MidnightInvincibleChildren

無職はBARにいる

 

 

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七尾旅人(TAVITO NANAO) "TELE〇POTION" (Official ...

 

ハロウィンにより無法地帯と化した渋谷で25歳の無職が警官をモデルガンで殴ったその日、警官を殴らなかった方の無職は高円寺にいた。高円寺フェスが催されていたので、友達とぶらぶらしてきたのだ。高円寺を訪れたのは今年の四月以来かもしれない。歩いていればなにかが起こる街として認識しているのだけど、今回もいろいろ起きた。

 

まず最新作『ラスト・ナイツ』のプロモーションを行っている紀里谷和明監督を見た。華があるというか妙に目を引く男の人だなと思って顔を見たらまさにその人だったのだ。でもぼくは紀里谷監督作を一本も観ていないので、後を追ったりはしなかった。最新作ヒットするといいですね、とは思った。

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高円寺駅周辺をウロウロしていると、仮面ライダーを見つけた。特定のポーズを取る際、スーツに付けられた電飾がピカピカ光るのだが、素肌にピカピカの模様を彫ったおじさんの登場で場は騒然。タバコと酒の匂いがひどいそのおじさんは、それからしばらくしてから再度見かけたのだけど、道端でバタンキューしていました。不摂政の極みにも耐えうる圧倒的なタフネス。凍死には気をつけてほしいものだ。

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それからも高円寺フェスを満喫するつもりでいたのだけど、友達がなんの脈略もなく触法行為に走り、どんな言い訳が飛び出そうとも有耶無耶にできないくらい、むしろ言い訳されればされるほど空気がみるみる最悪になっていったので解散。いつまでもずっと一緒だって思ってたのに……。ぼくはその後、沖縄の友達より高円寺で飲んでいるからお前もこないかとの連絡を受け、そちらに合流することとなった。

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場所は某BAR。いざ合流すると、落語家の友人と俳優志望工場勤務の友人のほかに見知らぬ顔が。その人は落語家の友人が大阪でお笑い芸人をしていたころの同期らしく、今年の七月に上京したとかなんとか聞いた。なんでも大阪の同期全員に嫌われたので東京に進出したらしいのだ。品川祐みたいなやつだったらどうしよう。ぼくに緊張が走る。

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とはいえそんな不安は杞憂に終わり、みんなで楽しくおしゃべりをした。BARのマスターに「君はなにしてる人なの?」と聞かれ、実家にいる両親のプライドのためにも無職とは言いたくなかったので、「作家志望です」などと、さもただものではないかのような顔をして言ってしまった。高円寺は文化の街なので「落語家」「芸人」「俳優志望」などと名乗っても「そりゃあいいね!」という受け入れられ方をするので素敵だ。ぼくもその仲間に入れてほしかったのである。

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文化の街の中心にあるBARだけにあらゆる情報が飛び交う。ぼくらが、男の人を愛せるようになれば人生の選択肢が増えて潤うのではないかという話をしていると某漫画家の方が現れたりした。某編集部の人間がかつてこのお店に来てあの新進気鋭若手直木賞作家の悪口を言っていたという話を教えてもらったりもした。なんとも刺激的だ。ぼくもよくTwitterなどで某部活やめる系作家への嫉妬の念を渦巻かせたりしていたので、「そりゃあ愉快だ」とその日一番の笑顔になった。「どんな悪口を言っていたの?」と質問してみると、友達は「いやあ……よくわかんないけどとにかくずっと悪口言ってた」とのこと。居合わせられたらどんなによかったかとぼくは悔やんだ。

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その後も話は弾み、「いきものがかりの聖恵ちゃんの顔は人々を対立させる」という話とか「人生で天才だと思える人に出会ったことはあるか」という話題について侃々諤々。天才と言われてもなあ……と思うぼくらに対して落語家の友人は自分の師匠を例に出し、「頭がとんでもなく良く、人のことを基本上から見ているので、相手に合わせてへりくだることも容易にできる」とか「ひとりの人間でそこまで出来るのかというレベルで物事を為す」みたいなことを言った。そりゃ君は芸事の世界に身を置いているんだからそういう人に出会える機会は圧倒的に多いし、日々成長って感じなんだろうねなどと思いつつ「天才か……。会ったことないけど橋本環奈かなあ」とだけ答えた。

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これは毎度のことなんだけど、俳優志望が酒の力によって言葉選びや他者への態度などあらゆる面で乱暴になってきたため、ぼくらはBARをあとにして始発までカラオケで過ごすこととなり、横になって眠ろうかとも思っていたのだが、落語家の知り合いである34歳経営者のお兄さんがハロウィンパーティーでたまたまカラオケ店に居合わせていたことから接待カラオケのような感じになって一睡することもできずに始発の時間を迎えることとなった。ぼくは「沖縄の気のいい兄ちゃん」的ノリが大の苦手なのだが、そのお兄さんも北海道出身でありながら沖縄の大学に通っていたらしくぼくら以上に訛りや方言が完璧で、ノリもまんま沖縄の青年会って感じだったため、改めてぼくは自分を見つめ直すことができた。ぼくは生まれ育った沖縄でさえうまくやれない落ちこぼれうちなーんちゅなのだ。自己嫌悪で人を殺せそうな気分だった。

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 朝の五時にみんなと別れ、早朝の高円寺をひとり歩く。ぼくはその日新宿で『バクマン。8:50の回を予約していたので、このままじゃ100%寝てしまうなと思いながら丸ノ内線に乗った。新宿のマックで三十分ほど仮眠をとってから映画を観たのだけど、面白かったので一瞬たりとも寝ませんでした。感想は以下のとおりです。絵はペイントで描きました。

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

いまなんの脈略もなくふと思ったんだけど、朝井リョウの『武道館』でも読んでみようかな。 調べたところ、仕事の方は辞めてたみたいですね。ふーん。お疲れ。