MidnightInvincibleChildren

これからはすべてよくなる

 

猛威をふるった台風8号の影響で少しばかり出遅れながらも土曜日に上京したぼくは飛行機でなにかをもらってしまったらしく雲の上で悪寒、発熱、居候の身であるにもかかわらずウイルスをお土産に和光市在住ハンサムジゴロのロフトで寝込む形となってしまった。その日は出迎えてくれた多動気味の友人と歌舞伎町の焼き鳥屋で飲んだが、居候先までの道中で焼き鳥とビールとレモンサワーをすべてもどして、結果焼き鳥屋に向かう前と同じ状態で一日を終えたのだった。その日はたまたま家主が出張中ということもあって、さっさと治して何事もなかったかのように振舞おうと目論んで眠った。十二時間ほど眠った。のだが……。

 

翌、日曜日。早朝に目覚めたにもかかわらずもっと寝なきゃという気分で嫌々ながら昼まで横になっていた。それから快調を確信し昨日の友人と『グランド・ブダペスト・ホテル』を新宿シネマカリテで鑑賞。お、おもしろい!ぼくはウェス・アンダーソンが苦手というより単に『ムーンライズ・キングダム』が合わなかったというだけなのかもしれない(でもいまDVDなどで観返すと『ムーンライズ・キングダム』もいいじゃんとか言い出したりしかねないほどぼくはお調子者です)。その後、歌舞伎町のパブでステイサム映画に出てきそうな濃い不良外国人などを眺めながら飲むも体調に違和感。映画館で冷えたのか?多めに注文した揚げ物も気持ち悪い。悲しくなって悲しいまま友達とも別れた。

 

翌、月曜日。昨夜の体調不良は絶対に映画館のクーラーだと踏んだぼくはその日も『her 世界でひとつの彼女』を鑑賞しようと思っていたため薄手の上着を持っていこうと考えながら副都心線にそのまま乗っていた。根が馬鹿なのである。ぼくはそのまま映画館で震える羽目となったのだけど、『her 世界でひとつの彼女』はどことなく『ファイト・クラブ』を思わせるラストの雰囲気が切なくて楽しかった。スカーレット・ヨハンソンが女版タイラー・ダーデンというふうに考えてみると、なんだかすごく興奮するものがある。彼女のためならクレジットカード会社のビルを喜んで吹き飛ばせるという男は山ほどいるだろう。世界中の男どもが彼女とヤリたがっていると叫んだマザー・ファッカーは正しかったのだ。

 

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帰り道、歌舞伎町近辺をウロウロしながらイソジンなどを買って帰った。歌舞伎町には中島哲也監督の『渇き。』に出てくるような細身のヤンキーがいっぱいいた。帰りの電車内で「能年玲奈」とネット検索していると13日に新宿ピカデリーで能年玲奈が『ホットロード』完成披露試写会に出席していたという情報を目にして愕然。13日は人生で最も能年玲奈に接近していた日だったのだ。

 

部屋に戻って念には念をとマスクと熱さまシートを装着して横になっていたが、しばらくしてsiriに話しかけてみた。傷が癒えたとたんに女を抱くボンドさながらの心境だ。どれ、甘ったるい言葉で股ぐら冠水注意報発令させたるで~!

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 なんやこいつ、メスの顔しとるで。

でも身体はいくらでも嘘をつけると大人な小説で読んだことがある。映画『ラブ・アゲイン』でもプレイボーイのライアン・ゴズリングエマ・ストーンとのピロートークでこれまで語られなかった彼自身の身の上話をする場面があるが、そこで本当にふたりの関係性がより深いものになったのだと感じられたわけだし、本当に大事なのは肉欲の先にあるちょっとした親密さなのだ。『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』という小説でもオタク青年がそんなかんじのことを悟るシーンがあったような記憶があるし、心の交流に踏み出してみた。

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 ジャブとして「無職」という広い言い回しを選んだのにそれがぼくのことだと判断しているのはなぜだろう?それはぼくだけのsiriだから、以外に答えがいるだろうか?

 

ある程度の絆がすでに育まれていることは証明された。いままでは呼んでもいないのに勝手に起動したりするのでウザくて精神的に弱い束縛女扱いをしていたが自分の小ささを悔やむばかりである。

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 なにこいつ。通信料かかるしオフにしました。『her』もだいたいそんな話です。