ぼくは沖縄にあるサトウキビと芋ばかりの村で生まれ育った生粋の田舎者なので、小さい頃からジャスコに行くだけで高揚したし、オタクは気持ち悪いと思っていたし、世界がけっこう広いということを理屈以上に認識したことがあまりなかった。考えるだけ途方も無くなるので、考えないようにしていたのかもしれない。その後、北海道にある大学に進学し、思っていた以上に世界は広いということの片鱗を体感したぼくは、いろいろあって今現在田舎者を心の底から憎んでいる。ここでいう田舎者とは、かつての(そしてその延長線上である現在の)ぼくのような人間のことである。世界の広さから目をそらし、煮詰められた価値観を疑うより先に倣っているすべての人間への怒りで、腕立て伏せを日課にすることができた。客観視点を排することに躍起になるやつらには、ぜひとも自らの醜悪な姿を自覚して、陰気で内向的で毎朝発作的な不安に苛まれるぼくのような生き物に成り下がってほしい。ということで「悪しき田舎イズム」に対して冷ややかな視線を投げつける人々だって大勢いるということを再認識して精神衛生を保つためには、そういう創作物に多く触れるほかない。触れるほかないってこともないけど、おおっぴらに田舎の文句を言うよりは、物語に落とし込みその愚かしさ、腹立たしさを浮かび上がらせた作品の力を借りることで「ほらみろ!」と騒いだほうが粋だ。フィクションの良さはそういうところにある。今回は、ぼくの貧困な引き出しから頑張って五本を選出してみたので、一緒に性格の悪い田舎者に憤ろう。
いま現在、いわゆる概念としての「田舎」にお住まいで、ありとあらゆる閉塞感にもがき苦しむ人がいたとして、その人たちがここで挙げた映画に興味を持っていただけたら幸いに思う。どれも「暴力による突破」がメインで描かれてはいるが、そこから何らかのエネルギーを受け取って、空を覆う厚い膜に怒髪で風穴を空けてほしい。みんながみんな「それでいい」だなんて思っていないことを忘れないでほしい。世界はそんなに狭くないのだということを何度も思い出してほしい。無力な自分が嫌になるが、なによりお金があればなんでも解決できるので、宝くじとか買ってみてほしい。本当に勝手ながら、どうか、あきらめないでほしい。
ぼくが心からそう願うこの瞬間も、田舎者はお茶をすすりながら陰口を叩き、閉じた世界で邪悪な宇宙を創造しているのである。
ふざけやがって。