■ONLY GOD FORGIVES
『オンリー・ゴッド』を観た。
ニコラス・ウィンディング・レフン監督の前作『ドライヴ』が2012年劇場鑑賞映画のベスト1だった僕は、どれだけ公開が遅れようとも劇場に駆けつけてデカいスクリーンとデカい音響で堪能してやるんだと強い意志を持ちこの日を待ちました……
※ちなみに『ドライヴ』とはこういう映画です
■Wanna fight?(ネタバレあり)
オッス、おれジュリアン。
アメリカ人なんだけど兄ちゃんと一緒にバンコクでキックボクシングのジムを経営しながらドラッグとか売ってます。まあ色々あってセックスとかできないんだけど目の前でオナニーしてくれる娼婦もいるしぼちぼちやっていけてるよ。
ただ困ったことに兄ちゃんがロリコンでさ、十六歳の売春婦レイプして殺しちゃって、その父親に報復されて死んじまったんだ。
話によるとその場にはチャンとかいう警察のおっさんなんかもいたみたいだけどまあそれはおいといて、おれ思うんだよね。兄ちゃんの自業自得だよね。昔っから粗暴でやりすぎちゃうところあったから、ほら、一応おれも復讐してやろうとは思ったんだけどね、結局兄ちゃんが殺した女の子の親父さん、許すことにしたよ。なんだか片腕斬られてたし、他に三人の娘さんもいるみたいでさ、苦労してるんだよね。
その親父さんの腕の件なんだけど、どうも例のチャンとかいうおっさんにやられたみたいなんだよね。なんなんだろうそのおっさん。親父さんに復讐させたのもそのおっさんらしいのに「そもそも売春を放っておく方も悪いし復讐とはいえ殺すのはやりすぎ」ってことでその罰らしい。とんでもねえおっさんもいたもんだよね。
それでさ、兄ちゃん死んだじゃん?そしたらアメリカからオフクロ来ちゃってさ、おれにいうんだよ。「ちゃんと復讐しろ」って。兄ちゃんの自業自得だよって説明しても「なにか理由があったんだ」とかいってさ、オフクロ、兄ちゃんのことに関しちゃ昔からそういうとこあって全然聞く耳もたねえの。困ったな。
でも久しぶりに会ったわけだし食事しようってことになって彼女ってことにしていつもの女も連れてったんだけどね、オフクロ、兄ちゃんのことで頭いっぱいでさ、復讐もまともにできないおれのことボロクソにいうわけ、「ペニスもあの子に負けてた」とかさ。女の前でそれ、いわなくてもいいじゃん?で、なんだか気がついたらオフクロってば、おれの仲間に殺しの依頼バンバンしててさ、街も騒がしくなってるわけ。でもあのチャンっておっさんの殺しはぜんぜんうまくいってないらしくてね、しょうがないからもうおれ行くことにしたんだよ、オフクロにちょっとでもいいとこ見せときたいし。
ってことでおれ、意を決してカラオケ歌ってたあのオッサンにいうわけよ。
「おれとやるかい?」ってね。
がんばるぞ。
■すべてのマザコンに捧ぐ
ライアン・ゴズリング演じるジュリアンの苦悩を思うと涙が止まらない。
母に溺愛されていた兄への劣等感に苦しみ
鬱屈した暴力衝動と破滅願望を膨れ上がらせ
チャンという“神”を夢想し、やがては挑む
彼は娼婦のオナニーを鑑賞する際、両腕を椅子の肘置きに結んで固定する
性的不能者らしいけど、なぜ自らの手を封じるのか
後半で語られるがジュリアンには自分の父を素手で殺したという過去がある
父殺しといえば神話の世界でよく出るテーマだし
この流れでいえばエディプスコンプレックスの語源となったオイディプースも気になってくるよね
でもぼくは全然詳しくないからWikipediaみるか東大の人に聞いてね
あの強烈な母親が劇中で息子たちのペニスの大きさについて言及する場面に関してはこの親子が近親相姦的関係にあることが示唆されるし
ジュリアンが性的不能なことに関してもそれが関係しているのではないですかね
どうですかね
そんな彼が迎える“神”との対峙
そしてその先にある罰と赦し
なんだかもうお疲れ様って感じでした
よかったねジュリアン
バーでおっさんたちに絡むシーン最高だったぜ