マツさんの歌集『短歌ばっかり詠んでないで勉強しなさい』を読んだ。
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— マツ(許してください) (@matsurara) 2024年1月24日
「この歌好き いいね」という表紙漫画のセリフが歌集のすみずみまで広がっている。
以下、好きだった短歌をいくつか抜粋。
半額のシールを待っている人の動きにならないように動く
これは僕です。実際は普通に「待っている人の動き」をしていると思いますが、この歌を読んでギクッとした。
その漢字ひらくんですか小説に恋するときの胸の高鳴り
これも僕です。流されていくささやかな感情をすくいとるのが短歌の好きなところです。
昼休み図書室からの窓ごしに世界をぜんぶ所有していた
情景と耳鳴りのような静けさと記憶の中のにおいが同時に広がります。学校の中でも図書室だけは個になれる、世界と繋がれる気がする、そんな場所でした。
中指を夜空にかざす伸びかけの爪と新月かさねるように
これは実演してみて息を呑んだ歌です。その瞬間の孤独は美しい。
睡眠をたっぷりとってお野菜をもりもり食べて飛び降りました
叩きつけるように詠みたい短歌ですね。
好きだって言えないけれど好きだって気付いてほしいときのバイバイ
ねえ聞いてやっぱりなにも聞かないでどっちだよって少しあきれて
かわいい。
知恵の輪がなぜ解けたのかわからないのと似ているね仲直りって
簡単だと思うとこんがらがるし、難しいと思っていると拍子抜けする。いまこの瞬間が嬉しいのは事実だから油断したまま安心して、結局同じことを何度も繰り返してしまう。というのを知恵の輪。知恵の輪ってところが。
悪霊に見えないだってお世辞でも嬉しかったなあのお坊さん
視点でハッとする歌。KIRINJIの『Fugitive』を思い出しました。胸がギュッとなります。
ざっくり挙げてきましたがあくまで一部、この他にもたくさんの素敵な短歌が収められています。改めてタイトルもよく、表紙の子が家族にいわれた情景を想像し、そこからの裏表紙がまたグッとくるのです。
その歌が生まれたときはひとりでも、たとえいまだにただひとりでも。