拳大のアダマンチウム/『LOGAN/ローガン』

 

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『ローガン』を観た。
 
メキシコ国境沿いのざらついた風景の中、ローガンはリムジンの運転手として働いている。アルツハイマーが進行するプロフェッサーXとともに余生を海上で過ごすべく、船を買う資金を稼いでいるのだ。そんな彼は片脚を重そうに引きずり、GTAチンピラにはたこ殴りにされる始末。ウルヴァリンと呼ばれていたころの猛々しさは感じられない。
月日は過ぎ行く。彼の再生能力は衰え、体内に仕込まれたアダマンチウムによって身体は蝕まれていた。それでもひとたび憤怒に至れば、鋭利な爪でいとも容易く人体を切り裂いていく。どれだけ歳をとろうとも、その生き方からは逃れられない。
 
今作は2029年という舞台設定にもかかわらず、発展した未来都市などは描かれない。乾いた風に舞う砂塵は暴力の粒子のようだ。この世界に対する深い絶望が少しずつ肺に蓄積していくような緩慢な死の気配に満ちている。
 
そんな世界を北に向かって突き進む彼らの逃亡劇は血にまみれている。死屍累々を築きながら、そこに勝者も敗者もいない。この殺伐とした徒労感、どこかで味わったことがあるなと思った。スタローンの『ランボー/最後の戦場』だ。
 
 
劇中には『X-MEN』のコミックが登場する。そこに描かれている物語を信じて行動するローラに、これはすべて絵空事だとローガンは吐き捨てる。彼はそのあまりにも長い人生の中で大勢の死に関わってきた。そうはいかない現実を嫌というほど知っている。
 
とはいえ今作は、それでも物語を信じ肯定する。当然のように残酷なこの世界で、指標となりうるものとして「物語」を据えている。例えそれが、視界の端にかすむ程度のささやかな希望であろうとも。
一方でこちらが食らうダメージもかなりでかいので、観終わって一週間ほど経ついまでも、僕は胸の奥に拳大のアダマンチウムをぶちこまれたような気持ちが続いている。R指定路線に軌道を変えた『X-MEN』シリーズで言えば去年の『デッドプール』も大好きだったが、まさかこうもベクトルの違う映画を叩きつけられるとは思ってもみなかった。『エクスペンダブルズ3』のアントニオ・バンデラスみたいに、寄る辺なき逃避行の協力者としてデップーが出てきてくれないかなと願ってしまったほどだ。寂寥感が強すぎる。
 
そのくせ僕はいますぐにでも『ローガン』を再鑑賞したい。劇場に行けば、いくらそこに映る姿がいたたまれないものであろうともローガンやプロフェッサーXに会える。ローラの力強い視線とそれが向く先を観ることができる。傷も癒えないうちから、もう一度、あともう一度と劇場に足を運ぼうと思う。ローガンだってそうしていたし。
 
 
P.S. ヒュー・ジャックマン、17年間お疲れ様でした!
 
 
 
 
 

 

 
 

2年前に書いた『X-MEN』シリーズ(F&Pまで)の感想です ↓ 

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X-MEN:アポカリプス』の感想です ↓

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