 聞いてくださいよ。私、大学時代に彼氏とセックスして、一回だけ、もう二度とないんじゃないかってくらいめちゃくちゃ幸せで、絶頂のとき思わず叫んじゃったんですよ。どうしても伝えたくて。なんて言ったと思います?

 

優しい、って言いました。

 

その瞬間、テニサー軍団から爆発的哄笑が沸き起こり、私の言葉よりも優先的に須藤さんの鼓膜と脳がそっちに反応しちゃう。そんで私は須藤さんからサイパン土産であるリップクリームとハードロックカフェTシャツをもらった。めちゃくちゃ嬉しかったので「優しい~!」と一応言ってみたものの、須藤さんには私なりの文脈では伝わらなかったみたいです。

 

 

 

 

 

f:id:sakabar:20180717183606j:plain

 

 

書き下ろし掌編:『Midnight Invincible Chilldren』

 

うわ~終わった~。

定額制のアダルトサイトに登録したら最初の二週間は無料とのことだったので、その間にAV観まくって有料期間になる前に退会しようかな、へへへと目論んでいたぼくはここにきてあろうことか恋をした。企画物の女優さん。名前がわからない。なんかソファーに座って軽くインタビューを受けているシーンでは「あき」って名乗っているけど、名字は何なのか、仮に名字はないとして、「あき」がひらがな表記でいいのかカタカナなのか、漢字だとしたらどう書くのか、もしかすると「AKI」かもしれない。はあ~? どう検索すればこの女優さんの他の作品ディグれるの? ぼくはブックマークから企画モノなどに出演している素人系女優の名前を検索する専門のサイトを開いた。作品名ならわかっている。それを打ち込んで出てきた情報をしらみつぶしにしていくと、どうもぼくの観た作品は長く続いている人気シリーズの総集編だったらしく、お目当ての女優さんは本来そのシリーズのVol.18に出演しているとのこと。じゃあVol.18で検索。出演者、の、名、前……出た! あれ? 計六名の女優さんが出演している作品なのだが、出てきたのは五名分の名前だけで、まあ六分の五ならたどり着けるだろうとひとりひとりをググッて画像で顔を確認していく。違う、違う、違う……ときてあれえこれもしかしていなくない? ぼくがのけぞると安もんのワーキングチェアがぎいいっと騒ぐ。よりにもよって六分の一で情報のない女優さんに恋をしてしまうなんて。さらに不幸は重なる。無料期間は残り一日なのだ……という意味での「終わった~」でした。

 

いや、始まってもねえわ。

坂本にLINEする。

 

 

〈最近のAV女優さんに詳しい?〉 既読

 

 

《なんで急に笑》

 

 

なんでいつも笑ってんだこいつは。まあいいか。

 

 

〈企画物に出ている人なんだけど名前が出ないの。専門の検索サイトにもなかった。協力おねがいです〉 既読

〈商品ページURL〉 既読

 

 

《この中のだれ?》

 

 

と質問されてぼくはためらう。

例えば恋バナをしていたとして、だれが好きなの? と聞かれて即答できるタイプの人間じゃないのである。「あき」って人はどちらかというと顔が丸くて鼻も丸くてちょっと垢抜けない感じの女優さんだ。もちろんそこが超可愛いのだが、ほかの人がどう思うのかはちょっと気になるところだ。というのもぼくは高校のころの「オススメAV女優を発表しあう会」にて、ガチな熟女系の女優を発表し、場を困惑させた前科があるのだ。また思い出しちゃった。みんな高校生で臆病だったってのもあるだろうけど、露骨なほど狼狽した面々にたいへんなショックを受けたのだ。そのときの心の傷は、いまだ滲出液でてらてらしているというのに……。

 

なんて怯えているぼくの返信を待たずに、坂本からURLが送られてくる。

 

 

《検索したら5人出てきた。この中にいる?》

 

 

そこには、さっきのぼくがたどり着いた五名と同じ名が並んでいた。

 

 

〈おれもそこまでは調べられたんだけど、5人の中にいないの泣〉 既読

 

 

《まじか。おけ》

《ちょっとまって》

 

 

頼もしい。

もうちょっと自分でも調べてみるかと、再度あらゆる検索ワードを捻出していると、LINEがくる。

が、坂本じゃない。

加藤。

うわ、久しぶり。高校卒業して最初の夏に会った以来じゃないっけ?

 

 

《藤沼ゆうじゃない?》

 

 

加藤の文面を長押しして検索する。藤沼ゆう。いや美人だけどこういうタイプの顔じゃないんだよなあ……。もっと味のある顔なのだ。っていうか坂本のやつ、加藤にも連絡したのか。うお~、ちょっと恥ずかしいけど懐かしい~。っていうかいまふと気づいたが、ぼくは彼女がインタビューシーンで「あき」と名乗っていたことを先に伝えるべきだ。早速坂本と加藤にそのことを送信。

 

 

《なるほど》

 

 

《了解》

 

 

頼もしい二人です。と思っていると三人目からのLINE。

 

 

《キカ単女優の場合、名前が複数あったりするからなあ。月本希美は?》

 

 

誰やねん。

LINEの登録名も「たー」だし。ぼくは一応、月本希美で検索する。顔を見た限り……。

ぼくはまた背もたれをぎいぎい鳴らす。どうしてこんなにも遠いんだ。

 

 

〈ありがとう。でも違うみたいです…〉

 

 

念のため敬語……。既読がつくのを確認するまえに坂本に質問を飛ばす。

 

 

〈たーって誰?〉 既読

 

 

《あれ? 久留米だよ。知らない?》

 

 

え! 

マジか! 

久留米嵩!

懐かしい~。LINEやってたんだ。もっと早く知りたかったなあ。ぼくは束の間、スマホの画面を眺めながら胸の内側でたっぷりふくらんだ郷愁にひたる。背もたれをぎっこぎっこ鳴らしながらイスを回転させ、すぐそばの窓に向き直る。夜気にのって虫の声が届く。月ははっきり光を放ち、周囲の雲を浮かび上がらせている。坂本とは定期的に連絡をとっているとはいえ、加藤に久留米と、ちょっとした同窓会のような気分になったぼくは久留米に話しかけてみる。

 

 

〈ていうか久しぶり。元気? おれは元気~〉 既読

 

 

《だろうね。久しぶり~~~》

 

 

〈久々に話すのがこんな内容ですまぬ〉 既読

 

 

《まあ大事なことだから》

 

 

……痛み入る。

それから「あき」さんそっちのけでぼくは久留米と近況報告をしあう。彼女できた? できてない。大学どう? 夏休みどうすんの? などと話していると、加藤から上原亜衣とのLINE。はあ~? なに急にやる気なくしてんのこの人~、ってかまあいいのかやる気なんてなくたって。ここまで付き合ってくれただけで、ぼくは嬉しいんだもの。

 

で、結局ぼくはこの四人でグループを作る。みんなで夏休みの予定を出し合い、帰省のタイミングを調整してどこかで四人集まれたらいいねと話している。他にだれ帰ってくるのかな。クラス会とか企画しないのかな、などと話していると、急に加藤が《花火!》といいだし、一枚の写真を上げた。

 

写り込んだ民家の屋根らしきものがちょうど夜空を四角に切り取っているその写真には、星空に伸びた花火の軌跡が、重なり合い、消えかけていた。

 

ぼくはAV女優を五十音順にリストアップしたサイトに並ぶ女優の顔と名前を流し見ている。レーベルごとに区分けできるので、ぼくは「あき」さんの出演している作品のレーベル名を打ち込み、出演女優一覧をぼんやりと眺めた。そのサイトには女優さんのプロフィールとして、スリーサイズとバストのカップまで表記されている。ふと思い出してみるに、「あき」さんの胸は比較的小ぶりな印象であり、特筆すべきポイントはあのパンと張ったお尻なわけで、そのあたりも念頭に置きつつ画面をスクロールしていく。

 

その中にひとり、愛らしい鼻をした女の人を見つけた。バストサイズは八十のD。うお。マジか。ぼくは手元にあった紙のはしにボールペンで「宮崎あき」とメモする。その他にも別名義として「白石きき」とか「忽那りな」などの名前もある。名字と下の名が、ぜんぶ脚韻を踏んでいるな。別タブで出演作品一覧も開く。あ、少ない……し、早々にアナルを解禁している、というか、それが引退作品らしい。ぼくはアナルプレイにはそんなに興味がないし、この待遇はちょっと納得がいかない。

 

でもぼくの納得に関係なく、世界は進み続けるのだ。

 

無数の暴力がいま、いま、いま、いまこの瞬間にだって誕生し、その結果をもたらしている。結果は派生し、新たな流れを生む。無数の文脈が世界に張り巡らされ、この星、なんなら宇宙にまで影響を及ぼす小さな種に、また水を与えるのだ。

 

ぼくは切なくなる。でも少しだけだ。ここで少しなのは、すべてを理解するにはぼくの心や頭の出来が脆弱すぎるからなのだろう。せめてもの願いは、和姦だ。いやらしかろうと、そこに愛があれば、どれだけいいか。もうすでに引退しているっぽい彼女の、和姦系の作品を支持し続けよう。ぼくのその選択により、また新たな未来が、止めようもなかった悪しきレールを外れ、光の道をつくるかもしれない──。

 

洗面台で手を洗い、ベッドで横になりながらスマホをいじる。「あき」さんのことは、坂本たちには内緒にしておこう。ぼくはもう無料期間の終了にも戸惑わない。

 

あのころと同じにおいがする。

 

ちょっと目を離していた隙に、三人は「サッカー部・野球部のイケイケメンバーが帰省時にペンションを借りて乱交パーティーを開催するらしい」「女子は誰々集まるのか」「それは本当に合意の上なのか」「お酒を飲ませて行為に及べば準強姦にあたる」「準強姦は、強姦のソフトなやつという意味ではなく、罪の重さ的には同じ、れっきとした凶悪犯罪」「じいちゃんのマニュアル車なら出せる」「マニュアル車は久留米しか運転できないので、ドライバーは久留米」という話をしていた。そして、いくつもの《どうする?》スマホ画面に並んだまま会話が止まっている。

 

あ、ぼくの意見を待ってくれているのだ。

 

おいおいマジか。ぼくは思う。いつまで高校時代のマインドを引きずってるんだっての、こいつらは。どうするったってそんな。ぼくはスマホで時計を見る。え! もう2時半。時間こえ~。

 

 

 

そりゃ行きますよ。

 

 

全員ぶっ殺そうぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:sakabar:20180707205647j:plain

 

 

 

 

 

www.amazon.co.jp

 

 

 

書き下ろし掌編:『ウキウキ、キックミーアップ!』

 

 

眠れぬ夜をこえて迎えた朝に、俺は思う。眠すぎる。これ以外思いようがないので、ベッドから降り立ったさいの、ぺたりとした足の裏の感触や、背中一面を覆う鈍重な後ろめたさに気分をかすかに上下させつつ、カーテンを開け、朝陽を浴びた。するとどうだろう。これは合図だ、と言わんばかりに頭が冴えてきて、冴えたら冴えたでもうなにもかもが嫌になって、そのなにもかも、例えば今日一日にやるべきこと……というかやっておいたほうがいいこと、例えばなんの気なしに触れた乳首に生えている硬い毛を抜くとか、まあその程度のことなんだけど、ってことはなんだ? 俺はべつになすべきことなどほとんどもたないのである。仕事してないし。ならばなぜ早く起きたのかというと、睡魔を上回る飢餓感に襲われたからだ。そもそも空腹だったから眠れなかったのかもしれないし、だったら今日は腹いっぱいにものを食べ、爆睡してやろう。後のことはもう知らない。たっぷり睡眠をとった、未来の自分に任せます。そう決めてしまえば、途端にこの一日が輝かしいものに見えてきた。いまからアイスコーヒーでも飲んで、なすべきことを探そう。俺は自由で、自由は無敵だ。誰でもいいからかかってこい。

 

その意気込みが態度に現れていたのか、散歩がてら立ち寄ったコンビニでニッカボッカを穿いた赤ん坊のように小さな目をした男に舌打ちされた。道を塞いでいたからだと思う。確かにこちらが悪い。でも、態度が不快だ。頭に血が上ったままおりてこない。殺してえ。こんなことならもっとちゃんと眠っていればよかった。おさまらない怒りも睡眠不足が原因なのだろう。睡眠は大事だ。カフェインの含まれたアイスコーヒーなんて飲んでいる場合じゃない。帰り道、八つ当たりも兼ねて半分ほど残ったコーヒーを道端に撒いてみた。すると犬を散歩中の、定年退職を迎えたばかりで、髪が薄く、黒縁の眼鏡をかけ、ラコステの鮮やかなグリーンのポロシャツを着た男に舌打ちをされた。真っ白でふわふわの大型犬を連れていて、はねたコーヒーで犬が汚れるのを懸念したのかもしれない。でも俺は頭に血が上っているので、ロジックでの理解を上回る怒りにより、はっきりと表情を歪めた。向こうは向こうで、朝からなんて男に会ってしまったんだと言わんばかりに、顔を歪め返してきた。鼻の穴がむず痒くてしかたがないというような、目も当てられない表情だった。こらえきれず、叫んだ。

 

「でけえ犬だなおい!」

 

家もでかくねえと飼えねえよな! いい気なもんだぜ……。

 

それから家に帰って八時間寝た。

 

寝起きに頬を撫でたそよ風が心地よく、急に自分が嫌になり、大声を上げて泣いた。

 

 

 

聞こえますか。

 

 

 

いつでも遊びに来てください。

 

 

 

 

 

f:id:sakabar:20180703140725j:plain

 

 

 

 

 

 

www.amazon.co.jp

 

 

 

 

書き下ろし掌編:『歓迎』

 

 

 

はい、雨。

 

六月の二周目辺りから続く雨が急に止んで真夏のような晴天が広がったのが昨日で、慌てて洗濯をした。あっという間に乾いた衣類をとりこみながら、いよいよ迎えるであろう梅雨明けを期待したってのに、早朝の雨音で気分が死んで、睡魔も長く居座る羽目となった。ばかやろう。もう知らない。どうせ今日は休みだし。

 

昼になって、ようやく湿気った布団から抜けだした私は、冷蔵庫に何もないことを思い出し、でもお腹は空いている、なのに雨が降っていて、ついでに昨日はシャワーすら浴びずに寝てしまっていたことも振りかえり、部屋の真ん中で立ち呆ける。とりあえずスマホを手にとってアパレルメーカー系の配信メールを削除していき、LINEのニュースアカウントの見出しだけを流し見て、テレビにするかラジオにするかで迷う。テレビをつけてしまうともうしばらく動くことをやめてしまうだろう。決めることすら後回しにしてシャワーを浴びる。顔を押し付けたバスタオルからは、くっさ、部屋中の湿気を吸ったような重いにおいがする。

 

ここのところ、人からの連絡が減った。もちろん仕事関係の連絡ならたま~に入ってくることもあるが、わたし個人への連絡はない。ちょっと前までやっていたマッチングアプリも退会した途端、自分の本来持つあらゆる面での気のなさが可視化されたように余白が増えた。他者の存在が生活から遠のくことで、わたしの怠惰の自由度も増したというわけだ。そりゃこの部屋も汚えわ。掃除しよ。

 

ラジオを流し、洗濯機を回した。食器も洗う。時間にするとひとつひとつが五分とかからないのに、そんな五分のために数日億劫な景色を拝むことを受け入れているのだ。目覚めてから時間が経ったことによって少しずつ頭が冴えてくる。わたしは思う。過去の自分に、このおばかさん。フローリングをワイパーで拭いた。積まれたままの服もハンガーにかけていく。ラジオからは二度目の交通情報が流れた。そうだよ、お腹空いていたんだ。ちょっとだけ息の切れたわたしは腰を反らせてから、最寄りのコンビニまで歩くことを決める。

 

もうひとりで外を歩くのも平気になった。とはいえ、雨の日は緊張が蘇る。雨音のせいで周囲の物音がかき消されてしまうから、何度も足を早めたり、振り返ったり、道を外れたりを繰り返す。もうそろそろこの名残だって消えていくのかもしれない。わたしは、恐怖を抱くことで気持ちの均衡を保っていた。均衡が安定しつつあるいま、わたしがあの経験に対して思うのは、ささやかながら、懐かしさとすら言えそうだ。

 

掃除のさなか、決まってわたしはあの手紙が通帳らと一緒に抽斗の中に収まっているかを確認する。勝手に動くはずがないのに、いつかふっと消えてしまうんじゃないかという疑念がつきまとっている。ボールペンをサッと走らせただけの文字で「先生、ありがとうございました。」とだけ、名前すらなかったが、わたしはそれが誰からのものなのかすぐにわかった。

 

いくらわたしとて、初めは変な人だなと思っていた。しばらく連絡を取り合ってわかったのは、彼が精神的な疾患に苦しんでいること、社会生活への復帰を強く望んでいるが、実現へのハードルがいくつも存在すること。彼はなんらかの理由から、どうしても部屋から出ることができないでいた。わたしがプロフィール欄に「精神保健福祉士」の資格を掲げていたことからコンタクトをとったのだろうなと半ば白けつつ、その切迫した物言いを無下にもできなかったので、メールでのやり取りを続けた。そこからLINEを交換して、電話もするようになった。声は、カサカサ。思っていたよりも饒舌だったけど、かといってこちらを詮索する様子もなく、今日あったこと、感じたことを軽く話し、わたしの漠然とした愚痴に耳を傾け、最後には必ず「おつかれさまです」と言った。他者を心から労うというよりも、その言葉しか知らないというような、妙なぎこちなさがあった。エロい写真も要求してこなかったし、電話でそういうムードに誘導しようという気配もなかった。懸命に生活を維持しよう、そのためには他者の存在が必要で、選ばれたのがたまたまわたしで、というふうにわたしは解釈していて、だから自然と力むこともなくなった。こちらが返信せずとも、電話をとれなくても、そのことを責めるようなことはしない。

 

コンビニで週刊誌を読む。それから冷凍食品とお酒を買って、再び雨の道を進む。

 

ある日、彼がいつもの発作が出たことを電話で話したその数時間後、なんの脈略もなく自分の命が狙われていると言い出した。これから大勢がやってくる。どうするべきか迷っていると、彼は言った。以前にも何度か、盗聴されている可能性があるとか、監視されているかもしれないとか、そういったことをほのめかすことがあった。規則正しい生活と、栄養のある食事、軽い運動を勧めていたが、結局のところ、家からほとんど出ることのない生活を送っていたのだ。社会資源の活用も拒否。いずれはこうなることだって予想できた。わたしのなあなあにしていた時間のつけがここに回ってきたのかとちょっとだけ憂鬱になったが、それは結局わたし自身、彼との距離をうまく取れていないことの証左でもある。まずはどうでもいいと思おう。それから頭を落ち着けて、できることをしてみよう。

 

電子レンジでパスタを解凍しながら、薄暗い部屋に明かりをつけた。もう一日が終わろうとしていた。なんもしてねえや。まあ、掃除しただけ合格としよう。

 

電子レンジが甲高い音を立てる。わたしは電子レンジの前に立つ。ふと後ろを振り返る。

 

クローゼットが開きっぱになっている。

 

さっきの掃除で?

 

思い出せない。でも、違和感はある。恐る恐る近づき、わたしが迷わず手を伸ばしたのは例の抽斗た。

 

あの日以来、彼とは連絡がつかなくなった。わたしが寝ているあいだに、不在着信が何度か入っていたが、朝かけ直したところで誰も出なかった。寝る直前の通話で、わたしは彼に伝えたのだ。どんな相手であろうと、あなたにはなにも手出しできませんとか、安心して、温かいものをとってとか、好きな音楽でも流し、どうか朝を迎えてくださいとか、もうすっかり夜も更けていて、わたしも眠かったこともあって、そんな感じの言葉を並べ立てて、それで、どうなったんだっけ? たしか彼の、「そうしてみます」という言葉が返ってきた気がする。不安げな、なにかを諦めたような、その一方で、なにかを決意したようにもとれるあの声だけが、ありありと蘇ってくる。

 

わたしは抽斗を引く。ない。あの手紙が。

 

さっきわたし、どっかに持ってっちゃったっけ?

 

さすがにそれくらいなら憶えている。わたしは手紙をもとの位置に戻して抽斗を閉めた。すっかり真っ暗になった窓の外では、いまだ雨粒が水たまりを叩いている。雨の日は証拠が残りにくい、みたいな話を、映画かなにかで観たような気がする。は? やば。警察呼ばなきゃ、と慌てたわたしは、一旦冷静になろうと深呼吸を五回繰り返してから、もうちょっと探してみるかと思う。で、見つける。手紙じゃなくて、ミニテーブルの上に無造作に置かれた札束。ぜんぶ一万円で、分厚くて、たぶん百枚以上ある。

 

「こんばんは」

 

比較的おさえたつもりだったのに、わたしの声は部屋中に響いてバツが悪い。

 

「まだいますか?」

 

電子レンジの中にあるパスタがすっかり冷たくなるまでわたしはぼーっと突っ立ったままでいた。再度加熱するためにボタンを押して、オレンジ色の明かりに照らされながら、ちょっとだけ明日の仕事のこととか、さっきシャワーを浴びたので今日もまたそのまま寝ようかなとかを考えていた。

 

コーヒーくらい淹れたのに。

 

それにしてもどうすんのこれ。

税金とか。

 

 

 

 

 

 

 

f:id:sakabar:20180620205911j:plain

 

 

www.amazon.co.jp

 

 

吉澤嘉代子のライブであの野郎を見た

 

f:id:sakabar:20180405120035j:plain

 

 

先週金曜の朝、弟からいきなりLINEがきて、今夜泊めてほしいとのこと。たまたま休みだった僕は快諾して部屋をひととおり掃除した。その日は朝から『万引き家族』を観に行くことになっていたが、観終わってもまだ正午前。まったく問題ない。弟と会うのは4月ぶり。彼が入社式で東京に来ていたとき以来なので、そこまで久しぶりというわけでもない。

 

夕方の6時ごろ駅に到着した弟は、「もう部屋の住所知ってるから」とこちらの迎えを断ったが、部屋には食べるものがなにもなかったので、僕は買い出しついでに駅前へと向かった。馬鹿でかい荷物を背負う弟の頭は社会人カットになっており、ちょうど最近ハマったNetflixのドラマ『13の理由』に登場するザックというキャラクターを演じたアジア系の俳優にそっくりだった。部屋に着くなり、弟は「研修初日の朝に慌てて準備したから靴下の替え持っていない。これいま五日目」と言いながら革靴を脱いだので突き飛ばそうかと思ったが、「いいから嗅いでみ」と言って差し出された靴下は無臭。ネットで話題になった消臭パウダーを使ったら本当に靴が臭わなくなったらしい。早速僕もネットで注文した。

 

シャワーを浴びた弟と酒を飲みながらNetflixで『クィア・アイ』の適当に選んだ回や、『M:I-2』のラストで数珠つなぎに展開するイカれたアクションシーンを観た。ジョン・ウー映画のアクションのリズムは、僕らにとって幼少期より慣れ親しむ生理的なものなので、鑑賞中はずっと笑っていた。心地よすぎて笑うというのは、心地いいという感覚がイレギュラーなものであることを前提としているからなのかもしれないと思った僕は、仕事の話はふらなかった。接した限りでは特に疲れている様子もないし、たぶんボーナスだって出る会社だろうし、僕より友達も多いし、バイタリティもあるので、結局ただの杞憂なのかもしれない。そもそも問題があるのは僕の方かもしれない。ぜんぜん貯金がない。

 

弟は3缶目に飲んだストロングゼロにやられ、夜の10時ごろには寝てしまい、翌日の昼には新幹線に乗るため東京駅へと発った。荷物をまとめながら、PUNPEEの『Oldies』を流していた。僕はその曲をSpotifyでとって、その日の遅番へと向かう道中で何度も聴いた。曇天模様の、どこか秋のような空気の匂いにつつまれて聴く『Oldies』は清々しく、心地よかった。

 

 

日曜日、吉澤嘉代子のライブに行った。

吉澤嘉代子といえば、マイメンの部屋に居候中だった2016年の夏、眠れない夜に流しっぱなしにしていた深夜ラジオで曲を聴いて以来のファンだ。僕はそもそもライブというものに行ったことがほとんどない。中2の冬に母親に連れられて槇原敬之のライブに行って以来だから、かれこれ13年ぶりだ。

 

会場である東京国際フォーラムは有楽町にある。有楽町といえば中央区だ。すぐとなりが銀座なのである。ライブでもない限り、用はない。

会場には何年か前に就活生の小説を書いて直木賞を受賞した作家がいた。広い会場にもかかわらず、同じ列に座っていた。僕はその作家が出ていた回の『情熱大陸』を録画し、何度も再生した過去があるので、その顔を見過ごすはずもない。さすが作家というべきか、座席にドーナツ型のクッションを敷いていた。ケツへの負担には配慮が必要なのだろう。

 

ライブでは僕の好きな曲がガンガン流れた。僕は吉澤嘉代子の曲がもたらす短編小説を浴びるような感覚が好きだ。生演奏に生歌というのも相まって、ライブならではの鮮度にやられた。

 

ライブ終了後、銀座を散歩した。路上でサックスを演奏している男の人がいて、街の放つきらびやかさに更なる華を添えていた。創作において生活は大事だという結論に至り、働くようになってしばらく経つ。体重は10キロ減った。こんなにソリッドな自分は大学時代に引きこもっていた頃以来だ。再起の直前になると、僕は痩せるのである。ドアマンが白手袋にインカムを身につけているような高級店から出てくるやつらを片っ端から睨みつけつつ、家路へとつく。

 

まずはジュリア・キャメロンが日課としていたといわれる「モーニング・ページ」を日課にしようと初めてみた。毎朝、とりとめもない文章を3ページ書くというやつだ。筋トレと同じように、正しい継続にこそ意味があるのだと思う。

 

いまに見てろよ中央区

 

全日本マザファッカー選手権、ひとり選ぶなら、当然ぼく。

 

 

 

 

 

www.amazon.co.jp

 

 

 

夏、到来?

 

 f:id:sakabar:20180602155343j:image

 

 

 

みなさん、こんにちは!

 

 

前回の記事から1ヶ月以上経ってしまいました(笑)

 

景色の陰影は日々濃くなり

 

もうすっかり夏、到来!!?

 

ぼくなんて、すでに夏バテ気味です(笑)

 

 

さて、つい昨日のことなのですが

 

デッドプール2』を観てきました!

 

待ちに待ったデップーちゃん。

 

ちなみに

 

「デップー・チャン」と書くと

 

ハリウッドでも活躍するアジア系の俳優さんみたい!

 

 

閑話休題(←使い方あってますか?)

 

デッドプール2』とても面白かったです!

 

やー、笑った(笑)

 

根底にあるしっかりとした倫理観が、縦横無尽のように見える脚本の軸となり、とても見応えのある、素晴らしい作品

 

だったと思います(笑)

 

様々なギミックが投入された作品でもあるので

 

これ以上書くのはネタバレ!

 

興味のある方はぜひご覧になってください!

 

 

それにしても暑い~~~!

 

みなさまも熱中症などには気をつけてください!

 

それではまた✌

 

 

 

[告知]

那覇剛柔丸の著書『蓬ヶ丘よもぎがおか殺人事件』がKindleにて好評発売中!

Kindle Unlimitedにご登録の方は、読み放題でお楽しみいただけます。

www.amazon.co.jp

 

 

 

 

 

 

齢について

 

f:id:sakabar:20180405120035j:image

 

 

先週、体調を崩した。

 

思い当たることといえば、一日中半袖で過ごしたことと、献血センターで血を400ml抜いたことくらいだ。

かつてのバイト先にいた、すべてが両津勘吉そっくりな上司が

 

 

「男はよ、女と違って生理がないから献血とかで定期的に血を抜いたほうがいいんだよ!血が新しくつくられるから!でも俺、献血できねえからな~!」

 

 

と言っていた。つまり献血は体にいいのだ。ということは、一日中半袖で過ごしていたことが原因なのだと思います。暖かくなってきたとはいえ、夜はさすがにちょっぴり冷えます。みなさまも、ご自愛くださいませ。

 

 

3月末に、大学生も多く参加する飲み会があった。

そこにいた新社会人のひとりが「もう研修始まってるんですけど辞めたいっす。でもやっぱり3年は勤めないとダメなんですかね」という話をしていた。そこで僕は「無理して何年も勤めるより、フットワーク軽かった人の方がなんだかんだでいまも楽しそうにしてるよ」と言うと、その新社会人は「うわー、そうっすかね。じゃあそうします。今日来てよかったです」と喜んでしまった。さらに僕が「港区あたりにタワマン持ってる女医とかのヒモになるのがいいね」と言うと「なるほど」と言っていた。なるほど、じゃねえんだよ。その新社会人は顔もスタイルも優れた色男で、「楽をするのが本当に好き」と日頃から豪語している清々しい人間だったから、誰かからヒモになってくれって言われた暁にはぜひともヒモになってほしい。そういう一見バカみたいに思えることだって起こせるってことを証明してくれよ。『15時17分、パリ行き』のように、来るべき「その瞬間」に向かって僕らは生きているのだから。

 

 

酒が本当に嫌いだ。

 

というより、僕は昔から「気が付くとそこにあることが当たり前のようになっている、それほど必要ではないもの」に妙な怒りを覚えるところがある。

 

季節の変わり目だからか、最近すぐ体調を崩す。そこに酒を飲む機会が重なってばかりいるので、ここのところ「うまい酒」を飲めたためしがない。飲むやいなや脳が浮腫み、胃が荒れ、三半規管がポンコツになる。そんな状態で迎えた翌朝、過ぎ去った飲みの席を振り返り、「歳下にアドバイスまがいのことをのたまう自分」を思い出すのだから忌々しい。うんざりするくらいに、昨晩が追いかけてくる。

 

 

つい先日、上野公園で花見をした。

 

この時期の上野公園は花見客でごった返している。昔は人で賑わっている場所が好きだった。憂鬱なときに、なんのあてもなく渋谷まで行き、喧騒の中を歩いて英気を養ったりした。ついこの間『ブラック・パンサー』のIMAX3D版を新宿まで観に行った友達ふたりと桜の下で立ったまま酒を飲んで歓談。といきたかったのだが、自分の年齢や過去との比較に関する話がメインとなってしまった。もうこういう話しか出てこないのだ。なぜなら僕らは今年で28歳になる。将来には不安しかないのに、SNSなどのせいで、未だ「人並みの生活」とやらを当然のように押し付けてくる人間に囲まれている。馬鹿が。僕は引きこもりだった19歳のころに中上健次の『十九歳の地図』を読んでいたのだ。地図にマークをつけてやる。今にも暴れだしたい気分と反比例するように僕の体調はみるみる悪化。寄った友人宅で『めちゃイケ』最終回を観ていたというのに、途中でおいとまし、東武東上線のホームに立つ。そんな僕の前に停止した車両のドアには大量の嘔吐物が付着していた。

 

なにか大きなものに動かされている気がする。

 

28歳。

 

いたずらに焦ったところでどうにもならない派の僕は、いまのところ、この年齢に強い感情を喚起されないですんでいる。でも客観的な視点をまるごと放棄するのも気持ちが悪い。僕はこの年齢にもうちょっとだけ具体像を持ちたいと思った。

 

Googleで検索しようとすると、検索ワードの一番上に「平均年収」という言葉が出てきた。辛気臭くて怒りすら覚える。

僕は構わずに、追加ワードとして「キャラクター」と打ち込んだ、

 

マスオさんは28歳だった。

 

サザエさんは24歳らしいので、マスオさんは4つ歳の離れたの女の人と結婚したわけだ。そこで僕は4つ歳下の芸能人を検索してみた。

 

広瀬アリスがそうだった。

 

ちょっとだけ嬉しい。

 

続いて『金田一少年の事件簿』に登場する明智警視が28歳ということを知る。

 

るろうに剣心』の主人公・緋村剣心も初登場時の年齢が現在で言うところの28歳くらいらしい。少年漫画の主人公にしては年を食っている、って言われていたが、それが28歳という年齢なわけか。

 

それからも見た顔が出てくる出てくる。

 

銭形警部も28歳。それでとっつぁん呼ばわりとは。

 

則巻千兵衛も28歳。伝説の大学院生、みたいに思えば全然ありえる。

 

ラピュタ』のムスカも28歳。まあまあまあ。

 

ブラック・ジャックも28歳。実写版だと本木雅弘が主演していたやつが一番好きだった。

 

意外!と驚きこそすれ、僕が求めている感情とはちょっと違うなあと思った。だったら実在の人物で調べりゃいいじゃんと思われるかもしれないが、それじゃあ自傷行為に他ならない。

 

諦めかけたそのとき、僕の目にあるキャラクターが飛び込んできた。

 

 

 

 

f:id:sakabar:20180405115700p:image

 

 

 

バチーン!

 

とハマった気がした。

 

いまの僕が持ち得る「28歳という年齢のリアリティ」を担えるのは『おじゃる丸』のうすいさちよさんだったわけだ。

 

見れば見るほど「2018年の28歳」に思えてくる。

 

うすいさちよ

 

いじらしい名前。

 

僕はうすいさちよさんが大好きになった。

 

実写化するなら小松菜奈かな?絶対にそれがいい。28歳を迎えるころ、小松菜奈はいまよりもさらにずっと素敵なことだろう。

 

 

 

大学を卒業した弟は、就職先も決定していた。

長らく無職だった兄としては、それをとても誇らしく思う。

 

 

そんな弟が東京での研修があるため、その前乗りとして僕の部屋に一泊することとなった。適当にラジオを流しながらおしゃべりをしていると、弟が「これ誰の曲か当てて」といい、「はい死んだはい死んだはい死んだー!」と叫びだした。まったく知らなかったけど、「般若?」と答えたら正解だった。「めちゃくちゃ般若くせー!」と爆笑しながら、姪っ子の話とか、実家の話とか、昔の思い出話をしていた。

僕には幼稚園のころから付き合いのある同級生がいて、そいつのモノマネを現在に至るまでよくやっているのだけど、弟はいつのまにか僕のモノマネのモノマネをするようになっていた。そんな弟が、こんな話を教えてくれた。

 

ついこの間まで実家に帰省していた弟は、地元の飲み屋ビルに入っているスナックに友達と遊びに行った。するとその店のホステスが、僕の同級生だった。共通の話題を探っているうちに、弟が例のモノマネを披露してみると、そのホステスにめちゃくちゃ受け、何度も披露させられる羽目になったとのことだった。

 

「いい話だな」と僕は思った。

 

モノマネのモデルとなった同級生とは音信不通だ。最後に会ったのがいつだったのかさえよく覚えていない。

 

そして昨晩が追いかけてくる。

 

涼しい夜で、僕らは次の日もあるからと早々に寝た。最高の朝ごはんを食べ、部屋を出て、駅で別れた。

 

 一年前が追いかけてくる。

 

大学時代が。

 

高校時代が。

 

中学時代が。

 

最近、本を読むのが苦ではなくなってまいりました。映画も楽しいです。暖かくなってきたので、またなにか書きたいなと思って、その思いが先走り、こんなにも長ったるいブログをしたためた次第でございます。

 

ちなみに村上春樹が、「小説を書くときは、その他の書く仕事はすべて断る」みたいなことをエッセイに書いていましたが、僕もこのブログごときで即席の達成感を味わっている場合なのかと頭を悩ませています。

 

でもいいのです。

 

「サンプリングに次ぐサンプリング やがて見えてくるリングに上がる」

 

という存在しない曲のパンチラインが僕の頭のなかでリフレインしているうちは、ちょちょいのちょいでライフゴーズオンなのです。

 

 

今年の誕生日も当然派手に祝うぞ。

 

 

 

 

 

 

Netflixマイリスト一覧大公開!

 

 f:id:sakabar:20180315175908j:image

 

 

【劇映画】

オードリーとデイジーNetflixオリジナル

KAMIKAZE TAXI

劇場霊

『浮草たち』Netflixオリジナル

『シロメ』

『雄鶏の血』

『逆転の日』

『キャット・ファイト』

『モンガに散る』

アイム・ソー・エキサイテッド!

『ホーム・インベージョン』

『サイドシアーズ』

『ノン子36歳(家事手伝い)』

『慈悲』Netflixオリジナル

『好きにならずにいられない』

『放課後たち』

『狂気の行方』

『アサシン』

『ザ・テロリスト 合衆国陥落』

『スーサイド・ミッション』

『ぼくらと、ぼくらの闇』

『ウルフ・オブ・ウォー』

沖縄やくざ戦争

『燃える男』

『シュガー・マウンテン』

『BIG BANG!~撃ちまくれ~』

『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』

『ターボキッド』

『クライム・スピード』

裏切りのサーカス

スティーブン・キング ビッグ・ドライバー』

マンイーター

『僕らはみんな生きている』

『傷だらけのふたり』

『イナフ』

『レイク・モンスター』

『奪還者』

『フレンチアルプスで起きたこと』 

『12hours DEA特殊部隊』

『エル・カミーノ・クリスマス』Netflixオリジナル

『しあわせはどこにある』

『狼牙―ライジング・フィスト―』

『ハン・ゴジュ 17歳の涙』

『レクイエム-最後の銃弾-』

ガール・ライク・ハー

『サウンド・オブ・ノイズ』

キッズ・オールライト

『白い沈黙』

ソーシャル・ネットワーク

『ガンズ&ゴールド』

『おんなのこきらい』

『プッシャー3』

イングロリアス・バスターズ

『悪魔の倫理学』 

 『スクリーム4 ネクスト・ジェネレーション』

『ローラー・ガールズ・ダイアリー』

REC/レックジェネシス

『鬼はさまよう』

『コインロッカーの女』

『ラブ&マーシー

『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

『バッド・デイ-復讐の血-』 

美しき野獣

フッテージ

『レギオン

『ベンジェンス-復讐の自省録-』

『神様メール』

イリュージョニスト

『偽りなき者』

GODZILLA 怪獣惑星

『荒野の殺し屋』Netflixオリジナル

『不吉な招待状』

『ザ・トーナメント』

オール・ユー・ニード・イズ・キル

キングコング:髑髏島の巨神

『トラック野郎 御意見無用』

メビウス

『ハロウィンⅡ』

『マッチポイント』

『デイライツ・エンド』

『スネーキーモンキー 蛇拳

『ウォールストリート・ダウン』

孫文の義士団』

復讐捜査線

『美しい湖の底』Netflixオリジナル

『チェイシング・エイミー』

『操作感X』

『オフィス 檻の中の群狼』

『オーディション』

あいつだ

『闇を生きる男』

『完全なるチェックメイト

チャイルド44 森に消えた子供たち

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

サクラメント 死の楽園』

『スペクトル』Netflixオリジナル

ライチ☆光クラブ

サイレントヒル:リベレーション』

『ヴィンセントが教えてくれたこと』

思いやりのススメNetflixオリジナル

『砂上の法廷』

ドローン・オブ・ウォー

『ムーン・ウォーカーズ』

『哀しき獣』

復讐するは我にあり

『パーフェクト・トラップ』

『ビースト・オブ・ノーネイション』Netflixオリジナル

『タンタンの冒険』

『ファルコン・ライジング』

エンド・オブ・ザ・ワールド

『最後まで行く』

まほろ駅前協奏曲』

『スリーデイズ』

『トゥルー・ストーリー』

『26年』

『そこにみにて光輝く』

『ぐるりのこと。』

『ゾンビ』

『幕が上がる』

『リトルデビル』Netflixオリジナル

『アンダーカバー・じいさん』

プリデスティネーション

『ブライト』Netflixオリジナル

チェンジリング

素晴らしき哉、人生!

運命じゃない人

『カエル少年失踪殺人事件』

『ルシッド・ドリーム 明晰夢Netflixオリジナル

『サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶』

『葉問 イップ・マン 最終章』

『シャドー・チェイサー』

『百瀬、こっちを向いて。』

『クーデター』

テイク・シェルター

ぼくらの七日間戦争

ラストスタンド

ビッグ・アイズ

死霊のはらわた(リメイク版)』

スプリング・ブレイカーズ

仁義無き戦い 広島死闘篇』

バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』

ザ・ブルード/怒りのメタファー

シングルマン

アポロ18

『ピラニア』

『ムービー43』

バトルフロント

アリスのままで

宇宙人ポール

『危険なプロット』

オンリー・ゴッド

残穢-住んではいけない部屋-』

『ザ・ディスカバリーNetflixオリジナル

パンチドランク・ラブ

『ラスト・ウィーク・オブ・サマー』Netflixオリジナル

グローリー/明日への行進

『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』Netflixオリジナル

涼宮ハルヒの消失

『テイカーズ』

『ジャドヴィル包囲戦』Netflixオリジナル

エレクトラ

『キューティー・バニー』

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』

HK/変態仮面

『ハード・パニッシャー

人生はビギナーズ

親切なクムジャさん

『心のカルテ』Netflixオリジナル

『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー

マジック・マイク

『誘拐の掟』

スーパーバッド 童貞ウォーズ

『キャロル』

コナン・ザ・バーバリアン

『悪魔を見た』

『ジェラルドのゲーム』Netflixオリジナル

パニッシャー

『SEXテープ』

『ウォーリアー』

『無ケーカクの命中男』

南極料理人

『マラヴィータ

バンク・ジョブ

ザ・ベビーシッターNetflixオリジナル

イップ・マン 葉問

レイヤー・ケーキ

寝取られ男のラブ♂バカンス

キングダム/見えざる敵

マジック・イン・ムーンライト

アポカリプト

シン・シティ 復讐の女神

『チャーリー・モルデガイ』

『キミとボクの距離』Netflixオリジナル

アデル、ブルーは熱い色

バッド・ママのクリスマス』Netflixオリジナル

『キング・オブ・コメディ』

死霊館 エンフィールド事件』

『レゴバットマン ザ・ムービー』

『わたしはロランス』

プロジェクトX

『縞模様のパジャマの少年』

デス・プルーフ

ターザン:REBORN

SAFE/セイフ

仁義無き戦い 代理戦争』

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

ハッピーフライト

バクマン。

西遊記 はじまりのはじまり』

ティアーズ・オブ・ザ・サン

『意表をつくアホらしい作戦』Netflixオリジナル

インモータルズ-神々の戦い-』

ジャッジ・ドレッド

スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』

ゲッタウェイ スーパースネーク』

ブルージャスミン

レッド・ドラゴン

冷たい熱帯魚

ブライズメイズ

『フルートベール駅で』

エンド・オブ・ウォッチ

『1922』Netflixオリジナル

新宿スワン

『青天の霹靂』

アラバマ物語

スワロウテイル

ザ・ウォーク

ロスト・ハイウェイ

フライト・ゲーム

コーヒー&シガレッツ

ラブ・アゲイン

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

ライフ・イズ・ビューティフル

未来世紀ブラジル

『ブラックハット』

海街diary

わらの犬

悪の教典

闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』

GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊

『6日間』Netflixオリジナル

スパイ・ゲーム

『記憶の夜』Netflixオリジナル

『ルーム』

『ライアーライアー』

エターナル・サンシャイン

『はじまりのうた』

『殺し屋1』

『ドランクモンキー酔拳

パンズ・ラビリンス

ブラックホーク・ダウン

最強のふたり

『ジャッカル』

『her 世界でひとつの彼女』

BLAME!Netflixオリジナル

ジョーズ

ヘイトフル・エイト

ナイトクローラー

言の葉の庭

帰ってきたヒトラー

メカニック:ワールドミッション

華麗なるギャツビー

カウボーイビバップ 天国の扉』

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

クリーピー 偽りの隣人』

12モンキーズ

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!

アメリカン・ギャングスター

『スモーキン・エース』

トゥルー・ロマンス

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』

『何者』

男はつらいよ』シリーズ

E.T.

『飢えた侵略者』Netflixオリジナル

『カジノ』

『アキラ』

『恋はデ・ジャヴ』

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

パシフィック・リム

ヒットマンズ・ボディガード』

『マネー・モンスター』

『レヴェナント 蘇りし者』

アウトサイダーNetflixオリジナル

『サバイバルファミリー』

この世界の片隅に

『鋼鉄の雨』Netflixオリジナル

 

 

 

【ドキュメンタリー】

グレゴリー・ペックという人生』

将軍様、あなたのために映画を撮ります』

『曖昧な未来、黒沢清

『ダッグ・ファイト』

ジョンベネ殺害事件の謎』

『ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い』

『覗くモーテル』Netflixオリジナル

『AV俳優たちの第二の人生』

マイク・タイソン THE MOVIE』

シュガーマン 奇跡に愛された男』 

『DOPE』Netflixオリジナル

『キーパーズ』Netflixオリジナル

『特殊部隊:地獄の訓練

『ヒップホップエボリューション』Netflixオリジナル

ホドロフスキーのDUNE』

『FAKE』

『世界の麻薬王:その光と闇』

『リキー・ジャーヴェイスの人間嫌い』Netflixオリジナル

『はじまりはヒップホップ』

 

 

 

 

 

 

【ドラマ】

『オザークへようこそ』Netflixオリジナル

『レギオン

『ナルコス』Netflixオリジナル

マンハントNetflixオリジナル

『このサイテーな世界の終わり』Netflixオリジナル

FLASH/フラッシュ』

ウォーキング・デッド

『バーニング・クロス』

『オルタード・カーボン』Netflixオリジナル

『クイーン・オブ・ザ・サウス~女王への階段~』

『ザ・リターン』Netflixオリジナル

『イージー』Netflixオリジナル

『ブルックリン・ナイン・ナイン』

孤独のグルメ

『殺人者への道』Netflixオリジナル

『サンズ・オブ・アナーキー

『エル・チャポ』Netflixオリジナル

『THE OA』Netflixオリジナル

『ミッション・ボディーガード』Netflixオリジナル

『ユニークライフ』Netflixオリジナル

『ゴッドレス-神の消えた町-』Netflixオリジナル

『ダムネーション』Netflixオリジナル

スパルタカス

『ザ・シューター』Netflixオリジナル

『ジ・アメリカンズ』

『センス8』

『ザ・ミスト』

『FARGO/ファーゴ』

『オレンジ・イズ・ニューブラック』

僕だけがいない街Netflixオリジナル

『13の理由』Netflixオリジナル

『私立探偵ダーク・ジェントリー』Netflixオリジナル

『グッド・プレイス』Netflixオリジナル

パニッシャーNetflixオリジナル

『ハウス・オブ・カード』Netflixオリジナル

『サイテー!ハイスクール』Netflixオリジナル

『運命の7秒』Netflixオリジナル

僕たちがやりました

『ペーパーハウス』

『マインドハンター』Netflixオリジナル

ストレンジャー・シングス 未知の世界』Netflixオリジナル

ゴッサム

『ラブ』Netflixオリジナル

コラテラル 真実の行方』

 

 

 

【テレビ番組・リアリティショー】 

怪しい伝説

クィア・アイ』Netflixオリジナル

テラスハウス:オープニング・ニュー・ドアーズ』Netflixオリジナル

テラスハウスAloha StateNetflixオリジナル

世界ふれあい街歩き

『フリント・タウン』Netflixオリジナル

 

 

 

【アニメ】

『カウボーイ・ビバップ

化物語

ガンスリンガー・ガール

ヨルムンガンド

長門有希ちゃんの消失

ポプテピピック

『ボージャック・ホースマン』Netflixオリジナル

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない

涼宮ハルヒの憂鬱

少女終末旅行

『アーチャー』

『日常』

 

 

 

 

 

人生足りるのか。

 

 

 

 

 

 

 

『海がきこえる』という夢をみました 【特集:それでも夢の話をする】

 

 f:id:sakabar:20180215153033j:image

 

私はこれから、夢の話をします

この間、二度寝した。

朝の6時半に一度起床し、コーヒーを飲みながらテレビをみたりして過ごしていたけど、やっぱり眠いのでまた布団に潜り込んだ。冬とはいえ、陽は完全に昇っていた。カーテンを開けた窓から差し込むサンシャイン・シャワーを浴びながらの二度寝だ。朝陽を浴びると自律神経は目覚めるというが、関係ねえ、迷うことなく爆睡。

 

そして夢をみた。

 

 

 

それはある映画を観るという夢だった。タイトルは『海がきこえる』。ジブリのあの作品だ。ちなみに僕はホンモノの『海がきこえる』を観たことがなかったので、「あー、ずっと観ようと思ってたんだ」みたいなテンションでちょっとワクワクしていた。

 

 

 

物語は自分が登場人物のような没入感を伴って進む。

 

舞台は日本の何処かにある架空の町。近くに海のある、やたら高低差の激しい立地の町だった。

その町で一番高い丘の上には、木製で球体の大きな建造物がある。たぶん展望台的な何かだと思う。反対側は海に面した崖だから、波の音が届かなくもない。なるほどだから『海がきこえる』なのかと僕は思っている。

 

登場人物は高校生らしい。展開が連続性を欠く抽象的な感じなので文脈をつかみにくい(夢だし)。おおまかにいえば以下の様な感じだった。

 

主人公の男の子は転校生でこの町に馴染みはない。放課後、例の展望台で時間を潰している。その展望台には同じ高校のいじめっこがいて、他の生徒をいじめていた。主人公の男の子は、それを止めようと、いじめっこに暴力をふるう。で、はっきりとは描かれないけど、たぶん殺してしまう。

 

でもバレない。事故に偽装したとかだろうか?とにかく話は進む。ヒロインも現れ、罪悪感を抱えた主人公との交流が、微熱のような、どこかけだるいタッチで描かれていく。

 

ただ残念なことに、これはあくまでも僕の夢なのできちんとオチにはたどり着いてくれない。物語は未完で、気がつけば僕は僕本人として舞台であるその町にいる。どうもこの『海がきこえる』という作品は未完らしく、世間ではその続きの憶測が飛び交っていたりと一部でカルト的な盛り上がりをみせているらしいのだ。らしいのだ、というか僕はそう思っている。どうせ夢の中なので、すべては最初から前提として意識の中にある。だから僕には明確な目的もあった。

 

未完であるこの作品には、作者の残した結末部分のプロットがどこかに存在しており、僕はそれについて取材して回るためにこの町に来ているらしかった。

 

ということで作者の関係者の家に赴く。この『海がきこえる』の作者は女性で、劇中に出てきたヒロインと同一人物。だがもう亡くなっている。虚実の皮膜が存在せず、わけがわからなくなってくるが、当の僕は「つまり作者(ヒロイン)の死の真相こそこの物語の結末にかかわる重大なヒントなのではないだろうか」とジャーナリズム精神を炸裂させていた。

 

取材対象である関係者は、坂の途中にある小さな売店を営むおばさん。作者との関係も「親戚」というアバウトなものだったが、それでも僕は雑談を交わしながら取材を進めた。日が傾いてきたので、「今日はちゃんと終電で帰れるかな」とか考えている。それを察した様子のおばさんは「今晩はうちにとまっていけば?」と言った。もっと探せば遺品も出てくるだろうとの事だったので、僕はその言葉に甘えることにした。

 

夜も深まり、居間のような場所でテレビを観ていた僕は、おばさんがもってきた遺品を受け取る。それは作者が大学時代にサークルの会誌に寄稿したという漫画だった。デビュー前の作品ということか!僕はそれをパラパラとめくってみる。

 

気が付くと僕は、小綺麗な会議室にいた。そこはどうやら雑誌の編集部らしく、みんながそれぞれの仕事に追われている様子で激しく出入りしている。その中には実際に雑誌の編集部に勤めている友達や、落語家の友達なんかもいる。編集長と思しき田畑智子まで入ってきて、僕の持参した「サークルの会誌」のチェックを急ぐように言った。その漫画はいつのまにかスキャンされ、みんなのパソコンで共有されていたため、僕もベテランと思しきおじさんのデスクトップでその内容を確認する。内容は大まかに以下の通り。

 

 

・ものすごく緻密で綺麗な絵(大友克洋の息子がボールペンで描くみたいなタッチ)で、ラプンツェル級に長い髪を持った女子高生が描かれている

 

・夜の人気のない電車内で、自分の長い髪を枕に眠る女子高生

 

・彼女のもとに顔の映らない男が近づく。スーツ姿。その手には日本刀が握られていて、「自分の生きる価値」についてのモノローグが挿し込まれる

 

・他の車両に乗っていた猫を抱いたおばあさんの、血にまみれた生首のコマが挿入。このスーツ男が殺人鬼であることが示される

 

・髪の長い女子高生と、その姿を見下ろすスーツ男の見開き。ページの端の方には「TO BE CONTINUED」の文字。直接「死」が描かれているわけでもないのに、ページには抗いようのない絶望感が満ちている。読んでいるみんなが、この女子高生の死を直感した

 

 

読み切りというわけでもなく、連載中のある回だけを抜粋したような内容にみんながざわめく。編集長である田畑智子がこれを世間にどう発表するかの会議を始める中、僕と友達とベテラン編集マンのようなおっさんが、パソコンのモニターを食い入るように見つめ続けた。完全に心を奪われていたからだ。

 

 

 

 

といったあたりで僕は目を覚ました。

 

 

 

夢の名残

目覚めた瞬間は、茫然自失状態のまま数分。

 

薄々感づいてはいたけどやっぱり夢か。なんだこの夢。

 

布団から抜け出した僕は、とりあえずメモを取ってみた。しかし、ペンを走らせれば走らせるほど、ディテールが消失していくのを感じる。ものすごく悔しい。映画の冒頭部を改めて見直したい。あの漫画もまた読みたい。しばらく悶々としていたが、やがてそれも鎮まっていく。なんだか寂しい。

 

でもまあいいか、と僕は思った。いまもこうやってブログの記事にまとめてみたはいいものの、読み返しては「なぜ2018年に『海がきこえる』なのか」とか「なぜ田畑智子なのか(すごく良かった)」とか「なぜ」の連続だ。夢を見た当の本人のくせに、野暮ったい横槍マンになってしまう。

 

ただ、この夢を見たことで胸の裡で響き続けるこの気持についてその後もいろいろと考えてみた。なんとなく、鬼頭莫宏漫画の読後感にちょっと似ているなと思いました。『ぼくらの』しか読んだことないけど。あと、『海がきこえる』もこれを機に観てみようかな。などと思いつつ、人のみた夢の話に2600字も付き合ってくれてありがとう。感謝。

 

 

まあまあだけど楽しんでいる方です

 

f:id:sakabar:20180206182420j:image

 

埼玉県内にある某大学に行ってきた。知らない町をぶらぶらするのは楽しいが、その延長として知らない大学の構内に入るのも楽しい。大学は概ね広い。僕の通っていた大学はかなり狭い方だったので、その他の大学はどこも大抵広く思える。隣の大学は広い。

 

その大学にはでかい広場があった。広い場所に出ると無性に走り出したくなるのは人間も犬も一緒だ。僕らは大いなる力に使われるだけの憐れな犬。そんなペシミズムも最大瞬間風速的ウキウキで忘れてしまえる。僕は大学の中庭などに置かれたベンチも好きなので、走り疲れたらそこで休んだ。お腹も空いてきたので、なにか食べたい。僕は大学の周辺を散策することにした。

 

f:id:sakabar:20180206182446j:image

 

大学はその周辺も楽しい。学生が多く住んでいるアパートを眺めると、ここに住んでいる学生たちは夜な夜な友人の部屋に出入りしているんだろうな、などと考え、切ない気持ちになる。ふと目に入ったのはメニューの書かれた紙がいたるところに貼られたラーメン屋。ランチセットが550円ということで入店を即決。学生街の飲食店は、安くて量の多い傾向にあるので嬉しい。中に入ると刃牙のコンビニ本がたくさん並んでいた。高齢夫婦が切り盛りしていて、腰は曲がっているがよく声の通るおばあちゃんが接客してくれる。このまま夕方まで過ごせそうだな、と思い椅子に深くもたれこみながらテレビを観ているとランチセットが運ばれてきた。ライスにはふりかけがかけられていて、僕は胸が一杯になり、思わず目頭を熱くしてしまう。本当に祖父母の家に来ているみたいだ。ラーメンの素朴な味を楽しんでいると、不意に大学時代を思い出した。

 

 

 

僕が大学生の頃住んでいたアパートの近くには、傾きかけた古い家屋があった。そこは昔からある天ぷら屋らしく、よぼよぼのおばあちゃんがひとり、朝早くから天ぷらを揚げている姿をよく見かけた。通りかかるたびに「今度寄ってみよう」と思ったまま一年半もの月日が経ち、このまま機会を逃し続ける可能性もあると薄々感じていた、そんなある日のことだった。

お隣さんである大学院生に古着を見にいかないかと誘われた。その日は大学も休みで、僕は部屋でインターネットをして過ごしていた。古着に用はなかったが、誘いを無下にできなかったので、自転車で20分ほどのところにあるセカンドストリートに向かった。その帰り道、例の天ぷら屋の前を通りかかったのである。すると大学院生が、「ここずっと気になってたんだよね」と言った。

「あ、俺もです」

「ほんと? じゃあさ、ちょっとよってみない?」

「いいですね」

僕らは立て付けの悪い引き戸を引いて、店の中に入る。畳間に座った割烹着姿のおばあちゃんが「いらっしゃい」と言った。

「すみません、ここって天ぷら屋でいいんですか?」

大学院生が尋ねると、おばあちゃんは照れくさそうにうなずいた。おばあちゃんの口調は見かけによらず、昔から商売をしてきた人特有のテキパキしたものだった。

「といってもいまはボケ防止みたいなものよ。毎朝起きて天ぷら揚げる。買ってくれる人がいるんなら売る」

僕と大学院生は「へ~」と言いながら、トレーに敷かれたキッチンペーパーに並ぶ天ぷらたちを眺める。どれも揚げてからそれなりに時間の経った様子だったが、衣がサンゴのように立っていて美味しそうだった。

「じゃあすみません、これひとつください」

大学院生がさつまいもの天ぷらを注文した。僕も同じものを選ぶ。「時間経っちゃってるから」と、おばあちゃんは50円で売ってくれた。

「朝来てくれたら揚げたてのものを食べられるよ」

おばあちゃんとの雑談が始まったので、僕らはお店の中で天ぷらを食べた。普通に冷たく、衣もしなびていたが、深い感慨の味がした。感慨には味がある。

話によると、おばあちゃんの家族は遠くに住んでいるとのことで、いつもはここでひとり天ぷらを揚げ続けているという。おばあちゃんは饒舌だ。まったくぼんやりした様子がない。これも毎朝欠かさず天ぷらを揚げ続けてきたおかげなのだ。

僕らは店を出た。そこで大学院生は「いや~」となにか改まったことを口に出す気配を見せた。このとき僕は、ここでこの大学院生があの天ぷらの悪口を言うんじゃないかとちょっとだけ心を強張らせた。はっきりいって、そんな言葉聞きたくない。いまはそういった元も子もなさに用はない。そんな僕に大学院生は言った。

 

「あの天ぷら、良かったね。あれをうまいとかまずいとかいう貧しい基準で捉えたくないよね」

 

僕は部屋に戻り、ベッドに寝転がりながら携帯をいじったりして午後を使いきった。お隣からは壁越しにギターの音が聞こえる。大学院生は得意のギターで作詞作曲をするのが趣味の人だ。何度か聴かせてもらったことがあるが、当時流行り始めだったRADWIMPSに似ている、エモ良い曲を大量にこさえていた。ずっと知っていたはずなのだ。あの大学院生がかっこいいということを。

 

 

 

ランチセットを完食した僕は、おばあちゃんに声をかけ会計を頼んだ。おばあちゃんはレジの下にある小さなカゴからチケットのような小さな黄色い紙切れを2枚くれた。それはこのお店だけで利用できる、手作りの10円割引券だった。それをお守りのように財布にしまった僕は、また来なくちゃな、と思った。大学時代のあの天ぷら屋さんは、しばらくして更地になってしまった。詳しいことはわからないけど、あのおばあちゃんが亡くなってしまったらしいことは、なんとなくわかった。「いつまでもあると思うな」に続く言葉が年々自分の中に増えていく。天ぷら屋、自分の体力、Netflixの映画。力んだところで、間に合わないものには間に合わない。でも、間に合うものだってたくさんあるはずなのだ。

 

 

 

ということで、つい最近『スリー・ビルボード』を観ました。

 

暫定ベスト。あんな小説が書きたいと打ちひしがれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳梁、2018

 

2018年が始まって1ヶ月が経とうとしている。2008年は、僕が高校3年生だった年だ。田舎の高校で、悩んだり開き直ったりを繰り返していた。いまでもそれは変わらない。この1ヶ月の間ですら悩んだり開き直ったりを繰り返し、去年の10月とくらべて体重が5キロ減った。

 

 f:id:sakabar:20180131200558j:image

 

去る金曜日、地元の友達が出張で東京に来ているからと関東近辺にいる同級生を新宿に集めた。平日ということもあり、プレミアムフライデーとは無関係な日々を送っている面々の集まる時間はまばらで、僕が待ち合わせ通り指定の居酒屋に入るとまだひとりしか来ていなかった。彼女こと【留学帰り】は高校の頃の同級生だけど、当時からそんなに絡んでいたわけでもなかったので意外と話題が思い浮かばず、「どれだけ久しぶりか」だけをテーマに10分くらい過ごした。会場である居酒屋は一軒め酒場で、【留学帰り】は「ここ予約する店じゃないよね」と言った。彼女の左手の薬指には指輪がはめられていたけど、みんなが集まってから聞こうかなと思って、一旦見なかったことにした。

 

次に現れたのはYだった。去年の夏、早朝の東京駅で死にかけたあの日に、二丁目で朝まで飲み明かしていた相手ことYだ。髭がボーボーなのは変わらなかったが、髪まで伸ばし、伊達メガネをかけていた。本人曰く「from イングランド」とのことだった。そんな話をしながらビールを飲んでいると、Y a.k.a.【イギリス】が「またこの三人か」と言った。2016年の春に花見を催したときも、この三人しか集まらなかったという過去があった。しかも【留学帰り】が途中で離脱したので、結局残った僕と【イギリス】で新宿二丁目に向かって朝まで過ごしたのだ。また今日もみんなこねえんじゃねえの、と僕は思った。

 

しかし花見のときとは主催者の人望が違うため、そんなことにはならなかった。次に現れたのは、座布団の上で正座して独り言をまくし立てることで生計を立てているHだった。Hは最近初めて夏目漱石の『坊っちゃん』を読んだそうで、「主人公がずっと田舎者の悪口を言っていて面白かった」と言った。以下、Hのことを【坊っちゃん】と表記する。ちなみに【坊っちゃん】はいつも同じグレーのチェックシャツを着ている。

 

それからしばらくして、ようやく主催者である【ハンサム】が現れた。僕が【ハンサム】と会うのはかれこれ2年ぶりで、あまりのウキウキからオリジナルTシャツを持参していた僕は、それを彼にプレゼントした。「マジで絶対返さないけどいい?」と喜んでくれた【ハンサム】は、去年彼女と婚約している。二年前と比べ、目に見えて太っていたけど、それは彼の幸福度と生活水準の高さを物語っているに過ぎない。その日集まったメンバーの中で一番の高収入を誇るのがおそらくこの【ハンサム】だ。なにかを妬む瞬発力に関しては定評のある僕だが、こと【ハンサム】に関しては不思議とそういう感情は芽生えない。その理由を強いて言うなら、僕の好き嫌いだ。

 

そこから先も続々と人が集まっていく。中学を卒業して以来会っていない友人もふたり現れた。【空手部】と【っ】だった。例によって当時からそこまで会話をする間柄ではなかったふたりでも、互いに「学校」とか「第二次性徴期」という呪いから解放された今のほうが楽しく会話することができる。【空手部】は酔うと感情が大きくなり、道を歩きながら前方から人が歩いてくると「あいつらこっちを睨んでいる。お前はどっちをやる?」とか言い出すめちゃくちゃダサいやつだ。【っ】は高校卒業後に通っていた専門学校を、プロサッカー選手になることを理由にやめてしまったという逸話を持つ男だった。その話は県外にいた僕にも届くほど有名だった。なぜそこまで拡散力をもっていたのかというと、【っ】は小学生の頃からずっと野球部だったからだ。改めて本人にその話について聞いてみると、ちょっとだけ恥ずかしそうにしつつも、決してウケ狙いのたぐいではなかったことを話してくれた。彼は当時19歳。19歳のころの僕は大学に行っているふりを続けながら引きこもっていたので、なんとなくそういうこともあるよなと思った。

 

お笑い芸人をやっている友達も来た。高校時代はAAAの西島隆弘そっくりなチャラい男だったのに(しかもサッカー部!)、今となっては体重も増え、映画監督の白石晃士そっくりだ。一応ここでは【にっしー】と呼ぶことにする。最近、所属事務所の先輩が逮捕されたばかりなのでそのことについて色々質問をしてみたものの、「俺はなんも知らん」の一点張り。背後に敷かれている箝口令を強く感じた。

 

その後も【バンドマン】をやっている友達、小さな会社ながら【代表取締役】をやっている友達、制作会社勤務のみんなの【アイドル】までが加わり、一軒め酒場じゃ収まりきらない数となってきたので金の蔵に移動。【空手部】は明日の朝六時から仕事とのことで離脱。半分以上が知らないメンバーであるにもかかわらず来てくれる【っ】に感動しつつ、みんなで始発までの時間を過ごす。バイタリティの塊【イギリス】が「三人同時に同じ音から始まる別々の言葉を発し、その中のひとりが発した言葉をみんなで当てる」ゲームをいきなり考案、【ハンサム】【坊っちゃん】【代表取締役】が実際になにかを叫び、【坊っちゃん】の発した言葉をみんなで予想した。答えは「たいこ」だった。正解者には【イギリス】から1ポイントが与えられた。

 

 その後も言葉を発するメンバーを変えて「三人同時に同じ音から始まる別々の言葉を発し、その中のひとりが発した言葉をみんなで当てる」ゲームを二回やった。その間に【イギリス】は人の言動に加点減点を行うことにハマってしまった。もうすっかり真夜中で、高校時代から居眠りの常習犯だった【バンドマン】は寝ていた。【坊っちゃん】は【っ】の顔を「夢に出てくる男(This Man)」にそっくりだと言い出し、それをネットで検索した【アイドル】の提示した画像がまったく関係のない不気味なモンタージュ写真でみんなが引いた。【留学帰り】は外国に住んでいる彼氏と婚約したことを話し、 【イギリス】は「今度から昼に集まって夜解散しよう」と言った。

 

 

僕はその間ずっと、なんだか懐かしいなあと思っていた。眠かったのかもしれない。このあと始発に乗り、長い時間をかける帰宅を億劫に思っていたせいかもしれない。

 

もっと頻繁に友達と会うべきなのだ。1年も2年も一瞬だから、楽しいことを後に回している場合じゃない。そんなことを、酔いの醒め始めた無理のない頭で考えていた。

 

 

 

ちなみに今回最も印象的だったのは、「地元の友達の結婚式に、こっちでできた彼女同伴で参列したら、参列者に私服でキャップかぶっている奴がいるし、黒ネクタイ締めてる奴なんかもいて、本当にびっくりした。結婚するとしても、式は地元で挙げない」という【代表取締役】の話だ。【坊っちゃん】なら当然のように馬鹿にするだろう。僕もFacebook経由でInstagramをチェックし、あらゆるハッシュタグを肴に酒を飲みたい。「友達の彼女」問題についても議論を進めたいし、昼に集まって夜に解散したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅鑑賞映画(2017年12月編)

 

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

ここ最近はどの映画を観ても楽しいとか心浮き立つ感動を覚えなくなってしまったので、Netflixで「殺し屋」「ヒットマン」と検索して出てきた映画を中心に観ることにしました。好きだからです。

 

 

 

 

『その女諜報員 アレックス』(12/2)

f:id:sakabar:20171231141119p:plain

Netflixで鑑賞。とんでもないスーツを着ての強盗シーンなど、ぐっとくる要素を散りばめつつ思いの外弾けない。でもそんな不満をチャラにする……ほどではないけどまあ良いかと思わせるほどにオルガ・キュリレンコが魅力的。ピエール・ルメートルのミステリ小説『その女アレックス』とは無関係。

 

 

 

ヒットマン レクイエム』 (12/4)

f:id:sakabar:20171231141329p:plain

Netflixで鑑賞。ティム・ロス演じる殺し屋の、請負人としての側面を強く描いたキャラクターが良い。主役がこれまた本物のバカにしか見えないんだけど、演じるジャック・オコンネルは『ベルファスト71』では真面目な役を演じていたのでさすがだなと思いました。ティム・ロスが見る幻影シーンがじわじわ沁みてくる。

 

 

 

『ある殺し屋 Killer Frank』(12/5)

f:id:sakabar:20171231141510p:plain

Netflixで鑑賞。年老いた殺し屋が偶然声をかけられた女性の後を追って文章講座に通い、自らの人生を言葉a.k.a.物語にすることで見つめ直す話。ときおり差し込まれる抑揚の効いたゴアシーンなどが味わい深いハードボイルドな映画。幼少期に自分を虐待していたペドファイル養護施設長が脳内に居座り続け、語り部として映画の要所要所で現れる演出も面白い。

 

 

 

『ザ・リディーマー』(12/7)

f:id:sakabar:20171231142411p:plain

Netflixで鑑賞。得意技である回し蹴りを、後半ではかませ技として使うなどアクション監督としての演出に感動しました。殺しを行う前には必ずロシアンルーレットをするというキャラクター、あんまりだと思うほど悲しすぎる過去など、殺し屋モノとしてもなかなか。因縁の敵とのラストバトルは『酔拳』のラストバトルっぽくてよかった。長いところとか。

 

 

 

SING/シング』(12/10)

f:id:sakabar:20171231143904p:plain

Amazonプライムビデオで鑑賞。すごく面白い!映画館で観たかった。次は吹き替え版も観ようと思います。

 

 

 

『インサイダーズ/内部者たち』(12/11)

f:id:sakabar:20171231142639p:plain

最高!会合での勃起ペニスゴルフなど、悪徳権力者の「悪」演出 が本当に悪くていい。人の体を容易に切断させる「揉め事処理担当」の男がメガネを掛けたサラリーマン風で、しかも婚約指輪をつけているという点がたまらなく嫌で良かったです。

 

 

 

 フレディのワイセツな関係』(12/12)

f:id:sakabar:20180103193914j:image

Netflixで鑑賞。どうかしている。でもこの映画を観て浄化されるような抜けの良さを覚えた僕は、そんな自分の心身状態が少し不安になりました。こんなにデタラメでエネルギーと希望にあふれた映画があったのか。最高でした。

 

 

 

 

『スウィート・ホーム』(12/14)

f:id:sakabar:20171231142929p:plain

Netflixで鑑賞。アパートの立ち退き強制部隊vs空き部屋をヤリ部屋として使っていたカップルの攻防。後半に出てくる後処理担当の殺人鬼の登場から物語がさらに加速していく点も楽しい。とても楽しかったです。

 

 

 

『T2 トレインスポッティング』(12/14)

レンタルBlu-rayで鑑賞。他人事とは思えないシリーズになってしまいました。 詳しくは今年のベストのほうで書いています。

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

 

『ガーディアン』(12/18)

f:id:sakabar:20171231143310p:plain

Netflixで鑑賞。ティル・シュヴァイガー監督脚本主演のドイツ版『燃える男』 のような話。ヨーロッパ圏の銃器は多弾数だし見た目もかっこいいし、それらの使用過程を丹念に撮っていて満足。車を盾にする際はちゃんとタイヤのところに隠れていたし、弾着効果もリッチ。車イスに乗った元同僚が出てくるが、彼のする車イスギャグが面白くて、胸にジーンときました。ただこの内容で二時間超えはちょっと長い。

 

 

 

『パージ/大統領令』(12/21)

f:id:sakabar:20171231144349p:plain

Amazonプライムビデオで鑑賞。ホームカミングのノリでパージに参加するクソ生意気女子高生軍団が最高。 更にいいのが、そんなナイスキャラにも容赦ない展開を用意するところ。生真面目な倫理観が通底しているところがこのシリーズの特徴で、安心できる一方、物足りなく思う人もいそう。それにしてもダガーナイフを構えるフランク・グリロのかっこよさ。この人のルックや所作がこの映画を支えている気もしてくるくらい好き。

 

 

 

『ウォー・ドッグス』(12/22)

f:id:sakabar:20171231140808p:plain

Netflixで鑑賞。ダチと悪いビジネスで稼ぐ話が妙に沁みる生活を自分は送っているんだなあと思わされた一本。 アナ・デ・アルマスは本当にかわいい。パンパンすぎるジョナ・ヒルも、ケント・デリカットみたいなブラッドリー・クーパーもいい。マイルズ・テラーのツラはいつまでたってもムカつく。

 

 

 

『ブライト』(12/24)

f:id:sakabar:20171231143716p:plain

 Netflixで鑑賞。ギャング描写になると本領発揮なデビッド・エアー監督。オジマンディアス感溢れるエルフ族とストリートコップスの激突は構図としてもう楽しい。ガススタンドを滅茶苦茶にするアクションシーンが90年代っぽくて最高でした。

 

 

 

 『七人の侍』(12/31)

f:id:sakabar:20171231145047p:plain

BSプレミアムで鑑賞。面白い!!!今更ながら『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』におけるマックスが武器将軍から大量の銃器を奪って帰ってくるアクション省略シーンの元ネタがわかりました。みんないいけど久蔵が一番好き。ラストの寂寥感と、土饅頭に痺れる。

 

 

 

『用心棒』(12/31)

f:id:sakabar:20171231172924p:plain

BSプレミアムで鑑賞。 三船敏郎の声がたまらない。仲代達矢は、あの大きな目の怪しさが悪役として光っている。

 

 

 

以上、15本!

 

 

ということで2017年の自宅鑑賞映画の総本数は

 

 141本!

 

2018年はアウトプットも頑張ります!

それではみなさん良いお年を!