MidnightInvincibleChildren

短編『愛のしるし』

※下記はコンビニプリント用ZINE『Midnight Invincible Children Vol.Ⅱ』(2022.12.29~2023.01.05)に収録されたものです

 

 

 

 

 

 駐車場に停まった二台のワンボックスカーから男たちが降りてきて一斉に部屋に押し入ってきたのでかねてから用意していた道具と二日前に現れた二人組の散弾銃を使ってその八人を殺し八人分の所持金や持ち物をワンボックスカーに詰め込んでから部屋に火を放つ。

 

 壁の穴も押入れの寝具もすべては汚れてしまったのでどうしようもない。

 

 それからおれは四時間かけて都内まで移動する。都心にあるマンションの最上階に向かう。おれから送られてきた動画を観て守りを固めていた連中の身体を散弾銃で吹き飛ばし手斧で潰し骨を踏み抜く。全部で十三人。

 

 と一人。

 

 ベッドに横たわってこちらを見ているのはおれが四肢と声を奪った男。この男がおれに対していつまでもできずにいることを見せようと思った。

 

 血で汚れた上着が重たかったので脱ぎ捨てる。手と顔を洗い新しい服に着替える。またしばらくゆっくりしたいと考えながらふと思うのはいますぐあの押し入れの中に戻れたらいいなということだ。最後の発作からはしばらく経っていたがそれが安心につながることはもう二度とない。

 

 一度覚えた感情はついてまわるらしい。

 

 誰のものかも思い出せない携帯を取り出し暗記した番号にかける。おれの話を聞いてくれたのはあなただけでした。一言でもお礼を伝えたいがおれからの電話にはもう出てくれないようなのでどうしようもない。

 

 床に並べたふたつの眼球を踏み潰しおれは部屋をあとにした。