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いつか夢見たあの仕事/『ゴーストバスターズ』

 

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~あらすじ~

大学で教鞭をとるエリン・ギルバート(クリステン・ウィグはかつて友人と超常現象を研究した本を出版するも、時間の経過と社会の軋轢の中で黒歴史化していき、大学での終身雇用の話にもかげりが出てしまう。そこで共同著者である友人のアビー(メリッサ・マッカーシーに「Amazonでの販売をやめてもらう」ようお願いに行くのだが、アビーは相棒のジリアン・ホルツマン(ケイト・マッキノン)といまだに超常現象に関する研究を進めており、怪奇現象のあった屋敷の調査に赴くことに。同行したエリンは、そこで本物の幽霊を目の当たりにして興奮をカメラにまくし立ててしまうが、その動画がYouTubeアップされ、結果失業。同じくアビー&ホルツマンのコンビも大学を追い出され、仕事のない三人は地下鉄職員のパティ・トーナン(レスリー・ジョーンズ)と面接に来たバカ、ケヴィン(クリス・ヘムスワーズ)を仲間に加え、超常現象を専門に取り扱う会社「ゴーストバスターズ」を設立するのだった。

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前作『ゴーストバスターズ』が1984年の映画らしい。ぼくがそれを観たのも20年ほど前の話で、テレビのゴールデン洋画劇場で放送していたやつを一回っきり。観た直後は興奮のあまりノートを開き、マシュマロマンにビームを放つ棒人間の絵を描いたほどだった。で、今作を鑑賞するにあたり一作目くらい鑑賞しなおすか、Amazonプライムビデオで見放題だし、と思っていたぼくだったのだが

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のシーンで10秒くらい笑ってそのときの気持ちを誰かに伝えたくなったままふらふら外に出てしまったので、続きを観ることもなく、時節柄、情緒的な不安定に悩まされたこともあって、けっきょく冒頭中の冒頭しか確認せずに最新作へと臨むこととなったのだ。やややケッタイな!

 

でもいざ鑑賞してみると続編ではなくリブートだったのだ。やったー!話によればメインキャストを女性にしたことで一部の人間が炎上したらしいし、それをとりまくみっともない有様なんかも情報として事前にバンバン入ってきたこともあってうんざりしていた部分もあったのだけど、映画はそういう空気を意に介さないゴキゲンな内容だったので、ぼくは改めて「映画っていいなあ~」と思ったのだった。 ぼくはクリステン・ウィグの「ズーイー・デシャネルの実家に遊びに行ったら奥から出てきそう」な感じが好きなので今回の主演も嬉しかったし、『ブライズメイズ』以来の共演となるメリッサ・マッカーシーとの掛け合いも楽しい。そもそも同性同士の気の張らないやりとりが好きなぼくは、今回のゴーストバスターズに溢れる大人の放課後感が心地よかった。なによりメンバーの4分の3が職を失ってから物語が動き始める点にも勇気をもらえる。ぼくは映画を観ながら、ゴーストバスターズのイントロを背にしてつなぎを身にまとい、中腰で廊下を進みたい願望を自分の中に見た。そうだ、ぼくは小学生のころ、「ゴーストバスターズ」という職業に憧れを抱いていたのだ。胸が震えた。

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胸が震えたといえばクリス・ヘムズワース演じるケヴィンだ。今年観た映画に出てくる誰よりもバカだった。出てくるだけで劇場がざわついたので、このキャラクターは大勝利を収めたことになるのだろう。『トロピック・サンダー』も彷彿とさせるあのエンディングも最高だ。マッチョでハンサムなケヴィンがあまりにも屈託なく病的な行動に出るので、先述したように同性同士の心地いいやりとりの阻害要因にもなりようがなかった点が素晴らしかった。サックスに耳を当てても「聴いてる」ことにはならないんだぜケヴィン。

 

リブート版『ゴーストバスターズ』はテンポよく進んでくれる。二時間があっという間だった。ゲラゲラ笑って劇場を後にし、一緒に鑑賞した弟とふたりおなじみのテーマ曲をハミングしながら帰った。あのリズムに足を踊らせるぼくらはきっと仲良くなれるはずなのさ。こんな世の中だろうとニヒリズムに甘えず、DMXの『Party Up』を聴きながら踊っていようぜ。ゴーストを狩れ。いますぐに。