神の目覚め
かつて人類史上初であり最強のミュータントが世界を支配した時代があった。最も神に近い存在として君臨する男の名はエン・サバー・ヌールa.k.a.アポカリプス(オスカー・アイザック)。しかし!新しい体に魂を移送する儀式の最中、色々あって長い眠りに入ってしまう。時は過ぎ1983年。カルト集団の儀式によって復活したアポカリプスは、かつての習慣から四人の下僕a.k.a.黙示録の四騎士(フォー・ホースメン)探しの旅へと出ることに。一方カルト集団を追っていたCIAのエージェントことモイラ・マクタガート(ローズ・バーン)は、記憶こそ消されてはいるがミュータント周知のきっかけとなった事件に大きく関わった重要人物。異変を察知したチャールズa.k.a.プロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)はかつてキスをした仲でもあるモイラにコンタクトを取り、アポカリプスのあとを追うのだった。アポカリプスの目的は退廃した現文明のスクラップアンドビルド。そうはさせまい!X-MENを再結成だ!
ということで『X-MEN』シリーズ六作目(スピンオフを除く)にして後期トリロジーの完結編でもあるっぽい『X-MEN:アポカリプス』(ややこしすぎる)。ぼくは2000年公開の『X-MEN』以外はすべて劇場でリアルタイム鑑賞してきた。いろいろ言われている三作目『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』も大好きだったりする。マグニートーが道路の真ん中に立って列をなす車を磁気操作能力で潰しては投げ潰しては投げしていくシーンなんて嫌なことのあった帰り道なんかよく想像する。そう、いまでも。シリーズに対するそんな感じの思いをまとめた過去記事があるのでよければ読んでください。
sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com
さて、今回の『アポカリプス』はどうだったか。ざっくりと振り返っていきたい。
黙示録の四騎士(フォー・ホースメン)
今回は史上最強のミュータントが数千年の眠りから目覚め、テレビを観ることで人類の堕落を知り、この文明を一旦無に帰すべきだと地球規模の大破壊を始める。アポカリプスは様々な能力を保持した万能ミュータントなので、世界の一つや二つ朝飯前と言わんばかりにめちゃくちゃにしていく。そんな彼が「黙示録の四騎士」としてスカウトしたのは以下のミュータントたちだ。
【ストーム/オロロ・モンロー】(アレクサンドラ・シップ)
天候を操るミュータント。突風を起こして気をそらせつつ物を盗む、というせこい盗賊をしていたがアポカリプスに見初められ仲間入り。シリーズを追ってきた人はご存知のとおり前期トリロジーではX-MENの主要メンバーでもあった人。なので予想通りそんなに悪いやつではない。
【サイロック】(オリビア・マン)
日本刀とエネルギーソードであらゆるものを切り裂くミュータント。ミュータント情報屋のもとでボディーガードをしていたところ、アポカリプスにスカウトされた。ちなみに谷間と太ももガッツリな過激コスチュームはアポカリプスがつくったものだ。アポカリプスは偉そうなうえにスケベなのである。最悪だ。
【エンジェル】(ベン・ハーディ)
背中に天使の羽が生えたミュータント。ドイツでミュータント版ジ・アウトサイダーのような地下格闘に参加しては他のミュータントを血祭りにあげていた。ぶっちゃけ羽が生えているだけなので飛行能力以外の利点があまり感じられないが、アポカリプスがなぜか気に入り、羽を鋼鉄製にしてくれる。そのため羽毛をナイフのように飛ばすことが出来るのだが、それでもまだもう一声ほしいところだ。メンバー内に天候を操るやつがいるのも彼をよりいたたまれなくさせる。現実でもたまに見かける「あいつ、大したことないくせに妙に上に気に入られてるよな……」系ミュータントなのかもしれませんね。
【マグニートー/エリック・レーンシャー】(マイケル・ファスベンダー)
磁力を操るミュータント。これまで受けた余りにもひどい仕打ちの数々から人類への底なしの怒りに震えるテロリストでもある。しかし今回は色々あって人間社会に順応し、幸せに生きていこうと努力しているのだが、新たな災厄が彼の安寧をいたずらに乱し、破壊衝動に再び点火させるのであった。そんなタイミングでアポカリプスに声をかけられたもんだからもう大変。もともと最強クラスであるその能力をより高めてもらったことで、その強さはアラレちゃんレベルに。とはいえ誰かの下僕に成り下がるようなタマかよ!辛いのはわかるけど、つけ込まれないで!と、みんなが心配している。
このように実に頼もしい面子を引き連れてなお、アポカリプスはチャールズの能力にも並々ならぬ興味を抱き、接触を図ってくるのであった。こうしちゃいられねえ。世界崩壊を防ぐために立ち向かうは以下のメンバーだ!
新生X-MEN
【ミスティーク/レイヴン】(ジェニファー・ローレンス)
驚異的な身体能力と変身能力を持ったミュータント。 前作での活躍からミュータントたちの間で英雄視されている。身を潜めながら世界中の悩めるミュータントを救済すべく動き回っているが、アポカリプスの復活に伴い、かつての家族であるチャールズの元を訪れるのだった。
【ビースト/ハンク・マッコイ】(ニコラス・ホルト)
天才的な頭脳と野獣のような凶暴性を併せ持つミュータント。普段は自分で開発した薬を用いて人間の姿を維持している。チャールズと一緒に「恵まれし子らの学園」に暮らしていたが、アポカリスに連れ去られたチャールズ奪還と世界崩壊を止めるため、ミスティークとともに頼れる先輩としてみんなをまとめる。
【サイクロップス/スコット・サマーズ】(タイ・シェリダン)
目から破壊光線が出続けるミュータント。そのため目隠しをして生活していたが、兄であり初代X-MENメンバーでもあったハボック(ルーカス・ティル)に連れられ「恵まれし子らの学園」を訪れる。そこで偶然ぶつかったジーンにドキドキ。ビーストの開発した光線を抑えるサングラスを装着することで、日常生活を快適におくれるようになった。
【ジーン・グレイ】(ソフィー・ターナー)
テレパシーとテレキネシス(念力)が使えるミュータント。しかしその能力があまりに強大なため、ときおり制御不能になってしまう。 シリーズを追ってきた人からすれば、「でもこいつがいるのなら……」そう思わずにはいられないはずだろう。とはいえ相手は「神」。油断はできまい。
【ナイトクローラー/カート・ワグナー】(コディ・スミット=マクフィー)
「見える場所」と「行ったことのある近場」へなら瞬間移動できるミュータント。青い肌と尻尾を持っている。ドイツのサーカス団にいたが拉致され地下格闘試合に参加させられていたところをミスティークに助けてもらう。人懐っこくお茶目な性格をしている。戦闘は得意じゃないが、触れた人も一緒に瞬間移動させることができるのでかなり助かる。
【クイックシルバー/ピーター・マキシモフ】(エバン・ピーターズ)
めちゃくちゃ速いミュータント。あまりにも速すぎてあらゆる雑念にも追いつかれないためか、あっけらかんとした性格をしている。高速での大仕事の前になるとお気に入りの曲を再生することがある。フォー・ホースメンのメンバーの中に思い入れのある人物がいるようで、プロフェッサーXに会うため「恵まれし子らの学園」を尋ねてくる。今回もとびきりアガる活躍シーンが用意されていて、超最高!
かくしてアポカリプス&フォー・ホースメンvs新生X-MENの世界をかけた戦いがいま始まるのであった……。
アポカリプスとは……
「X-MEN史上最強の敵……それは神」といったふうに宣伝されている強敵アポカリプスだが、彼は一体なにを象徴とする存在なのだろう?数千年も寝ていたくせに、目覚めるやいなや「ひどい時代だ」と順応を拒否。その気持ちだってわからいじゃないが、とはいえもうちょっと人の話を聴いてくれ、と思ってしまう。なぜならぼくは、いきなりスマホを向けられても笑顔で応えるアスガルドの神、マイティ・ソーをすでに知っているんだし……。
愛される神様の代表例。神対応とはまさにこのことである。
今作『X-MEN:アポカリプス』は、傲慢な態度で「まったく今どきのやつは……」とのたまう目上の人に対し、新たな若い世代が立ち向かう話となっている。初めこそ高圧的な態度、インパクトのある顔面や能力に気圧されていたX-MENだったが、「いい加減にしろクソジジイ!紀元前に帰れ!」と次々と己の持つ能力をフル活用して牙を剥く様には大変胸を打たれた。よくみりゃ背も低いし、大したことねえよこんなやつ。顔がちょっと怖くて偉そうなだけじゃん。ぼくたちはミュータントではないので、モノを操ったり得体の知れないエネルギーを放出したり空を飛んだりはできない。しかし、空気に飲まれることなく、相手と自分の力量を客観的に見極める能力は、頑張れば身につけることができるのではないだろうか?ぼくらはやれる。一人じゃ難しくとも、力を合わせ、頭を使い、強大な敵を打ち倒すことができる。なぜならぼくらは、恵まれし子なのだから。
こ、こわい……!
でも
時代遅れのジジイを止めるのだ。
今すぐに。