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「100%元気」という日は二度とこないのでしょうか

 


Netflixで『殺人者のパラドックス』観た。全8話。

結構舐めてたところがあったが、2~3話あたりで興奮した。バイト帰り、突然暴力をふるわれたことから反射的に男を殺してしまった大学生のイ・タン(演じるは『パラサイト』のチェ・ウシク)。家に帰って鬱々と怯えていると、自分が殺した男が数年前に起こった凶悪な殺人事件の容疑者だったことがニュースで判明。事件当日も別件の殺人を犯したあとだったということまでわかり、あらゆる偶然が味方したこともあり、犯行がバレずに済む。その後も主人公は罪悪感に苛まれながらあらゆるトラブルに巻き込まれていくのだが、なんの思し召しか、主人公の前に現れるのは凶悪な犯罪者たちであり、またあらゆる偶然で主人公側の痕跡ばかり消えていく。そんな奇妙な物語を、「殺す側」と「追う側」、さらに「殺すし追う側」まで加わって描いていくのが今作。『犯罪都市』2作目で凶悪な男を演じたソン・ソックが、ツーブロック&オールバック&髭面の刑事を演じており、尋常じゃない色気と暴力の気配をまとっている。かなり好き。演者がみんないいのでかなりの推進力となって全8話はあっという間だった。おすすめです。

 

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とは思いつつ、いくつか気になる点も。話そのものというより、映像的な表現についてだ。本作では登場人物の過去を描く際に、若い俳優の顔をディープフェイクで加工している(上記記事)。あまりにも演者へのリスペクトに欠けるし、これはハリウッドでストライキが起こった原因のひとつでもある「AIによるスキル収奪」と同じ根っこな気もする。そういうとこはかなり萎える。ついでにいうと、劇中である刑事が高いところから落下して地面に叩きつけられるまでをフィックスで見せる場面の人の動き、結構変でした。そういうポスプロ面でのノイズが気になります。監督は感想をわりと読むみたいなことをインタビューで語っていたので、たぶん伝わってはいるとは思う。

 

澤村伊智の『ひとんち』読んだ。面白かったけど、長編が好き!掌編集もはやく読みたい。

 

村上龍の『ユーチューバー』読んだ。空虚なセルフパロディ?手遊びでちょちょいと書いたような感触はマジなのか狙ってのことなのか。なんにせよ、人に話すのもなあってレベルの「自分の話」を繰り返し何度もちゃんとした媒体で書き続けられるのは胆力以外の何物でもない、それだけは改めてすごいなと思いました。

 

Netflixドキュメンタリー映画『本当の僕を教えて』を観た。18歳のころに起こしたバイク事故の後遺症で記憶を失ったアレックス。そんな彼が唯一覚えていたのは双子の兄弟マーカスのことのみ。家族の支えのもと、アレックスはを人生を再スタートさせる。月日が経ち、老いた両親も次々と亡くなった。その遺品を整理していたアレックスだったが、そこで一枚の写真を見つける。それはビーチで並ぶ幼い頃の自分とマーカスの姿。ふたりとも一糸まとわぬ状態で、写真の首から上は切り取られているという、とても奇妙なものだった。
本作は視聴に際してかなり注意が必要なドキュメンタリーだ。なぜマーカスは、記憶をなくしたアレックスに嘘の人生を教え続けたのか。それはアレックスを守るためでもあれば、マーカス自身が抱く切実な願いのようにも思えてくる。「実際に起こってしまったこと」があまりにも残酷で、やり場のない怒りがこみ上げてくるが、それでも彼らは語ることを選んでいる。そこにあるのは強烈な怒りにほかならない。

 

Netflixで『こちらあみ子』を観た。原作は今村夏子の同名小説。原作がとにかく凄い強度の作品だと思っているので、映画化にもちろん不安はあった。でも公開時の評判は高かったように感じる。実際、僕は大好き。あみ子に応答したい。

 

このまえ杉田水脈について話していたら、前半ずっと「今田美桜」といってしまっていて、今田美桜に申し訳なくなって、泣きそうになって、ああ僕は今田美桜のことが好きなのかもなあと思った。