ジョン・ロンソンというジャーナリストの書いた『サイコパスを探せ!』(原題:『THE PSYCHOPATH TEST』)という本を先月読んだ。
手はこんでいるけど意味がまったくわからない謎の書がアメリカ各地の研究者に送りつけられるという珍事件を調査していたジョン・ロンソンが、世の中に無数といるらしい「サイコパス」に興味を抱いて調査を開始するという内容のノンフィクション。「サイコパス」の診断項目を参考にしてアメリカ中のサイコパスっぽい人たちにインタビューをしまくるといった内容。そのうち精神医学界の闇のようなものが垣間見えてくるといった展開も興味深いけど、実際に著者が対面するサイコパスっぽい人々の言動が面白かった。サイコパスの診断項目を「リーダーの要素」として捉え、生き生きとYesを連発する様は圧巻。圧巻とか言ってるけど本当にこういうちょっと話の根幹部分が共有できていないと感じる人というのは結構いて、大学時代の先輩にも二人ほどそれらしき人がいたのを覚えている。
突然ではあるが、ここでサイコパスが活躍するおすすめ映画を大量の商品リンクとともに紹介しようと思う。
〇『冷たい熱帯魚』
ボディを透明にしてお金を稼ぐひょうきんなサイコパスおじさんが大暴れする実話ベースの物語。死体解体シーンの凄惨さとでんでん演じるあまりにも愉快なキャラクターが話題に。
〇『黒い家』
保険金でがっぽがっぽ儲けるサイコパスおばさんと、その闇に飲み込まれる保険屋さんの話。闇に蠢くバイブは名シーン。「乳しゃぶれ~!」を真似した淑女も多いはず。大竹しのぶの恐ろしさが推察できるドキュメンタリーのような味わいも(あの明石家さんまさえ慄くのも納得)。
〇『悪の教典』
みんなのイメージするサイコパス像を露骨に展開させた大殺戮絵巻。伊藤英明が鮫のように真っ黒な目で猟銃を振り回す様は清々しさすら覚える。エンディングでかかるEXILEも軽薄で素晴らしい。
〇『ノーカントリー』
麻薬組織の金を持ち逃げした主人公が殺し屋に追われて逃げまくる映画。最強無敵である殺し屋シガーの喜怒哀楽の乏しさ、共感力の欠如、判断の異常な素早さなどは直球でサイコパス。ただ、損得すら超越したその行動にはもはや神格化したくなるような高尚さすら感じる。顔も怖い。
「利益のためならなんでもする」おじさんがキリスト教原理主義と衝突する傑作。「おまえのミルクセーキを長いストローでちゅーちゅー吸ってやるぜ!」という名演説をぜひとも真似したくなる一品。
〇『ハウス・オブ・カード 野望の階段』
フィンチャー制作のドラマ。大統領にのし上がるためになんでもする主人公は完全にサイコパス。社会における成功者にもサイコパスは大勢いるとはよく言うけど、このドラマにおけるケヴィン・スペイシーを見ているとどこか納得してしまうのであった。
今日はこの辺でとどめておこうと思うけど、まだまだサイコパスが活躍する創作物は山ほどあり、それらはサイコパスではない側にとってはとても面白く映るものである。ああ、ぼくもサイコパスになりたい。小さいことでいちいち悩むこともなく、相手の喜びそうなことだけを学び、提供し、掌握し、利用して、邪魔になったらボディを透明にしたい。夜眠れなくなることもなく、将来を悲観することもなく、堂々と胸を張り、勝つためには容赦をせず、罪悪感も持たず、飄々としていたい。
でも、そんなやつにくれてやる愛などないのだ。