MidnightInvincibleChildren

今日も腹を減らして一匹の蜘蛛が……

 

「蜘蛛の巣に付いた雨粒の中に映る草木」の写真

 

先週の土曜日、弟がネトフリ版『ONE PIECE』を観るついでに泊まっていった。

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

翌朝、電子レンジと天井の間にピザMサイズくらいの蜘蛛の巣ができていた。中央には宿主らしき蜘蛛もいた。修羅場を潜ってきたのか、脚が7本だった。昨夜その場所になにもなかったのは確かなので、半日も経たずにこれだけの巣をつくられたわけだ。びっくりした。

 

生活するうえでの動線上だったので、やむを得ず蜘蛛を巣ごとティッシュで包んで玄関の外に移動させた。その後も何度か確認すると、蜘蛛は同じ場所でじっとしていた。なんとなく気になる存在になっていった。

 

そしておととい、その蜘蛛が電気メーターと給湯器の間に新たな巣をつくっているのを見つけた。蜘蛛の脚は六本になっていた。こいつ、生きていたのか。いつもなら一蹴する蜘蛛の巣だが、そのときばかりは指先でちょんとつついて、くすくす笑った。

 

昨日、窓の開け締めするわずかなタイミングを狙ったのか、大きめの蚊が部屋に入り込んでいた。僕は壁に止まったそいつを叩き潰そうと気配を殺すが、ふと思い立って、ティッシュで覆うように捕まえた。それから外に出ると、あの蜘蛛の巣にそっとくっつけた。蜘蛛はしばらくじっとしていたが、振動から巣に生き物がかかったとわかったのか、急にせかせか動き出すともがく蚊に近寄っていった。それから長い六本の脚で器用に挟み込むと、くるくる回転させながら蚊に糸を巻き付けていった。

 

「食べ物を冷蔵庫にしまうみたいなものか?」

 

真っ暗な玄関先で僕がそうつぶやくと、その音だけが秋の夜気にのってひんやり空へと上っていった。

 

今朝、ゴミを出すため外に出ると昨夜の蚊は消えていた。

 

「食べたのか?」

 

もちろん人間が感知できるような返事はなかったが、僕は嬉しくなって「そうだろ!おい!」と叫び、大声で笑った。

 

また今日が始まる。そしてくる。爆弾低気圧が。