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Netflix実写版『ONE PIECE』を観た

 

2023年。Netflixであの『ONE PIECE』が実写化された。全8話。観ました。


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※「『ONE PIECE』の思い出」では自分のことしか書いていません。目次機能で好きなところへ飛べます

 

 

ONE PIECE』の思い出

出会い

僕は小学3年生のときから熱心に漫画を買い集めた。きっかけはTVアニメ化だったと思う。初めて買ったのは11巻で、アーロンパークでの物語が完結する巻だった。もちろん10巻までの流れを把握しているわけではないが、当時は漫画を適当な巻数から購入し、色々を勝手に察して脳内補完するという行為に疑いを持たず乗っかることができていた。小学生だしお金がないなか、祖父母から秘密裏に渡されたお小遣いで巻数を増やしていき、何度も同じ巻を読み、キャラの名前に技名、懸賞金の額、読者からの質問コーナー(SBS!)でのやりとりまで全部を頭に叩き込んだ。絵も大量に模写した。あと、自分でも漫画を描こうとすら思うようになり、実際にB5ノートに描き始めた(『バトル・ブラザーズ』というタイトルの、西部劇の世界に刀を持った男が登場する冒険活劇 *1)。

 

小学4年生のときには、普段遊ばないようなやんちゃな男子たちに混じって『ONE PIECEごっこをした。かっこいいキャラをすべてとられてしまったため、あまっていた「鉄壁のパール」役をもらった。技名をすべて覚えているのは僕だけだったので、まわりのルフィやサンジを演じる男子が喜んでくれて、その日以来「パール」というあだ名で呼ばれるようになった(それは高校卒業時まで続いた)。

 

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あまりにも長い年月続いている作品のため、絶えず熱心に追ってきたというわけではない。思春期の訪れが早かった僕は、まず小学5年生になると『ONE PIECE』は惰性で読む、心までは捧げていない、みたいな態度をとるようになった。13巻での「ゾロvsルフィ」におけるルフィの「ああ 死ね!!」発言*2になんとなく笑って流せない感情を抱き、それが時間をかけて芽吹いたのも原因のひとつだったかもしれない。でも14巻でのMr.3戦は大好き。そんな感じでグワングワンするようになった。

 

 

 

心の揺れ変遷

心の揺れは以下の通り。

 

イーストブルー編】…当時はこの世の“正解”を見つけてしまった、と感じるくらい夢中で読む。シンプルな線でキメ画もかっこいいし、戦うまでの動機づけなどいちいち巧みで大興奮だった。好きな悪役はキャプテン・クロ。悪さの質が異質なので。

 

【グランドライン前半編】…「ウイスキーピーク」での一件で若干気持ちが揺すぶられたが、バロックワークスという謎組織の暗躍に、登場するナンバリングエージェントたちに引き続き夢中。

 

【ドラム島篇】…ワポルを鬼嫌悪する。でもナミが健康になってよかった。チョッパーにはあまり興味なし。

 

【アラバスタ篇】…全体を通してめちゃくちゃ楽しんだが、ゾロが家を持ち上げたシーン*3で何故か冷める。

 

【空島篇】【フォクシー篇】…中学に上がったりしたので、ちょっと読まない時期が続く。でも溜まっていた単行本を一気に買って読むことでまたハマる。

 

【ウォーターセブン篇】【エニエス・ロビー篇】…引き続き読まない時期が続く。単行本で数巻分を一気読みすることでやっぱり楽しいなとなる。

 

【スリラーバーグ篇】…また七武海出てきたぜ、と友だちに言われて単行本で読む。そこまで熱くはならず。

 

【頂上戦争編】…ルーキー勢登場あたりで再燃。レイリーに痺れる。単行本まで待つことができず、ジャンプ本誌を毎週追うようになる。

 

【魚人島篇】…大学での新生活に馴染めず、読まない時期に突入。実家に帰ると弟が単行本を買いだめていてくれたのでそこで一気読み。楽しいけど、このあたりから通しでサラッと読むスタイルになったので詳細は殆ど覚えていない。

 

【パンクハザード篇】【ドレスローザ篇】…読んだのは確か。

 

以降未読。

 

 

 

そんな『ONE PIECE』は2023年現在も連載が続いている。単行本は100巻をこえている。僕が読んでいたのは80巻くらいまでらしい。そんなことはどうでもいい。あの何度も想像していた『ONE PIECE』の実写化がついに実現されたのだ。

 

ウィーアー!

麦わら海賊団のキャスト最高

主要キャスト陣の魅力が、予想していたものを遥かに超えてきてびっくり。

ルフィ役のイニャキ・ゴドイの人懐っこい雰囲気が、ルフィの人たらし説得力を確固たるものに。漫画のルフィを完コピすると大事故になっていたかもしれないところを、絶妙な表現力でやだ味なく見せきっている。

ゾロ役の真剣佑はさすがのアクション。殺陣でいえば『るろうに剣心』実写化で縁を演じているので安心。思えばジャンプ作品の剣の達人を2人も演じているってすごい。『聖闘士星矢』でもあるし、ポケモンカードも強い*4

ナミ役のエミリー・ラッド。オレンジの髪色がコスプレくせ~と心配だったが、表情やリアクションなどで見事ナミを演じきっていた。ミホークに決闘を挑むゾロへのリアクションとか完璧だった。

ウソップ役のジェイコブ・ギブソン。鼻を伸ばさなくても「ウソップ」だと感じさせる陽的な雰囲気。笑顔も素敵なので、場が華やぐ。柄シャツやオーバーオールも憎いほど似合う。なんか全部おしゃれなのだ。

サンジ役のタズ・スカイラー。原作サンジよりも柔和でセクシー、微笑みを絶やさない好青年。サンジといえば蹴り技なのでやっぱテコンドー?と勝手に思っていたが、インスタを見ればマジでテコンドーのトレーニングをしていた*5。かっこいい。


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その他でいうとコビー演じるモーガン・デイヴィス。裏主人公というもう一本の軸としてドラマを引っ張っている功労者。原作では扉絵イラストで語られていた物語が、ドラマ版ではしっかりと描かれる。

 

あと髭の生えたジジイキャラ全員最高。


原作の翻案がエグい

今作は原作の要素をかいつまんでドラマを仕立てる手腕が冴えている。100巻超えした現在だからこそ改めて出せる情報というものも含め、物語が再構成されている。そんな小ネタまで拾ってくるとは、という点もなかなかの数だ。ドラマ中盤、井戸の中でモタモタするゾロのシーンがあって、まあまあダレてしまったのだが、よくよく考えるとゾロと井戸は切っても切れない関係性(剣士なのにw)。原作ファンなら「井の中の蛙」というワードで真っ先にゾロを想像する人も少なくないはずだ。ちなみに原作でのゾロは、該当エピソード時は坂道でモタモタする。それを井戸に変えているのは、明らかに狙ってのことだろう。間違いない。

 

 

吹替版最高

今回の実写化に伴って、アニメ版のキャストがそのまま吹替版にもキャスティングされている。さすがはプロの声優陣、演技まで見事チューニングしているので、観ていて違和感がない。サンジがちゃんと洋画のときの平田広明ボイスで喋り始めたときは痺れた。あとこのタイミングで気づくことではないかもしれないが、ノジコの声優が蘭ねえちゃんでおなじみの山崎和佳奈であることも知った。そういう楽しさもある。


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実写ならではの演出

重要な海賊キャラが登場するたびに、「手配書が風で舞って画面に張り付き、本人がそれを破り捨てる」という演出がある。粋だ。また、主要キャラが技名をむやみに叫ばない、でも叫ぶやつは叫ぶ、の塩梅も良かった。ルフィと対峙する敵キャラがアメコミヴィラン的に映える点も含め、アメコミ映画的な文脈でも楽しめる気がする。

 

 

 

 

わがままもいわせて

そんなこんなでかなり楽しんだ作品。おそらく今後も続くものになるのだろうという思いから、もっと良くなってほしい点、べつにいいけどちょっと残念だった点もいくつか挙げておきたい。

アクション

アクション面だけど、「アクションだけで観客を引っ張れる」レベルにはしてほしかった。実写版るろ剣がそのいい例だと思う。それこそ谷垣健治監督じゃないけど、アクション監督として豊富なアイディアを持っている人を呼んできてほしい。また、ワイヤー使ってても全然いいけど、吹っ飛ぶ最中の敵が重力に逆らってちょっとだけホップアップするのは気になる。また屋内戦が多くて窮屈さを覚えたのも事実。予算の都合も絶対あるとは思うが、こちらが予算のことを考えてあげ過ぎちゃうのもどうかと思うので……。

 

ウソップ演出(※ネタバレ)

ウソップ大好き人間の僕からすると、ウソップの活躍が若干薄味。最強ではないけど、もう逃げたくもないという葛藤。それこそが初期の彼にあふれていた魅力だと思う。実写版では情報を整理する、タイトにまとめることの弊害か、チュウ戦での「死んだふり」からの展開がなかなか駆け足に見えて、「だったら死んだふりしなくてもよかったんじゃ…」のように思わなくもなかった。「一回やり過ごそうとした」けど、そんな自分を許せないからちゃんと向き合う、そのエモーションは今回の実写版ウソップでも強めに感じたかった(あったらあったでくどいと言っている可能性もなきにしもあらず)。

 

オミットされた方々(※ネタバレ)

【ジャンゴ】

まあでもキング・オブ・ポップすぎるもんね。

 

【ガイモン】

寄り道になっちゃうもんね。

 

【はっちゃん(ハチ)】

タコの魚人ということで、メイク+CG処理でコストやばそうだもんね。

 

【鉄壁のパール】

別にいらないもんね。

 

 

 

ROMANCE DAWN

この世にはすでに『ONE PIECE』の実写版が存在している、その事実がなんだかちょっとワクワクさせる。ということでこの調子でいけるところまでいってほしい。シーズン2では海が舞台であることで感じられる縦横無尽さ、伸びやかな表現の拡大を期待します。絶対あると思う。やってください。未来だけ信じている。誰かが笑っても構わない。

 

 

PS.

パンダマンのイースターエッグとか、あるといいですよね。実はもうあるのかも。

 

 

*1:未完

*2:ONE PIECE』13巻より。訪れた島ウイスキーピークにて、文字通り麦わら海賊団の寝首をかこうとしたバロックワークス社員たちを単身で返り討ちにしたゾロに対し、遅れて目覚めたルフィが事態を勘違いしてゾロに襲いかかった際に発したセリフ

*3:Mr.1との戦いより。

*4:

新田真剣佑 正体隠し秋葉原のポケモンカード大会で連覇していた「見事全勝することができました」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

*5:https://www.instagram.com/reel/CwTaHczN68h/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=MzRlODBiNWFlZA==