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書き下ろし短編:『蓬ヶ丘殺人事件』【前編】

創作

 

 この町にあるいくつかの丘のうち、最高でも最低でもないなだらかな高台の上に蓬ヶ丘団地があった。周囲は深い茂みに覆われていて、各階二部屋ずつの四階建て、造りも古い棟が無数に並び建ち、それがちょっとだけ墓石に見えなくもないとぼくが思うのは、四号棟と七号棟にある部屋のどれかに幽霊が出るという噂を聞いたことがあるせいなのかもしれない。
 まあ幽霊はあくまで噂だけど、蓬ヶ丘はろくでもない場所だった。
 蓬ヶ丘団地の五号棟四〇二号室に住んでいた大橋裕太は妻の美代子との間に二人の子をもうけた。女の子と男の子だった。子供は親を選んで生まれてくるみたいなことを言う人もいるけど、だとすれば少なくとも、大橋家の長男である大橋春空くんはこのふたりのもとになんか生まれてくるべきではなかったのだ。父親である大橋裕太は絶望的に頭がパーなくせしてプライドが高く攻撃的だったし、そのバイ菌男とホストクラブで出会った母親の美代子だって不用意な同調だけを頼りに生きてきた人間だったので、瞬く間に旦那の馬鹿がうつってしまった。
 大橋晴空くんには生まれつき軽度の知的障害があったが、ふたりはそのことにずっと気づかなかった。上の子と違って、お利口さんではないなと思っていた。いつしか彼らはそんな晴空くんにまともな食事を与えることをやめるようになり、綺麗な服も着せなくなった。いつまでたってもお漏らしが治らなかった晴空くんはオムツだけを身につけたままの姿で過ごしていたし、泣き声がうるさいからと口にタオルを巻きつけられたりもした。リビングの隅に犬用のケージを起いたふたりは、その中で晴空くんを生活させるようになる。聡明で美人だった長女には、食事はもちろん毎日綺麗な服を着せ、頻繁に外出もさせていたくせに。一方で大橋晴空くんは、そのお姉ちゃんがくれる水やパンを食べて生きながらえていたのだった。両親から与えられる食事の量は、いくら体の小さい幼児とはいえ、生きていく上で十分な量とは言えないものだったらしい。すべては排泄物の量を減らすためだった。
 大橋晴空くんが三歳の夏に児童相談所の職員が大橋家を訪問し、すべてが明るみに出た。大橋裕太と大橋美代子は逮捕され、子供たちは保護された。発見当時、晴空くんの体重は八キロにも満たなかった。平均の約半分だ。残された姉弟は絶縁状態にあった母方の祖父母の元に引き取られることとなった。当時九歳だったお姉ちゃんは、救急車で運ばれる晴空くんのそばにずっとついていた。彼女にとって救急車内はすべてが未知だった。見たことのないエネルギーで溢れていた。弟を生かそうと懸命になる大人たちを、彼女は初めて目の当たりにした。
 彼女にとって、それは大きな力に見えた。
 大橋亜矢子にとって、なによりも必要なものだった。
 高校に上がり亜矢子と同じクラスになったぼくは、ある日の放課後、人気のない教室で彼女の顔を思いきり殴り、殴られるのだけど、あのときだって亜矢子は幼くして形成した彼女なりの哲学に則って行動していたはずなのだ。恥ずかしながら当時のぼくがそうだったように、ほとんどの高校一年生にはっきりとした哲学や信条なんてものが芽生えているはずがなくて、そんなアホでマヌケなぼくたちからすれば、大人しいけど愛想だけはよくて、そのくせどこかそっけない感じがある大橋亜矢子という女子は、なんだかちょっとだけ気持ちの悪い存在に思えた。
 いやもっとはっきり言っちゃえば、ぼくは彼女のそういう感じが許せなかったのだ。見ていて妙にムカつく。同じクラスになってふと目で追っているうちに透けてくる「でもわたしは違うから」といった態度が生意気に映ったし、かといってみんなと同調しろという気分にもならず、ぼく自身、彼女にどうしてほしいのかわからなくて困る。
 ううう! なんというか位置が悪い!

「宮本くん、わたしのこと嫌いでしょ」

 とはいえぼくはあの日、自分がまさか大橋亜矢子を殴るなんて思ってもみなかったのだが、きっかけのひとつには、たぶんぼく自身の恐怖があったのだと思う。
 許せないもムカつくもバカなりの強がりだ。
 ぼくは完全に怯えていた。彼女の重めの真っ黒な髪とかクーラーの効いた目とかナメクジを裂いたような唇とか容易く出血しそうな皮膚とか蜘蛛の脚みたいな指とか、人づてにぼんやりと耳にする彼女の過去とかそういうもろもろすべてに。
 その日、ぼくらはその場の空気というか流れというか、結局十分ほど応酬し合う羽目になり、その間机や椅子はいくつも引っくり返るし、ふたりして口を切ったり鼻血を出したりでみるみる取り返しがつかなくなる。ぼくはぼくで先制を仕掛けた自分への驚きと状況への混乱で興奮状態にあったし、一方の亜矢子もぼくが一発返すたびに二発、三発と腕をぶんぶん振り回し、蹴り、丸めた教科書で突いてきたりするもんだから、とにかく自分が死なないよう尽力するしかなかった。男子とすら殴り合う機会なんてないのに自分はいま何をしているんだ? そう思う一方でぼくは頭の中央部がぼんやりまどろむような鈍い感覚に襲われていた。彼女の血とか唾液や汗にまみれた頬を拳骨で打つたびにもうちょっと、あとちょっとという気分が膨らんでくる。……いやいや、人を殴るなんて趣味はないぞと思うぼくだが、女子を殴りながらじゃ全然説得力がないので自分自身を信じることさえままならない。こわい。ぼくはそういう人間なのかもしれない。成人を迎えて初めて幽霊を見たという人がいるように、自分のまだ見ぬ本質を発見するのに歳なんて関係ないのかもしれない、とか思いながらもバンバン殴り殴られているぼくは、これは生存本能なのではないかということでとりあえずの決着をつける。必死で殴って何が悪い。自分からやっといてなんだけど、ぼくはまだ十五年とちょっとのこの人生をこの女に終わらせられたくない。
 息と唇と鼻の粘膜が切れ、さすがに傷の上から殴るのも忍びないからと妙な角度をつけて撫でるように押したり叩いたりしているうちに、心まで完全に疲弊したぼくはついに手を止め、かざした腕で彼女の攻撃を受け続ける。受けながら全身を覆う毛や皮膚や筋肉を思い、肉に包まれた骨のことを考える。痛い。申し訳ない。情けない。
 なんだか急に静かになったなと思って顔を上げると、彼女は肩で息をしながら、腫れた唇をだらしなく開けぼくのことを見ている。指でも入ってしまったのか、彼女の痙攣する瞼の内側からは涙が溢れていて、濡れたまつげのすっと伸びる様にハッとする。
 そんな感じでまた十分くらい経った。ぼくらはどちらからともなく教室の後片付けをする。割れた瓶の破片をつまむ彼女の指とその繊細な動きに見とれてるのか朦朧としているのかわからない状態のまま教室を、そんで校舎をあとにした。で、特になにも言わないけど、ふたりして一階の渡り廊下から中庭を抜けてグラウンドまで回ると、水洗い場で顔を洗うことにしたのだ。
 口をゆすぎ刺すような痛みを感じながら、ぼくは明日からどうしようとか、そういうことを考えていた。青紫に染まるグラウンドの対角では野球部が後片付けをしながら大声を上げていた。ふと気づくと、彼女がハンカチを差し出してくれていたのでぼくはそれを受け取る。タオル地で甘い匂いが染み付いていて、スヌーピーの刺繍が施されたハンカチだった。フォークソングに出てくるようなハンカチだねと思っていると、急に彼女に対する恐れとか興味が白けていくのがわかって、それはそれでさみしいような、我ながらわがままな気持ちになる。
「ありがとう」
「ううん」
 なんか普通に喋っててうけるけど、ぼくはぼく自身の無責任な怒りに恥ずかしさを覚えている。
 いますぐ一人になりたかった。
 翌日ぼくは登校し、亜矢子は休む。ふたりして顔を腫らしていたら先生にいろいろ聞かれるんだろうなと思っていたけど、彼女なりの配慮だったのだろうか? 配慮というか、彼女だってそれが嫌だったのだろうか? ぼくはもう亜矢子のことしか考えられなくなる。朝礼が終わり、同じクラスの藤田が来る。
「顔どうしたよ」
 高校に入学してからの友人だったが、こいつには本当のことを伝えすぎないほうがいいとぼくは思っていた。そういうタイプの人間なのだ。渋るぼくにやつは続ける。
「大橋か」
「ちがうって」
「大橋だろ」
「なんでわかるんだよ」
「マジか~」
 藤田は大橋亜矢子と同じ中学を卒業していて、大橋に関するわずかな情報もぼくはすべて藤田経由で耳にしていた。
 翌日、大橋亜矢子は登校してくるが、もちろん会話をしたりはしない。藤田は「おまえがあれやったのか」と言う。さすがにちょっと引いている。薄暗かったので気付かなかったが、裂傷の残る唇もそうだけど、腫れに瞼が押され土偶のような目になっている彼女の顔はかなり凄惨で、改めてぼくも気圧される。自分の行為に寒気がする。そもそもぼくはまだ彼女に謝ってすらいないのだ。
 放課後、下校途中の彼女に声をかけた。彼女は「別にいいよう」と言って足早に歩き出すが、そうもいくかと思ったぼくは、どうかもっと真剣に人の話を聞いてくれと思う。言う。亜矢子が立ち止まる。
「うわ。なんで止まるの」
「話を聞こうと思って」
「ああ、そうか」とぼくは改めて「殴ってごめん」と言い、頭を下げた。
「なんで謝るの」と今度は亜矢子が聞く。
「なんでって普通でしょ」
「わたしが悪いんだよ」
「いやいや、なんで? そんなことないでしょ」
「あるよ」
 独り言のようにそう言い残し、どんどん歩く彼女の後ろ姿を見ながら、なんだあの女、イカれてんのかとぼくは思う。それから急に寒気がして、家まで走って帰る。こわい。いやこわくない。
 気持ちが妙に寒々しい。みっともない。
 ぼくはその夜、藤田にメールする。
『大橋はイカれてる』
 返事が来る。
『お前のほうがイカれてる』
 ぼくは唸る。
 そうかもしれない。
 というのもぼくは彼女と殴り合ったあの日から、オナニーができなくなっていた。

 ぼくは呪われたのかもしれない。大橋亜矢子はあの日の放課後、ぼくに呪いをかけたのかもしれない。
 放課後になると、大橋亜矢子のことを尾けるようになった。そのために双眼鏡まで買い、ついには彼女の自宅まで突き止める。彼女にもう一度声をかける気にはなれなかったけれど、どうしても呪いだけは解いてほしかったので、いろいろ考えた末に彼女の殺害までちょっとだけ考えるぼくはさすがにどうかしている。でもぼくはいま確かにどうかしているのだ。それをなんとかしなければならないんだ。
 思い切って藤田に相談する。
「おれ呪われてるかも」
 藤田には野球部の練習があるので、放課後長々と相談にのっている暇がないし、おかしくなったぼく自身に引いている素振りすら見せる。薄情だとは思うがぼくは仕方がないかとも思う。ぼくだって呪われたとか言い出す友人に始めから真摯に寄り添える自信はない。とはいえ、ぼくが大橋亜矢子に殴られ、殴り返したことにより呪いにかかってしまったことは藤田しか知らないので、ほかに相談する相手もいないのだ。ぼくは高校に行くのがつらくなって、やがて体重まで減り始める。やや丸みを帯びていた頬はしゅっとこける。両親はそんなぼくをみて「あんたも精悍な顔つきになってきたね~」とか言うので話にならない。ここで「呪い」という文言を口に出すことは流石に憚られるので適当に嘘をついてやりすごす。新しい環境に馴染めなくて……。でもそれだって丸っきり嘘というわけではない。入学してまだ二ヶ月、新しい教室には決まって亜矢子がいて、腫れの引き始めたその顔には以前のような涼しさをたたえ出していたし、時折目が合えばその眠いのか笑っているのかわからない三日月型の目を伏せ、意味深に伸びをしたりするのだ。
 悪魔。
 ぼくは彼女の自宅の監視を強化する。彼女の家は蓬ヶ丘団地のフェンス越しに一望できる住宅街の一角にあったので、ぼくは団地内にある公園のジャングルジムや滑り台の上、ベンチの背もたれなどに腰掛けながら彼女の家をウォッチする。平屋の一戸建てで、日が沈みだすころ頃、団地内にある集会場から午後六時を告げるドヴォルザークの『家路』が流れるなか、窓から温かな光が漏れる様を眺めていると、ぼくはすべてが虚しくなる。いますぐこの高台から飛び降りてすべてを終わらせたくなるような滅茶苦茶な気持ちだ。あるいは、この目の前の風景に空から無数の星が降り注いで焼き尽くすとか。あーあ、どうしてくれるんだ大橋亜矢子。運命を呪いこそすれ、ぼくは負けたくもない。
 監視を始めて一週間と四日経つころには、ぼくは大橋亜矢子のことを色々と知る。彼女には小学生の弟がいる。毎日ではないが一緒に散歩をする。庭をうろうろしたりする。ふーん、なるほどね。ぼくは蓬ヶ丘団地に住む同級生から、なんか気持ち悪いことをしているという噂を立てられたことにより望遠監視はやめにして、彼女の家の近所を歩くことにする。もしもばったり鉢合わせるようなことがあれば、それはそれでどうしていいかもわからないけれど、ほかにすることなんてないのだ。ぼくは呪いを解いてもらうか、それが無理なら相応の復讐をしなければならないと思っていた。
 彼女の近所にあるブランコと滑り台と砂場をあつらえただけの小さな公園でコーラを飲んでいると、ぼくは亜矢子に見つかってしまう。こうなることくらい百も承知だったはずのくせして死ぬほど狼狽えたぼくは、目が悪くてなにも気づいていないふりをした。すると彼女はぼくに近づいて言う。
「宮本くん」
 うう、頼むからほっといてくれよ。
「こんにちは」ぼくは驚いたふりをして、お尻の砂を払いながら立ち上がった。
「家このへんなの」
「ん、いや、違うけど」
「そうなんだ」
 ふたりしてどうしたらいいのかわからない感じになっていると亜矢子が続ける。
「もしかして、また謝りにきたの」
「え」本当に理解が追いつかず「違うけど」とぼくは顔を上げる。
「あごめん。じゃあ本当になにしてるんだろ」と言う彼女は一瞬笑い、ぼくはその顔を直視できない。
 別に今日は殺す気できたわけでもないし……。
「怒ってる?」と言う彼女の顔をぼくはまだ見ない。
「え、別に。なんで」
「ごめんなさい」
 ぼくはいまの「ごめんなさい」がなにに向けられているのかちょっとだけ考える。
「ん?」
「まだわたし謝ってなかった。ごめん」
 いまのは謝るのが遅れたことに対する「ごめん」か。うむ。
 それからぼくは、どういうわけか彼女の家に招かれ、そこで大橋晴空くんと初めて会う。「こんにちは」と言うぼくに一切目もくれず家に向かって歩いていくどこか不思議な男の子だと思った。
 晴空くんを通せんぼするように目の前にしゃがみこんだ亜矢子が言う。「晴空。こんにちはは? ほら、こんにちはって」
「こんにちは」
 晴空くんの真後ろに立つぼくは「顔似てるね」と言うが、彼女は特に何も言わず、弟の頭に手を置いて「はい」と呟いている。
 そんでなぜか彼女の方が家の中に消え、ぼくは庭で晴空くんとふたりっきりになった。晴空くんは人差し指を立て、何かを斬るように腕を振ってみせている。ぼくの近くのなにかも斬る。なにが見えてるのかなと思いながらその手から逃げるぼくは、晴空くんの爪先に当たったサッカーボールを蹴り返す。晴空くんがまた蹴ってくる。蹴り返す。かれこれ十往復ほどさせたころ、亜矢子が縁側に現れる。
「ごめん、麦茶いる?」
「あ、いいのに」
「嫌いだった?」
「そういうことじゃないよ。麦茶好き」
「飲んで」
「あ、うん。ありがとう……」
 ぼくは亜矢子がコップに注いでくれた麦茶を飲んだ。その間も晴空くんがボールを蹴ってくるので、二口飲んでからコップをお盆に起き、再び晴空くん目掛けて蹴り返す。
「晴空、いまはだめ」と亜矢子が言うが、晴空くんはまったくやめようとしないのでちょっと面白い。
「別にいいよ」と言うぼくに亜矢子が「ごめんね」と言う。
 また謝ってる。
 ぼくは少しだけ落ち着いている。どこまでもついてまわるあの切迫感もない。晴空くんにボールを蹴り返しながら、ぼくは亜矢子の顔を見る。こみ上げた感情をそのまま口にしてしまう。
「顔、ごめん」
 よく聞こえなかったみたいで、縁側に腰掛けていた彼女は少しだけ身を乗り出した。ぼくはジェスチャー付きで再度言う。
「顔。殴ってごめん」
 あはあ、と短く息を吐いたあと、彼女は太ももの裏に手を敷いてスカートを押さえながら「わたしは全然いいし、謝るのもわたしの方だし、もういいよ」
「うーん」
 とは言ってもね。黙るぼくに彼女はもう一言添えてくれる。
「きりないよ」

 そう言う亜矢子だったが、きりがなくなるまで徹底的にやるというのは彼女の哲学の一つだった。彼女が中学一年のころにクラスメートの女子を殴ったことによってその彼氏一味に階段から突き落とされたり、下校途中に追い回され殴られたりした際も、彼女はちゃんとやり返し続けた。きりがなくなるまでやってやってやりまくれ。だんだんと事が大きくなるにつれてついていけなくなった相手側が亜矢子に近づかなくなり、そこでようやく亜矢子はひとつの諍いに終止符を打てたというわけだ。うーむ。極端な話でもっといい解決策はあるはずだと思うぼくだけど、まあ一理ある気もしていた。もちろんあくまでほんの欠片であり、すべてじゃないけど。
 でもずっとそんな感じでやってきているのだとしたら、なんか疲れない? と思うぼくは彼女といろいろな場所へ行ったりする。学校が終わるとどうでもいい話をしたり何も話さなかったりしながら歩いたし、たまたま見つけたバッティングセンターに入ったりもする。彼女は部活には入っていないが、運動が好きだといった。走ったり跳んだり投げたり打ったりをすると、気分が良くなるから、本当は部活にも入りたいと言っていた。
「バレー部とか入りたかった」
「まだ五月だよ。入れば?」
「ううん、だいじょうぶ」
 彼女はバットを思い切り振る。ボールにかする。素人目に見てもフォームは変なのに、対象に向けてしっかり振れているのでぼくもちょっとだけやる気になる。野球は全然やったことがなかったが、亜矢子の隣の打席に入って、バットを振った。振った。全然ダメ。でもなんとなく気持ちは晴れた気もする。たぶん近いうちにまた来るんだろうなとぼくは思って、その日は亜矢子と別れる。
 彼女の思い出話を聞く。
 晴空くんとも散歩をする。
 たまには自分の話もしてみる。亜矢子はぼくの話にちゃんと相槌を打つ。「うん」とか「へー」とか「そうなんだ」。
 呪いは未だ解けないままではあったが、まあ別にいいかと思う瞬間も増えていく。いやよくはないんだけど、呪いそのものに集中することが自然と少なくなっている。
 学校でのぼくらは、これまでどおり、必要以上に接することもなかった。ぼくはもっぱら藤田と過ごしている。これはちょっとフェアじゃないよなあと思ったりもするけど、藤田に「おまえ大橋と仲良いよな」と言われると「そうだろうか?」と思う自分がいるのも確かなのだ。そもそも仲がいいってどういう状態のことを言うんだろう?
 亜矢子の家の縁側で『エスパー魔美』を読んでいると、「宮本くん」と声をかけられる。
 亜矢子のおばあちゃん。
「晩ご飯食べていかない?」
「え、そんな大丈夫ですよぼくは」
「いいからいいから、いつも遅くまであの子に付き合わせちゃって悪いし。カレー好き?」
「好きです」
「よかった。もうちょっと待ってね」
 亜矢子のおばあちゃんは特別派手ではないが、仕草が全体的に若々しい。亜矢子と違ってはきはき喋るし、ちょっと歳のいったお母さんって感じだ。
 ぼくは母親に連絡をする。
「あ、今日は友達の家で食べて帰るから」
 ここでごく当前のように「友達」という言葉を使ったわけだが、そこに無理や誤魔化しは特に感じない。トイレから戻ってきた亜矢子が「あ、なんかおばあちゃんが」と言ってくるのでかぶせるように言う。「あ、聞いた。夕飯ご馳走してくれるって、なんかごめん。本当にいいの?」
「あ、ううん、ぜんぜん。食べてく?」
「そう答えたけど」
「そっか」
 なんかもうよくわかんないけど、これからもよろしくねって感じだ。

 ぼくが亜矢子の家で鶏もも肉と豚バラ肉の入ったカレーを食べているちょうどそのころ、蓬ヶ丘でひとりの男の子がいなくなる。渡辺大地くん六歳。小学校を出たところまでは同級生が見ていたが、それ以降の目撃情報が一切なく、午後八時を過ぎても戻らないので、両親が警察に連絡したらしい。そういうことが身近で起こるなんてまったく想像できていなかったぼくは、無事に見つかるといいなと思うくらいだった。
 でもまあ、見つからない。
 すべては始まりでしかない。

 

舞城王太郎と中条あやみはどっちも六文字

日記

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2017年になりました。今年も楽しくいけたらいいなと思っています。それ以外に、なにを望むっていうんだ。急に太字になるのは最近海外文学を読んでいるからです。僕の考える海外青春文学っぽさです。とにかく今年は好きなものを声高に唱えていけたらいいなとも思っています。

 

海外文学などにも大きな影響を受けているっぽい作家といえば舞城王太郎がいます。もちろん村上春樹を挙げてもいいのですが、著作をほとんど読んだことがないので、ポスト村上と言われたり言われなかったりしている舞城王太郎を挙げさせていただきます。初めて読んだのは高校のころ、ド田舎に住んでいた僕はイオンの中にある田舎者のサブカル予備校ことヴィレッジヴァンガードで派手なポップとともに積まれていた『煙か土か食い物 』を手にとりました。それが出会いだったように記憶しています。メフィスト賞を受賞した舞城王太郎のデビュー作です。そのポップには「ウーファーの前にいるような文章」みたいなことが書かれていましたが、当時の僕はウーファーを知らなかったので「は?」となりました(のちにくるりの『ハイウェイ』を聴いてなんとなく察しました)。

 

ウーファー - Wikipedia

 

なにもいきなり好きになったというわけではありません。どちらかというとそのトゥーマッチな圧のある口語文体や奔放な展開(いわゆるスリップストリーム)に食傷気味になったほどです。そのくせ地元の図書館で借りたい本が見つからないときなど、なんとなく舞城王太郎著作を手に取ることが何度かありました。『熊の場所』、『阿修羅ガール』……。ひー!面白いけどついていけない!そう思ってまたしばらく間を空け、卒業間近、進路が決定したことでなにかまた読もうかな。そう思って芥川賞候補にもなった『好き好き大好き超愛してる。』、続いて短編集『スクールアタック・シンドローム』を購入しました。『スクール~』に収められている文庫用書き下ろし短編『ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート』を読んだ僕は、そこで初めて自分の中で舞城王太郎という作家がなにかしらの位置を得た気がしたのです。チンポジのように。

 

スクールアタック・シンドローム(新潮文庫)

 

舞城王太郎の小説に関して言うと、なんだかんだ物語が帰結する先が「愛」とか「正しさ」である点が好きでした。そしてその結論に至るまでの「熟考」。とにかく「考えろ」という至上命題がそこにはあって、読み手は登場人物の目まぐるしい思考にライドします。そのテーマが極限まで達したのがSF長編『ディスコ探偵水曜日』なのではないでしょうか。はっきり言ってマラソンのような読書体験でしたが、そのキツさこそが「考えるのをやめるな」というテーマをより鮮烈に表現していたように思います。

 

僕は舞城の書く短編も大好きです。舞城の書く短編は、ひとつのテーマに向かって半ば過剰にも思えるほど、システマティックな構成で見せる物語が多い気がします。一番新しく発表された短編集である2013年の『キミトピア』では、書き下ろし作品も多数収められていて、たいへん充実した内容となっていました。しかしその一方で、『真夜中のブラブラ蜂』という短編を読んで、舞城の伝える「正しさ」に胸焼け、並びに懐疑的な思いも抱くようになってきたのです。もっと正直に言えば、主人公である主婦がウザいババアにしか思えなくて、いやだ~!でも物語的にこの人物を肯定しなきゃ……と勝手にこしらえた義務感との間で葛藤し、ひとり混乱していたのです。お恥ずかしい。僕のそういう衝動は衝動としてまた別の機会に考えなければならないものだと思います。

 

2017年になってまだそう経ってはいませんが、舞城は新作短編を発表しました。新潮 2017年 02 月号に掲載された『秘密は花になる。』です。その冒頭を読んだ僕は、また『真夜中のブラブラ蜂』っぽい話か!?と少々身構えてしまいました。子を持つ母親の話です。しかし今回は、どこか趣が違う。なんなら『真夜中のブラブラ蜂』や『やさしナリン』(同じく『キミトピア』収録)なども孕んでいた「圧の強い正しさ」へのセルフアンサーとも取れるような読後感がありました。まだ読んで日が浅いので咀嚼しきれていない部分も多々ありますが、「正しいかどうかより、考えること自体に用がある」という、なんだかんだいつもどおりの着地な気もします。そんな体幹のしっかりした舞城ですが、今年は『龍の歯医者』というアニメの原作・脚本を務めるらしいです。精力的でびっくりしますが、そろそろまた暴力的でアッパーな小説も書いてほしい気もします。待ってます。

 

 

P.S.

東出昌大似であることがだんだん気にならなくなってきた中条あやみさんですが、本名は中条あやみポーリンというらしいです。そこから派生して「ポーちゃん」と呼ばれているんだとか。なんだかジャッキー・チェンみたいですね。それではまたお会いしましょう。さようなら。 

 

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

 

 

キミトピア

キミトピア

 

 

2016年公開映画ベストワーストいろんな賞

特集,映画

 

 

【2016年公開映画ベスト10】

 

   1位 ボーダーライン

 2位 デッドプール

 3位 この世界の片隅に

 4位 アイ アム ア ヒーロー

 5位 映画 聲の形

 6位 ドント・ブリーズ

 7位 永い言い訳

 8位 ヘイトフル・エイト

 9位 マジカル・ガール

  10位 COP CAR コップ・カー

 

 

ベスト10選評

 
10位:『COP CAR コップ・カー』

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 なんにもないド田舎で繰り広げられる悪ガキ二人と汚職警官の攻防。些細な思いつきでも招く結果はしっかり凄惨。それでいて、ドライなテンションの果てに待つあの街の景色には強く胸を打たれます。創り手の眼差しに、かっこいい優しさがあったもんだと胸がいっぱいになりました。

 

 

9位:『マジカル・ガール』

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怖い夢を見て目覚めた夜、なんでもない暗がりに気配を感じたりする全自動想像力というものが僕らにはあるので、気にもとめなかった会話、ちょっとした仕草、あのドアの向こうに各々の絶望を見る。雨の有楽町で溜息が漏れるほどの不穏を味わいました。最高です。

 

 

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 長い長い映画だけど、ラストで味わうあの突き抜けるような感動は何なんだ。なんかもういろいろあったし、超疲れてるからいがみ合う体力もねえや、みんなおつかれ!という境地に観客を連れて行ってくれる、心洗われるような一本。大好きです。

 

 

 

7位:『永い言い訳

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「空っぽな人間」だからなんだってんだ。誰かにとっちゃどうでもいい。そんな誰かに触れることで、義務めいた雑念なんて一蹴できるかもしれない。そこから始まる何かがあるかもしれない。身につけた自己嫌悪なんて脱ぎ捨てて、いまそこにいる人たちと生きてみようと思えてくる一本。

 

 

 

6位:『ドント・ブリーズ』

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これを作ったことがもうかっこいい。そう思わせてくれる映画が今年は何本かありました。本作もそのなかのひとつ。 与え楽しませるのも技術で、その技術がスマートでありながらも、時に身の毛もよだつような逸脱まで見せてくれるのであれば文句なしでしょ。ということで最高に楽しんだ一本。超キモかった。

 

 

5位:『映画 聲の形』

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原作漫画にいたく感動した身としては映画『たまこラブストーリー』 を撮った山田尚子が監督を務めるという前情報で期待を大きくしていたのですが、いやあ、良かったですね。めちゃくちゃ居た堪れなくて。鑑賞時、とんでもなくささくれだった気分だったのに、気がつきゃ夜の池袋をズンズン歩いていました。僕も落ちていく誰かに手を出す勇気がほしいし、落下する僕を見てそう思う誰かがいてくれたらどれだけいいかとも思う。

 

 

4位:『アイ アム ア ヒーロー』 

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 漫画原作が完結していないのに映画化なんて尻切れトンボになるか続編つくるかのどっちかじゃん……と思って鑑賞したところ、非常にガッツ溢れる傑作でした。タイトルにテーマを絞るという英断。僕らの見知った「日常」の崩壊。なかなか火を吹かない猟銃。大泉洋の背中の眩しさ。なめててごめんなさい。最高でした。

 

 

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これも『ドント・ブリーズ』と同じで、物語の中身もさることながら、これを創りあげ、世に出したことそのもののかっこよさを感じた一本。当時の世界を描き、笑って怒って泣いて笑う。そんな日々の営みすべてに慈しみを持って触れたような感覚。膨大な情報なのに、圧があるのに、ずっと優しいままのその佇まいは畏敬の念を覚えるほど。能年玲奈の演技も含めてあまりにもたくましい映画だと思います。 

 

 

2位:『デッドプール

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不謹慎なふるまいもたまにすべる軽口もすべてがいじらしい。僕は誰よりも照れ屋なデッドプールが大好きだ。 好きな人と好きなところで幸せになってほしい。いや、なるべきだ。邪魔する奴はひとり残らずぶっ殺せ!

 

 

1位:『ボーダーライン』

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 私利私欲と際限のない暴力がひとつの機関となって回り続ける麻薬ビジネス。その渦中に放り込まれたFBI捜査官の視点で描く「狼」どもの世界。めそめそ泣こうが誰も相手にしない殺伐と、美しい撮影、わかりやすいのに重厚な演出など、ゾクゾクがおさまらない強烈な一本。ベネチオ・デル・トロの暗くて深いあの瞳が、銃口のようにこちらに向けられていて、ずっと気が気じゃなかった。

 

 

 

いろんな賞

 

【ベストガイ賞】

『映画 聲の形』より

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永束友宏(CV.小野賢章 

出てくるだけでもう泣きそうになります。『シークレット・サンシャイン』ソン・ガンホもそうですけど、無邪気でちょっと鬱陶しいけど、それでもそばにいてくれる誰かって最高ですね。

 

 

 

【ベストガール賞】

 

セーラー服と機関銃-卒業-』より

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星泉(橋本環奈)

 

 

この世界の片隅に』より

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浦野すず⇒北條すず(能年玲奈⇒のん) 

 

細かいことは下に貼った過去記事でも述べているのですが、ベストガールに選出させていただきましたこのお二方、実を言うと「まあまあやれてたらそれでいいかな」というどうしようもなく失礼な態度で臨んでしまったキャラクターでもありました。でも!バカが!演じる彼女らのポテンシャルを見誤った自分の薄汚い心に蹴りを入れ、この場で心より感謝の気持ちを伝えたいと思います。橋本環奈はその勝気な性格をうまく取り入れ、薬師丸ひろ子版とは一味違う星泉を演じきっていました。そしてのんこと能年玲奈も、キャラクターのちょっとした感情の機微まで大切にすくい取り、「ぼーっとしている子」の胸の内まで見事表現しきっていて打ちのめされてしまいました。本当にありがとう。ふたりとも来年も大暴れしてくれ。

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

 

【ベストビッチ賞】

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デイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー 

ジェニファー・ジェイソン・リーってほうれい線と顎の突き出し方がたまらないですね。騒ぐたびぶん殴られる、というシーンでも悲壮感がない、最後まで憎たらしいキュートな役でした。

 

 

 

【ベストタンクトップ賞】

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この肩幅と二の腕!

 

 

 

【ベスト無職賞】

『オーバー・フェンス』より

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白岩義男(オダギリジョー

函館で失業保険を頼りながら職業訓練校に通う男。なにもない部屋。ビール2缶とコンビニ弁当。地味な色のポロシャツ。夏の函館を彷徨うその姿は、どうしてあんなにも色っぽいのでしょうか。なめた態度の若いおねえちゃんたちに静かにキレる場面もグッときます。僕も夏の函館で無職として過ごしたい。そんな憧れを抱かせてくれました。函館いきてえ。

 

 

 

【どうしようもないクズ賞】

軽薄で卑怯で欲望に従順な虎の威を借る大馬鹿野郎。目の当たりにした「暴力」に興奮したこいつが商店街で暴れだすシークエンスでは不快度が天を突くようでした。しかも下の下としか言いようのないあんな行為まで……。それにしても樋口毅宏『テロルのすべて』 でもそうだったけど、キャラクターの大衆的浅薄さを表現するアイテムとして『ONE PIECE』 を使うという手法がここでも見られましたね。13巻でルフィがギャグとしてゾロを殺しかけるまではめっちゃ面白かったよ……。

 

 

 

【ベスト有村架純賞】

アイアム ア ヒーロー』より 

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早狩比呂美

にゃーん!

 

 

 

【ワースト有村架純賞】

『何者』より

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田名部瑞月

ベストの『アイアムアヒーロー』とワーストの『何者』ですが、有村架純の使い方で言えば「別にどちらも似たような感じだった」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ぜんぜんちげえよ!個人的な所感として『アイアムアヒーロー』の場合、作り手が有村架純になにをさせたいか、なにをさせたら楽しいかを試みていた感じがあったので、観ていてたいへん気持ちよかったです。なんだかよくわからない「正しさ」を担わせる道具としての、がらんどうな有村架純なんて観たくありません。猫パンチで『ロボコップ3』 の忍者ロボットみたくさせてやる!

 

 

 

【ベストエンディング賞】

『貞子vs伽椰子』

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あの切れ味。劇場からは自然と笑いが沸き起こり、みな爽やかな気分で席を立つことができました。聖飢魔Ⅱの『呪いのシャ・ナ・ナ・ナ』も最高。

 

 

 

 【皆殺し賞】

アイアム ア ヒーロー』の地下駐車場

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守ることを決意する場面だけではよしとせず、「守り抜く」その過程を気の遠くなるような発砲、リロードで描ききった姿勢に感動。飛び散る血しぶきがこれまた景気よくとても良かったです。

 

 

 

【ベスト楽曲賞】

『貞子vs伽椰子』より

聖飢魔Ⅱ『呪いのシャ・ナ・ナ・ナ』

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あの爽やかな余韻に一役買っている名曲。

 

 

デッドプール』より

DMX『X Gon' Give It To Ya』

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笑っちゃうくらい過剰なオラオラ感がデッドプールのチョイスっぽくていいですね。

 

 

この世界の片隅に』より

コトリンゴの楽曲全部

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映画の血肉となる素晴らしさだったと思います。

 

 

『何者』より

中田ヤスタカ『NANIMONO(feat.米津玄師)』

www.youtube.com

げー!『何者』っぽいな〜!という感じがちゃんとしていて良いと思います。

 

 

 

 

【ベストガン賞】

 

アイアムアヒーロー』の猟銃

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悪の教典』に続いて物語を加速させる装置としての猟銃メソッドを活用した新たなる傑作が生まれました。こちらの相手はゾンビなので、その威力を過剰なまでの弾着効果で表現してくれていたのでたまりません。 

 

 

『ボーダーライン』のアサルトライフル

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アサルトライフルが怖い映画は傑作」というセオリーがあるのですが、たまにサブマシンガンと大差ないような描き方をしている映画が出てくるとモヤモヤします。 『ボーダーライン』のアサルトライフルはしっかり命を奪う道具としての鋭利さを損なわない演出がなされていました。怖いですね〜。

 

 

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 薬莢に「50AE」と刻印されてあったので50口径のデザートイーグルっぽいです。パワー系ですね。これを好んで2丁使うあたりもヒーローものの醍醐味を感じます。

 

 

『COP CAR コップ・カー』のアレ

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UZI系列のなにかだろうと思っていたのですが、こういう空砲銃らしいです。 悪くないですね。

 

 

 

 


 

 

 

【2016年ワースト映画】

膨れに膨れ上がっていた期待値とのギャップにぶん殴られた一本。登場人物同士のやり取りも繰り広げられるアクションも「え!」というくらい心弾まなかったです。自分は映画を観ながら感じる「もったいない」という感情に耐えられないんだなという自己覚知を得られました。スリップノットは面白かったです。 

 

 

 

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洒落臭さにくじけた一本。柳楽優弥はとても良かったのだけど、演じるあのキャラクターや物語がぜんぜん魅力的に思えなくて、映画内のテンションが高まるにつれ、自分の感情とみるみる乖離していくのが寂しかったです。こういう話だとどうしても『ザ・ワールド・イズ・マイン』を連想してしまって、割り切るべきなんでしょうが比較をする自分がいました。一言で言っちゃえば菅田将暉のこともちゃんと殴ってほしかった。その一方で菅田将暉はとても良かったですね。本当にそういう人間に見えてきました。

 

 

 


 

 

2016年も多くの映画に出会いました。はっきりいって観た本数で言えば去年や一昨年よりも下だとは思いますが、それでも充分いい映画ばかり観たなあといった感慨でいっぱいです。また新しい年が始まります。何を楽しむにも一定の余裕というものが必要なので、それを維持・向上させつつ、やれアクションがかっこいいだの俳優が好みだのをこれからも言い続けていけたらなと思っております。

 

それではみなさん、良いお年を!

 

 

 

 

 去年のベスト10です ↓

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

一昨年のベスト10です ↓

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

 

 

 

何が欲しいのかを忘れないために記す

日記

 

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貧乏はするもんじゃねえ。味わうもんだ。

五代目古今亭志ん生

 

 

2016年も残すところあと半月未満。みなさまいかがおすごしですか。ご機嫌はいかがでしょうか。僕はすこぶる悪いです。慢性的なお金のなさにどう立ち向かうかを考えているからです。「節約」や「我慢」が真っ先に浮かんできますが、それがもう情けない。「手に入れる」方に思考が向かわないのかと、自分が嫌になります。ということで、そんな自分を鼓舞するためにも、何が欲しいのかをリストアップすることにしました。やる気が萎れてきた時などに、この記事を振り返ることで気持ちを維持できるかもしれない。そんな期待があるのです。

 

ほしいものリスト

 

・冷蔵庫

部屋にありません。冬場なのでまあいいかと思ってはいますが、あると便利だとも思います。

 

・電子レンジ

これも部屋にありません。あると便利ですよね。

 

・ガスコンロ

これもありません。現在は代用品として電気鍋で調理をしていますが、よくブレーカーが落ちます。

 

・深剃りのできる電気シェーバー

髭が濃いのでほぼ毎日剃りたいところなのですが、冬の朝にカミソリで肌を削る日々にいくばくかの苦痛を覚え始めてしまいました。髭が濃いのが悪いのか、貧乏が悪いのか。この世界が悪いのです。

 

・テレビのリモコン

まったく反応しないやつならあります。反応するものがあると便利だからです。

 

・新しいメガネ

左右の視力に差があるので、左右でレンズの厚さが違うメガネをかけています。レンズの厚さを同じにするにはお金が必要だと言われたので、いつの日か、左右のレンズが同じ厚さのかっこいいメガネを調達したいです。フレームの太い大学生や日焼けした起業家のようなメガネは嫌なので、すっきりしたフレームの大人っぽいものだと、よりいいですね。

 

・GUのチェスターコート

GUじゃなくてもいいのですが、GUのチェスターコートが安かったからです。

 

・新しい靴

雨の日には、底の方から水が入ってくるからです。

 

・新しいパソコン

USBの差し込み口がなんの反応もみせなくなったので、スマホ内データのバックアップにも使えません。大学時代からの愛用品なので、キーボードの使い心地は最高です。

 

・新しいスマホ

iPhone5Cを使用していますが、画面が激しく損傷し、電池のもちもとても悪いです。寒い日などは、使用中に落ちることも増えてきました。

 

・腕時計

スマホあるからいいか」と思っていたのですが、スマホの画面が割れています。

 

・ソファー

あればいいなとたまに思います。

 

・本棚

そもそもあまり本を持っていないので必要がないといえばないのですが、ほしいです。

 

・いい香りのする芳香剤

いい香りのするものが好きだからです。

 

・自信

むかし持ってたような気もするのに、どこを探しても見当たらないからです。

 

・ギャツビーのヘアジャム

最近切らしたからです。ワックスより伸ばしやすいので気に入っています。

 

・『のん、呉へ。2泊3日の旅』

この世界の片隅に』での彼女の演技にいたく感動したこともあって、ぜひ読みたいですね。

 

・HK45 18歳以上用ガスブローバック

 近所の公園に青姦カップルが出没するのです。

 

・HK416Cカスタム 18歳以上次世代電動ガン

必要だからです。

 

 

 

 ざっと思いつくままに列記してみました。細かく計算はしていないのですが、100万円ほどあればすべて揃えることができると踏んでおります。100万円あればほしいものを揃えるだけじゃなく、久しぶりに友人らと会い、お酒を飲んだりすることもできそうですね。そんな日々はきっと、とても楽しいものだと思います。

 

 では、いったいどういったことを為せば100万円を手に入れることができるのでしょう。思い立った僕はいろいろと調べることにしました。手に入れる方法まで書いて初めて、上記の品々が「夢」ではなく「目標」になるのだと思います。以下、みなさまも参考までに。

 

 

100万円を手に入れる方法

 

太宰治賞を受賞する

太宰治賞

賞金100万円がもらえます。

 

北日本文学賞を受賞する

北日本新聞ウェブ[webun]:第50回北日本文学賞

賞金100万円がもらえます。

 

・九州佐さが大衆文学賞を受賞する

佐賀新聞ニュース/The Saga Shimbun :九州さが大衆文学賞

賞金100万円がもらえます。

 

・伊豆文学賞を受賞する

静岡県/しずおか文化のページ/伊豆文学フェスティバル/第19回伊豆文学賞募集要項

賞金100万円がもらえます。

 

・内田百聞文学賞を受賞する

岡山県郷土文化財団|内田百閒文学賞

賞金100万円がもらえます。

 

・やまなし文学賞を受賞する

やまなし文学賞 | 山梨県立文学館 | YAMANASHI PREFECTURAL MUSEUM of LITERATURE

賞金100万円がもらえます。

 

林芙美子文学賞を受賞する

第3回林芙美子文学賞募集要項 : 北九州市立文学館

賞金100万円がもらえます。

 

・北区内田康夫ミステリー文学賞を受賞する

募集要項|東京都北区

賞金100万円がもらえます。

 

・ちよだ文学賞を受賞する

千代田区ホームページ - 第12回ちよだ文学賞募集の概要

賞金100万円がもらえます。

 

文學界新人賞、群像新人文学賞新潮新人賞のうち、ふたつを受賞する

文藝春秋|雑誌|文學界_文學界新人賞原稿募集

群像

新潮新人賞 | 新潮社

三つとも賞金が50万円の文学賞なので、このうちふたつを受賞すれば100万円が手に入ります。

 

 

 

簡単にいくつかを挙げてみましたが、世の中にはまだまだたくさん100万円を手に入れる方法があります。これらを参考にしながら、より快適な生活環境を整えていけたらいいですね。そのためにも過去に蹴りを入れ、まだ見ぬ未来の胸ぐらを掴め。腹を空かせた猛虎の瞳。見えない膜を切り裂き、開け。眩い腸で暖をとるべし。

 

 

 

 

 

 

書き下ろし短編:『水泡にキス』

創作

「え? コスプレイヤーの陰毛?」
 ひなこの第一声に驚愕したぼくは、思わずその言葉を声に出して繰り返す。網の上で焼けていくカルビからは煙がもうもうと立ちのぼっているが、その向こう側で彼女が「うん」と頷く。ひなこはつい先日、駅前を歩いているときにコスプレイヤーを見かけた。その人物はセーラー服を身につけていたが、どこからどう見ても現役の女子高生には見えなかったそうだ。彼女いわく、化粧の仕方でだいたいわかるもの、らしい。遠巻きにその女の子を眺めていると、ひなこは不意に自分が何をしようとしていたのか思い出せなくなったという。
「駅前を歩いていたんだから電車に乗ろうとしていたんじゃないの」
 シーザーサラダを食べながら言うぼくだったが、その態度に自分が軽視されている雰囲気を勝手に感じ取ったひなこは、むっと膨れて首を振る。
「ちがうよ。そのときは駅から出てきたばっかりだったの。でね? なんだっけなあ、どうしよう、わかんないなあと思っていたら、ふとそのコスプレイヤーと目が合ったの。で、その瞬間、あれ? って思ったの。そういえばそのコスプレイヤー、さっきからずっとそこに突っ立ってるだけなの。なにかしてるってわけでもなく、近くにカメラ持ってる人が居るとかでもなくよ? そんでわたしこう思ってね、ああ、なんか魔法っぽいことされたのかもしれないって」
「ああ」
「魔法は言葉の綾だけども。だってよく考えてみてよ。そこは人ごみです。大勢の人が行き交っている中で、ひとり、違和感をまとった人物が立っています。それもみんながみんな気づく違和感じゃなくて、わかる人はわかるって程度のね。それにうっかり気づいてしまった人は、なんだろうって考えちゃうじゃない? 変だなって。何が変なんだろう。ああ、やっぱり変だって」
「うん」
「そうやって急にいろんなことを考えさせられるわけじゃん? そしたらね、脳がパニックを起こすと思うの。それでね、混乱したわたしの頭は、わたしが今からしようとしていたことを一旦どっかにやっちゃったのよ」
 トングでつまんだカルビを裏返した。「うん。それでそれで?」
「そういうことって、でもたまにない? 普段から冷蔵庫開けてあれ、なにとろうとしたんだっけ? ってなったり。まさにわたし、あんな感じだったんだけどね。でも気になったのはそのコスプレイヤーよ。わたし思ったの。そいつ、わたしに混乱を招くためにそこに立っていたんじゃないか、って」
 ぼくは眉間にシワを寄せる。「このカルビ食べていい?」
「うん。で、わたし慌てて周囲を見渡してみたの。そしたら、歩いている人たちの中にちらほらわたしみたいに狐に包まれたような顔をしている人がいたのよ。で、もう一回コスプレイヤーの方を見てみたの。そしたらね。いなくなってるの」
「ええ? まってまって、ちょ……ええ?」
「わたし、もしかしたらって思ったのね。これは、そういう実験だったんじゃないかって。わたし、なにかとんでもないものに巻き込まれたんじゃないかって」
「で、結局ひなこは何をしようとしていたのか思い出せた?」
「ああ、それはしばらくしてから思い出した。トイレに行こうとしてたのわたし。おしっこしたくて」
「ちょっと待った、生理現象を忘れてたってこと? だって尿意だぜ?」
 驚きを表明したかったので「ありえないよ!」と叫びながら両手を広げてみたら、テーブルの端の方に寄せていた紙ナプキンの束を吹き飛ばし、床の上に散乱させてしまった。
「だからこそだよ。やばくない? 政府とか関わってたりして。ほら、口裂け女の都市伝説ってCIAが情報の広がるスピードを調査するために流したって説あるじゃん? 一節では噂の広がる速度は時速四十キロくらいらしいけどね。まあいまはこれ関係ないんだけど、ちょっと陰謀史観入ってるかなあ?」
「え? 陰毛歯間?」
 床の上の紙ナプキンを拾っていたせいで最後のほうが上手く聞き取れなかった。つい聞き返してしまうぼくだったが、一通り話し終えて水を飲んでいる彼女にその声は届かなかったらしい。結局コスプレイヤーの陰毛がどういうことなのかもわからず終い。最後の方に関しては、陰毛で歯の隙間を掃除する話に着地したようにも聞き取れた。
「なんだか大変だったみたいね」
「うん、いやまあ、べつに大変ってほどではないけど」
「健忘症なんじゃない?」
「あ、ひどーい。違うわ」
「でも不思議な話だよなあ」そう言うぼくはすべての紙ナプキンを拾い終え、再びシートの上に戻る。ふと斜め前の四人がけの席にてひとりで食事をしている高齢男性が目に入った。焼けた肉を黙々と皿の上に盛り、山のようになったところで今度は黙々と食べ始める。ぼくの記憶が定かなら、ぼくらがこの店を訪れたときからあの席に座っていたはずだ。見た感じ太っているわけでもなく、強く押せば死んでしまうんじゃないかと思うくらいには平均的な高齢者に見える。しかし、肉を口に運ぶペースが一定で乱れがないうえ、皿が空くたびに新たな肉を調達しにバイキングコーナーへと向かう姿を見るに、相当の大食らいであることが想像できた。それともよほど空腹なのだろうか。高齢者が空腹ということは、家族から満足に食事も与えられていないのかもしれない、とぼくは思う。高齢者虐待は、我々が思っている以上に身近で深刻な問題だ。
「で、歯がなんだっけ?」
「んあ?」肉を頬張っていたひなこが目を見開いてみせる。
「だからほら、最後の方で歯の隙間を陰毛でどうのこうの言ってなかった? それがコスプレイヤーの陰毛ってこと?」
「え? 陰謀の話はしてたけど、ちょっとなに言ってるかわかんないな。歯ってなに? あ、待ってね、そういやわたし次の歯医者さんいつだっけ?」
「まさか……また忘れたとか?」
「あれ? 木曜? ちょっと待ってよ、あれ~? さっきあんな話をした矢先にこれじゃあちょっと怖くなるじゃん。あれえ?」
「健忘症だよ」
「だからやめてよ、たまたま物忘れに関する話題が連続しただけだって」
「なんだよ! そっちは政府がどうのこうの言ってたくせに、ぼくの言ってることは取り合わないのかよ! 健忘症の方がよっぽどリアルだぜ!」
「いや水曜だったかなあ? うーん。もう降参。スマホで確認しちゃお」
「普段から脳を甘やかしてるからだよ。政府のせいにする前にちょっとは自分で頑張ってみろってんだ」
「はいはい。あ、なんだやっぱ木曜じゃん」
「情けないね、まったく」
「うるさいなわかったから。あ、これ焼けたよ」
「ふん。ありがとう」
「ふふふ。ちゃんとありがとう言えたね、えらいねえ」
「育ちがいいからな」
 ぼくは皿にのせられたハラミを箸でつまんで口に運ぶ。咀嚼をしながらもう一度斜め前の席に座っている男性に目をやった。ひなこの健忘症から連想して、ぼくはその男性が認知症を患っているのではないかと考えてしまう。認知症の症状の一つとして徘徊が挙げられるが、男性は先程から皿に肉を盛って戻ってきたかと思うと、取りつかれたように再び新たな肉を調達に向かうのである。いくら大食らいであるとは言え、あの量を一人で食べられるとはとても思えない。彼自身の判断能力に任せることで自分が悪しき傍観者に成り下がってしまうかのような、居心地の悪い不穏さがその光景にはあった。
「そうそう。それでね。なんかわたし歯垢が多いんだって」
「恥垢?」
「うん。だから今度その除去に行くんだけどね」
「え、そうなんだ……がんばって……」
 現在、我が国における認知症患者数は約四六二万人だと言われている。
「歯はやっぱり大事だよ。8020運動って知ってる? 八十歳までに歯を二十本残そうって運動ね。歯がないとまず食べられるものが限られてくるでしょ? こうやってお肉を食べるのもままならなくなったりしてね。そしたら栄養も偏ってくるよね。何一ついいことないんだよ。あとね、脅すつもりはないんだけど、歯周病で死ぬこともあるんだってよ」
歯周病で? たまったもんじゃない!」
「でしょ? 歯周病が悪化すると歯周病菌が血管の中に入り込んじゃってそこに血栓を作るらしいの。そしたら血管が詰まって心筋梗塞になることもあるんだって」
 男性はまた黙々と肉を口に運んでいる。あの虚ろな目。周囲のことなどもはや意識の外にあるとでも言わんばかりだ。ぼくは頭を振って意識を目の前のひなこに向ける。彼女は先程からぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべり続けているが、驚くほど頭に入ってこない。あの高齢者が次にどんな行動に移るのか、またその結果、店内にいる他の客がどのような反応を示すのか、ひなこでさえも黙るのか、すべてを同時に考えてしまっている。普段ならひなこが公共の場で下品な話を始めようものなら鋭く制止し、「ここは実家か」との強烈な一言で沈黙を強要してみせるのだが、今のぼくは明らかに動揺している。ぼくとしたことが……なんて思う一方で、先ほどひなこの話していたコスプレイヤーのことをふと思い出してしてしまう。

 まさかあのジジイ……。

「でね、一度歯を磨いたあとに、そのまま普通に生活するでしょ? そしたら九時間後、口内の虫歯菌は約三十倍にも増殖しているんだって。だから歯を磨き忘れるって、実はかなりやばいことなんだって。口臭の原因にもなるしね。口臭といえば、それは歯周病が進行しているというサインでもあるから、本当はちゃんと言ってあげたほうがいいんだよね? でも難しくない? あなた口臭いですよとは流石に言わないとしても、歯周病とかチェックしてみたらどうですか? って言われてもさ、あ、じゃあわたし口臭かったんだって遅れて気づくだけダメージでかい気がしない?」
「なるほど」
「なにがなるほどなのよ。よく考えてみてよ。だって遠まわしに言われた方がつらいことって世の中あるじゃん? 例えばそうだね、まあいまはなにも思いつかないけど、臭いに関しては全般きついよね。そうそう、わたしの高校のころの現文の先生がさ、キモイよりクサイの方が人を傷つけるんだって言ってたよ。なんかいまふと思い出しちゃったな」
「なあ、ひなこ」
「ん? この肉食べていいよ。わたしちょっと休憩」
「聞けって。ひなこの斜め後ろの席におじいさん座ってるのわかるだろ? あ、ばか、振り返るなよ」
「え、なになになに。なんなの。その人がなに?」
「いや、べつにこれといってどうって話でもないんだけど、もしかしてと思って」
「え、芸能人?」
「違うよ。さっきひなこ、駅前で見かけたコスプレイヤーの話してただろ? ほら陰毛がどうのこうのって」
「ああ、陰謀ね。それがどうした?」
「ぼくもね、あの話聞いてたときはいまいち想像できなかったんだけど、なんかちょっと分かる気がするんだ。というのも、あのおじいさんを見てるとちょっと変でさ。ずっと肉食ってるの」
「うちらもそうじゃん」
「もっとずっと食ってるの。もうずっと。ひなこがいろんな話してる間もおれずっとその食べっぷりに圧倒されててさ。ひなこの話ぜんぜん頭の中に入ってこないの。もうほんとうに集中できない。集中できないのにどんどんガーガー喋ってるから、しまいには殺したくなってきたんだけど」
「言ってよ」
「いや、男にはよくあることだよ。それで本題はここからなんだけど、あのおじいさん、もしかしてひなこの話していたような、実験を行っている人なのかもしれない」
 しばらく目を伏せて動かなくなったひなこが、はっとした表情をする。
「どうしよう」
「いや、どうせ害はないんだろうから、ほうっておけばいいんだろうけど」
「でもわたしに続いてタツヒコまで実験の対象になるって、やっぱりなにか理由があるんじゃない? どうしよう、なんかやばいことに巻き込まれてたら……」
「いいから落ち着けよ。気づいたことを勘付かれるのが一番危険な気がする」
 ぼくとひなこは静かに肉を焼き、静かに肉を食べた。さっきまでの饒舌さはどこへやら、ひなこはお葬式のような面持ちだ。お葬式といえば人の死だが、そもそも人の死とは、往々にして突拍子もない訪れを見せるものだ。ぼくらの生活とは、日々その可能性を孕みながら流れていくのである。こうやってひなことぼくが立て続けに奇怪な行動を見せる人物と遭遇している現状、思考の混乱、得体の知れない恐怖だって元をたどれば、ぼくらがいつ死に見舞われるかわからないという無邪気で残酷な可能性に喚起される至極原始的な感情なのかもしれない。ぼくはひなこを見つめる。ぷるぷると震えながら肉を食むその姿は、ぼくをより不安にさせる。それは逆説的に、彼女とのこの時間、この日々を奪われたくないという確固たる証左なのだ。ぼくは彼女と明日も明後日も楽しく、温かく、にこにこ笑い合って生きていきたい。同じ時間を共有したい。そう思った途端、ぼくは伏せた両の目が熱を帯びていくのを感じる。ああ、そうだ。ぼくはもっと彼女の話を真剣に聴いておけばよかったのだ。審判的態度をとらず、感情表現を意図的に促し、ふたりの時間をより心地のいい、かけがえのないものにするべきだったのだ。ごめんよ、ひなこ。ぼくは声を出さずに彼女に語りかける。彼女は肉を咀嚼する。ひなこ。君が肉を噛んで、ああ美味しいと思ってくれているのであれば、それ以上の幸せなんてない。余計な不安に晒されることなく、心地のいい場所で風に吹かれていてほしい。どうかこのぼくに、そのお供をさせてはくれないだろうか?
 ぼくはサラダ用に取っておいたフォークをズボンのポケットに忍ばせる。手は震えているが、声はなんとか抑えることができた。
「ひなこ、動揺せずに、聞いてほしいんだ」
 彼女は噛み切っている途中の肉を口にぶらさげながら肩をこわばらせる。
「んん……?」
「ひなこの言うとおりかもしれない」
「やめてよ、どういうこと? こわい、ちゃんと説明して」
「落ち着いて。動揺せずに」
 コスプレイヤーの陰毛。
 高齢者問題、認知症
 歯。
 愛。
 ひなこ。
 ぼくは微笑み、ひなこの震える手を握る。

「ひなこ。愛してる」

 ぼくは席から立ち上がり、依然として肉を口に運び続けている虚ろな目の高齢男性に歩み寄る。
 ポケットの中のフォークを強く握り締めながら。
「タツヒコ!」
 ひなこの呼ぶ声がする。でもぼくは振り返らない。
「あの、すみませんが」
 そう声をかけた瞬間、ぼくの声を合図としたように目の前の高齢男性が地獄の底から響くような声を漏らした。
 口から溢れる嘔吐物。
 網の上に降り注いだそれは、高熱により瞬く間に気化して立ちのぼり、その悪臭でもって店内にいるすべての者の嘔吐を誘発した。

 

 

 

 

書き下ろし短編:『上司を殺せ!』

創作

 二杯目のビールがなくなるころになって、サカモトが「中嶋を殺しませんか?」と口に出したとき、カスガは「あ、それいいね」と間を置かずに返した。もちろん冗談だと思っていたからだったが、それは違ったし、カスガ自身、本気だといいなとも思っていた。
 サカモトはカスガの同期であったが、配属先が違った。どちらにせよ中嶋という上司との接点があった。中嶋は全体を総括する部署に在籍しており、日々あらゆる社員に罵声を浴びせていた。百歩譲るとして、そこに愛があるのならとカスガは思う。しかし中嶋のそれは衝動的な感情の暴投であり、増えるワカメに注がれる水と同じで、みんなのストレスを何倍にも膨らまし、神経を削り取っていた。
「尊敬できる人間だったら、ある程度は我慢できるんすけどね」
 サカモトは口の片端を持ち上げて力なく笑う。仕事を始めて十キロ太ったと言っていた。もともとふくよかな体型をしていたサカモトだが、ストレスの影響は明らかだった。
「あのクソ野郎、めちゃくちゃじゃないすか? 異常ですよ。おれこの前あいつが営業のアマミヤさんに話してんの聞いたっすよ。中嶋、休みの日パチンコしかやってないんすよ。あとキャバクラ。この二つしか趣味ないんですって。いやいや、あの人もう四十らしいんすよ。で、結婚もしてないし子供もいないじゃないですか。なんか若いころヤンチャしてたとかで、親ともほぼ勘当状態らしいですし、こんな話、自慢気にしますか? おまえ何歳なんだって。いつまで馬鹿な中学生みたいな精神で生きてんだって。もう絶対若い奴のこと妬んでるんすよ。いやわかんないすよ? でも潜在意識でとか、心のどこかでは絶対よくは思ってないじゃないですか? 自分には未来がないからあんなクソみたいな会社にしがみついて若い後輩怒鳴り散らしたりシカトするしかないんですよ。逆に哀れっすよ。いや、同情しないすけどね。おえ。あ、ほんとに吐きそう」
 サカモトは現在精神科に通院中の身であり、日付の箇所だけを空白にした手書きの退職届をお守りとして毎日鞄に忍ばせていると言った。カスガも中嶋のせいで、入社時より五キロほど痩せたクチだ。他のもろもろには慣れてきたというのに、中嶋に関しては一向に馴染めなかった。というのも、中嶋は罵倒による手応えを感じられなくなると、手を替え品を替え攻撃を継続する陰湿さを持っていた。こちらがうっかり麻痺した態度を見せるや否や、無闇矢鱈と机を叩いたり、椅子を蹴り上げるなどして、遠まわしな威嚇を始めたりした。
「周りも中嶋の横暴にはノータッチだもんなあ」
 カスガはジョッキの底に薄く残った黄色い液体を眺めながら、深い息を吐いた。中嶋の質の悪いところは、分け隔てなく部下を攻撃するわけではないところにあった。例えば事務のオカエという女性社員には気さくに声をかけていたし、自分を慕う者には(例えそれがまやかしの敬慕だとしても)理不尽な言動で接することはなかった。カスガもサカモトも、よりにもよって自分があんな人間に睨まれてしまったのだという事実に疲弊しているところがあった。周囲の人間との扱いの落差に打ちのめされていた。なんでおれなんだよ、ちょっと内気なだけじゃねえかとカスガは思っていたし、なんでおれなんだよ、ちょっとデブで要領悪くて汗っかきで気が弱いだけじゃねえかとサカモトは思っていた。ただでさえ拘束時間が長く激務続きの毎日だというのに、なぜあのような人間の近くで圧を感じなければならないのだという怒りと悲しみから、家具に当たったり、枕に顔をうずめて泣いたりすることも少なくなかった。
「はあ」
 サカモトの溜息を合図に、長い沈黙が訪れた。カスガはまた明日になれば中嶋に会わなければならないこと、様々な理不尽に耐えなければならないことなどを考えてうんざりしていた。サカモトは先月退職した営業のヤスダさんのこと、先々月退職したタカハシさんのことを思い出し、しんみりしていた。ヤスダさんはある日の朝、出社して早々に、会社の入口で嘔吐し倒れた。救急車で運ばれ、休職に入り、そのまま辞めてしまった。タカハシさんは神経症を発症し、休職に入り、そのまま辞めてしまった。ヤスダさんもタカハシさんも中嶋に目の敵にされていた人物だった。二人の休職を知った際の、中嶋のあの蔑むような顔を、サカモトはお風呂に入っている最中などに思い出しては、全身をこわばらせ唸り声を上げた。
 殺してやる。

 亡き二人のためにも。
 ビールをおかわりしたカスガとサカモトは、キャバクラ好きという中嶋の特性を活かして、飲みに誘い、泥酔にまで持ち込んだあと、近くを走る高速道路に高架から投げ入れ、大型トラックに轢き潰してもらう計画を訥々と話し合った。はじめこそ、酒の勢いで出た戯言のように捉えていたのだが、話が進むにつれ、ふたりはああ、これは本当に実行する他ないなあ、と思うようになっていた。

 

 実行日まではすぐだった。計画のようなものがぼんやり形づけられていくにつれ、ふたりともいてもたってもいられなくなったのだ。
 ふたりは会社の廊下やトイレで鉢合わせた際にも、会話をすることを避けて過ごした。シンプルな計画の内容などは、すべて頭の中に叩き込んであった。
 その日も中嶋は電話越しに相手を罵倒し、報告に現れたヒラヤマさんを慇懃無礼な態度で長時間に渡り“指導”した。ヒラヤマさんは先月の頭に中途採用で入ってきた初老の男性で、どう見ても中嶋より歳を召していたのだが、小刻みに頭を下げる態度や、声の小ささから、格好の餌食となっていたのだった。高齢者虐待だ、とサカモトは怒りを禁じ得なかったが、それもすべて計画実行へのモチベーションに転化した。
 その日は金曜で、中嶋がお気に入りの飲み屋に向かうことはリサーチ済みであった。カスガは作戦にあたり、自宅アパートを提供する算段となっていた。キャバクラ帰りの中嶋に偶然を装って声をかけ、飲みに誘い、タクシーに乗せて部屋まで誘い込むのだ。中嶋は後輩のそういうお誘いを自分への信奉としてごく当たり前のように捉えるであろうから、意外と有効な計画に思えた。普段からそうやって器用におべっかを使えていれば苦労しないのだが、これがなかなか難しいのであった。しかしいざ対象を殺害するとなると、人は大抵のことなら勢いでこなせてしまうようになるのだと、カスガは実感し、浮ついた。
 部屋に誘い込むことに成功すれば、あとはサカモトの出番である。大学時代に遭遇したという飲みの席での集団昏倒事件を参考に、大勢を意識不明にまで追い込んだというスペシャルサワーを中嶋に煽らせ、レンタカーに連れ込み高架まで運ぶのだ。
 すべては恐ろしいほど滞りなく進んだ。中嶋は暴力的なアルコール度数を誇るスペシャルサワーによってカスガ宅の真ん中で大の字になった。顔は部下を叱責する際と同じくらい赤くむくれ上がり、それがよりふたりを殺る気にさせた。ふと、ここまでの足取りを誰かに把握されていないかと不安に思ったカスガが、中嶋の携帯電話を取り出してあれこれ調べ始めた。そばで見守っていたサカモトだったが、カスガの顔が強張るのが見てとれた。


 中ちゃん @na_ka_chandesu 1時間前
偶然会った後輩に誘われて飲み。まさかの宅飲みという。天変地異でも起こるんじゃないか


「こいつ、Twitterなんてしてやがる!」
 カスガが叫べばサカモトも画面を覗く。「くそが……」
 アイコンは咥えタバコをした中嶋自身の横顔だった。加工までしてある。サカモトは歯を食いしばった。
「誰と会ったかまでは明言してないけど、これじゃあ計画に綻びが出てしまうな」
 不安げなカスガにサカモトはtweetの削除を提案した。確認するとフォロワーも二十名ちょっとしかおらず、彼女もおらず、家族とも疎遠なのであれば、この二十数名は会社のくだらないおべっか使いやキャバ嬢の類に違いない。いますぐ削除すれば、なにも起こらなかったことにできるはずだ。カスガは言われるまま削除をし、着ていた服で携帯をまんべんなく拭った。
「車、下まで回してきます」
 サカモトはこの日のために、三日前からレンタカーを借りていた。外に飛び出すと、眩い月が浮かんでいるだけで、表に人の気配はなかった。すべては滞りなく進む。まるでこれが神の与えたもうた使命であるかのように。世界一有名なテロリストを殺したネイビーシールズのように、おれたちが今夜中嶋を殺すのである。揺るぎのない大義に突き動かされている今、なにも怖いものはなかった。たとえ今ここで巡回中のパトカーに見つかったところで、警官たちは精悍な顔つきで敬礼をくれるはずだとすら思えた。
 ふたりで中嶋を運ぶ際も、あたかも介抱しているという体で、だいじょうぶですか、ははは、飲みすぎですよなどと、小声で囁き続けた。
「じゃあ、運転お願いね。おれ、飲んじゃってるから」
 助手席のカスガに促されるままサカモトは車を発進させる。目的地はここから十五分ほどのところだった。車内の沈黙に耐え兼ねて、ふたりは社歌を歌った。入社してすぐの研修で、喉が枯れるほど歌わされたものだ。月が綺麗だなと、カスガは思った。ふたりはどちらからともなく声を震わせ、やがて涙を流しながらも、社歌を歌い続けた。こんな歌、コブクロ以下だ! そう思っていた時期も遥か遠い。ふたりは歌いながら頭を左右に細かく振り、感情の昂ぶりを表現し続けた。あっというまに目的地の高架にたどり着く。道路脇に停車すると、ふたりはシートに頭を預け、静かに呼吸を繰り返したあと、互いに視線を交わし、後部座席に横たわる中嶋を担ぎ出すため車外に出る。会社にいるときの自分よりも、はるかに先を読めていた。はるかに能率的だった。そんな自分がとても誇らしかった。カスガが中嶋の足を引っ張り、滑り出てきた上体をサカモトが支えた。高架下では、とぎれとぎれではあるが大型のトラックが鈍い振動とともに往来している。ふたりは一旦中嶋を地面に置くと、これからこの男が有終の美を飾る道路を見下ろした。アスファルトはオレンジ色の該当に照らされ、どこか暖かな雰囲気さえある。
 ふたりしてしばらくじっとしていた。やがてカスガが「じゃあ、そろそろ」と言って腰をかがめ、中嶋の足を取る。しかし、サカモトは依然として動きを見せなかった。訝しく思ったカスガが声をかけると、サカモトは小さな声でつぶやくのだった。
「こんな時間に、みんなどこ行くんすかね」
 言葉をなくすカスガ。サカモトは迷いの滲む二つの眼でカスガを正視する。
「これ、轢いちゃったドライバーに悪くないですかね……」
「なにいってんのサカモトくん」
「だって、関係ないじゃないですか。こんな時間に運転して、頑張って働いて、家族とか養ってるんじゃないですかね」
「こんなときにやめてよ」
「人生めちゃくちゃになっちゃうじゃないですか」
 サカモトは泣いていた。鼻がつまり、ゴボッとむせた。おれたちはすでにめちゃくちゃじゃないか、とカスガは言った。毎朝起きて薬飲んで出社して、食欲もないのに冷たい弁当食べて、この男の言動に耐えて耐えて耐えて、なのに給料は雀の涙だしさ、忙しすぎて転職活動する暇もないよ、せめてほかの人間がよければとか思うけど、みんな自分が標的にならないように事なかれを貫いててさ、なんなら一緒になって陰口だって言うしさ、薬が切れれば精神科にまた行って、それをこれから先もずっと続けていくんだよ、身体が動かなくなるのを待ち続けるだけの日々なんだぜ、めちゃくちゃだよ、貯金も全然たまらないし、親は言うよ、人生設計をしっかりって、ちょっとまってくれよ、人生設計なんてさ、ある程度の土台がなきゃ考えようもないじゃん、ぶら下げられたまま殴られるサンドバッグだよ、自殺したってさ、こいつはじゃあどうなるっていうんだよ、お咎めなしじゃん、そんなの納得できないだろ、なあサカモトくん、おれたちはこいつを消すことで、ようやく次に進めるんじゃないかな、そう思ったから、今日はこうやって、ほら、もうここまできたんじゃん、いいじゃんもう、ほかの人のことなんて考えてられないよ、そんな余裕ないんだよ、もうどうるするんだよ、どうすればいいんだよじゃあ……。
 カスガもとめどなく溢れる涙に声をなくした。ふたりはそのまま昏倒した中嶋をはさんで、声を殺して泣き続けた。
「だめだできない」
 カスガの言葉にサカモトは跪いた。「ここじゃなきゃいいんですよ」サカモトは依然として嗚咽を繰り返しながら、言葉を絞り出した。
「ここで殺すのはやめましょうってことなんですよう」
 今度はバーベキューにでも誘って、大自然の力を借りましょう。泥酔させて川に放り込めばすぐですよ。サカモトの言葉に、最初からそうすればよかったねと、助手席のカスガが答えた。おれたち、仕事できねえからな。ふたりは泣きながら笑った。もうすぐ朝になる。中嶋を乗せたまま、しばらくドライブをした。サカモトは会社でのカラオケでいつか歌おうと練習していた『明日があるさ』のウルフルズバージョンを小さな声で歌い続けた。
 カスガは途中で寝てしまった。湿った瞳に、朝日が突き刺さるようだった。カスガはその後、ひどい二日酔いを訴える中嶋と丸一日自室で共に過ごした。水を与え、インスタントの味噌汁を出した。味噌汁を飲んだ中嶋は、腫れぼったい目をどろっと動かし、「なんもねえ部屋」と吐き捨てた。

 

 それから一週間も経たずにに中嶋は死んだ。
 ふたりがバーベキューに誘ったわけでも、大自然の力を借りたわけでもなかった。
 会社で、ヒラヤマさんの手によって殺されたのである。
 ヒラヤマさんは朝一で中嶋の罵声を浴びた直後、すみません、すみませんと繰り返しながら、中嶋の口に両手をねじ込み、力任せにこじ開けるとそのまま顎を上下に引き裂いてしまったのだ。オフィスは阿鼻叫喚。吹きこぼれる血がぼたぼたとタイルの上で跳ね、ハウリングするマイクのような声を上げていたかと思った中嶋も、やがてぴたりと静かになった。血を浴びたヒラヤマさんはその場に立つ尽くし、相変わらずすみませんと繰り返しながら、下顎がぼろりと垂れ下がった力のない中嶋をそっと地面に置いた。
 そこから先は誰も見ていない。避難や通報で忙しかったのである。
 カスガとサカモトは中嶋のいなくなった会社でその後もしばらく働いていたが、そもそも根本からしてずさんな労働環境であったため、ほどなくして退職。いまはそれぞれの未来を見つめて動き始めている。
 カスガは刑務所内のヒラヤマさんに何度か手紙を書いた。ヒラヤマさんのお陰で、平穏な日々が訪れました。お勤めが終わりましたら、一緒にお酒を飲みましょう。ヒラヤマさんから一度だけ、厚みのある封筒が返ってきた。そこには手紙への感謝の言葉や、ヒラヤマさんのこれまでの人生、自分の犯した罪への懺悔が、丁寧な文章で長々と綴られていた。カスガはその手紙を、久々に飲むこととなったサカモトにも読ませることにした。ヒラヤマさんはおれたちの恩人だな。感謝してもしきれないよ。そう呟いて焼き鳥を頬張るカスガだったが、サカモトがふとつぶやく。
「これ、縦読みじゃないですか?」
「え、うそ」
 カスガは身を乗り出して便箋を覗き込む。
「なんて書いてある?」

 




度、



































た。

























す。






































































す。







なっ









メッ













し、



































い。













 

 

 

 


 ふたりはしばらくじっとしたり、手紙を読み返したりして過ごした。カスガはジョッキを空にする。
「まあよくわかんないけど、ヒラヤマさんも新たな一歩を踏み出したってことだ。すごいなあ。おれたちも頑張らなきゃ」
「いやあ、ほんとそうすね」
「乾杯しようよ」
「しましょうか」
「中嶋の死に?」
「ヒラヤマさんの再就職に」
「すべての働く人々に」


 乾杯。


       ◆◆◆◆◆◆


【大阪・生野 コーヒーに農薬混入 派遣社員を逮捕】
【オフィス内で刃物振り回す 男女2名重傷 社員を逮捕】
【「部下数名に襲われた」三軒茶屋の路上で暴行 飲みの席での叱責が原因か】
【デスクにガソリン 重傷社員の遺書発見「覚悟を見せる」 三重県
【会議に猟銃 大手町発砲事件 役員2名死亡】
【逮捕社員「練馬の事件に影響を受けた」】
【特集「キレる部下・消される上司」】
【崩壊するブラック企業 増幅した殺意の発露】
【特集「伝染する暴力・オフィスアタックシンドローム」】
【社内暴力が多発 全国で1567件】
厚生労働大臣「労働環境の抜本的改善が必要」】

 

 

ドラマ版『ハンニバル』を観た(season3)

ドラマ

 

 

 

残酷で陰鬱でリッチなドラマ『ハンニバル』 にどハマリしたぼくは、変に間をあけてはならぬと意気込み、世に言うIkkimi(一気観)を敢行したのであった!

 

【警告】以下ネタバレあり

 

season1~2までのあらすじ

 

FBIアカデミーの講師ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)は、自閉症スペクトラムの一種として異常なまでの共感能力を有していた。そんな彼の能力を買ったFBI行動分析課のボス、ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は、アメリカ各地で起こる事件の捜査協力者としてウィルの起用を提案する。しかしFBIコンサルタントで元心理学者のアラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)は精神的な負荷を懸念してウィルの起用に反対。そこでジャックは起用の条件として、高名な精神科医ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)にウィルの精神鑑定を依頼。かくして全米各地で起こる猟奇事件の捜査が始まるのだった。

 

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しかし、最強極悪サイコパス・レクターの策略により殺人の容疑をかけられたウィル。彼は拘留中の身でありながら殺人事件を解決に導いたり対レクター用サイコパスを送りつけるなどして善戦。なんとか無実も証明されて釈放となった彼は、いよいよレクターと全面戦争を始める……かと思いきや、そこに食肉加工会社を経営する変態大富豪メイスン・ヴァージャーが登場。ウィルは彼の妹マーゴを妊娠させたり、どういうわけかレクターと蜜月の時を過ごしたりと大忙し。挙句の果てにはレクターといっしょに海外へ逃亡しようとの計画も動き出す。バカ!しっかりしろよ!しかしすべてはレクター逮捕のために仕組んだ作戦だった。決戦の夜、FBI捜査官のジャックとレクターは激しく殺し合い、それを目撃したアラーナはレクターに篭絡されたアビゲイルに二階から突き落とされ、遅れて駆けつけたウィルもレクターの華麗な手さばきで開腹、追い打ちをかけるように目の前でアビゲイルの首まで裂かれてしまう。

 

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まんまと逃げおおせたレクター博士は、海外行きの飛行機の中で、かつて自らのセラピストだったベデリアと談笑するのだった……。

 

レクター逃亡編

 

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第1話『アンティパスト』

フランス・パリ。ハンニバル・レクターは身分を偽り生活していた。しかも優雅に。彼はローマン・フェルの出版パーティに出席。そこでローマンの助手だったというディモンドという青年に出会う。レクターはパーティの後、帰宅するローマンを殺害しその肝臓を食べる。

イタリア・フィレンツェ。前任者を排除することでカッボーニ宮の司書となったレクター。周囲にはデベリアを妻と説明し、高慢な教授に喧嘩を売られつつもその圧倒的知力をもって応答。穏やかな日々を過ごしていた。しかしそこで、フランスで出会った青年ディモンドと再会。協力し合えるはずだと持ちかけてくる彼を、レクターは食事に誘い、ベデリアの目の前で殺害。皮膚を剥がし、その遺体で「人間の心臓」を象ると、礼拝堂に飾るのだった。

 

おい、レクター!

ということで外国逃亡中も次から次へと人を殺し食すハンニバル・レクター。しっかり職に就いているという点からもその常軌を逸したバイタリティがうかがえます。なめた若造を殺害するまでは百歩譲るとしても、派手に装飾して人目につく場所に飾っちゃったらFBIは絶対気づくと思うんですけど、リスクをおかしてどうなるか、どう逃げおおせるかを考えるのが好きなんでしょうね。それともほかの意図が……?前シリーズのラストでめちゃくちゃにされた面々の安否が不明なのが気になるところです。

舞台をヨーロッパに移したことで全編厳かな雰囲気漂うあたりも癪に障りますね。

 

 

第2話『プリマヴェーラ目を覚ましたウィル。裂かれた腹は、レクターが致命傷にならないよう加減していたことを知る。イタリア・フィレンツェの「心臓」が飾られていた礼拝堂を訪れた彼は、これがレクターから自分に捧げられたメッセージだと察しとる。一方、イタリアのパッツィ捜査官は、レクターの犯行から20年前フィレンツェを震撼させた殺人鬼「イル・モストロ」と同一犯であると推理。ウィルに捜査協力を求める。

 

待ってました、我らがウィル・グラハム!

復活して早々にイタリア・フィレンツェを訪れ得意の見立てを披露していました。骨を砕き、皮を剥いで綺麗にたたまれた「心臓」がレクターから自分へのメッセージ。そんな彼を「許す」というウィル。なんだかラブストーリーのそれですが、アビゲイルも殺されているんだし、ちゃんと厳しく接してほしいものです。

 

 

第3話『セコンド』ウィルはレクターの故郷であるリトアニアに向かい、そこにある古城でひとり暮らす千代(TAO)と出会う。彼女はレクターの過去を知っている人物であり、地下にひとりの男を監禁している。一方レクターは無秩序モードに突入、喧嘩をふっかけてきた教授を食事に招くと、人肉を振るまい、そのこめかみにアイスピックを突き立てる。パッツィ捜査官はFBIのジャックに捜査協力を依頼し、イタリアまで呼び寄せる。

 

レクターの過去を調べるウィルの目の前に現れた千代。演じるTAOさんは『ウルヴァリン:SAMURAI』 ウルヴァリンと逃避行する女性だったり『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』 レックス・ルーサーの秘書を演じていた方です。ハンニバル・レクターといえばおばさんが「紫」という名前の日本人なのでその人の子供か孫か親戚とかでしょうか。

一方、満を辞してジャックの登場です。生きててよかった。元気そうなのもそうですけど、すっかり「虎の目」になっていたところも痺れますね。

イタリアに集う主要メンバー。嵐の予感がします。

 

ハンニバル・ハント編

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第4話『アペリティーヴォ』チルトン博士は生きていた。レクターへの復讐に燃える彼は、同じくレクターに顔をめちゃくちゃにされた大富豪メイスン・ヴァージャーのもとを訪れ、顔の傷を見せ合う。メイスンはレクターの情報に100万ドルの懸賞金をかけたという。コーデルという変態医師に身の回りの世話を任せ、ハンニバル狩りの用意を進めていた。同じく重傷を負ったアラーナも、レクターへの復讐のためメイスンのもとを訪れる。

 

第5話『コントルノ』ウィルは千代とレクター探しの旅に出るが、列車で移動中に彼女に突き落とされ大怪我を負う。パッツィ捜査官は大金目当てにメイスンにレクターの情報を売る。前金の条件として、レクターの指紋を持って来くるよう指示を出すメイスン。レクター博士に接近するパッツィ捜査官だが、狙いを見破られて昏睡状態に。目が覚めるとレクターに腹を裂かれ、紐で結ばれた状態で窓から落とされ死亡。撒き散らされた臓物を見下ろすレクターは、こちらを見上げるジャックの姿を見つける。ジャックの容赦なき暴力を受け、満身創痍のレクター。窓から突き落とされるが、足を引きずりつつ逃亡を図る。

 

第6話『ドルチェ』千代は単独でレクターを捜索。べデリアに接触を図り、私たちはレクターに囚われた鳥だと話す。ウィルはレクターと再開。レクターは喜びを口にするが、ウィルは隠し持っていたナイフでレクターを狙う。そんなウィルを狙撃する千代。レクターは治療に見せかけウィルを拉致すると薬を打って椅子に固定、食卓につかせる。一方、教授宅を訪問しようとしていたジャックがドアを開けると拘束されたウィル。レクターに隙を突かれ拉致されたジャックも同じように椅子に固定。ジャックの目の前でウィルの頭蓋骨を切開し、脳を披露すると告げるレクター。叫ぶジャック。

ウィルが目を覚ますと、そこはメイスンの牧場だった。

 

第7話『ディジェスティーヴォ』メイスンに買収された捜査官たちに踏み込まれたレクターはそのまま捕まる。同じく連れて行かれるウィル。残ったジャックに銃を向ける捜査官だったが、千代による狙撃で難を逃れる。一方、メイスンに拉致されたレクターは、変態医師コーデルに烙印を押され、自身の調理過程を説明される。メイスンはウィルの顔面の皮膚を自らに移植し、その顔でレクターを食す計画を立てていた。メイスン邸で再会するウィルとアラーナ。アラーナはウィルを救うため、レクターを解放する。メイスンが麻酔から目覚めると、顔面にはウィルのものではない皮膚がかぶせられていた。目の前には妹マーゴとアラーナ。ふたりはメイスンから精液を採取したことを告げると、水槽に突き落とし、ウツボに食い殺させるのだった。ウィルを連れて逃げおおせたレクター。自宅で目覚めたウィルは、そばにいたレクターに対し、「もうあなたのことを考えたくない」と告げる。その後現れるFBI。逃げたと思われていたレクターは自ら投降する。

 

レクターにひどいことをされた面々が集っての復讐大会。

金と暴力にものをいわせるメイスン。

「二度目はそうはいかない」とばかりに知略を巡らせた容赦のない攻撃でレクターをボコボコにしてみせたジャック。

肝心のウィルは……千代に邪魔されたあげくに開頭されかけ、さらには顔の皮まで剥がされかける始末(ぜんぶ未遂)。傷だらけのヒロインって感じでしたね。一連の話は映画『ハンニバル』 でも描かれていたものですが、メイスンのたどる結末に関しては原作通りみたいです。

そんなこんなでウィルにふられてしまったレクターは、ついに逮捕されます。これまでに一体何人の犠牲者が出たのやら。ここからはいよいよ映画で描かれてきたような、安楽椅子探偵ライクなレクターが拝めそうで、一安心です。

 

 

レッド・ドラゴン

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第8話『レッド・ドラゴン~序章~』

フランシス・ダラハイドという男がいた。彼はウィリアム・ブレイクの水彩画『大いなる赤き竜と日をまとう女』に並ならぬ執着を示していた。彼は自らの背中に「赤い竜」のタトゥーを入れ、乱杭の入れ歯を手に入れる。 

殺人鬼ハンニバル・レクター逮捕から3年。彼は大勢の人間を殺害下にも関わらず、精神異常を理由に死刑を免れていた。ウィルは結婚して家庭を持ち、たくさんの犬たちといっしょに穏やかな日々を送っている。そんな中、「噛みつき魔」による殺人事件が立て続けに発生する。ジャックは操作協力を求めるためウィルのもとを訪れる。同じ頃、ウィルにはレクター博士からの手紙が届いており、そこには「ジャックに協力するな」との内容が書かれていた。しかしウィルは、妻の後押しもあり、捜査への協力を承諾するのだった。

 

ついに 映画化もされた『レッド・ドラゴン』編に突入です。

身持ちを固めたウィルと、精神病院でも相変わらずのレクター。捜査に乗り出すにあたって、ふたりは久々に再会するとのことですが、嫌な予感しかしません。ウィルに家族がいるなら尚更です。

一方で、「噛みつき魔」ことダラハイド。しっかり身体を鍛えているのは、どういうことなんでしょうか。タトゥーを綺麗に見せるためなのでしょうか。変身願望のある人物なので、そういった心理から鍛えているのかもしれません。ぼくも嫌なことがあった日のあとは、髪を切ったりお風呂に入ったり筋トレしたりと、自分を「更新」させるのでなんとなく気持ちがわかる気もします、という余談。

 

 

第9話『レッド・ドラゴン~誕生~』

レクターは面会に現れたウィルに子供がいることを見抜く。レクターのプロファイリングによれば、犯人は内向的な性格で、醜い容姿、あるいは自らを醜いと思っている人物。被害者一家の選別に関しては、家にヒントがあるはずだ、庭に注目してみるといい、と助言した。「噛みつき魔」ダラハイドは、盲目の女性と惹かれあう。

 

映画と同じように物語が進んでいくので、思い出しながら楽しんでいます。ダラハイドと女性の物語は結構切なかった気もします。孤独な魂が共鳴して、そこにひとつの美しい瞬間が生まれるのであれば、それはそれで物語としてひとつの完結を迎えたっていいとぼくは思いますが、残念なことにこの世界にはレクターがいるんですね。混沌をもたらして楽しむという、その実子供っぽすぎる幼稚な欲求に辟易します。ダラハイドもレクターなんかを崇拝しなければ……。

悔やまれます。

 

 

第10話『レッド・ドラゴン~覚醒~』

弁護士を名乗ってレクターに電話をかけるダラハイド。彼は「あなただけが理解者だ」と述べる。盲目の女性リーバと動物園へ向かったダラハイドは、彼女に麻酔で眠らされた虎に触れさせる。涙を流すリーバ。彼女を自宅に招き、愛を深め合う二人。ダラハイドにはリーバが女神に見えていた。事件現場の庭の樹に刻まれていた「中」の文字。それは「レッド・ドラゴン」を意味すると伝えたウィルに、レクターはウィリアム・ブレイクの絵の話を伝える。さっそくウィルが実物を見に美術館に赴くと、そこには先客のダラハイドがおり、揉み合いの末に逃げられてしまう。

 

やはりダラハイドとリーバの関係は切ないですね。後半ではまさかのウィルとダラハイドがエンカウント。ウィルはぶん投げられていました。やはり体を鍛えていることもあって、ダラハイドはフィジカル面でも強敵なのかもしれません。

 

 

第11話『レッド・ドラゴン~葛藤~』

レクターの誘導により、ダラハイドはウィル家を襲撃する。ウィルの妻はいち早く気配を察知し、息子を連れて逃走。間一髪で逃れられたかと思いきや、肩に被弾してしまう。

 

でましたね、レクターの悪行。しかしウィルの奥さんが肝っ玉母さんでなによりでした。とはいえ重傷を負い、息子は父の過去を知ってしょんぼり。散々です。

残すところあと2話。この時点ですでに映画とは違う「レッド・ドラゴン」との決着のつけ方に期待が高まります。

 

 

第12話『レッド・ドラゴン~暴走~』

家族との絆に危機感を覚えた ウィルはベデリアのもとでセラピーを受ける。FBIは雑誌に扇情的な記事を書くことで、「レッド・ドラゴン」を誘い出す計画を立てる。協力者でもあるチルトン博士だったが、ダラハイドによって拉致される。拘束されたチルトン博士はダラハイドからさんざん脅迫を受けたあと、唇を噛み切られ、生きたまま焼かれてしまう。

 

チルトン博士はこのシリーズ一不憫です。かつては殺人鬼に腹を割かれて臓器を取られ、レクターに罪をなすりつけられた挙句に顔面を銃撃されたかと思えば今回の仕打ち。あんまりですね。すべてはレクターが醸すバイブスとそれに感化された周囲の責任。ということで相変わらずハンニバル・レクターへの怒りに燃える回でした。にも関わらず、ウィルはといえばレクターからの愛に気づいてハッとするなどずいぶんと暢気なものです。

ということでついに次回で最終話。大団円と行くのでしょうか。 

 

 

第13話『羊の怒り』

殺人を犯したことをリーバに告白し、ショットガンで自らの頭を吹き飛ばしたダラハイド。しかしそれは彼の偽装工作だった。レッド・ドラゴンを捕まえるため、レクターを囮とした作戦を実行するウィル。レクターの移送中、警察用車両に乗ったダラハイドが急襲。警察官を大勢殺害するが、肝心のレクターは放置。ウィルとレクターは逃避行を開始する。向かった先はレクターがアビゲイルと身を寄せ合っていたという別荘。ワインでの乾杯を前に、ダラハイドが再び襲撃。腹に被弾したレクター。ナイフで頬を突き刺されたウィルは反撃に出る。レクター&ウィルの必死の攻撃によって「レッド・ドラゴン」ことフランシス・ダラハイドは絶命。満身創痍のふたりは、抱き合いながら崖下の海へと落ちていくのだった。

 

最終回ということもあって「レッド・ドラゴン」の恐ろしい戦闘力が発揮されていました。ドライブバイで車列を混乱させたあと、いったい何人の警官を射殺したのでしょうか。なんにせよ、そこから始まるウィル&レクターの逃避行に愕然。なるほど、というか最初の方からずっと気づいていましたが、作り手は今作を倒錯したラブストーリーとして描いていたようです。そういう意味ではジジイの目線で見た『殺し屋1』 みたいなもんですね。仲違いばかりしていたふたりが、最後の最後に協力して恋の邪魔者をボコボコにする。美しいと思います。

 

 

 

全話完走の感想

 

は~終わった!

ということで『ハンニバル』season3もこれにて終了。打ち切りだなんだという噂は耳にしていますが、このラストを見ると初めから終わらせる気満々だったようにも思えます。撮影中に打ち切りが決まったからこのオチにしたとかそういうことでしょうか?どちらにせよ、物語的なオチもついてぼくは満足です。

全39話を鑑賞したことになるのですが、season1の「びっくり猟奇大会」みたいなテンポが個人的には好みですね。様々な死体を見ているだけで元が取れる、といった気持ちになれました。レクターに厳しくしろ!との思いはモーフィアスことジャック・クロフォードが代弁するかのように熾烈な暴力をお見舞いしてくれたのである程度満足です。それにしてもseason3の最終話のタイトルが『羊の怒り』ということなので、どうしたって『羊たちの沈黙』 を意識せざるを得ません。やはりseason4の制作は念頭に置いていたのかも。噂では、いろいろと準備さえ整えばseason4だってやるよ、と製作者の方がおっしゃっていたそうなので、俄然期待しておきます。それまではトマス・ハリスの原作 でも読もうかな。クラリス役は誰になるのでしょうか、とかそういうことを考えながら、準備を整えておきましょう。

バッファロー・ビルのチン隠しダンスは絶対観たい!!!

 

 

ドラマ版『ハンニバル』を観た(season2)

ドラマ

 

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残酷で陰鬱でリッチなドラマ『ハンニバル』 にどハマリしたぼくは、変に間をあけてはならぬと意気込み、世に言うIkkimi(一気観)を敢行したのであった。

 

【警告】以下ネタバレあり

 

season1までのあらすじ

FBIアカデミーの講師ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)は、自閉症スペクトラムの一種として異常なまでの共感能力を有していた。そんな彼の能力を買ったFBI行動分析課のボス、ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は、アメリカ各地で起こる事件の捜査協力者としてウィルの起用を提案する。しかしFBIコンサルタントで元心理学者のアラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)は精神的な負荷を懸念してウィルの起用に反対。そこでジャックは起用の条件として、高名な精神科医ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)にウィルの精神鑑定を依頼。かくして全米各地で起こる猟奇事件の捜査が始まるのだった。

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

が、いろいろあった末にウィルは殺人容疑で逮捕されてしまう。

すべては元外科医の精神科医で美食家でありながら食人天才サイコパスという素顔を隠し持ったレクター博士の策略だった……。

 

 

 

第1話『懐石』FBI捜査官のジャックとレクター博士が壮絶な殺し合いをする。致命傷を負うジャック。物語は「12週間前」まで遡る……。ウィルのことを心配する面々と心配する演技を続けるレクター博士。その日々と併せて今回も事件が発生。川の中から大量の遺体が発見され、それらすべてに魚の剥製をつくる工程と同じ処理が施されていた。

 

冒頭からFBI捜査官ジャックとレクター博士の激しい殺し合いシークエンス。こちらが呆気にとられていると、そこから時間をさかのぼってみせるという憎い演出が。この作品に限らず、ドラマは「引き」をつくるためのためらいがないので楽しい。

一方でちゃんと殺人事件を起こしてくれるところもサービス過剰な感じでありがたいですね。

今回は大量の死体を使って「作品」を作るアーティストタイプの殺人鬼が登場。

過多な情報が錯綜するなか第2話へ。

 

 

第2話『先付』拘留中のウィルはレクター博士の動向を探るために、自らのセラピーを依頼する。一方、川からは新たに遺体が発見される。

 

一線を越えてくる相手に対し、こっちも一線を越えてやるというウィルの意気込み感じられる回でした。犯人の所業と、迎える結末にはハンニバル・レクターという男のいやらしいほどのカリスマが見てとれますね。相変わらず時間と労力のかかる異常な犯罪を犯すやつらが後を絶たないので、そういう意味でもリッチな気分に浸れる素晴らしいドラマだと思いました。

あと、レクター博士が悪いことを行う際に着用する透明な雨合羽みたいなやつ。あれを着て年末の大掃除などに励んだらテンションが上がりそうです。

 

 

 第3話『八寸』ウィルの裁判中に切断された耳が届けられる。その切断面から使用されたナイフはウィルに容疑がかけられている事件の証拠品であることが判明。保管庫の管理担当者が犯人か?と警察がその人物の家に突入したところ、トラップが作動し部屋が爆発。消火された部屋からは、保管庫管理担当の男が鹿の角に突き刺された状態で発見される。 

 

 鹿の角に突き刺された遺体はこれで何体目なのでしょうか。しかしこの一件のおかげで裁判中で動けないウィル以外の異常犯罪者が隠れているのでは?とみんなが思ってくれてひと安心。どうせレクターだろ、と思っていると、レクター以外の第三者の存在が匂わされ、さらに情報が混み合ってきます。ぼーっとしているとおいていかれてしまうのがこのドラマの魅力。最後の方でもう一体派手な遺体が出てきますが、そのころになるともはや異様な遺体ごときじゃ驚けなくなった自分に気づけます。

 

 

 第4話『炊合せ』ウィルは面会に来た行動科学捜査員のビヴァリーに、死体絵画の中央に位置していた人物を徹底的に調べるよう助言する。その人物こそ死体絵画を作成した張本人であり、レクターによる説得で自らアートの一部となった被害者であるとウィルは読んでいた。一方、森の中では新たな遺体が発見される。遺体の脳と眼球はくり抜かれ、そこに蜂たちが巣を作っていた。

 

人間養蜂場というseason1「人体きのこ栽培」に次ぐ異常な遺体の登場。

犯人の正体は善意を暴走させたロハス系サイコでしたが、みんないろんな技術を持っていて恐ろしいですね。一方で本筋であるレクター絡みの事件ですが、ウィルの助言によってビヴァリーがレクター宅に侵入し、「なにか」を発見。その背後に佇むレクター。銃声が轟いて次回へ。

主要キャラクターも平気な顔して退場させていく点も海外ドラマの醍醐味って感じがしてたまりません。

 

 

第5話『向付』ビヴァリーの切断遺体が発見される。ウィルは「彼女は僕を信じたから死んだ。同じことは繰り返さない」と宣言。精神病院の看護師であり彼のファンだと声をかけてきた保管庫担当職員惨殺事件の犯人を名乗る若い男を懐柔、レクター殺害を指示するのだった。

 

ビヴァリーのあまりにあんまりな切断遺体にドン引き。レクターの悪行&涼しい顔に怒りを禁じえません。そこにきてついに一線を越えるウィルの行動にも興奮。「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ」という『貞子vs伽椰子』 っぽい発想に胸が熱くなります。そんなウィルの刺客ですが、とはいえ天下のレクターと渡り合えるかと言ったら……意外と善戦していましたね。ジャックの登場がもう少し遅れていればレクターは死んでいたはずです。後一歩でした。彼の健闘を称えましょう。

 

 

第6話『蓋物』桜の木と一体化した遺体が発見される。ウィルはseason1に登場した殺人鬼ギデオンと接触し、レクターを挑発する。ウィルの策略に気づいたレクターは、ウィルと仲のいいFBIコンサルタントのブルームと寝る。また、二年前に「チェサピークの切り裂き魔」によって殺害されたと思われていたFBIアカデミーの訓練生ミリアムが発見される。

  

発生する猟奇殺人事件と並行して白熱するウィルvsレクター。ウィルはかつてレクターと接触した殺人鬼のギデオンと精神病院内で接触。一方のレクターはウィルの淡い恋心を弄びます。この過程でどんどん名も無きものたちが死んで行くので胸が痛い……。見張りの警官にだって人生があるんだぞ!

 

 

第7話『焼物』「チェサピークの切り裂き魔」の被害者であり唯一の生存者でもあるミリアム。彼女に面通しをしてもらうが、レクター博士には反応を見せない。一方でもうひとりの容疑者として浮上したのが精神病院の院長チルトン。彼の家に現れたレクター博士はチルトンを眠らせ、チルトン宅を訪問したふたりのFBI捜査官を派手に殺害。さらには四肢を切断されて死亡したギリアムの遺体も放置することでチルトンにすべての罪をなすりつける。ジャックに逮捕されたチルトンをマジックミラー越しに確認したミリアムは突然パニックに陥り、一瞬にして拳銃を奪い取るとチルトンの頭めがけて発砲してしまった。 

 

チルトン博士が不憫すぎる!全部の罪をなすりつけられ、挙句の果てに銃撃されるなんて。レクター博士の偽装工作技術はやや豪快すぎて、逆に疑われなさそうな感じが嫌ですね。細かいことはいいから撃っちゃえよ、というのは責任を持たない外野の意見でしかありませんし、ぼくらは事の成り行きを見守ることしかできません。

 

 

第8話『酢肴』死んだ馬の胎内から人間の遺体が発見される。勾留を解かれたウィルはレクター博士にセラピーの再開を依頼。一方、レクター博士のもとに通う女性患者マーゴは自らの兄を殺しかけたことをセラピーで報告。レクター博士守秘義務を守ると告げたあと、お兄さんを殺すことこそ一番の治療になると伝え、計画をさらに練るか、代行者を探すように助言する。

 

馬の胎内から遺体が発見され疑われる動物保護施設職員のピーターだけど、真犯人の正体はそのソーシャルワーカーという展開に唸らされました。レクター博士精神科医。犯人のソーシャルワーカーも含めて人を助ける立場を利用して弱者を操作する卑劣なやつら。福祉業界の暗部を見せられたような回でゾクゾクします。ちなみに新たな登場人物マーゴといえば原作『ハンニバル』 にも登場する大富豪メイスン・ヴァージャーの妹。『ハンニバル』的展開に突入しそうなので興奮します。ちなみにこの回の監督は『CUBE』 『スプライス』 ヴィンチェンゾ・ナタリです。「馬の胎内」とかそういう要素がぽかった気もします。

 

 

第9話『強肴』獣に襲われたかのような無残な惨殺死体が発見される。損傷は激しいながらも食べられた形跡がないことなどから、これは獣になりたいと願う人間の犯行だとウィルは推理。いろいろ調べた結果、レクター博士の患者の中に、かつてそのような願望を持った少年がいたことが発覚。現在、そのランドールという名の男性は博物館に勤めていた。

 

とても好きな回です。というのも「生まれ持った自分の肉体に違和感を覚えながら生活してきた“獣”の心を持った男」というランドールのキャラクターが素晴らしい。また動物の骨で作成したアーマーで武装して、夜な夜な人間を狩るという行動もさることながら、かつてお世話になったレクターに操られウィルを殺しに向かうという展開も楽しかったです。しかもウィルが見事返り討ちにしてランドールの亡骸を持参しレクター邸に現れるシーンもクール。神経衰弱王子ウィルというよりはすっかりタフガイ。レクター博士も「君にはサイコパスを送りつけれたのでこれでおあいこだよ」とか言っていました。確かに!

 

 

第10話『中猪口』前回、獣男ランドールを返り討ちにしたウィルは、レクター博士に「生の実感を得た」と過激な告白をする。レクター博士はそんな彼に傷の手当てを施し、協力的な態度を示すのだった。後日博物館では、バラバラにされ、動物の骨と組み合わされたランドールの遺体が発見される。悪に染まったウィルはマーゴと寝る。レクター博士はマーゴの兄でありサディストの大富豪メイスンと接触、君もセラピーを受けてはどうかと誘う。

 

このあたりからぼくは物語の先行きに不安を覚え始めます。レクターvsウィルを楽しんでいた者としては、ウィルがレクターに取り込まれちゃう展開なんて見ていられません。ラストのある行動なんてもう……。その一方でヴァージャー家絡みの話が盛り上がってきたため興味は持続されます。妹にモラハラしまくり、泣かした子供の涙を採取して酒に入れて飲むという気持ち悪い嗜好を持つメイスン。映画『ハンニバル』ではとんでもない姿になっていましたが、彼もこれからそうなるのでしょうか。期待が膨らみます。

 

 

第11話『香の物』FBIの駐車場で車椅子に固定されたまま焼かれた遺体が発見される。検死の結果、遺体は新聞記者ラウンズのものだった。一方でマーゴが妊娠する。父親はウィルだ。マーゴは後継者である息子を手に入れるためウィルと関係を持ったのだった。それを知った兄のメイスンは、マーゴを襲わせ、腫瘍が発見されたと適当な理由をつけてマーゴの子宮を摘出してしまう。それを知ったウィルは激怒。メイスンを殴り、「お前の豚にはすべての元凶であるレクターを食わせろ」と唆す。 

 

前回に引き続きウィルへの気持ちが離れつつあるぼくは、サイコな大富豪メイスンから目が離せません。レクター博士とイチャイチャするウィルよりも、妹の心体と尊厳をここまで蹂躙するのかという鬼畜な所業にドン引きすること請け合いの展開でした。しかしその一方でラストのウィルの発言から、ウィルは決してレクター博士に篭絡されたわけではなく、密かに反撃の機会を狙っているらしい様子がうかがえます。これにはとてもテンションが上がりました。

 

 

第12話『止め椀』マーゴの復讐案として「メイスンの殺害」で意見を一致させるレクターとウィル。一方でウィルはメイスンにレクター博士を拉致させる。豚小屋で吊るされたレクター博士の前に登場するメイスンとウィル。しかしここぞという隙を突いてウィルはレクターの拘束具をナイフで切断。メイスンの手下たちに殴られ気絶したウィルが目を覚ますと、そこにメイスンやレクターの姿はなく、豚の餌食となったメイスンのボロボロになった手下がぶら下がっているだけだった。そのころ、レクターはウィルの家に。彼はメイスンに薬を飲ませたあと、自らの顔の肉を削ぎ落としたあとで犬に食べさせるよう暗示をかける。かけつけたウィルはドン引き。トドメをさせというレクター博士の指示も拒否。レクター博士は、やれやれといった様子でメイスンの首の骨を折るのだった。

  

メイスンの顔面破壊、ついにきました。首の骨が折れても生きながらえたようで、ものすごい顔のまま車椅子生活に突入、ということで映画『ハンニバル』のあの姿になったわけです。ウィルはレクターに篭絡されたふりをして彼の逮捕を画策しているようですが、レクターにバレてないはずはない、そんな気がして落ち着きません。なにはともあれ次回でseason2は最終回。ウィルがレクターに対し、みんなに正体をばらすよう諭していました。これでようやく第1話の壮絶な殺し合いにつながることになりそうですね。楽しみ。

 

 

第13話『水物』ウィルはレクターと逃亡の計画を立てるその裏で、FBIのジャックとレクター逮捕の作戦を進めていた。

  

ついにレクター博士が大量殺人の容疑者としてジャックと衝突。

激しい殺し合いの末にジャックは致命傷を負い、ワインセラーに篭城。ドアを破ろうとするレクターの姿をブルームまで目撃、というラストにふさわしい本性大公開っぷりに興奮が抑えきれません。

ジャックの加勢としてレクター邸を訪れるウィルですが、そこには死んだはずのアビゲイルの姿が。彼女はブルームを2階から突き落としたあと、ウィルの目の前でレクターに首を切られてしまいます。これってseason1第1話の模倣ですね。ウィルからアビゲイルを何度でも奪ってみせるレクターの底意地の悪さ、超憎たらしいです。

ということで、結果全員がレクター相手に惨敗を喫したわけですが、これだけ派手に暴れたらもう陰湿な裏工作は通用しなくなりそうなので、season3でどういった展開になるのでしょうか。外国に逃げるのだとしたら、映画『ハンニバル』のような展開が待ち受けていそうです。  

 

 


 

 

ということで以上、『ハンニバル』season2でした。season1を意図的にざっくりまとめたこともあったので、その反動からか大変長くなってしまいました。

season3の感想はまた次回。「メイスンリベンジ編」に期待大!

 

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ドラマ版『ハンニバル』を観た(season1)

ドラマ

 

みなさんお元気ですか。

 

ぼくは最近いろいろあった末にネットを開通させました。なので心が浮ついてしまい、あのHuluに登録してみたのです。なぜかというと、前々から気になっていたドラマ『ハンニバル』が配信されているから。NetflixAmazonプライムビデオなど、定額制動画配信サービスは数あれど、ドラマ版『ハンニバル』を配信しているのはいまのところHuluだけっぽいですよね。ということで土日を使ってseason1の一気観を試みたので、その感想を疲れるよりも先に書ききろうと思います。急がなきゃ。時はすべてを破壊する。

 

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あらすじ

FBIアカデミーの講師ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)は、自閉症スペクトラムの一種として異常なまでの共感能力を有していた。そんな彼の能力を買ったFBI行動分析課のボス、ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は、アメリカ各地で起こる事件の捜査協力者としてウィルの起用を提案する。しかしFBIコンサルタントで元心理学者のアラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)は精神的な負荷を懸念してウィルの起用に反対。そこでジャックは起用の条件として、高名な精神科医ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)にウィルの精神鑑定を依頼。かくして全米各地で起こる猟奇事件の捜査が始まるのだった。

 

 

【以下ネタバレあり】

 

第1話『アペリティフ若い女性ばかりが被害に遭っている連続殺人事件が発生

 

残酷かつ陰鬱。なによりも美術や映像に凝っていてとてもリッチ。幸先いいスタートです。

 

 

第2話『アミューズ・ブーシュ』山中で人間の体を栄養源としたキノコ栽培畑が発見される

 

ひーキモチワルイ!グロに関してはかなり踏み込んで見せてくれるドラマなので、こちらも気が抜けません。

 

 

第3話『ポタージュ』第1話の事件の続き

 

あちゃー!

 

 

第4話『ウフ』綺麗に整えられた食卓での一家射殺事件が発生するが、その家の息子だけが失踪中で……

  

明らかになった犯人の目的にグッときました。グロに関しては控えめでしたが、犯行や動機の面がグロテスクに造形されており、とても好みの回です。

 

 

第5話『コキーユ』モーテルの一室で背中の皮を剥がされ「天使」に見立てられた夫婦の遺体が見つかる

 

第5話にして、何かが吹っ切れたようなインパクトの遺体が登場です。犯人の行動や被害者の正体など、どことなく韓国映画『悪魔を見た』 イズムを感じました。

 

 

第6話『アントレ』精神病院で看護師が惨殺される。その手口から、容疑者である患者の男が、二年前に大勢の犠牲者を出した「チェサピークの切り裂き魔」ではないかとの疑念が生まれるがウィル的には微妙で…… 

 

盛り沢山な内容になってまいりました。この回に関してはハンニバルの所業にドン引きです。

 

第7話『ソルベ』ホテルで臓器を取り除かれた遺体が発見される。この事件も「チェサピークの切り裂き魔」なのか……

 

比較的落ち着いた回でした。

 

 

第8話『フロマージュ喉を裂かれ弦楽器にされた男の遺体が発見される。レクターのもとに通う患者の友人が楽器職人で……

 

レクターにライバル心を燃やす人物の登場です。レクターvs殺人鬼の格闘シーンが観られる愉快な回でした。よくわからない紐を急に振り回すシーンが好みです。

 

 

第9話『トゥルー・ノルマン』ビーチで、17体の遺体で構成されたトーテムポールが発見される

 

第5話と並んでインパクト大な遺体が素晴らしい。「発想とその実現」に毎回唸らされるシリーズです。

 

 

第10話『ビュッフェ・フロワ』女性が何者かに惨殺される。現場検証を行っていたウィルは、ベッドの下に皮膚の変色した謎の女を見つける。

 

そんな病気が!?というびっくり医学回。そしてレクター博士の所業冴え渡る回でもありました。あの透明スーツがかっこいい。

 

 

第11話『ロティ』第6話に登場した殺人鬼が護送中に逃走。かつて自分を診た精神科医たちの殺害行脚を開始する

  

この犯人にはもっと厳しくするべきだ、というモヤモヤは多少残るものの、グロシーンのオンパレードでビュッフェのような満腹感。今回のエピソードタイトルがビュッフェだったらうまいことかけてたんですけどね。「ロティ」は蒸し焼きにした肉料理のことらしいです。

 

 

第12話『ルルヴェ』ウィルがどんどん不調を見せる

 

主人公の情緒がめちゃくちゃになってきます。不穏な空気が濃厚です。レクターがとんでもなくよからぬことを企んでいるようで気が気じゃありません。

 

 

第13話『ザヴルー』朦朧としたウィルが起床即嘔吐すると、そこには人間の耳が混じっていて……

  

ウィル!しっかりしろ!負けないで!!!と思っていると予想外(レクター的には狙い通り)の展開に。はっきり言ってとても悔しいですが、ラストのウィルの目力に期待が高まりますね。心は折れていないようです。反撃開始はまた次回!

 

 

 

総評

面白すぎて一気観してしまいました。全米各地で起こる猟奇殺人と同時進行する本筋、それらすべてをコントロールし、支配するレクター博士。ひどすぎる。サイコパス界のスーパースターを演じるマッツ・ミケルセンのハマりっぷりも憎いです。それにしてもよくもまあこんなに異常な事件を思いつくなあと感動しました。画的なインパクトで言えば第5話の「天使の羽根」と第9話「死体トーテムポール」が最高。犯人の異常度で言えば、個人的には第4話が好み。なによりもレクター博士バイタリティとサイコパスとしての矜持には頭が上がりません。頼むウィル。映画『レッド・ドラゴン』 ではレクターを捕まえた伝説の捜査官、という扱いだったので、いくらドラマが映画版と関係ないとはいえ、今後に期待しているぜ。

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ちなみに今作、season3で打ち切られたという事前情報が伝わっているので、その点では気持ちが塞ぎかけますが、変な死体や変な動機を拝めるのであればどこまでもついていくぜという気持ちでおります。クラリス捜査官は出てくるのでしょうか。ドラマ版でも玉隠しダンスが拝めるのかも!?

 

season2の感想も書く予定なのでまた次回。

 

 

 

 

 

のんと能年玲奈/『この世界の片隅に』&『海月姫』

映画 特集

 

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能年玲奈が「のん」への改名を発表してから4ヶ月。 その報せを初めて聞いたとき、ぼくははっきりとした違和感を覚えていた。「いや、のんって!」ということではない。そもそも「能年玲奈」という名が彼女の本名のはずなのに、なんでその使用を禁じられているんだ、バカ野郎、冗談じゃねえ、ということだ。いくらかわだかまりも残ってはいたが、なにはともあれ能年玲奈が戻ってくる。その点に関してはまごうことなき吉報で、ぼくはとても嬉しかった。振り返ってみればなんと1年半もメディア露出がなかったのだ。ぼくは週刊誌が大好きなので、彼女の「騒動」に関するいろいろな記事を読んでいたし、彼女に対するネガティブな記事を書いた媒体すべてを記録したメモに「どうでもいい圧力に屈した雑魚ども」と銘打ち、これらを二度と読まないと誓ったりもした。メディアの露出が減ろうとも日々ブログを更新し続けていた能年ちゃん。あわよくばを期待して新宿御苑周辺をウロウロしたこともあった。そんな彼女がようやく、その才を発揮できる場を得るためだというのなら、改名だってなんのその。いろんな戦い方をしてほしいし、できる応援ならしていきたいと思っている人は大勢いるのだ。

 

sakamoto-the-barbarian.hatenablog.com

 

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ということで『この世界の片隅に』を鑑賞してきた。能年玲奈が「のん」に改名して初の主演作品ということになる。アニメーション映画なので声での出演だ。こうの史代さんの描いた原作は未読だけど、映画におけるその柔らかなタッチで描かれた「日常」のあまりの情報量とテンポに、のんびり構えていた頭がちょっと混乱した。しかしそれも押し付けがましい圧の強いものではなく、映画で描かれている時代、場所で、確かに流れている時間を、いっしょになって体験しているかのような没入感を与えてくれるものだった。なにより主人公すずを演じたのんa.k.a.能年玲奈の声。「ぼーっとしている」と自嘲気味に話すすずに、文字通り息を吹き込む、命を宿すという偉業を彼女はやってのけていたと思う。そのおかげもあって、ぼくらは知りもしない昭和の、反省や後知恵で構築された初めから忌むべき対象としてあるのではない、そこにある「戦時」を味わうことができたのだ。だからこそ、彼女がなにを喪失するかも痛く響いてくるのではないだろうか。やったぜ能年ちゃん!ぼくはこの映画に携わったあらゆる人に畏敬の念を抱いるけど、これまでの経緯などをふまえたうえで、今作の能年ちゃんには顔面の失禁をこらえることができなかった。今年公開された中でもベスト級の作品に能年ちゃんが出演していて、かつめちゃくちゃいい演技をしていた、それを大勢が観て感動して褒めてくれている、その構図がぼくの胸中をぬくもりで満たしてくれた。

 

結果ぼくは『この世界の片隅に』及びのんa.k.a.能年玲奈のことが頭を離れなくなった。しかし原作や関連商品に手を出そうにも現在清々しいほどお金がないので、その欲求に関してはただじっと耐え忍ぶしかない。いまの自分に出来ることといえばかねてから気にはなっていたものの中々手が伸びなかった彼女の主演作『海月姫』 を鑑賞すること。ということで『海月姫』を鑑賞した。ぼくは能年玲奈を吸収し、明日へと歩を進める活力に変えたかったのだ。

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はっきりいって『海月姫』の能年玲奈はとてつもなくかわいい。魅力が溢れていて、尊い。この映画には、彼女の輝かしい瞬間がギュッと詰められている。さらに書くとすれば、キャストもとても豪華だ。能年玲奈のほかにも菅田将暉長谷川博己が好演を見せている。2016年に話題となった映画(『ディストラクション・ベイビーズ』『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』)の出演者たちがこぞって共演している様を見ると、未来人として感慨を覚えてしまう。また、『アイアムアヒーロー』で見事なゾンビっぷりを見せつけてくれた片瀬那奈のコメディエンヌぶりにもびっくり。周りが漫画っぽい演技を「頑張る」中、片瀬那奈の演技はこちらが気を遣わずにすんなりコメディとして受け入れられる「技」を感じた。それにしてもこの映画の能年ちゃん、撮影がさぞ楽しかったんだろうなと思えるほど目を爛々とさせていて、この勢いが2016年に復活したことを考えたときに、改めてジーンとした。

 

いろいろあるけど、頑張ろうよ。ぼくはのんa.k.a.能年玲奈について考えるとき、決まって最後はそう思う。なんてことのない言葉だけど、それを実践する様を見せられると言い訳するのも野暮に思えてくるから不思議だ。彼女の今後の活躍が、いまから楽しみで仕方がありません。

 

 

 

 

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Twitter最高!/『何者』

映画

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『何者』予告編

 

 

『何者』を観た。朝井リョウの書いた原作 は発売直後に購入して一気読み。当時大学四年生だったぼくは無内定のまま就職活動を放り投げ、せめて卒業だけはしようと卒論を書いていた時期だったので、読了後は原作を宙に放り投げたあとでワンワン泣いて過ごした。ぼくは朝井リョウ早稲田大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』で華々しくデビューし、卒業後はあえて専業作家の道を選ばず就職したことも知っていた。会社での業務をこなしながら「就活とSNSによって浮かび上がる大学生の危うい自意識」を描いたこの『何者』を上梓したってことなのか?物語のそんな背景にまず心を折られていたし、それがのちに直木賞を受賞することも併せて、ひとり絶望感を募らせていた。さらにぼくは劇中にも登場するSNSTwitterにちょうどドハマリしていた時期でもあったので、そんな思いをあーだこーだTwitter上に書き散らしもしたが、まるでやつの手のひらで踊らされているような気分だった。できるやつはできて、できないやつはできないという身も蓋もない現実を見せつける朝井リョウという存在に怒りを燃やしたぼくは、それまで苦手だった腕立て伏せを休まずに百回こなせるほどに落ち着きがなくなった。どう考えたって『何者』はいけすかない小説だ。就活という大学生の一大イベントで明らかな勝利を収めた作者が、下々のすったもんだをこういう風に描くなんて、下々である当時のぼくには見過ごせなかった。いったいいくつ痛いところを突けば気が済むんだとの怒りで湯が沸きそうだった。それくらい大学四年時のぼくは混乱していたのだ。将来というものの得体の知れなさに。

 

この物語において、登場人物たちは人生の分岐点に立ち、混乱している。まだ自分のことをどう捉えていいのかもわからないのに、社会からは上手く提示するよう求められ、試行錯誤を重ねる。それが「得意」である人間もいれば「苦手」な人間も当然いて、その違いはいったいなんだ? というドツボにはまってしまう。

 

はっきり言って今回映画化された『何者』を観て、ぼくはかつてのようなバツの悪さを味わうことはなかった。バツの悪さが極限で炸裂するあのラストも、いま観ると「君たちはお似合いなんだからそのまま付き合っちゃえば……?」くらいに思えたほどだ。それはたぶん演者が全員超魅力的だったおかげもあると思う。就活のために髪を短くしました感あふれる佐藤健、狂おしいほどの人たらし菅田将暉、象徴としての有村架純、感じ悪いのにちゃんとダサエロい二階堂ふみ、妙に清々しい岡田将生、安定の山田孝之と、各々がキャラクターをしっかり立てていた。旬の実力派若手俳優たちが一堂に会するという点だけでも、観ていてとても楽しかった。

 

 「Twitterに垂れ流される自意識問題」みたいな点に関しても、別にいいじゃないのと思う程度で、まるで自分の心臓が左から右に移動してしまったかのような気持ちで観終えることができた。Twitterは最高だ。なにを隠そう、今回こうやって『何者』を鑑賞できたのも、Twitterがご縁で仲良くさせてもらっている方にポイントを恵んでもらえたからだ。Twitterは最高なのだ。そもそもぼくのいま使っているアカウントだって元々は「裏アカ」だったわけだし、そんな小さなことを気にしてぐるぐるしている間は、朝井リョウの思うツボなのだ。

 

Twitter最高!

 

ぼくはついに勝利を収めた。かつての自分にフォロワー数で。

 

 

 

 

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「出逢う」というSF/『君の名は。』

映画

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君の名は。』を観た。新海誠監督の作品は『秒速5センチメートル』しか観たことがなかったので、綺麗な絵を描くいじけた童貞といった印象しか持っていなかったのだけど、その最新作である『君の名は。』を観た弟が興奮のあまりネタバレさせてほしいと懇願するほどに感動していたので、冗談じゃない、ぼくも劇場へと急いだのだった。綺麗な絵を描くいじけた童貞の何が悪い?ていうかそもそも、いじけてなんかいなかった。ごめんよ!

 

アラン・ムーア原作のアメコミ『ウォッチメン』に登場する無敵のヒーロー、Drマンハッタンは「地球上のあらゆる人間が奇跡だ」と言った。酸素が自然と金に変わるほどの天文学的低確率で我々はこの世に誕生しているのだ。人と人とが出逢うことも、その奇跡を成す重要な一部なのだ。本作は人と人とが出逢うことの、狂おしいほどの奇跡的側面を、美しい作画と糸のように織り成す時間を用いて描いていた。

 

はっきり言ってこの映画そのものが監督の祈りのようなもので、劇中で描かれていたようにフィクションの中で救える命があるのならいくらでも救えばいいとぼくは思う。もう戻れない過去に祈りが届いたっていい。忘れるべきではないと思うのに、忘れてしまっていたあらゆる過去に、いま一度振り返る機会をこの映画はくれたようにも思う。

 

ということで弟がエモいエモいと繰り返したのも納得のバックトゥザ思春期……以上の映画だった。大学生のころ、大阪で芸人をやっていた友達と『涼宮ハルヒの消失』を観に行った帰りの電車で「背景とかあれだけリアルに描かれるともう実写でよくない?と思わない?」と言われたことを思い出した。「いや!それは違う!」と返そうと思ったのに理由がうまく説明できずに言葉を飲んだのだけど、今のぼくなら言える気がする!言うぞ!アニメーションとはなにかを再現する行為であって、そこには描き手の表現したい、伝えたい想いがはっきりと込められる。的なあれをあの日友人に言ってやりたかったのだ。そしてぼくは新海誠監督の描く美しいアニメーションから監督自身の強い祈りを感じた。今作は、より明確に多くの人たちに祈りが届くよう開かれた物語でもあった。今作がこれだけヒットしているということは、その祈りは確実に多くの人の内側に隠れていたあらゆる感情を揺さぶったということなのだとぼくは思う。

 

P.S.

朝起きて異性の身体になっていたらまずすること、という話題で盛り上がれるのもこの映画の特徴だ。個人的にはパンツを穿いた自分のお尻を鏡に映しながら、飽きるまで撫で回したい。

 

 

小説君の名は。 [ 新海誠 ]

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感想(54件)

 

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