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書き下ろし掌篇:『愛のちから』

 

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 学食で「就活、クソキモいよね」って話をしてたら、急に堀田が卒論の題材にできないかなといってある携帯番号を見せてきた。なにそれどういうこと? ていうかあんたいつも説明足りなくない? 周りに察してもらってばっかじゃん? 自分だけずるいと思わないの? というと、あるサイトでの交流を通じて直接電話でやりとりするようになった人の番号らしい。

 

「なにあんたまたエロジジイとごはん行ってんの?」

 

「ちがうちがう。電話だけ。ほんとに話を聞くだけだから。カウンセラーの資格があるって嘘ついたんだけど」

 

「よくそういうことするよね」

 

「ただこの人たぶんだけど、まともな生活してる人じゃないっぽいんだよね」

 

「だめじゃん」

 

「やっぱダメかな」

 

「いや、まあ、うん。まともな生活してないって例えば?」

 

「わかんないけど、元犯罪者とか」

 

「なんでそう思うの」

 

「勘だけど」

 

「元じゃないかもよ」

 

「え~? たしかに。だとしたらやっぱダメか。卒論」

 

 着拒して消せば? といったら、だよね、といって堀田は番号を着拒して消した。昔から自分で決めるのが苦手で、なんでもなし崩し的だから、結局四十過ぎの妻子持ちおっさんと不倫することになんでしょうが! とわたしは思うが、それはそれで堀田の自由だもんな、とも思ってなにもいわない。金をむしり取って、好きなもの買って、いつ死んでも後悔しないようにしようね。ほんと、なにに期待して生きていきゃいいんだ。革命?