MidnightInvincibleChildren

反復の中で光る

 

歌詞の一番と二番などで「大まかな言い回しは同じだが、一箇所なにかが変わっている」みたいなところに出会うとちょっと嬉しい。例えばくるりの『五月の海』という曲があって大好きなのだが、以下のような箇所がある。

 

1番
沈む夕日と一番星が 出会うように地図のはじっこで


2番
沈む夕日と一番星が 出会うように地図の真ん中で

 

(作詞作曲:岸田繁


はじっこが真ん中に変わったことで、なにかが進展したんだな、と思う。何かが進展したということで、終わりの気配がぐっと濃くなる。その瞬間がたまらない。この感覚を最初に味わった曲ってなんだろう?と考えたときに、浮かんできたのが『どんな色がすき』という曲だ。『おかあさんといっしょ』でよく流れていた。この曲は、以下のような変化を見せる。

 

一番先になくなるよ◯◯(特定の色)のクレヨン

 

みんないっしょになくなるよ ぜんぶのクレヨン

 

(作詞作曲:坂田修)

 

終わりの気配がぐっと濃くなるどころか、いまにも拍手が聴こえてきそうだ。

 

安堂ホセの『迷彩色の男』を読んだ。ほぼ一~二文ごとに改行される、詩のような文体。そのリズムを自分なりに掴むまでに、もしくはそのまま受け入れるまでにけっこう時間がかかり、思いの外ページが進まない。しかしこのリズムだからこそ浮かんでくるイメージというものもある。その場所、環境、空気。さながら迷彩色文体(シャッ!!!)。


Amazonプライムで『ニューオーダー』を観た。あの『父の秘密』を撮ったミシェル・フランコ監督作。貧困層のデモを発端に、ある資産家令嬢が「新たな秩序」の中を地獄めぐりするさまを俯瞰的に描いた作品。正視に耐えない。かなり喰らってしまった。実際にメキシコでは警察や軍隊組織による凄惨な事件がまあまあ起こっているらしい。引いてはいまもガザで行われている蛮行にも通じる、「暴力のシステム」を描いているとも思う。とまあこれだけのスケールの話なのに80分代に収めているのも恐ろしい。

 

雨さんの漫画『お前を燃やす炎の名前』を読んだ。コピー本交換会をきっかけにオカワダアキナさんにお送りいただいたなかの一冊。短編漫画が4つ収録されている。全部良かった!読んでて自分ももっとたくさん書きて~と思えた。脳の自分じゃなかなかいじれない場所に届いた感じがあって、感謝もしてます。ありがとうございます。

 

染よだかさんの『漂白』も読んだ。手に入れたきっかけは上記と同じなのですが、なめらかな口語体で語られる、なめらかじゃないかもしれない世界の話。よかった。例によって書くぞという気分になって、いまも悪戦苦闘中。

 

両目洞窟人間さんの『両目猫舌通信Vol.4』読んだ。ネット発表時点でぜんぶ読んでいたけど、これとこれとこれが一冊にまとめられている、その「編集」に意味を感じて楽しい。全部好きだが、両目さんが2017年に書いたという『ダンボール箱のさとこさん』が染みた。ちなみに自分が2017年ごろに書いたものはいま読むと全然読めたもんじゃないものばかりなので、両目さんは“体幹”も強いなと思った。そんな体幹が特に顕著な『ねこのまち子さん、市民税を払いに行く!!』はやはり楽しくてしょうがない。まえがき・あとがきは、何回も読んだ。これからも読むと思う。舞城王太郎愛媛川十三名義で書いた評論?かなにかで、文学も音楽のように「文楽」とするべきだったと書いていたが、両目さんもその感覚の人だなと思う。僕もそんなふうにいろんなものをつくっていきたい。

 

穂村弘の『短歌のガチャポン』を読んでいる。短歌は好きだが、この本は歌の隣に選出者である穂村弘の言葉も添えてある。なので、ああ、そうも読めるんだなという点も加わってより楽しい。まだまだ補助が必要な気がするので、こういうつくりの歌集からたくさん読んで筋肉増やしたいと思う。PEACE。

 

家事をするときに、有名なクラシック曲を集めたプレイリストを流すのにハマっている。『主よ、人の望みの喜びよ』とか『威風堂々』とか『くるみ割り人形』とか、自然と所作も変わるような。ものも丁寧に扱う。

 

『スキップとローファー』10巻読んだ。メインの登場人物の掘り下げも素晴らしいが、あ、そっちも?というキャラクターを掘り下げる回でその強度はグングン増す。いつも僕の考えたことがない、考えないようにしていたかもしれない気持ちを教えてくれてありがとう。

 

あとがきには衝撃を受けた。作者である高松美咲さんの祖父母について。主人公の地元でもある石川県能登の復興について。政府が絶望を給付してんのか?レベルのことがちょっとあまりに多すぎる。自分の生活も全然ずっとかなりやばいままだけれど、僕はみんなで幸せになりたい。できることをするために、できることを考える。鬱陶しいでしょうか? でもノーカントリーフォーマザーファッカーでいく。

 

新年度も世界を変えていきましょうね。運命の不意をついてやりましょう。